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2009年4月の記事

2009年4月30日 (木)

グラン・トリノ

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今更ながら・・・イーストウッド翁はすごい!
監督としてもだが,俳優として・・・この作品で彼が演じた頑固老人ウォルト。これほど惹きつけられるキャラクターは初めてかも。

それにしても,グラン・トリノって,何のことかと思ってたら,車 の名前だったのか!
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あらすじ:
妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。(シネマトゥデイ)

ウォルト爺さんの偏屈ぶりときたら,筋金入りだ。

最近の若者のファッション,息子一家の言動,隣人のアジア人一家の存在,しつこく訪問してくる教会の神父・・・・彼にとっては,何もかもが気にいらない。話しかけられれば,とびっきりの憎まれ口で答え,ときには犬のように低く唸ることも・・・・。彼は朝鮮戦争での苛酷な戦いの体験があり,アジア民族には容赦のない偏見を抱いている。
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何といおうか・・・・もう,この一筋縄ではいかない頑固爺さんを,まるで演技とは思えないくらい自然に演じているイーストウッドが凄いのである。渋く枯れた味わいが,なんとも魅力的なのである。身内からは嫌われるタネになっている毒舌までが,「お見事!」と言いたくなるくらい決まっているのである。特に行きつけの理髪店のイタリア人店主との毒舌合戦は楽しい。

お話自体は中盤まではそんなに大きな動きはないものの,この,イーストウッド演じるウォルトを観ているだけで満足している自分がいた。「次にどんな言動をやらかしてくれるかな?」と待ち構える感じだ。
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そんなウォルトと隣人のモン族一家との交流。
アジア人に対して偏見の塊だったウォルトが,次第に彼らとの絆を強めていくあたりは,微笑ましい。最初食べ物に釣られる・・・というあたりも可笑しくて。

特に若者タオとの,親子にも似た友情は,心温まるものがある。(タオ役の青年の素朴さがまたよい)。人生の先輩として,ウォルトはおそらく実の息子にも伝授しなかった処世術をタオに教えたりする。

このまま平和に終わるはずないよな~と思っていたら,やはりタオ一家とチンピラとのトラブルが起こって,ウォルトはある決断を迫られることになる。
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ダーティハリーのような活躍をするのかと思っていたら・・・・
ウォルトのとった解決策には泣けた。その気骨と潔さ・・・・彼は結局,最後の最後まで心憎いまでにカッコよかった。

イーストウッド作品にしてはソフトな部類の物語なのだろう。
さりげなく,あたたかく,笑いも,涙もほどよく散りばめて。エンドロールの歌の1番を歌っているのはイーストウッド本人?味わいのあるハスキーボイスを聴きながら,しばらく席を立てなかった。

2009年4月29日 (水)

スラムドッグ$ミリオネア

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観て来ましたよ!
本年度アカデミー賞作品賞を獲得した本作!

あらすじ: テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。(シネマトゥデイ)

満足な教育も受けていないジャマールが,こんな途方もない快挙を成し遂げたのはなぜか?警察で尋問された時,ジャマールは言う。「僕は答を知っていたんだ。」・・・そう,出される問題の答はすべて,彼が辿ってきた人生の中にヒントがあるものばかりだったのだ。
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・・・・そんな都合のよすぎる偶然!と思わなくもないけれど,とにかくクイズの合間に挿入されるジャマールの人生があまりにも壮絶で波乱万丈で・・・・目が離せない。

ムンバイのスラム街での貧しい生活。
暴徒によって殴り殺される母。
兄サリームと,少女ラティカとの生活。
孤児たちを食い物にしている悪党ママンからの決死の逃避。
ラティカの救出とサリームの裏切り・・・・そして再会。

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ジャマールの人生・・・それは確かに悲惨で薄幸で,ともすれば死と隣り合わせの危険なものには違いないけれど,同時に力強さや,生き生きとした情熱に満ちている。逆境でも決して諦めないまっすぐな彼の気性と,インドという国の持つエネルギッシュなパワーのせいだろうか?

その中でも,ジャマールのラティカへの一途な愛は,彼の人生の原動力そのものだ。彼女を守ること,彼女を取り戻すこと・・・ジャマールの人生の目的はすべてそこに集約される。そんな彼の強い強い想いが,奇跡を生んだのかもしれない。
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幼い時に家も家族も失くし,寄り添って生き抜いてきたジャマールたちの絆。ジャマールと違って野心や打算も備えていた兄のサリーム。しかしいつだって土壇場では弟を守ろうと行動したサリームの最期もまた印象的だ。

とにかく,前向きというか,
正のオーラがパワフルに満ち満ちている
作品。

ダニー・ボイル監督らしい疾走感やアップテンポの心地よいBGMも,作品の爽快感を最高に盛り上げる。おとぎ話のようにも思えても,この暗澹とした時代のさなかに,このようなサクセスストーリーって,万人に愛されるのではないだろうか。
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エンドロールの駅の構内でのダンスに痺れた!
この作品中,もっとも好きなシーンかも。
インド風のストリートダンス?を華麗に踊るジャマールって,すごく足が長くって素敵。

2009年4月26日 (日)

BOY A

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僕はここにいても,いいの?

