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    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。

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2009年3月の記事

2009年3月30日 (月)

ウォッチメン

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自分の
好みかどうか心配ではあったけど,他に観たい作品もなかったので・・・という消極的な理由で鑑賞。なんでも映像化不可能,と言われていた超人気グラフィックノベルを,300のザック・スナイダー監督が映画化した作品だそうで・・・・。

ニクソン政権が3期にわたって続き,アメリカとソ連の冷戦は,核戦争一歩手前まで緊迫していた・・・という設定。かつてのヒーロー,コメディアンが顔のない男に殺され,トレードマークのスマイルバッジに血がしたたるシーンから始まる。誰が,何のためにウォッチメンたちを暗殺するのか?元ヒーローのロールシャッハたちは,陰謀を解き明かすべく活動を開始する・・・・。

見終わってみると,何だか知らないけど,
めっぽう面白かったnote
んですケド。
劇場に行く時はなぜかいつも風邪をひいて体調が最悪という私が(本日もそう),3時間近い上映時間中,一度も睡魔に襲われなかったので。
Comedian
私がハマるツボっていろんな種類があるが,この作品は,いつもと違うツボにハマったみたいだ。第一に,複数のヒーローが実在する世界,という設定が面白かった。そしてそのヒーローたちが決して万能でも正義漢でもなく,欠点や狂気を持った人間くさいキャラである,というところも。

ネタばれ厳禁なので,感想は書きにくいし,たとえ解説できたとしても,この面白さは観た人にしかわかるまい。ストーリーもだが,ヒーローたちの個性や過去が,それぞれとても興味を惹かれた。見ようによっては犯罪者とそう変わらない,この多彩なヒーローたちを好きになれるかどうかで,この作品の評価は変わるのかもしれない。
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私が一番好きなのはロールシャッハ。・・・たぶんこの作品で一番カッコよかったと思う。その信念や妥協しないところなんかが。演じた俳優さんは,リトル・チルドレンで小児性愛者を演じたジャッキー・アール・ヘイリー。・・・このひと,名優だなぁ。貧相な外見とは裏腹な,凶暴さや強さに圧倒される。 信念を曲げなかった彼の最期には胸が熱くなったりして・・・・。
Niteowl
そして,バットマンか?とつっこみたくなるこのヒーローは,ナイトオウル 。演じるパトリック・ウィルソンはちょっと太って,柔和な感じ(特に目)がヒーローには似つかわしくないのだが,ヒーローの中では,一番善良さや優しさを持っている感じがした。・・・このひともアクション俳優という感じではないのだが,新境地を開拓したなぁ。
Silkspectre
紅一点のシルク・スぺクターを演じたマリン・アッカーマン。顔はまあ,ものすごい美形というわけでもないが,スタイルがとにかくカッコいい!アクションも華麗そのものだ。彼女のお色気シーンはなかなか迫力があった。
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元科学者で,不幸な事故により,超人的な力を授かったDr.マンハッタン。彼は人間の力をはるかに超越したパワーを持ち,この作品の中でも特に印象的なヒーローだった。ある意味,悲劇のヒーローと言えるかもしれない。その破壊力の絶大さには似合わないソフトな優しい声に萌え~~~lovely しかし,しょちゅうすっぽんぽんで画面に登場するのは何とかしてほしかった・・・(眼のやり場に困る!そんなにハッキリ見せんでもいい!)ちゃんとスーツを着るときもあるのにね・・・・もしかして観客へのサーヴィスなのか???
Ozymandias
そして,この物語のキーマンでもあるオジマンディアスを演じたマシュー・グードマッチポイントで,お気楽な御曹司を演じていた英国の役者さんだ。え?いつのまにこんな役を?とびっくり。彼は長身で小顔なので,8等身どころか12等身くらいに見えるのだが,また痩せてスタイルのよいこと!「世界一頭のよい男」は「弾丸をもつかめるくらい俊敏」って・・・嘘やろ~。でも彼のアクションはめちゃめちゃカッコよかった!先日,マシューが主演の英国の文芸映画を観たけど・・・全然別人だった。

この作品,相当グロいシーンshockが出てくる。残酷描写へいちゃらの私でも目を覆いたくなるほどの,悪趣味な残酷さ。だから,露出する骨とか,切断される手とか,そっち系が苦手な方には鑑賞はお勧めしない。

・・・・ラストは私はちょこっとホロリ,ジーンときた。感動するかどうかは個人の好みだと思うけど,よくぞ作った!お見事!といえる作品であることは間違いない。

2009年3月29日 (日)

ゴッドファーザー

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今まで観た作品の中で一番愛おしい作品は?と聞かれたら,私はもちろんBBM藍宇を挙げるけれど,一番の名作は?と聞かれたらやはりゴッドファーザーと答えるだろう。

テーマ,ストーリー,映像,音楽,役者の演技・・・・
すべてが紛れもなく,
最高の芸術の域に達している作品
だ。

計算しつくされた人物の立ち位置と,ゴードン・ウィリス特有のシックな琥珀色の映像は,どのシーンも,まるで絵画のような完璧な美しさを生みだしている。
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DVDボックス(リストレーション版)持ってます。up

シチリア移民のマフィア,コルレオーネファミリーの栄光と悲劇を描いたこの名作は,三部作になっているが,私がとくに好きなのはPARTⅡまでなので,この記事でもPARTⅢについては触れないことにする。
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第1作目の魅力は,何といっても,圧倒的な存在感と強烈な個性で,ドン・コルレオーネを演じ切ったマーロン・ブランドだろう。そのオーラは永遠に色褪せない。当時まだ40歳そこそこだったマーロンは,頬の内側に脱脂綿をつめて「ブルドッグ顔」を演出し,老けメイクと独特のかすれた発声で,マフィアのドンを完璧に演じて見せた。

