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2009年5月27日 (水)

グエムルー漢江の怪物ー

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いつか感想を書きたいと思いながらも,今日まで延ばし延ばしになってしまった作品。DVDは持ってはいないけど,もう何回レンタルして観返したことか。それくらい,私にとっては惹きつけられる作品だ。

あらすじ: ソウルを流れる大河の漢江(ハンガン)に、謎の怪物“グエムル”が現れ、次々と人を襲う。河川敷で売店を営むパク家の長男カンドゥ(ソン・ガンホ)の中学生の娘、ヒョンソ(コ・アソン)も怪物にさらわれてしまう。カンドゥは妹ナムジュ(ペ・ドゥナ)らとともに病院に隔離されていたが、携帯電話に娘からの連絡が入ったことから一家で脱出を試みるが……。(シネマトゥデイ)

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韓国では記録的なヒットを記録したが,日本では賛否両論で,「否」の方が多かったのじゃなかろうか。きっとこれは国民性の違いなんだろうなぁ,と思う。

韓国映画びいきの自分でも,「あれ?この表現や演出って,日本じゃブーイングかも?」と思うシーンがけっこうあった。特に深刻なシーンの合間に散りばめられた「笑いを取る」シーン。

・・・・正直,
日本人はこんなところで笑いたくはないだろう。
深刻な気分に水を差されるような興ざめな気持ちになる。でも,韓国映画では,けっこう「泣き」のシーンと「笑い」のシーンが隣り合わせに出てくることが多くて,これは韓国特有の感性なのだろう。
同じアジア人種で,顔こそよく似ているものの,日本人と韓国人の喜怒哀楽のスイッチは,かなりズレている・・・と改めて感心する。
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あと,怪物の大きさや容貌が怖くないとか期待外れだった,というかたもいらっしゃったと思うが,私はこの怪物,けっこう好きだ。なんというか,天を突くような巨大な怪獣よりも,これくらいの手頃な大きさ(恐竜サイズ?)の怪物に追っかけられる方が,リアルで怖いような気がする。事実,怪物が初めて登場するシーンは,とてもインパクトがあった。まるで走る魚拓のような怪物が,防波堤の上をすごい速さで,迫ってくるあの場面は忘れられない。
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それに,どっちにしてもこれは,怪獣を見せたかった作品ではなく,怪物は「庶民の生命を理不尽に脅かすもの」の象徴であり,社会を風刺した映画なんだろうな,と感じていた。そこらへん,日本も含めた他国の支配や,南北分断,軍事政権時代などで苦労してきた韓国の国民にしかわからない理解のツボがあり,だからあんなにヒットしたのだろう。韓国では,一見平和に思える現代でも,いつ何時どんな不穏な政情になるかわからない,という緊迫感が,国民の意識の底にはあるのではないかと思う。

この物語の中では,アメリカは無論のこと,自国の政府の対応も全くの「役立たず」あるいは「悪者」として描かれているが,それはきっと,韓国を操ってきた外国や,軍事政権時代に庶民を苦しめた自国政府への抗議が込められているのだろうか?
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だから結局,国民は政府にも警察や軍隊にも頼ることができず,頼みの綱は「家族の絆」のみ・・・・なのだろうか。そしてその家族を,スーパーマンのようにカッコいい能力を持つ存在として描かず,その反対にヘマばかりする,どこか抜けたキャラクターに設定しているのも,「実際に怪物に遭遇したら,みんなこんなもんなんだ」というリアリティを感じさせる。

韓国の観客たちは,やることなすことすべて裏目に出るカンドゥ一家の孤軍奮闘ぶりを,ハラハラしたりくすくす笑ったりしながら見守りながら,彼ら一家の受けた受難に対して,何か共感するものを感じるのかもしれない。
結局さらわれた娘が生還できなかったのも,誰の手も借りずに家族の手で復讐を成し遂げたことも,何かを象徴しているかのようだ。
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情けないけど,一生懸命な「庶民のお父ちゃん」を演じさせたら右に出る者のいないソン・ガンホ。まったく似合わない金髪に染めた彼のカッコ悪さが,今回もなんと魅力的なことか。