英国の若手作家ジョナサン・トリゲルの同名小説を,ダブリン上等!ジョン・クローリー監督と脚本家マーク・オロウのコンビが映画化した,ブリティッシュ・インディーズの感動作。限りなく繊細でエモーショナルなきらめきを放ちながらも,答えの出ない重く深いテーマに圧倒される作品だ。

BOY Aとは,その名のとおり,少年Aのこと
10歳の時に罪を犯し,少年刑務所で14年間を過ごした,ひとりの青年。保釈後の彼は,「ジャック」と名を変え,過去を隠して人生を再スタートさせる。はたして彼は無事に「更生」することができるのか・・・・?
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主人公ジャックを演じる,アンドリュー・ガーフィールドが素晴らしい。英国の名門演劇学校出身の彼は,レッドフォードに見出されて,大いなる陰謀で映画デビューを果たしたんだっけ。複雑な心情の変化を,デリケートな表情の演技だけで完璧に表現することができる彼の演技に感服。

思春期のほとんどを,社会から隔離されて過ごしたジャック。そんな彼が外の世界に出た時に,感じる戸惑いや不安の大きさ。新しい体験に遭遇するたびに彼が見せる,痛々しいくらい,おずおずとした反応は,思わず手を差し伸べたくなるほど無防備で,危なっかしくて,そしてまたいじらしくて・・・・・。アンドリュー君の演技のせいか,主人公のジャックには,冒頭から好感を抱き,新しい生活を応援せずにはいられなかった。
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彼が起こしたのは,事件当時に「悪魔の少年」とまで呼ばれた,残虐な殺人事件らしいが,そんな事件を起こす人間にはとても見えないジャック。物語の合間に挿入される,少年時代の回想からも,家族から十分な愛を受けられなかった,寂しく内気な少年の姿しか見えてこない。

だから,物語の中盤にさしかかって,彼が職場で同僚たちともうまくいき,恋人もでき,自分の居場所を確かなものにして,やっと普通の青春を謳歌し始めると,「このまま順調にいってほしい・・・,せっかく彼は生まれ変わることができたのだから・・・」と,祈るような気持ちで,彼の笑顔を追い続けた。もちろん,そんなに世の中は甘くはないということは,十分わかってはいたけれど。
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そして,やはり予感は的中し,思いもよらないところから,彼の正体は世間に知られることとなる。それと同時に,彼の起こした事件の全貌も観客に明らかにされ・・・・。

真実を知ったとたんに,
掌を返したように彼に背を向けた世間。

行方をくらました恋人。電話1本で彼を解雇した雇い主。絶交を言い渡してきた親友。人命救助した時に撮られた写真が仇になって,世間に彼の顔写真が出回り・・・・。
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そしてそれまで彼を応援していた私までもが,事件の全貌を知ってしまった今となっては,世間の反応を,「仕方ないかも」と感じたのだ。たとえ彼が私の知人でも,彼がどんなに好人物(人命救助をするほどに)に見えても,過去の罪を知ったとたんに,たちまち彼から逃げたくなるだろう。

たとえ重罪を犯しても,りっぱに更生できる人間がいる・・・それは事実。しかし,世間は決して彼らの罪を忘れず,赦さない・・・・これもまた事実。
特に,ジャックのような凶悪な犯罪の場合,世間は犯人の贖罪だけを望み,更生なぞ望んでいないのではないか?いや,更生できるとは信じていないのかもしれない。
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結局,犯した罪から,
ひとは永久に逃れられないのだろうか。

少なくともジャックの場合,世間には,彼の居場所はどこにもなかった。最後の場面で,彼が遭遇した恋人との会話は,現実のことではないだろう。

ラストの苦い余韻は,あまりにも重くてやりきれない。
人は変わることができるのに・・・・それでもなお,取り返しのつかない罪や,世間の偏見の大きさの前には更生という言葉は,なんと虚しく響くことだろう。

ジャックにも,彼を受け入れない世間にも,どちらの側にも肩入れすることなく,物語は唐突に終わる。このラストから,私たちはどう答えを出せばよいのだろう・・・。いつまで考えても,正しい答えは出ないような気がする。なんという難しいテーマだろう。
それだけに,なんとも強烈に心に残る。

2009年4月24日 (金)

エレジー

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30歳もの年の差があってもなお,
愛は継続することが可能なのか。

うーん 今までそんなに直視したことのない,難しいテーマ。の差恋愛ドラマは好きだけど,30歳の年齢差ってのは・・・視野にない。もやもやと,どろどろと・・・・しかしそれでも全編に静かな美しさの漂う,大人の恋物語でありました。・・・若すぎる方にはちょっとわからないだろうなぁ,この切なさは。
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主人公の大学教授デヴィッド(ベン・キングズレー)は30歳年下の魅力的な教え子コンスエラ(ぺネロぺ・クルス)に惹かれ,彼女をお芝居に誘い,一夜を共にする。コンスエラもまたデヴィッドを敬愛し,二人の関係は深まってゆくが・・・・

冒頭のデヴィットの独白が印象的。
肉体は老いても,心は若い頃のままで何も変わらない・・・という自分の中に存在する矛盾。もちろん私は,デヴィットほどは老いてはいないけど,若いころと比べて,年齢相応に自分が精神的に枯れつつあるかと自問すると,やはり「そんなことはない・・・」と答えるだろう。年齢にかかわらず,ひとは永遠に恋心を持ち続けるものなのかもしれない。
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年甲斐もなく,若い教え子にまるで初恋のような情熱を抱いてしまったデヴィッド。肉体関係からスタートした関係は,一度限りのものにはならず,彼女もまた彼に心を捧げようとする。しかしそれは,若者同士の関係と違って,いつかは必ず終わりを迎えることが予想される関係だった。

彼女はいずれ
若い男のもとへと去ってしまう・・・。

それがわかっていながら,まるで青年の頃のように,いやそれ以上にコンスエラに対する執着を押さえることができないデヴィッドの哀しさ。「若い頃もこんな馬鹿はしなかった」という台詞が,なんとなく・・・わかる。