大成功をおさめた第1作目の「ゴッドファーザー」の監督コメンタリーを聞くのは大変興味深かった。
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この作品を撮った頃は,コッポラも無名,主演のマーロンは映画界のいわば異端児で,彼の起用にはずいぶんと反対があったらしい。おまけにオーディションでマイケル役に選ばれた新人のアル・パチーノは役者としてはまったくの未知数で,製作費も日数も少なく,無名の若手監督コッポラに対し,事あるごとにスポンサーは横槍を入れ続けるし・・・・。つまりゴッドファーザーは,最初からケチばかりつけられながら,苦労して撮った低予算映画だったわけだ。それが映画史上に残る名作になろうとは,撮影当時は誰も予想していなかったらしい。
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血の気の多い長男のソニーが殺され,次男のフレドは頼りなく,ファミリーの後継者としての道を歩むことになる,エリートの末っ子マイケル。・・・・当初はレッドフォードのような俳優の起用が考えられていたこの役を,まったく無名の新人であるアルが演じたことは,大変な冒険だった。

しかし,コッポラが見抜いていたように,アルのまなざしや全体の雰囲気からにじみ出る,一種の凄みさえ感じさせる哀愁は,他の誰も真似できないものだったろう。シチリア移民の血が流れるアル・パチーノの漆黒の髪と目にこめられた憂鬱は,彼ならではの個性だ。
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ファミリーを受け継ぎ,非情なドンとして生きねばならない重荷を負わされた人間の苦悩が,アルの演技からは痛々しいほど重く伝わってくる。何よりも,オリーブ畑の点在する乾いたシチリア島の風景には,やはり黒い髪と瞳のアルがよく似合う。

物語の序盤では,ファミリーの家業に違和感を感じているように見えた「大学坊や」のマイケル。しかし,成り行きとはいえ,ソロッツィオ殺害を自ら引受け,身を隠していたシチリアで妻を殺され,ドン・コルレオーネの名を継ぐことになってから・・・・皮肉にも,マイケルには,ドンとしての資質が十分に備わっていたことがわかってくる。
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知性,不敵さ,冷静さ・・・・父譲りのものとそうでないもの・・・・・それらすべてをひっくるめて,ビトが「お前にはさせたくなかった」と思っていたマイケルこそが,後継者の資質を見事に受け継いでいたのだ。マフィアとは無縁の世界に生きていたインテリのマイケルが,父親をしのぐ冷酷非情なドンへと変貌していくあたりでは,とにかくアルの目の演技に注目だ。何度見ても,「この人,ただものじゃない・・・」と感じさせる目力に釘付けになる。
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PARTⅡでは,若かりしビトが,いかにしてマフィアのドンとして名をなしていったか,という物語と,父の後を継いだマイケルの物語が並行して描かれる。そして私たちは,ビトとマイケルの生きた時代の違いや,ドンとして辿る人生の違いを目の当たりにすることになる。

ファミリーに愛されたビトと,
ファミリーの心を失ってゆくマイケル。
二人の違いはどこから来るのだろうか?

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家族を幸せにしたい,という強い愛情が動機となって,イタリア移民の中で次第に権力を手にしていったビトの,何物にも動じない冷静沈着な強さと包容力に満ちた優しさ。そしてここぞという時に発揮される恐ろしさ

それに比べて,すでに父が築いていた座を受け継ぎ,入れ替わり立ち替わり現れる敵に先制攻撃をしかけ,権力の座を昇りつめていくうちに,いつしか家族の愛を失い,孤独を深めていくマイケル。

しかし・・・若き日のデ・ニーロの
何とカッコいいこと!

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もともとは一作目のソニー役のオーディションを受けたという彼は,PARTⅡでビト役に抜擢されてから,シチリア島に滞在してシチリア語を完璧にマスターして臨んだという。とにかく,登場してきたその瞬間から,しなやかな身ごなしや王者の風格さえ漂う優雅さに目を奪われ,そして彼の声がマーロンそっくりのかすれ声であることに気づいたときは,鳥肌がたった。

・・・それにこのときのスレンダーなデ・ニーロの雰囲気は,どことなくヒース・レジャーに似てる気もするのだが・・・。
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この作品,特に「あの俳優さんは昔あんなにカッコよかったんだ!」という感動も味わえる作品だ。アルもデ・ニーロもだけど,ソニーを演じたジェームス・カーンもまた・・・・。このときのカーンと「ミザリー」のカーンが同一人物とは,私は長い間気付かなかった。
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2009年3月26日 (木)

ラースと、その彼女

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これ,昨年のアカデミー賞脚本賞にノミネートされた作品なんだってね。普通ならありえないような風変りな設定の物語なんだけど,とってもハートフルheart02で繊細なお話だった。

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主人公のラースを演じたのは「君に読む物語」ライアン・ゴズリング(太ったのは役作りのため?) 彼はいかにも柔和そうな雰囲気の優しい青年なのだが,極端にシャイで人とのコミュニケーションが苦手。トラウマが原因なのか,触覚過敏体質があるため,相手に触れられるのを苦痛としている。

そんな彼を心配してあれこれ世話を焼こうとする兄嫁のカリン(エミリー・モーティマー)。しかし事あるごとに抱擁しようとする彼女の親切も,ラースにとっては実は苦痛だったりして。職場の同僚の中にはラースに好意を寄せている可愛い娘マーゴもいるが,彼女のストレートすぎるアプローチを前にすると,ラースはやはり困惑してしまう。
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そんなラースが初めて兄夫婦や町の人に紹介した恋人は,なんとリアルドールのビアンカだった!ビアンカを前にして固まってしまった人々を意にも介せず,ラースは彼女が生きているかのように接するのだ。

