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2009年4月24日 (金)

エレジー

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30歳もの年の差があってもなお,
愛は継続することが可能なのか。

うーん 今までそんなに直視したことのない,難しいテーマ。の差恋愛ドラマは好きだけど,30歳の年齢差ってのは・・・視野にない。もやもやと,どろどろと・・・・しかしそれでも全編に静かな美しさの漂う,大人の恋物語でありました。・・・若すぎる方にはちょっとわからないだろうなぁ,この切なさは。
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主人公の大学教授デヴィッド(ベン・キングズレー)は30歳年下の魅力的な教え子コンスエラ(ぺネロぺ・クルス)に惹かれ,彼女をお芝居に誘い,一夜を共にする。コンスエラもまたデヴィッドを敬愛し,二人の関係は深まってゆくが・・・・

冒頭のデヴィットの独白が印象的。
肉体は老いても,心は若い頃のままで何も変わらない・・・という自分の中に存在する矛盾。もちろん私は,デヴィットほどは老いてはいないけど,若いころと比べて,年齢相応に自分が精神的に枯れつつあるかと自問すると,やはり「そんなことはない・・・」と答えるだろう。年齢にかかわらず,ひとは永遠に恋心を持ち続けるものなのかもしれない。
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年甲斐もなく,若い教え子にまるで初恋のような情熱を抱いてしまったデヴィッド。肉体関係からスタートした関係は,一度限りのものにはならず,彼女もまた彼に心を捧げようとする。しかしそれは,若者同士の関係と違って,いつかは必ず終わりを迎えることが予想される関係だった。

彼女はいずれ
若い男のもとへと去ってしまう・・・。

それがわかっていながら,まるで青年の頃のように,いやそれ以上にコンスエラに対する執着を押さえることができないデヴィッドの哀しさ。「若い頃もこんな馬鹿はしなかった」という台詞が,なんとなく・・・わかる。

芸術品とまでデヴィッド を感嘆させた,コンスエラの美しさと光り輝く若さに対して,デヴィッドが感じる引け目。それに加えて,従来の独身主義も手伝って,彼女と結婚するなどという選択肢は,デヴィッドには存在しない。その反対に,コンスエラの方は,彼との未来を望み・・・・。

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別れて当たり前の関係なのかもしれない。
従来ならば。

30歳もの年の差恋愛なんて,破綻を迎えたときに愚かしい未練に苦しむよりは,綺麗に別れた方がよいに決まっているから

・・・・しかし,この物語はそこで終わらない。二年後に再会したとき,コンスエラをむしばんだ病魔は,それまでの二人の力関係を逆転させ,愛は,より確かで精神的なものへと昇華されるのだ。

デヴィッドにとっては紛れもなく老いらくの恋を,このような美しいものとして描くなんて,まるで御伽噺のような物語かもしれない。
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ペネロペ・クルスの肢体の美しさと,
ベン・キングズレーの演技は絶品。

そのほかにも,デヴィッドの親友を演じたデニス・ホッパーや,息子を演じたピーター・サースガードなど,脇を固める俳優たちの味わいたっぷりの演技が光る。特に,デヴィッドの恋人を演じたパトリシア・クラークソンがいい。年を重ねた女性ならではの美しさや哀しさをみごとに表現していたと思う。

愛すること・・・老いること・・・
ともに生きること・・・

じっくりと考えさせられる作品だ。

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映画 あ行」カテゴリの記事

コメント

押さえきれない気持ちってしばらく味わってないけど、
切ない気持ちが伝わって、かつての思いがよみがえるようでした。
苦しくても、愛のない空虚さに比べれば・・・。

病魔という半ば不可抗力による再会は二人をどう変えたのか。
そのまま記憶が薄れるに任せていたら、
それはそれで済んでいたのかもしれないけど。

いろいろ考えちゃいましたが、正解はないし
たぶん選択肢もないのでしょう。
人の心は簡単に割り切れません。

クラムさん おはようございます。

>押さえきれない気持ちってしばらく味わってないけど、
私も実生活ではそうですよー。
(実際にあったらちょっとヤバいですし)
でも,おっしゃるように,愛のない空虚さに比べれば
いくつになっても愛せる対象がいるということは幸福でしょうね。