芸術品とまでデヴィッド を感嘆させた,コンスエラの美しさと光り輝く若さに対して,デヴィッドが感じる引け目。それに加えて,従来の独身主義も手伝って,彼女と結婚するなどという選択肢は,デヴィッドには存在しない。その反対に,コンスエラの方は,彼との未来を望み・・・・。

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別れて当たり前の関係なのかもしれない。
従来ならば。

30歳もの年の差恋愛なんて,破綻を迎えたときに愚かしい未練に苦しむよりは,綺麗に別れた方がよいに決まっているから

・・・・しかし,この物語はそこで終わらない。二年後に再会したとき,コンスエラをむしばんだ病魔は,それまでの二人の力関係を逆転させ,愛は,より確かで精神的なものへと昇華されるのだ。

デヴィッドにとっては紛れもなく老いらくの恋を,このような美しいものとして描くなんて,まるで御伽噺のような物語かもしれない。
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ペネロペ・クルスの肢体の美しさと,
ベン・キングズレーの演技は絶品。

そのほかにも,デヴィッドの親友を演じたデニス・ホッパーや,息子を演じたピーター・サースガードなど,脇を固める俳優たちの味わいたっぷりの演技が光る。特に,デヴィッドの恋人を演じたパトリシア・クラークソンがいい。年を重ねた女性ならではの美しさや哀しさをみごとに表現していたと思う。

愛すること・・・老いること・・・
ともに生きること・・・

じっくりと考えさせられる作品だ。

2009年4月23日 (木)

スケアクロウ

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解説;男同士の深い友情を描いたアメリカン・ニューシネマの傑作。出所したばかりのマックスは、南カリフォルニアの道路で、同じくヒッチハイクをしていたライオンと知り合う。ライオンは5年ぶりに帰ってきた船員で、自分の居ない間に生まれた子供に会うため、妻のもとに向かう途中だという。意気投合した二人は、共に行動することにしたが……。次第に深まっていく友情を、ロード・ムービー風に描く。ラストの、ライオンに対するマックスの友情が素晴らしい余韻を残す。パチーノ、ハックマンの好演は言うまでもない。(allcinema)

スケアクロウとは案山子(かかし)のこと。
「やせっぽち」「みすぼらしい人」という意味もあるらしい。

ルックスも信条も性格も正反対の,マックス(ハックマン)ライオン(パチーノ)が,冒頭,南カリフォルニアの乾いた風が吹きすさぶ道路で出会う。・・・・もう,この出会いのシーンからして,とても粋で,惹きつけられるのだ。
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むさくるしく無愛想な大男のマックスは,人懐っこく話しかけてくるライオンに,はじめは返事もしない。
ライオンがマックスに近寄ろうとすると,彼は相手からすかざず離れ,ライオンもそのうち諦める。ふたりは長い時間,ヒッチハイクの車をつかまえるために道路をはさんで相対する。

やがて煙草の火を切らしたマックスに,マッチの火を貸そうとライオンが近づく。それはライオンの持っている最後のマッチだった。二人の男は,強風で火が消えないように,自然と無言のうちに体を寄せ合う・・・。そして意気投合した二人の旅が始まった。

30年前の作品なのに,ジーン・ハックマンはほとんど雰囲気が変わらない。
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そしてなんとも可愛らしい,アル・パチーノ・・・
ゴッドファーザーでの,哀愁と威厳に満ちたマイケルとは全くの別人の,くるくると変わるおどけた表情のアル。大男のハックマンと連れ立つと,いかにも小柄で華奢だ。

正反対のように見える二人だが,マックスもライオンも,
どちらも不器用で,傷つきやすい繊細さを持っている。

俺はひねくれ者でな,誰も信用できないんだ」と言い,人とのかかわりをできるだけ拒み,自分のルールにこだわり,喧嘩っ早いマックス。そんなマックスはピッツバーグで洗車屋を営むのが夢。「ピッツバーグの銀行に貯金しているんだ,一緒に一儲けしようぜ。」というのが彼の口癖だ。
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一方ライオンのほうは,5年前に捨てた妻子をデトロイトに訪ねたいという。仕送りはしてきたけれど,生まれた子供が男か女かも知らないライオン。彼は,心の中では妻子が自分を受け入れてくれるかどうか心配でたまらない。

ライオンが語るカラスと案山子の関係
カラスは案山子を怖がっちゃいない。笑ってるんだ。そして,こんな面白い奴の畑だから荒らさずにいようって思うのさ。」という持論は,いかにも気楽で優しいライオンらしい独特の考え方だ。笑いの果たす役割の大切さを,身をもって知っていたライオン。もっとも,ライオンにとって「相手を笑わせること」は,すなわち自衛手段になっているのかもしれないが。
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トラックの荷台にねそべり,列車に飛び乗り,バーでの喧嘩がもとで刑務所で労働もさせられ・・・・それでも,二人の旅は続いていく。

人付き合いが超苦手で短気なマックスが,いつのまにかライオンの影響を受けて,バーで喧嘩になりそうな一歩手前で踏みとどまり,ストリップを披露してその場の空気を和やかなものに変えるシーンは圧巻だ。マックスの厚着ぶりも笑える。

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やがて到着したデトロイトで,妻に電話をかけるライオン。直前に床屋へ行き,身なりもととのえ,子供へのプレゼントを抱えて。・・・しかし,捨てられた妻の応答は,彼にとって残酷なものとなる・・・。「子供は流産したわ。洗礼も受けられないで死んだのよ。」と妻はライオンに嘘をつく。