ここらへんからお話はどんどん面白くなってきて目が離せなくなる。「ついに弟がイカレた!」とあわてて医者に診せる兄夫婦。もちろん名目はビアンカの体調不良ということで・・・・。しかし,相談を受けた女医さんが素晴らしい人だった。・・・彼女は「ラースのために話を合わせなさい」と指示する。ビアンカの存在が今のラースの心には必要だと見抜いたからだ。
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医者の指示に従って,ビアンカをまるで生きているように接し,あたたかく歓迎したのは兄夫婦だけではなかった。なんとラースを知っている町中の人たちがそうしたのだ。職場の同僚や教会の仲間たち・・・・なんて優しい人たちなんだろう。それにみんなラースのことが好きなんだな,と嬉しくなる。

この周囲の人たちの優しさと,医者の慧眼の素晴らしさ。そしてそれらの人々のおかげで,コミュニケーション障害を克服していくラースの姿が,なんともいえないほのぼのとした感動を呼ぶ。
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考えてみれば,ラースがビアンカしか愛せなかったのは,人形の彼女は,決して自分からはラースに触れてきたり,しゃべったりしない存在だったからだろう。 愛する相手からのリアクションを受け止めることができなかったラース。・・・・しかし女医の根気強く適切な対応や,人々の優しさに触れるうちに,ラースは少しずつ変わっていく。

「あいつは一生,人形と暮らすかも」という兄の心配に反して,いつしかラースはビアンカを必要としなくなり,それに従って彼の中で,ビアンカは少しずつ「物言わぬ存在」となっていき,そしてついに・・・・。ビアンカとの別れはラースが,無意識のうちにも自ら決断を下したもの。生身の女性と接する自信の芽生えとともに,ビアンカと別れる時が来たことを悟ったからだろう。
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最初から最後まで,一貫して町の人々は,ラースとその彼女に対して思いやりと忍耐と愛を示した。そしてラースもそれに応えた。そこに感動。ラースがマーゴと,素手で握手をすることができるようになったシーンはおもわず小さく拍手してしまった。

殺伐とした世の中で,こんな物語に接すると,たとえありえない設定でも,心がほっと一息ついて,心地よさを感じます。

2009年3月23日 (月)

ジェネラル・ルージュの凱旋

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原作の小説も読んでないし,映画「チームバチスタ」も未見の状態で鑑賞。・・・・・理由は堺雅人さんが出てるから。

感想は・・・始まってすぐに感じたことは,「ん?これって真面目な医療サスペンスかと思ったら,コメディみたいな雰囲気もあるのねー」・・・・ということ。
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阿倍寛,竹内結子,堺雅人・・・
主要キャストの3人のキャラがとにかく面白い!

美人なのに,表情がポカンと弛緩してるような竹内結子。
やけにアクの強い,濃いキャラ(暑苦しい)の阿倍寛。
謎めいた微笑みと厭味ったらしいセリフが冴える堺雅人。

・・・・三人とも,もっと颯爽とした素敵な人物設定かと勝手に思ってたので,慣れるのにちょっと時間を要した。いやいやいや,なかなか三人ともヘンな人たちだ。
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しかし観終わったときには,「この作品って,謎解きサスペンスあり,医療問題(救命救急医療の受け入れ拒否問題とか)あり,合間に主人公たちの掛け合い漫才的な笑えるシーンありで,いろんな楽しさがバランスよくブレンドされた,なかなか小粋な作品だなぁ」と感心した。

サスペンスの方は,匿名の告発文の謎と,癒着が疑われていたメディカルアーツの外交員の殺害事件。(殺害事件の犯人はものすごく意外な人だった。)・・・・・そして医療問題の方は救命センターに費用も人員も投入しようとしない,大病院の金儲け主義について,考えさせられるものだった。

なぜ速水センター長は,いかなることがあっても,救急センターに運び込まれてくる患者たちを断らないのか?彼の別名ジェネラル・ルージュのルージュの意味は?・・・・・これらの謎が解けたとき,ちょっとほろりとしてしまった。
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あちこちに散りばめられた伏線も絶妙なタイミングで解明されるし,最初から最後まで小技の効いたストーリー展開だ。竹内結子と阿倍寛の,ボケとツッコミそのもののようなやりとりも面白い。

しかし,チュッパチャプスheart・・・・懐かしいお菓子だなぁ。堺雅人とチュッパチャプスってよく似合う。それと,あのルージュrougeは,資生堂のクレ・ド゙・ポーだったような気がしたけど違うのかしら・・・?

2009年3月20日 (金)

ワルキューレ

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ワルキューレ
・・・・それは女神の名を冠したミッション。

・・・・実話好き,歴史もの好きの私としては,もうそれだけで鑑賞意欲は最高潮に達する。首謀者のひとりで,のちに「ヒトラーに対する抵抗運動の英雄」と讃えられたクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を,トム・クルーズが演じると聞けば,封切り日にいそいそと劇場へかけつけた。

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↑シュタウフェンベルク大佐

ワルキューレ作戦って,暗殺計画そのものを指すのではなく,ヒトラーの危機管理オペレーションのことだったのね。クーデター発生時に備えて,ヒトラーが作らせておいたもので,シュタフェンベルグ大佐たちは,ヒトラー暗殺後にそれをうまく利用して,政府転覆を図ろうとしたんだって。ヒトラーを殺しても,それだけではナチを潰すことはできないと考えた彼らは,暗殺を親衛隊のクーデターに見せかけてワルキューレ作戦を始動させ,国家予備軍を動かしてベルリンを制圧し,親衛隊やヒトラー勢力を一掃しようという大胆不敵な計画を立てたのね。