>そのまま記憶が薄れるに任せていたら、
>それはそれで済んでいたのかもしれないけど。
そうなんですよね~。
あのまま終わってしまっても「美しくほろ苦い思い出」として残ったでしょう。
でも,あんな再燃の仕方もあるわけで,それもまた運命かな・・・
>人の心は簡単に割り切れません。
だからこそ,いつも予測がつかない面白さや面倒さがあるわけで,そこが人間の醍醐味なのかもしれません。

ななさ~ん、こんばんは!本作、ななさんの感想を拝読して観たくなりました。年の差カップルは、法に触れてない限り、周囲がとやかく言うことでもなく、本人同士が幸せであればいいのではと思います。

最近は、年の差カップル、女性がかなり上の場合も多くなりましたが、でも、本作ほど離れていたら、どちらが年上であろうと難しそう・・・恋や愛って、双方の愛情レベルが一緒ではないから、切ないですね。

JoJoさん こんばんは
本作,テーマもいいですが
脇役も含めて役者がみんな素晴らしくいい味を出しており
含蓄のある台詞も盛り沢山で,ぺネロぺの美しさは必見だし
ベン・キングズレーは「こんな表情がこの年でできるのか!」と唸りましたし
一見の価値はある作品でお勧めですよ。
年の差恋愛・・・不倫とかは別として幸せならいいですよねー
でも30歳差というのは,(親子以上ですから)なかなか実際は難しいでしょうね。
周囲の目とか,価値観のズレとか,若い方が去ってゆくケースが多いでしょうし・・・・
でも本物の愛が存在しさえすれば,どんなカップルでも,
お互いの間では「アリ」なんでしょうねぇ。
うーん,愛の形はほんと千差万別だわ。

こんにちは~♪
真摯に向かってくるコンスエラの気持ちをしっかりと受け止めることのできなかったデヴィッド。
腰が引けてる姿を見て女性としてはちょっとムカっとしました(笑)
でも、人間っていくつになっても成長できるんですね。
2年間の空白を経て自分の気持ちを見つめなおしていた挙句の再会ですから、今度はしっかりと彼女を支えられますよね。
この年齢差の逆の関係は無いのがちょっと悲しい~。

こんばんは。

この映画、あまり話題になることもなく、ひっそりと公開。
なんだか、映画のイメージに合っている感じがします。

映画って一般に、
その方がヒットしやすいこともあり、
最大公約数のシチュエーションを扱うことが多いですが、
この映画からは、
人を思うその強さは、年齢に関係なく、
むしろその人の資質・生き方に起因するということを
教えられた気がします。

そして、その上にもう一つの問題「老い」を重ねる。
見ごたえ十分の作品でした。

こんにちは
TB&コメント、ありがとうございました
この映画は40歳の私の心には
ズシンとくるモノがありました

女性の外見の美しさに惹かれてしまう男性の気持ちは
分からんでもないのですが、
結局最後に残るのは「心」なんですよね

自由恋愛主義者の男性デヴィッドが友人の死を通して
自分の置かれている立場を痛感し狼狽するシーンでは
お気楽な独身生活を送る私自身、
ちょっと身につまされる想いでした

死と向き合う事、老いと向き合う事…
どれもが人生を送る人間だれもに与えられる
「試練」なのかもしれませんが、
それを受け入れ、乗り越えようとする二人の姿の美しさが
ラストシーンの海辺の映像に凝縮されていて印象的でした

ななさん、こんにちは。
この映画、映画館で観ようと思って、見逃した映画なんです。
記事を読んで、ますます観たくなりました。
DVDを待ちますね。

愛すること・・・老いること・・・ともに生きること・・・

このフレーズに、凄く惹かれてしまいました。

すっかりご無沙汰です。

ソレイユでご覧になりましたか?