受けたショックをマックスには隠し,ことさら明るくふるまうライオン。通りすがりの子供たちを集めて面白おかしい話を演じて見せ,いつも以上に道化師ぶりを発揮した彼が,その後に,唐突に壊れてしまう噴水のシーンは痛ましい。
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病院で昏睡するライオンに,とりすがるマックスのセリフが泣ける。「俺たちは一心同体だろ」「俺一人じゃ駄目だ。これから誰を信用すればいいんだ」

マックスとライオンの絆の強さ・・・特にマックスにとって,ライオンがどれほど大切な存在になっていたか・・・・。相棒としての彼を失いそうになって,身も世もあらずうろたえるマックスの姿がいとおしい。

ラスト,有り金をはたいて往復切符を買い,ピッツバークに貯金をおろしにゆくマックスの姿から,「彼はお金をライオンの治療費に使うんだろうな,もうこの二人は一生離れないだろうな・・・」という温かい思いが込み上げてきた。

この時代の映画はいい。
CGも巨額の製作費も使わなくっても,いい役者と監督と脚本が揃えば,どんな傑作だって撮れるんだって,映画の原点に帰れる気がするから。

2009年4月20日 (月)

ウィンター・ソング

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美しい金城さんが観れる!と思ってレンタルしたけど・・・・
彼の歌声まで聴けるとは,思ってもなかった!きゃー。
ミュージカル仕立てだったのね,これ。
そして金城さんてば・・・ストーカー入ってるキャラじゃん。
でも,やっぱりとっても綺麗で,切ない役だった・・・・。きゃー。
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あらすじ:
女優になる夢をかなえるために、自分を捨てた孫納(ジョウ・シュン)を思い続ける林見東(金城武)。別離から10年後、ミュージカル映画の共演者として再会した林見東と孫納は、映画で演じる男女に自分たちを重ね合わせ始める。(シネマトゥデイ)

現実の物語と,彼らが演じるミュージカル映画と,過去の回想。
これら3つの物語がリンクしながら交錯するストーリー展開。
描かれるのは3人の男女の愛のかたち・・・。
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過去の愛をいつまでも忘れられず執着し,苦しむ男。
自分の野望のために愛を簡単に反故にできる女。
愛の消滅を恐れつつも,自分から決着をつけようとする男。

金城さんが演じる林見東(リン・ジェントン)ってかなり女々しいんだけど。あんなにいつまでも(10年!)過去の恋人のことを引きずるなんて(引きずり方もめちゃ暗いのよ),現実にそんな男性がいたら,わたしゃ間違いなくひいてしまいそう。
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だけど,演じるのが金城さんだもの・・・・。
その不甲斐なささえもが美しくて・・・。

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特に「つぶらな」と表現したくなるような,あの黒目がちの小鹿のような瞳が,ヒロインを見つめる時に辛そうにうるむのを観るとねぇ~,ついつい同情してしまうじゃないの。「いい加減に彼女のことを忘れた方が,絶対あなたのためになるんだけど,あなたの気持ちもわかるわかる,あんな仕打ちをされて,仕返ししたくもなるよねー」って。

・・・しかし金城さん以外の人が演じた場合は,ここまでこの林見東のキャラに好感をもてたかどうかは疑問。いやー,得だね,美形って。何しても,たとえストーカーしても絵になる・・・。

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そして,エゴなヒロイン,孫納(スン・ナー)を演じたのは,小さな中国のお針子でヒロインを演じたジョウ・シュンさん。小悪魔的なキュートさと,凛としてピュアな感じの美しさが魅力の女優さん。とても共感できるキャラクターではないのだけど,彼女が演じるとなぜか憎みきれない・・・・でもラストは「結局どっちを愛してるのよ,アンタは?」とつい言いたくなったけど。

スンの現在の恋人で映画監督の聶文(ニエ・ウェン)には,欲望の翼では,素朴で純情な青年を演じたジャッキー・チュン。

・・・・・もうね,この人は歌が絶品!
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なんでも「歌神」と呼ばれているほどなので,上手いのは当たり前なんだけど,時には囁くように甘く,時には魂を振り絞るようにパワフルに・・・・彼の自由自在の表現力と,惚れぼれするくらいの美声に聞き入ってしまった。

他の出演者たちもみんなそこそこ器用に歌ってて,声も綺麗なんだけど,ジャッキーは格が違うというか・・・アマチュアのフォークソング歌手とプロのオペラ歌手の違い,みたいな。
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あと,ミステリアスな天使役を演じていたのは韓国俳優のチ・ジニ。(チャングムに出てた)中国語で歌うって大変だったと思うけど,彼もまたソフトで優しい歌声が素敵だった。ジャッキーと堂々とデュエットもこなしていたし,なかなか天晴れ。

ストーリーやテーマにはそれほど大感動はしなかったのだけど,粉雪の舞う美しい冬の北京の風景はいかにも静謐で美しく,ミュージカルシーンもきらびやかで楽しい。それになんといっても,劇中で歌われる歌がみんな素敵で,それやこれやで,なんともいえない不思議な魅力を感じる作品だった。・・・・かなり好き。

2009年4月18日 (土)

シンドラーのリスト

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これは命のリスト。この外は死の淵です・・・・

第66回アカデミー賞
作品賞他7部門を制覇したこの作品,ホロコーストを題材にした作品の中でも,金字塔と言われる。・・・・たしかにここまでナチスの蛮行を容赦なく映像化した作品は,これ以前もこれ以後もなかったような気がする。
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この年のアカデミーの授賞式は,私としては珍しくTVで観る機会があった。受賞式でのインタビュー場面,実際にホロコーストの体験者であるスタッフの一人(たしか腕に焼きつけられた囚人番号があった)のコメントが今も心に残っている。それは,「同胞たちが,収容所で息を引き取る間際,自分に対して『われわれがどのように殺されていったか,後世に伝えてほしい』と言い残した」という内容だった。
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この作品にはスピルバーグのオスカー狙いのための作品であるとか,現代のパレスチナ紛争を考えろ,とか否定的な意見もあるらしい。しかしこの作品が,ナチスのユダヤ民族に対する非道な迫害の数々や,そんな時代に大きな「善」を為した,シンドラーという「普通の」人間がいたことを世に知らしめた功績は,やはり称えられるべきだと思うのだ。