いやまず,ヒトラー政権に楯突くナチの将校たちが存在した,というだけで感動した!ドイツじゃみんな知ってることなんだろうけど,哀しいかな,私は勉強不足で全く知らなかった・・・
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ドイツの軍人なら,みんなヒトラーに忠誠を誓っていたと思っていただけに,彼らの中にも,ヒトラー政権打倒のために命を懸けた人々が存在したということを知っただけでも,この映画は私にとって一見の価値があった。

有名な史実だけに,さまざまな憶測や思い入れも多いこの事件を,監督は奇をてらうことなく,できるだけ事実に忠実に描いていて,トムもいつものオーラを抑えめにして手堅く演じていたような印象を受けて好感が持てた。

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考えてみれば,シュタウフェンベルグ大佐たちのレジスタンス運動は,1944年7月。その当時,すでに衰退の兆しを見せていたヒトラー政権。(事実,そのわずか9ヶ月後の1945年4月30日には,連合軍との戦いに敗れたヒトラーは自殺している。)

つまり,彼らのレジスタンス運動がなくても,ヒトラーは滅ぶ運命にはあったわけで,彼らの中にはそれを予見していたものもいたかもしれない。しかし,「打倒ヒトラーを,連合軍まかせにせずに,自分たちの手で反旗を翻したい」,と強く願った彼らの心意気や祖国愛には感動を覚えた。

「ヒトラーだけがドイツ人ではない」ということを世に知らしめたい・・・・計画の画策に関わっていたトレスコウ少将(ケネス・ブラナー)の言葉である。

レジスタンス運動の陣営の顔ぶれは,名優ぞろいだった。
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シュタウフェンベルグ大佐が仲間に入る以前から,何度もヒトラーの暗殺計画を実行しようとしてきたトレスコウ少将を演じたケネス・ブラナーの他にも,ベルリンの国内予備軍副司令官で,ワルキューレ作戦発動の責任を負ったオルブリヒト将軍にビル・ナイ。早くからヒトラーと対立して辞任していた元陸軍参謀総長のルートヴィヒ・ベック役にテレンス・スタンプ

そして,そのほかにも,シュタウフェンベルグらの計画に感づいていながら,自分の利益になる方につこうと日和見を決めこんでいたフロム将軍役にトム・ウィルキンソン。ワルキューレ作戦が発動された地点ではレジスタンス側に操られていたけれど,途中でヒトラーの生存の知らせを受け,一転してレジスタンス鎮圧側にまわったレーマー少佐にトーマス・クレッチマン。

・・・・そして,シュタウフェンベルグの妻ニーナ役には,ブラック・ブックでヒロインを演じたカリス・ファン・ハウテン
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特に,トーマス・クレッチマンの少佐の身ごなしはカッコよかった!ナチの軍服って,着るだけでそれらしく見せてしまえる並々ならぬパワーがあるけど,それでも軍服が一番颯爽と似合っていたのは,やはりドイツ人であるこのひと。「戦場のピアニスト」での気品あふれる軍服姿を懐かしく思いだした。

それにしても,この作戦が失敗した理由って・・・・
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だったなぁ。

暗殺が失敗したのは,運が悪かったとしか言いようのない面もあるけど。会議の時間が早まったために2個仕掛ける筈の爆弾が1個しかできなかったこととか,殺傷力の強い窓無しの部屋ではなく,窓の開いた部屋に会議場所が変更になったこととか,爆弾入りの鞄の位置を動かされたこととか・・・・爆発にも関わらず,軽傷ですんだヒトラーの悪運の強さ!まさに「悪魔の加護を受けている」としか思えない。
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そして,暗殺失敗後,ワルキューレ発動から鎮圧されるまでのレジスタンス側の動きは・・・はっきりいって足並みがそろわなくてグダグダだった。ヒトラーの死亡をはっきりと確かめずに「成功した!」と伝え続けた(そう信じてたのだから仕様がないが)シュタウフェンベルグ大佐。その他にも,肝心な時に優柔不断になる者あり,その反対にしびれを切らして見切り発進する者あり・・・・。情報戦での敗北も決定的な打撃につながった。

結局彼らは一網打尽に逮捕され,シュタウフェンベルグとオルブリヒト将軍を含む4名は即決裁判で銃殺される。(そのほかのメンバーも自決したり,後日処刑された。)銃殺シーンでのオルブリヒト将軍の気弱な一面に涙を誘われたり,「ドイツ万歳!」と叫んで死んでいったシュタウフェンベルグの姿に胸が熱くなったり・・・・。そうそう,彼の副官のヘフテン中尉(ジェイミー・パーカー)がシュタウフェンベルグに発せられた銃弾の前に身を挺して,彼を庇うようにして死んでいったシーンが切なかった・・・・。
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シュタウフェンベルグ大佐・・・・この,ドイツの良心であり,英雄である人物をハリウッドが映画化することに関しては,(特にトムが彼を演じることに関して)本国のドイツや大佐の遺族の間ではいろいろ物議をかもしたそうだ。確かに,ドイツの方がこれを観ると苦言を呈したくなる点もあるかもしれない。登場人物みんな英語でしゃべってるし。

でも,ドイツ人でない私は,今まで知らなかった史実を教えてもらえてとてもありがたかったし,登場人物それぞれの葛藤や緊張感が手に取るように伝わってきたこの作品は,とても見ごたえのあるものだったと思う。
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・・・・ただし,鑑賞前に史実や人物をちょっと下調べして行った方が楽しめるかもしれない。ドイツの名前ってやたら長くって混乱する。