私も早々と観ました。

う~~~ん、よかったです。

ぺネロぺ、美しかったですね~。

ベン・キングスレーも素敵です。

こんなオヤジなら私も付き合ってみたい・・・(笑)

本当に上品な官能性に満ちた愛の物語でした。

ミチさん こんばんは!
デヴィッドは前半は女性の敵のようなキャラでしたね。
>腰が引けてる姿を見て女性としてはちょっとムカっとしました(笑)
あの場合,腰が引けるのは仕方ないとしても
「都合のよい独身主義」とか,プレイボーイのところとか
「やーなヤツ」とは思いましたね。
でも後半は成長して・・・ぎくしゃくしていた息子とまで
関係が少し修復されたりして・・・よかったです。
>この年齢差の逆の関係は無いのがちょっと悲しい~。
20代の青年と60前のおばあちゃんの関係は・・・
さすがにちょっと無理でしょうねぇ・・・。
「老いらくの恋心」というのでは「ラヴェンダーの咲く庭で」をちょっと思い浮かべたけど
あれは片思いだったしね。


えいさん,こんばんは!

この作品,完全なミニシアター系ですね。
いい作品だから,もっと大勢の方に観ていただきたいな。
でも,ひっそりと上映・・・というのもこの作品の雰囲気に合ってる。
でも,後からじわじわと知名度が上がってきそうな上質な作品だと思います。

>人を思うその強さは、年齢に関係なく、
>むしろその人の資質・生き方に起因するということを・・・
ああ,そうですね。愛することは若者だけの特権ではなく
そのひと次第でいつでも可能なのだなぁと思いました。
その点でも,嬉しくなってしまう物語でした。

テクテクさん こんばんは

オトナ必見のしっとりした物語で
愛について,人生について,死と老いについて
さまざまなことを深く考えさせられましたね。

>結局最後に残るのは「心」なんですよね・・・
そうそう,そう思うと,かえって勇気づけられますよね。
肉体の老いは止められないけど「心」はいつまでも不変でいようと努力はできますから。

「死」や「老い」を前にした人間だからこそ
こういう確かな愛情にたどりつくことができたのかもしれませんね。


亮さん こんばんは!

この作品,一般にはもう公開は終了してる劇場が多いのでしょうね。
私の隣県のミニシアターではちょうど今公開してまして
予告を観たときから「観たいなー」と。
ぺネロぺも好きなんですがベン・キングズレーが出てると
ついつい外せないんですよねー
原作も文学らしいので,映画も何気に格調が高いです。
ひとを愛する能力や,相手のなにを愛するか・・・とか
いろいろ考えさせられますよ。おすすめ。

あなばななさん,こんばんは

そうですー,ソレイユですね。
最近は長らく行けてなかったのですが
これは時間を作って行きましたわ。
ベン・キングズレー,いくつになってもセクシーで。
昔から大好きな俳優さんです。
一番好きなのは「シンドラーのリスト」の彼ですが。
ぺネロぺは「ボルヴェール」などの作品とはまた別人で
もちろん美しさも素晴らしいですが,今作では演技力にも目を見張りましたね。

この作品、かなりツボでした。
女性が描く恋愛作品って好きなのです。女性ならではの心の襞を描いて下さいますよね。

好きだけど届かない、好きだけど伝えられない、だけど好き。そんな、どうしようもない心というものをうまくとらえていたように思います。
恋には「ルールも順序も関係ない」・・・と、私の好きな古内東子さんの歌詞にあるんですが、それを思い出しますね。まるで年齢が逆転してしまったかのような、デイヴィッドとコンスエラがとても素敵でした。

rose_chocolatさん,こんばんは!
そういえば,この作品,女性監督でしたね。
女性が描く恋愛映画は,たしかに女性の心理描写が
めちゃめちゃ共感できます・・・