オスカー・シンドラー。
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彼は別にイデオロギーを持っていたわけでもなく,ただの「金儲け主義」から,賃金の安いユダヤ人を雇い始める。酒と女をこよなく愛する快楽主義者で,目的達成のためには賄賂を湯水のように使うシンドラー。彼にとってこの戦争は,一儲けするための道具でしかすぎなかった。・・・・・最初は。

しかし,そんな「俗物」の彼が,物語が終わるころには,儲けた金をすべて投げうってまでユダヤ人の命を救う男に変貌していた。

彼はいつから,そして何故変わっていったのか?
成金主義の男から,
かくも人間愛にあふれ,勇気ある行動を為す人物へと。

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クラクフのゲットーが閉鎖されるとき,ユダヤ人たちが殺戮される光景を丘の上から見ていたシンドラー。モノクロの画面の中に突如として現れるくすんだ赤い服の少女。彼女を追うシンドラーの表情が痛ましさにゆがむ。彼の心の最初の変換期はこのときだろう。

そしてまた,社交性とPR能力の才はあっても,経営能力はなかったシンドラーが,片腕として雇ったユダヤ人の会計士イザーク・シュターンがシンドラーに与えた影響も,大きなものがあると思う。
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シュターンは,余計なことはひと言も言わず,黙々と完璧にシンドラーの工場の一切を取り仕切るかたわらで,事あるごとに,役立たずの烙印を押されて殺されるのが確定的になったユダヤ人にも,工場で働く機会を与えるようにした。

最初はそれに対して苦言も呈していたシンドラーだが,次第にシュターンの無言の訴えに動かされ,意識が変わってくる。すなわち「新たな人材を雇う=ひとつの命が助かる」という考え方に。
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最初はシンドラーに対して,心を開かなかったシュターンが,次第にシンドラーとの間の信頼と友情を深めていく過程も感動的だ。はじめはシンドラーが差し出す手も握りかえさず,彼の杯も受けなかったシュターンが,リストを作成する頃にはシンドラーと涙にうるむ目を見かわしながら乾杯をする。ベン・キングスレーの繊細で確かな表情の演技が光る場面だ。

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そして,この作品でひときわ強烈な印象を残したのが,プワショフの強制収容所の所長アーモン・ゲートを演じたレイフ・ファインズ

アーモン・ゲートは「プワショフの屠殺人」というあだ名を持つ,サディスト傾向もある人間で,戦後には,プワショフ収容所での8000人殺害と,クラクフ・ゲットーでの2000人の虐殺,その他にもいくつかの収容所での数百人の処刑に対する責任を問われて絞首刑になっている。また,レイフ・ファインズが演じたゲートのキャラクターは、2003年にアメリカ映画100年の悪役ベスト50で15位に選ばれたそうである。
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しかしこの作品の中でレイフが演じるゲートは,無慈悲で残酷な中にも,小心者という複雑な一面も覗かせている。彼が気に入ってメイドとして手元に置いていた,ユダヤ娘ヘレンへの屈折した愛情には,切なささえ感じる。また,シンドラーの勧めに従って「赦す」ことを実行しようとした彼の姿からも,囚人の命を自由にできる権力を持ちながらも,強いストレスのせいか,より大きな不動のパワーを欲していた臆病者の彼の姿が見えるのだ。

・・・・とはいえ,せっかくの善行もあほらしくなって長続きしなかったり,ヘレンへの気持ちも賄賂の力にはかなわなかった・・・という点もいかにもゲートらしいのだが。
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ゲートを演じたレイフ・ファインズは,ユダヤ人を虐殺するときの冷酷極まりない表情や,ときおりシンドラーに見せる気弱な表情,ヘレンへの思いを押し殺す複雑な表情など,なんとも・・・・素晴らしかった。

実際に120キロあったゲートに合わせて太ったのか,この作品ではメタボ気味のお腹だったレイフだが,その数年後のオスカーとルシンダを観た時に「この人って美形!」と驚いたっけ・・・・。
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シンドラーもゲートも,平穏な環境の中ならば,英雄になることも極悪人になることもなく,普通の人間として生きたかもしれない。しかし,「戦争」「ナチスの台頭」という非常時に置かれた時に,片方は「善」の道を選び,片方は「悪」の道を選んだ・・・・そんな気がしてならない。

ナチス・ドイツの時代・・・・それは,人間の持つ究極の悪の面が現れた時代。それと同時に,対極にある人間の崇高さもまた,現れた時代だったのだろうか。

物語のラスト,それまでのモノクロ場面に色がついたとき,・・・・「ああ,これはフィクションではなくまぎれもなく実話なのだ」と思い知るとともに,感動の涙が込み上げてくる。

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思えば神に選ばれ,愛された民族であるユダヤの人々は,はるか昔から,迫害と漂流,時には民族絶滅の危機にさらされ続けてきた。それでも彼らはどんなに世界中に散らされても,迫害されても殺されても,消滅することなく,共通の言語や神への強靭な信仰と掟を守り続けて,民族の火を灯し続けてきた。その陰にはオスカー・シンドラーや日本の杉原千畝さんら・・・・外国人の,彼らへの愛の行為があったことを,思い返さずにはいられない。良心に従って行動した彼らに祝福あれ!