2009年3月19日 (木)

恋の風景

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失くした恋の痛み。
・・・・あなたと出会えた奇跡。

リウ・イエの出演作品ということで鑑賞。Cap024
死んだ恋人を忘れたくない思いと,新しい出逢いとの狭間で揺れるヒロインのデリケートな女心が,とても丁寧に描かれていて,女性監督ならではの感性が光る作品。

病死した恋人サム(イーキン・チェン)が描いた絵の風景を探して,彼の故郷,青島にやってきたマン(カリーナ・ラウ)。彼女はそこで郵便配達員をしている青年シャオリエ(リウ・イエ)と出逢う。
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シャオリエはマンの風景探しを手伝い,二人の間の親密度は深まるが・・・・。

おそらく出逢ったときからマンに恋したシャオリエ。
死んだサムをいつまでも忘れたくないと思いながらも,
シャオリエの献身的な優しさに次第に惹かれてゆくマン。

逡巡とためらいの中,ゆっくりとフェイドアウトしてゆく古い恋と,痛みを癒してくれる新しい恋の芽生え。・・・まあ,ひとことで言えば,結局,それだけのお話なんだけど。
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少女漫画のような,綺麗すぎるお話のようにも感じられるし,合間に「これって必要?」と,首をかしげたくなるような脇役のエピソードも交えながら,ストーリーはややテンポ悪く地味に進む。 それでも最後まで退屈せずに見通すことができたのは,主演の二人の演技,特に二人の繊細な感情を表す表情がとっても素晴らしく,それに見入ってしまったせいだろう。

マンを演じたカリーナ・ラウは,はかなげでさびしげな中にも,思わず抱きしめたくなるような可愛らしさがあって,こりゃ男性なら誰でも惚れるだろうな~と,ため息。
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彼女は,恋人との過去をいつまでもひきずっている,と言うよりは,「ひきずっていたい」という面もあったんじゃないかなぁ。時とともに,彼との愛や記憶が薄れてゆくのが怖いのだ。恋人が執着していた風景を探し,「探し当てれば納得できそうなの・・・」と言いつつも,探し当てた地点で,何かが終わってしまいそうな予感におびえているようにも見えた。

そんな彼女がシャオリエに見せる表情。
最初は純粋に感謝や好意がこめられた彼女の笑顔が,次第に複雑で辛そうなものに変化していく。おそらくシャオリエの気持に気づき,自分も彼に惹かれていると感じ始めてから。
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シャオリエを演じたリウ・イエ。
こういった,シャイで一途な役は,彼のもっとも得意とするところ。彼はどんな役でもこなせる役者さんだけど,やっぱりこんな健気キャラの彼が一番本来の魅力が発揮できるような気がしている。

彼が恋した女性は,
過去の恋人との思い出の中に生きている。


「思い出探し」のお手伝いを買って出た立場としては,彼女に自分の気持ちを告白するなんて,とてもできないけど,
それでも好きでたまらなくて,危なっかしい彼女に手を差し伸べずにはいられなくて・・・・押し付けがましくはないけれど,いつも彼女を見守り,決して目を離さないシャオリエの愛し方。
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繊細に変化するシャオリエの表情。
マンを元気づけようと見せる優しい愛情のこもった笑顔。
マンが喜んでくれた時の心底うれしそうな顔。
サムを忘れられない彼女に見せる寂しそうな表情。
そして,時折ふいに浮かぶ,マンを恋い焦がれる瞳が切ない。

サムが埋めたタイムカプセルの中身をいとおしむマンに,
柄にもなく意地悪を言ってみたり・・・・。

ああ,いいなぁー,こんな風にピュアにひたむきに愛されてみたいなぁ・・・と素直に思えてしまう・・・彼の顔を見ていると。
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・・・・こんな薄味のロマンチックすぎる物語は,もう若くない身としては,いつもなら「ケ!」と一笑に伏してしまうのだが,リウ・イエの演じるシャオリエのあまりのいじらしさに惹かれ,彼を応援し続けることで,物語に感情移入できたかな。マンに対して,「早くふっ切ってシャオリエの気持ちに応えてあげなよー」とずっと念じ続けた1時間半だった。

いい具合にさびれた青島の風景は,石畳の坂道が多くって素敵だ。(青島というと,青島ビールしか知らなかったけど)この作品のために描き下ろしたという,台湾の絵本作家ジミーのイラストや,透明感と優しさにあふれた梅林茂の音楽も心地よかった。

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余談だけど,マンの親戚の女性トンを演じたスー・ジンさんは,藍宇(ランユー)では,リウ・イエ演じる藍宇の恋人ハントン(=♂)の妻を演じた女優さんだ。つまり,藍宇ではリウ君の恋敵だったわけ。ちょっと最初見た時はわからなかったけど,このひとも綺麗な女優さんだねぇ。

2009年3月15日 (日)

「レッドクリフ Part I」のDVD!

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コレクターズ・エディションshineを購入しました~!

PartⅡとセットで出るまで待ってもよかったんでしょうけど,なんせこらえ性がないもんで・・・。
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封入特典も豪華diamondです。
豪華解説本
11枚のキャストフォトカード
オリジナル武将カード(周瑜)
これが一番嬉しかったりして
「真・三国無双」特典つきチラシ
PartⅡ鑑賞割引券(-200円)

続編公開前に再見してみて,
あらためてアジアの男の凛とした色気にクラクラ~。
やはりおなじアジアの血が騒ぎます。heart02
このトキメキはやっぱり西洋の殿方が相手では無理なんですよね。波長・・・とでもいいましょうか?それとも・・・・刷り込まれたDNAの反応とでもいいましょうか?
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トニー・レオンheart
Cap111_3
胡軍(フー・ジュン)heart04 
Cap060_2
チャン・チェンheart01
Cap075_3 
いちおう,この方も・・・素敵。

金城さんのおとぼけ表情が可愛かった~~。(もう忘れてるシーンもあったのであらためて笑わせていただきました)
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もぉぉ~張飛ったら声でかすぎ!