>恋には「ルールも順序も関係ない」・・・と、私の好きな古内東子さんの歌詞・・・
いい言葉ですね。何でもアリなのが恋ですもの
そのとおりだと思います。

>まるで年齢が逆転してしまったかのような、デイヴィッドとコンスエラがとても素敵でした。
デヴィッドの方が子供っぽくなってしまって
コンスエラの方が大人の女の包容力を感じさせている場面もあって
微笑ましく感じてしまいました。
DVDになったら,繰り返し観たい作品のひとつです。


ななさんお久しぶりです!ななさんどうしましょう・・。この映画みたいに14歳の子を好きになってしまいました(汗汗)。くまった。年の差○十歳。親子の差です。うーん。やばい。私ロリコンじゃないんですけど、かっこいい子はいくつでもかっこいい。あーくまった。本当に年はとっても気持ちは枯れないんですね。これは何ともやっかいなものです・・。あ、私が勝手に惚れちまっただけで、何かがどーにかなる可能性は全くないです。あっちはただのオバサンだと思っています。しかし、どーにもこーにもこまっちまいました。こんなんなら年と共に枯れちゃったほうがどんなにいいか・・。
映画と関係なくてすみません。誰にも言えなくて優しいななさんに映画にかこつけて言ってしまいました。

ロボさん,こんにちは!
遊びに来てくださって嬉しいですー(◎´∀`)ノ

で,なんと!聞き捨てならない!
14歳のお相手に恋とは!
あはは,まさに親子のような年の差ですねぇ。
でもプラトニックならべつに全然かまわないんじゃないでしょうか~
相手が少年でも,ときめく気持ちは同じですものねー
そして恋心は精神的にはとってもいいものだと思いますよ(≧∇≦)
しかしほんと恋は思案のほかといいますが
いつどこでどんな恋に落ちるかわからないのが人間の業のようなもので・・・。
苦しいし,せつないけれど,だから人間ってやめられないんですよねぇ。

>こんなんなら年と共に枯れちゃったほうがどんなにいいか・・。
いえいえ,枯れるなんてもったいない!
恋心をなくすと人間おしまいですよー。(←持論)

こんにちは♪
地味な感じでしたが私もこの手のお話は好き。
性と死・・色々考えさせられる作品
でしたよね。
<ペネロペ・クルスの肢体の美しさと,ベン・キングズレーの演技は絶品>
そうそう★。ペネロペちゃんのあの裸体は女の
私でもため息もの。
ベンさんのキャラは、最初はあまり好きじゃあなかったのですが(女の見定め方が好きくない)
次第に男心理としてはわからなくもないかなと
歩み寄っていけました。まあ、大抵の男は
あんな感じなんでしょうかね・・笑
<デヴィッドの恋人を演じたパトリシア・クラークソンがいい。年を重ねた女性ならではの美しさや哀しさをみごとに表現していたと思う。>
実は、彼女の心境が一番、心に響いてきたかな。
追伸・・「天使と悪魔」私も早く観たいです。
ユアン~~~♪

みみこさん こんばんは
地味だけど珠玉の作品だと思いました。

とても繊細な心理を描いていて
非現実的な設定に思えても,なぜか感情移入してしまう説得力がありました。
うーん,やっぱり女性監督の作品ですね。

ベン・キングズレーは勝手な奴なんだけど
年甲斐もなく少年のように恋をするあたり
かわいくもいじらしくも思えてしまって憎めませんでしたねー。
男性の本質をよく表していたと思います。

パトリシア・クラークソンは素敵な女優さんですね。
彼女のような雰囲気に年を重ねたいものだと思いました。
「天使と悪魔」ご覧になったらまたお話しましょうねー。
ユアンが素敵でしたよ~~

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