一人を救うものは世界を救う・・・・名言である。
人間として,一度は観ておくべき作品だと思う。

2009年4月12日 (日)

クローズZEROⅡ

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前作のクローズZEROが,
より突き抜けてパワーアップ

今回は源治の成長物語かなぁ。

鈴蘭のテッペンを取ったはずの源治,実は全校をまとめることはできてなくて,芹沢軍団とは未だに対立,下級生の猛者たちも,源治をまだ鈴蘭のリーダーとは認めてなくて・・・・。
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そう,いつの世もバラバラの勢力が一致団結するために必要なのはやはり共通の敵!ってことで。

そんなわけでメインとなるのは,因縁のある鳳仙学園と鈴蘭との戦いだ。しかし鈴蘭みたいなヤクザ高校がまだ他にもあるなんてー しかもこの鳳仙の生徒たちの服装もかなりぶっ飛んでて・・・・。ライトグレーの制服に坊主頭の軍団。それでも幹部クラスにゃ髪がある。それぞれ個性的な髪型や雰囲気を持っているので見分けがつきやすく,名前も覚えやすかった。
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特に,天気にかかわらずいつも傘をさしている,一見優男風,実は残虐きわまりない漆原凌のキャラが不気味。上地雄輔扮する筒本を病院送りにするほど痛めつけたりしたけど,最後は芹沢と一騎打ち。

それと,この美藤竜也を演じた三浦春馬クンって・・・
こんな子いたのね。妖しい魅力があって,とっても綺麗。
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われらが小栗クンは,前半はちょっと情けない。

それまで結んできた鳳仙との休戦協定を破る原因は作っちゃうし,芹沢時代と何かと比較されて人望はないし,はやる心の部下たちや,父親から「しっかりしろや」とハッパをかけられても「・・・・・うっせぇよ」としか言わないし。

力の誇示だけじゃ鈴蘭はまとめられない。
ハートが伴わなければ誰もついてこない。

それがわかった時に初めて,
源治パワーが生き生きと始動を始める。
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単身で鳳仙に乗り込む源治のカッコよさ。
そしてはじめて源治を自分たちのボスだと認めてついていく鈴蘭の猛者たちの潔さ。特に芹沢と源治の間に芽生える友情はいいねぇ。

喧嘩シーンは
すごいですよーーーー!

今回は校庭だけでなく,教室や廊下,階段での乱闘がメインなので,閉塞感も手伝って,迫力は前作の3倍くらいになってる。素手での喧嘩にも関わらず,みんな血まみれで,お岩さん顔負けにご面相になってのバトルだ。
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小栗くんのアクションの冴えも一段と磨きが・・・・
もちろん山田孝之さん演じる芹沢も。無敵だね,このひと。それに実は精神的には源治よりオトナって感じで,その男気に惚れぼれする。

しかし,黒木メイサは前回よりもっと「必要なのか?」と首をかしげたくなるキャラだった。

喧嘩だけが人生だ!って物語なんだけど・・・・
なんだろうなぁ,この半端でない爽快感は。

・・・・ちょっとクセになる。

2009年4月11日 (土)

レッドクリフ PartⅡ ―未来への最終決戦―

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いやー,これほどまで続編公開を待ち焦がれた作品は初めて!公開初日は仕事で無理だったが,2日目にはもちろん劇場へ駆け付けた〜!同じ日にクローズZEROⅡも観たので,ここ数日,仕事でたまっていたストレスが,豪快なアクション連発によって一気に解消されましたわ。

PartⅠでは,孔明(金城武)の奇策により,陸(おか)の戦いでは曹操軍を撤退させた孫権・劉備連合軍。PartⅡでは,いよいよクライマックスとも言える水上戦へ突入する!
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さてさて今回も前回同様,血沸き肉踊る英雄たちの活躍ぶりが堪能できたが,前回と比べると女性陣の活躍も目覚ましかった。

孫権の妹で男勝りの尚香は,身分を隠して曹操軍の内部に潜入する。前回のラストで孔明が敵陣に鳩を飛ばすシーンは,彼女の潜入を仄めかしていたのね。曹操軍に男装して紛れ込み,敵の情報を鳩の足につけて飛ばす尚香。
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彼女はそこで親友になった曹操軍の兵士の青年に心惹かれる。(たぶん初恋)決戦になった時はもちろん敵味方となって闘うわけで,彼の死を嘆く尚香の涙が切なかった。

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そして周瑜の妻,小喬は,風向き次第の火攻め作戦を成功に導くための時間稼ぎをするべく,単身で曹操のもとへ赴く。夫の軍勢に有利な風が吹くまで,彼女は茶なぞ点てて曹操(=スケベ心が命取りだね)の気をそらし,敵の先制攻撃を遅らせるのである。民のため,夫のため,そして生まれてくる子どものため・・・・PartⅡの彼女の凛とした美しさには目を見張る。

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周瑜を演じたトニー・レオンも今回は見せ場がいっぱい。前回は「彼だけ浮いてる~?」と思ってしまったアクションも,騎上ではなく室内での剣舞が多かったので,とってもキマッていた!もう決して若くはないのに凄いよねー,トニー。

時には頑固に感じられるくらい高潔な信念の持ち主で,円熟した策士でもある周瑜の魅力が存分に味わえた感じで大満足。

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そしてわれらが麗しの金城孔明さまは・・・・・
今回は天気予報官のような活躍をいたしておりました。濃霧を予知して「10万本の矢の調達作戦」を成功させ,風向きの変化を予知して火攻め作戦のタイミングを指揮し・・・・それはそれは鮮やか,お見事に。前回同様,どんなときも余裕の爽やかスマイルでの華麗な羽根扇さばきは・・・・今回も素敵。