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「何やってるんだよ,孔明」
「いやなに,風呂上りの鳩を乾かしてるんだ」

「風邪ひくぞ,おい」
「・・・・・。」

メイキングを観て,
完成までの道のりの大変さにびっくり!
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クランク・イン当日に降板を伝えてきたチョウ・ユンファの件や,天候にたたられて撮影が難航したこと,1000人にも及ぶエキストラたちの奮闘・・・せっかく作った戦艦は喜び勇んで進水式をしたとたんにトラブルし,撮影が雨期に入ると連日の雨でセットが崩れてエキストラが生き埋めになっちゃうし・・・。「何かにたたられてるんじゃ?」と思いたくなるくらい災難続きだったことが語られていました。

あと,趙雲たち猛将のアクション,
みんな映像そのままに自分でやってる・・・・

ご本人が槍をホントにぶんぶん振りまわしてる立ち回りを観て,あらためて尊敬の念を強くいたしました。周りのエキストラもよく怪我しなかったなぁ・・・・。劇場では速すぎて見逃してしまったアクションも,スローにしてゆっくりじっくり堪能できました~~!

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趙雲,何をくわえているのかと思ってたら,手綱(たづな)だったのね
ホイッスルにも見えますけど・・・。

思ったほどスタントや特殊効果を使ってなくて,あの孫権を襲う虎も,最初は着ぐるみだったけど(着ぐるみってのも大胆な試みだと思うが)もちろん本物らしく見えないので,結局動物園まで本物の虎を撮影に行き,カメラマンたちがビビりながら放し飼いの虎を撮影していたのが可笑しかったです。それから「阿斗」役の赤ちゃんがなかなか笑ってくれなくて,スタッフが汗だくになってアヤしていたのですが,その時歌っていたのが「きらきら星」だったり・・・。

PartⅡ公開までもう秒読み!
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先行スペシャル映像
を観たけど,
どの登場人物も,またまたみんなすっごくカッコイイ!
劇場で彼らに会うのが待ち遠しいです!

2009年3月12日 (木)

JSA

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1999年10月28日午前2時16分。
11発の銃声,二つの死体。
共同警備区域(JSA)で何が起こったのか?


朝鮮の南北分断の悲劇を描いた作品の中でも,とりわけ重い余韻を残す傑作だ。監督は,オールドボーイなどの復讐三部作でも有名なパク・チャヌク監督。

Cap005

この作品,もちろん初見ではない。
久しぶりに観てみたわけだけど,事件の真相をあらかじめ知っていて観ると,4人の南北兵士たちの屈託のない交流シーンが切なくて,哀しくて・・・・。それがあんな惨劇につながると知っているだけに余計に,彼らの邪気のない笑顔を観るのが辛かった。
Cap024
禁断の38度線を越えて,
許されざる友情を結んだ4人の兵士たち。

人情味のあふれる頼もしい士官ギョンピル(ソン・ガンホ)と,お人好しで小心者のウジン兵士(シン・ハギョン)は北の朝鮮人民軍の所属。そして除隊を目の前にしたスヒョク兵長(イ・ビョンホン)と,気弱でさびしがり屋のソンシク兵士は,南の国連軍の兵士だ。
Cap006
4人が親しくなったきっかけは,ある夜,スヒョクが誤って38度線を越えてしまい,おまけに地雷を踏んで窮地に陥っていたところを,ギョンピルに助けられたから。

敵でありながら命の恩人という秘密の関係。ギョンピルのあたたかい人柄に惹かれたスヒョクは,彼を「兄貴」と呼んで慕い,石に結びつけた手紙を,境界の川越しにやりとりするようになる。そしてある晩ついにスヒョクは,「帰らざる橋」の38度線を越えて,北の歩哨所の扉を叩く。
Cap028
ギョンピル,ウジン,スヒョク,それにスヒョクの弟分のソンシクも加わって,互いに言葉を交わすだけでも重罪になる4人の兵士たちは,秘かに他愛無い遊びや雑談に花を咲かすようになる。

彼らが心から楽しそうに談笑している場面を見ると,やはり同じ民族なんだよなぁ,と思う。もともとは同じ歴史や心意気を持っていた同胞であり・・・憎みあい,殺し合うような関係であるのは間違っている,ということを感じずにはおれない。
Cap046
とは言っても,ひとたび事が起これば,やはり彼らの関係は
一転して一触即発のものとなる。

あの事件当夜の出来事・・・・
4人が一緒にいるところを北朝鮮軍の上尉に見つかった瞬間に,それまで和気あいあいと楽しかった歩哨所内の空気は,「殺るか殺られるか」という緊迫したものに変わる。本能的に銃をつきつけ合う兵士たち。「所詮は敵なんだ・・・」というスヒョクのつぶやき。
Cap052
4人の兵士のそれぞれの個性と,この事件が彼らに与えたダメージや影響は,はっきりと描き分けられている。

取り乱して引き金を引き,精神のバランスを崩してしまったソンシク。秘密を守ろうと気丈に努力はしたものの,最後は良心の呵責に耐えきれなかったスヒョクの悲劇的は決断。あんなにも親しかったウジンに向けて引き金を引いたという事実は,彼にとって背負いきれないほどの重荷だったのだろうか。
Cap033
そして,ただひとり,事件の最中も,そして事件後も冷静さを保ちづつけたのは,やはりギョンピルだった。常日頃から「実戦で大切なのはいかに速く引き金を引けるかではなくて,冷静さを保つことだ」と言っていたことを,見事に実践してみせた。