殺人の追憶の監督さんの作品だから,この作品にも,何気に同じ俳優さんが出ている。カンドゥの弟ナミル役は,最有力の容疑者だった青年を演じたパク・ヘイル。(今回,雰囲気が全く別人!)・・・・その他にも,「殺人の追憶」でガンホに取り調べられた容疑者役の俳優さんが何人もチョイ役で顔を見せていた。

一家が逃避行をするときのBGMが「蒲田行進曲」のようなおどけた曲(エンドロールにも流れる)で,お気に入り。
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コメント

ななさん、こんにちは!
この映画、私はお家でDVDでの鑑賞だったのです。
映画館で見たら、もっと手に汗握ったりしたんだろうな~と思います。
でもこの映画って、そういうドキドキハラハラ部分だけを狙った怪獣ものというよりは、ななさんもおっしゃっている通り、色々な事を社会風刺する・・・って主旨で作られた映画なんでしょうね♪

永遠のこどもたち、私も近く見る予定なので、またお邪魔するのが楽しみです~☆

latifaさん,こんばんは!
わたしもDVD鑑賞ですよー。
たしか劇場には来なかったわ,これ。

でもソン・ガンホさん目当てで 観たのよね,DVD.
そして見事にツボにハマってしまいました。
韓国人じゃないから,この作品が風刺していることは
完全には共感できないのでしょうけど
ただのパニック・ムービーとして表面だけを追っていっても
私には十分面白かったなぁ。
深読みすればいくらでも深く考えられる作品でもありますがね。
「永遠のこどもたち」きっとお気に入ると思いますよ。
また感想聞かせてね!

ななさん TB&コメントありがとうございます。

この映画ははっきり評価が分かれましたね。恐らくその原因はこの映画がアンチ・ヒーロー映画、アンチ・ハリウッド映画だったことにあると思います。普通の怪獣映画のつもりで観に行った人は、ハラハラドキドキの連続、ヒーローの格好いい活躍を期待してたので、見事に肩透かしを食らったのではないでしょうか。その意味でスピルバーグ監督の「宇宙戦争」と共通するところがあると思います。

 でも、僕がいいと思ったのはお定まりの展開をすべてひっくり返し、最後まで主人公一家を等身大で描いたまさにその点です。笑いの要素もドタバタ調というよりは、風刺を含んだ笑いでした。期待度が映画の評価を大きく左右してしまったということだと思いますが、映画の宣伝の仕方にも問題があったかもしれませんね。

ゴブリンさん こんばんは!

この作品は,公開当時,ボロクソに言われることもありましたよね~
おっしゃるように,期待するものが違った観客さんも多かったと思います。
そういえば「宇宙戦争」もあのトムクルがいかにも無力で逃げ回るばかりで
肝心のエイリアンはあっさり自滅してしまうし「不完全燃焼」と叩かれましたが
わたしはあれも大好きな作品なんですよ。(原作通りだしね)

>僕がいいと思ったのはお定まりの展開をすべてひっくり返し、
>最後まで主人公一家を等身大で描いたまさにその点です。
演じたのがソン・ガンホさんだというのも
まさにハマり役でしたよね。


ソンガンホ最高!彼が出てるだけでいいです。

うまいですね、ソンガンホは。チェミンシクやソルギョングも桁違いに凄いですが、ガンホはまた別格なんですよね。
ラストシーンで、子供とご飯を何気なく食べるシーン、たったこれだけの芝居でもキチンと味、テイストを出していましたね。
金髪はご愛嬌です。

みちしるべさん こちらにもありがとう~

>ソンガンホ最高!彼が出てるだけでいいです。
同感です!
どこがいいかと聞かれても,その魅力は一言では言えないですが・・・
立ち居振る舞い,表情の微かな変化,すべての演技に唸ってしまいます。
それでいて,親しみやすいキャラもとても好感が持てますね。
「大統領の理髪師」「殺人の追憶」「シュリ」「JSA」「シークレット・サンシャイン」「復讐者に憐れみを」・・・どの作品のガンホもいいですねぇ。

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