周瑜との頭脳合戦というか,互いに好敵手として認め合ってる雰囲気も,前回より色濃く感じられた。

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前回は大活躍だった劉備陣営の猛将たち・・・・
残念ながら,今回彼らは中盤はすっぽりと不在で・・・・疫病蔓延のために劉備が「いちぬ~けた」と言って,彼らを連れて孫権軍のもとを去ってしまったからなのだが,どうやらそれは敵を欺くための,周瑜と劉備が申し合わせたカモフラージュだったらしくて,決戦の時にはちゃんと加勢に駆け付けてくる。

前回ほどはたくさん彼らのアクションが楽しめなかったのはさびしかったかなぁ。
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↑これは関羽。やっぱり胸がすくようなカッコよさ。

お目当ての趙雲を演じた胡軍さんは今回も槍や火のついた縄を振り回して「不死身ぶり」を披露してくれた。あ,今回は棒高跳びもやってます。
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しかし,胡軍さん,ほんとに顔立ちや体格が中国大陸の方だよねー。こういった時代劇の髪型がよく似合う・・・現代劇のときは「いまどきパンチパーマ?・・・」とか思う時もあるけど。(←藍宇参照)
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↑ちょっと埴輪(はにわ)っぽいですが

とにかく今回の戦闘シーンは
火・火・火・火
もひとつオマケに火!

そして矢・矢・矢・矢
これでもか矢!
って感じで。
まことに熱そうで,痛そうでございました。

決戦の火ぶたが切られてからは特に面白くって,固唾をのんで観入ってしまいました。よかったです!ラストの小喬救出アクションでの趙雲と周瑜のスーパーマンぶりにはさすがに「それは無理やろ~~」とつっこんでしまいましたが。
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2009年4月 6日 (月)

トワイライト〜初恋〜

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すべてを奪われたい・・・・
美しいバンパイアの青年と,
人間の女の子の禁断の恋の物語。

バンパイア物語って,昔から大好き〜〜特に切ないお話が・・・・。少女時代は萩尾望都さんの「ポーの一族」のファンだったし。

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あらあらあら・・・・これってホントに青少年向けの大甘のハーレクインロマンスみたいなお話だった。若い子のデートムービーにはベストチョイスかも(←すっかり母親目線

ま,若くないわたくしでも,その昔ロマンチストだった頃の感覚(愛がすべて〜とか思ってた頃)を思い出しながら,楽しく観ることができたけど。もう忘却の彼方に葬っていた乙女心をくすぐる殺し文句がいっぱい出てきたし。

バンパイアのエドワードを演じたロバート・パティンソン君のエラが張ったお顔と不自然な白塗りメイクに最初ちょっと引きそうになったが,やがて見慣れた

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彼の一族はバンパイアの中でも善玉で,人間は襲わず,動物の血だけを飲んでいる。もちろん人間の血を飲みたいという欲求はあるが,怪物になりたくないという自制心を働かせている見上げた志の一族らしい。リーダーは医師であるカレン。その養子という名目の,エドワードをはじめとする数人の若きバンパイアたち。みんな白塗りの美形集団だ。

このカレン一族が妙に気に入った私。
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エドワードがベラを彼らの家に連れてきたときに,普段は使わないキッチンで一生懸命に人間用のご馳走を作ってもてなそうとしたり,悪いバンパイアに追われるベラを,一致団結して守ろうとしたり。野球のシーンもカッコよかった。

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それにしても,バンパイアと人間の恋って・・・・。
エドワードが自分で言っているように,まさに「羊に恋をしたライオン」状態恋人=食べ物ってどうよ?最愛の人を食べたいという,本能的な欲求と常に闘わなければならない苦しさ。そう,エドワードには,ティーンエイジャーの男の子が,たぎる性欲を必死で押さえつけているような悲壮感が漂っているわけで。「僕が彼女を守ります」と,彼女のパバに律儀に挨拶するのは健気だけど,場合によっちゃあ,彼女にとっては,あんたが一番危険かもよ〜?
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対するベラのバンパイアを愛する心境とはいかに?

自分をおぶって山頂へと,風を切って駆け上がる超人能力の彼氏の存在は,時にはなんて刺激的なんだろうか,と思う。相手の自制の糸が切れて襲われるかも?という危機感の存在も,恐怖である反面,スリリングでもあるのでは?そしてまるで姫を守る騎士のごとくストイックで献身的な愛を捧げてくるバンパイアの一途な眼差しの美しさ。

うーん,切ないっちゃあ切ないけど,そして怖いっちゃあ怖いけど,この関係,結構病み付きになるかも,私なら。

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彼を愛するあまり
「自分も彼と同じバンパイアになりたい」と思うベラ。

ベンジャミン・バトンじゃないけれど,愛する相手と一緒に年を取れないということは悲劇だ。相手の時が止まったままならば,自分の時も止めてしまいたい。

人間としての平穏な人生を選ぶか,
それとも永遠に続く愛を取るか

こんなことを考えさせる点が,この物語の超ロマンチックなところなのかも。鑑賞中はベラに「なっちゃえ,なっちゃえ,仲間になっちゃえ」と思っていた私だが,鑑賞後に冷静に考えてみると,「一時の感情に流されちゃダメよね」なんて思ったりもして。
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バンパイアとして生きるリスクの大きさを描いた「哀しきバンパイア」の物語のあれこれ・・・「ポーの一族」とか「インタビュー・ウィズ・バンパイア」とかが頭をよぎる。「リスクの大きさ」と「いつまでも続くかどうか,どこにも保証のない愛情」とを天秤にかけた場合,うーん,母親目線の私は,「やっぱり選択は慎重に・・・」と言いたい。