彼は事件の直後に,スヒョクとソンシクを逃がす。同志のウジンを無残に射殺したソンシクと,自分に向けて至近距離で引き金を何度もひいたスヒョク(弾切れでなかったら殺されていただろう)なのに。その後は一貫して嘘の供述を述べ,尋問で追い詰められたスヒョクの前ではとっさに渾身の芝居を打って,彼を自供から救う。

日頃は温厚な彼が,事件で受けた心の傷や衝撃は,他の3人に勝るとも劣らなかったと思うのに,いざという時は感情に流されない鋼のような意志の強さは流石だった。
Jsa5
ラストシーン,哀切な曲とともに,この写真が映し出されたとき,いきなり怒涛のように涙が込み上げてきた。板門店を訪れた観光客が撮った一枚の写真の中に,偶然4人が映っている。

北朝鮮側の歩哨に立っているギョンピル。
はるか背後を,こちらに笑顔を向けて行進していくウジン。
南側の歩哨に立っているソンシク。
そして,撮影を防ごうとカメラの前に立ちはだかるスヒョク。

何の罪もない4人に,この後降りかかる悲劇をおもって,エンドロールの間,しばし号泣してしまった・・・・。南北分断の悲劇を描いた作品では,シュリももちろん名作だが,このJSAは,シュリのようなラブストーリーの味付けがないゆえに,一層リアルで重く,やりきれない悲哀を感じる。
Cap041
・・・・この作品が出世作となったイ・ビョンホン
名優ソン・ガンホを前にして気おくれすることなく,堂々たる演技を見せている。トレードマークのキラー・スマイルはあまりないが,精悍さと苦渋に満ちた表情が魅力的だ。

2009年3月 9日 (月)

リウ・イエ作品記事

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アフター・ザ・レイン(Dark Matter)

王妃の紋章

恋の風景

コネクテッド(保持通話)

小さな中国のお針子

天上の恋人

ブラッド・ブラザーズー天堂口ー

PROMISE 無極

山の郵便配達

藍宇(ランユー)

好きなシーン-劉燁-

藍色宇宙(藍宇~メイキング~)

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「藍宇」で共演した胡軍さんと・・・notes 

小さな中国のお針子

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中国の植物学者の娘たちの,ダイ・シージエ監督作品。原作は同じくシージエ氏のフランス語の著作「バルザックと小さな中国のお針子」だそうだ。
Cap009
文革の時代を背景にした作品ではあるが,文革そのものがテーマではないと監督は語っている。一冊の本が人間の一生に与える影響や,文盲の人たちの間に浸透してゆく文化がテーマだそうだ。したがって同じ文革時代を扱った作品,芙蓉鎮のような重さや暗さはなく,どこか優しく,牧歌的な美しさをたたえた作品だ。

監督自身が,文革時代にはマーたちのように四川省の農村に再教育に行かされた体験を持ち,ある意味これは,監督の自叙伝に近いのだろう。
Cap003
二人のインテリ青年,マーとルオが文盲の僻村に持ち込んだ文明。それはマーの奏でる流麗なバイオリンの調べや,外国文学や医学。

バイオリンなど初めて目にする村人たちに,モーツァルトのソナタを「レーニンを偲んで」という題だと偽って演奏するマー。村を代表して町に映画を見に行き,村人たちにそのストーリーを聞かせる二人。二人が「語る」映画を,目を輝かせ,涙を流して聞き入る村人たち。お針子の祖父はマーから聞かされた「モンテ・クリスト伯」の影響を受けて,村の娘たちの衣装をヨーロッパ風のデザインにする・・・・。
Cap024
歯科医の息子のルオは足踏みミシンを利用した即席の電動ドリルで,村長の虫歯を治療する。(まるで拷問シーンのように痛い場面だけど・・・・shock) そして,その噂を聞いて,自分たちも治療してもらおうと,村人たちは彼らの家の前に列を作る。

文明や文化の持つ,
人々を魅了し,啓蒙する力の大きさ。

それは文革の嵐の中でも消すことはできず,いやむしろあのような時代だったからこそ,人々の反応は顕著だったのだ・・・ということが伝わってくる。
Cap001
仕立て屋の孫で美しい少女「お針子」に恋したふたり。
しかし,後にマーが回想しているように,彼ら二人のお針子への「愛し方」は違っていた。それは,二人の性格の違いからくるものだろう。

率直で,積極的なルオ。
繊細で優しく,控え目なマー。

ふたりの個性の違いは,演じる俳優の表情や仕草から感じ取れる。くっきりとした顔立ちで,強い意志を秘めた目をしているルオと,時折気弱でナイーブな表情の揺らぎを見せるマー。そしてマーを演じたリウ・イエは,やはりこんな素朴で想いを秘めた役を演じるのが上手い。「実際の自分もマーのような性格だから」とインタビューで語っていたが・・・・。
Cap013
お針子はルオの愛に応える。
彼女とルオの抱擁シーンを目撃したマーの切ない表情。
かなりショックだったろうに,その後も自分の思いを隠して普段のように二人に接するマーの心情を想像するとやるせない。

一番胸が詰まったのが,ルオの子供を妊娠したお針子の中絶手術の世話を,留守中のルオに代わって一手に引き受けるマーの献身ぶり。
Cap042
法を犯して手術してくれる医者を探し,手術中の小屋の外で見張りを引き受け,手術後の彼女を背負って町まで行き,大切なバイオリンを売ったお金を彼女に与える。相手には何も求めずに尽くすのが,マーの愛し方なのだろう。