しかしこの作品,続編を匂わせる雰囲気で終わったので,二人の甘美かつ危うい関係がこれからどうなるか,引き続き気になるところだ。

なんだか帰ってから,久しぶりに「ポーの一族」が読みたくなったわ。あれってつくづく名作よねぇ。
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エドガーとアラン・・・

2009年4月 4日 (土)

ブラッド・ブラザーズー天堂口ー

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燃ゆる魔都,オールドシャンハイ・・・・
極上の欲望が,俺たちを狂わす

レッドクリフジョン・ウーが製作総指揮し,若手監督のアレクシ・タンがメガホンを取った,1930年代の華やかな上海租界が舞台のハードボイルド・アクション。
リウ・イエ(劉 燁)目当てでDVDで鑑賞~。
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天堂口
っていうのは,「天国の入口」って意味なのね。
1930年ごろの上海は,貧しい農村に比べると,富ときらびやかな魅力に満ちた天国のようなところだったのだろうか。

一旗揚げるために寒村での暮らしを捨て,上海にやってきた3人の若者の名は,ターカン,フォン,シャオフー。フォンとシャオフーは幼馴染。そしてシャオフーの兄のターカンは,二人の頼もしい兄貴分だった。フォンとシャオフーは,ターカンの,「上海に行って成功しよう!」という強い勧めに従って,夢を抱いて上海へ赴くのだ。
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義兄弟
の固い絆で結ばれていた3人が,上海でマフィアの手下として生きるうちに,次第にその関係に亀裂が生じ,やがて悲劇へと結びついていく・・・。

ボスの片腕として頭角を表すうちに権力の虜となり,ついには弟のシャオフーの命をも奪うほどの非情な男へと変貌するターカンを演じたリウ・イエ(劉 燁)。繊細な善人キャラが多かった彼がどんな悪役を演じてくれるのか,とても楽しみ(そして少し心配)だった。
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最初はこんな感じだったのに・・・

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こんな非道なこともやっちゃうし・・・

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・・・・こ,こわい!その顔。

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うーーーん・・・。

いや,おみごと。今まで見たことのない精悍で冷徹なリウ・イエ。いつもの優しげなナイーブな目つきなんか完全に封印されてたし,敵を容赦なく叩きのめすシーンの凶暴さは,怪演と呼んでもいいくらい狂気が漂っていた。ただ,ラストでフォンに撃たれた彼が,フォンから「お前が俺たちをここへ連れてきたのに!」と責められて涙をぽろぽろっとこぼすところは,やっぱりいつものリウ・イエらしい表情だったような。

死ぬ間際の土壇場で,弟への愛情や後悔を見せたわけだけど,それまで強がって生きてきた人間が,必死で弱みを見せまいとしながらも,こらえきれずに感情が溢れそうになる・・・という演技が・・・・こういう感情表現はやっぱりリウ・イエの真骨頂という感じで,それまでの彼の冷酷演技よりずっと印象的だった。
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やっぱり泣くのは上手い・・・

しかし,藍宇の頃と比べると顔もシャープになって
大人になったなぁ。

ターカンに殺されてしまう弟シャオフーを演じたのは,僕の恋,彼の秘密でうぶな青年を演じたトニー・ヤン(楊祐寧)。今作では,屈託のない明るさをもった青年役で,マフィアの水が肌に合わずに苦悩し,ついには野心家の兄に殺されてしまう可哀想な役どころだ。
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たったひとりの肉親で頼りにしていた兄ターカンに,「もう弟ではない」と言い渡されたときの彼の「兄さん!」という悲痛な叫び,そしてあの金時計・・・。石のように冷ややかなターカンの表情の奥底に封じ込められていた気持ち・・・。あの場面は切ない。

そして,この物語のキーマンとも言える殺し屋マークを演じたチャン・チェン(張震 )が最高にカッコイイ!
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殺し屋なのに,ボスの女である歌姫ルル(スー・チー)との愛に生きる男でもある。フォン(ダニエル・ウー)がこのマークと友情を結び,おまけにルルに淡い恋心を抱いたことがきっかけで,3人の義兄弟の結束は崩れ始めるのだ。ソフト帽の下の眼差しの,なんと鋭くも官能的なこと!
Cap024
・・・・この目

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・・・・この表情。
彼と一緒なら,
地獄の底まで行けそうな気がする・・・と思いませんか?

ジョン・ウーの名のもとに,中国・台湾・香港の若手実力俳優たちが結集したこの作品。ストーリーの掘り下げがやや浅いのが惜しいが,全体に漂う雰囲気が好きだ。それは1930年代の上海租界の,東洋と西洋がミックスされた美しくロマンティックな街並みやファッションのせいもあるかもしれない。
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この時代の衣装に颯爽と身を包んだ俳優たち・・・ダニエル・ウーもチャン・チェンもトニー・ヤンもリウ・イエも・・・・みなぞくぞくするほどダンディである。西洋的な目鼻立ちや長い脚をもった中国圏の俳優さんたちは,ソフト帽にロングコートといった洋装がピシッと華麗にキマるのだ。彼らのファッションを堪能するだけでも,けっこう女性には一見の価値があるかも。・・・・特にリウ・イエかチャン・チェンのファンなら,お話なんかどうでもいいから,この二人を観るためだけに鑑賞されても,大いに満足が得られること請け合い。

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↑おまけ画像
4人で仲良く踊ってる~(ラインダンスかしらん)~~
素顔はやっぱり優しい笑顔のリウ・イエ。
チャン・チェンは案外小柄なのね~,4人並ぶと。

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