彼の愛し方に比べると,ルオの愛し方が凡庸なものに思えてくる。マーの気持ちを知りながら,自分の留守中の彼女の世話をマーに頼むのもちょっとあんまりのように思えた・・・・。
Cap048

ルオの子供を中絶したお針子は,やがて山村を捨て,都会へ行く決心をする。無学の彼女を啓蒙する役を果たそうと気負っていたルオとマー。・・・しかし,彼女はもう彼らを必要としていなかった。「愛しているのに。何が君を変えたんだ」と問うルオに,彼女は「バルザックよ」と答え,しっかりした足取りで山を降りていく。

それきりお針子の消息は知れなかったが,自由を目指した彼女はおそらく,気丈にその人生を切り開いていったと思う。27年後に再会したルオとマーは,まもなく水没の運命にある山村のビデオ映像を見ながら昔を懐かしみ,感慨にひたる。二人の心に去来するのは,あの村の人々に彼ら二人がもたらした,ささやかな文明の香りや,お針子との思い出。

・・・・彼女との再会に備えて,フランスで香水を買ったマーは
いまだに独身のようだ。
Cap050
観終わって,しみじみと美しい物語だなぁ,と思った。
文革の時代が背景なのに,こんなに静謐で美しい物語でいいんだろうか?と思うくらい。しかし,監督の訴えたかったことは文革の悲惨さではなく,文学が人にもたらす光なのだから,この豊かで優しい余韻は当然のことなのだろう。バイオリンの調べがいつまでもここちよく耳に残る・・・・。

2009年3月 7日 (土)

落下の王国

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いやはや,映像が素晴らしいとの評判は聞いていたけど,これほどとは!「ザ・セル」のターセム監督による,まさに美しい芸術工芸品のような作品。奇跡のような色鮮やかな場面は,CGを使わず,ほとんど実写というから驚く。
Cap026_2
なんでこんなに色彩が鮮やかで,それもお互いに引き立て合うような思い切った使い方で,そして美しいけど大胆な映像ばかりなのかと思ったら,この劇中に挿入されているおとぎ話の映像って,ロイの語るお話を,少女アレクサンドリアが心の中で映像化したものだからなのね。

・・・・・子供の時に思い描いたファンタジーの世界って,たしかにこんな風に,現実離れした衣装や背景で,とんでもなく美しいものだったような気がする。常識にとらわれない小さな子供の思い描く世界を,映像化したら,こんな風に摩訶不思議な美しさに満ちているのだろう。
Cap018
少女アレクサンドリアを演じた新人,カティンカ・ウンタールが素晴らしい。ありきたりの美少女ではなく,それどころか太めの女の子なのだが,彼女の喜怒哀楽の表情の,なんと自然で愛らしいこと。あるときは大人びた思案顔を見せるかと思えば,次の瞬間にはあどけなさ全開の笑顔を見せる彼女を観ているだけでも,この作品は一見の価値がある。

5歳だというのに,過去に苦労もしているらしいアレキサンドリアは,大人のような気づかいもできる女の子で,病院のみんなから愛されている。
Cap008

彼女がロイの話から頭の中に思い描く登場人物たちの顔が,彼女の身近な人々であるのも面白い。ロイや,看護師や病院職員や,氷売りや牧師やオレンジ園の使用人や・・・。「あ,物語のあの人の役は,現実世界のこの人がやってたんだ~!」と次第にわかってくるのも楽しみのひとつ。
Cap003

一方,ロイの目当ては,お話で少女を操り,自殺のための薬を手に入れようとすること。お話を創作する場合,必ずその人の人生観が投影されるものだからして,絶望と厭世感に囚われた彼の語るおとぎ話は,負のパワーに満ちていて,キャラクターがみな死へと向かって「落下」してゆく。ひとり,またひとりと・・・・。自殺願望のある彼は,ハッピーエンドを語ることができないのだ。そしてそれが少女の素直で無垢な心を悲しませる。

「これは僕の物語だ」,というロイに「ううん,二人の物語よ」と言い,ハッピーエンドを望むアレキサンドリアのひたむきな訴えは,ロイの心を少しずつ変えてゆく。
Cap020

死んじゃいや。
生きなきゃ。
お願いだから立ち上がって,戦って。


主人公の黒山賊が瀕死の危機にさしかかった時のアレクサンドリアの涙と叫びは,ロイに向かって発せられたものとも言えるだろう。 そして彼女の涙ながらの懇願は,ロイに生きる希望を与えるのだ。
Cap023_2
俳優さんはみな知名度の高くないひとばかりを起用しているので,有名俳優の強すぎるオーラに邪魔されることなく,映像やストーリーの秀逸さが際立つ。そうは言っても,どの俳優さんもみんな役にぴったりで素晴らしい演技だったと思うけど。

もちろん見どころは映像だけでなく,物語が進めば進むほどに,どんどんその不思議な魅力に惹きこまれてゆく見事な作品だ。・・・・手元に大切に置いておきたい宝石のような美しさを持っている。
Cap038

2009年3月 5日 (木)

リバー・ランズ・スルー・イット

Cap145
ベンジャミン・バトンのブラピの若返り映像を見て,この「リバー・ランズ~」のブラピにまた会いたくなった。若い頃のレッドフォード監督そっくりの容貌のブラピが,そのみずみずしさと輝くばかりの美しさで,強烈な存在感を放ち,彼の出世作となった作品だ。

古きよき時代のアメリカ。
舞台は,雄大で美しい大自然のあふれるモンタナ。過不足のない淡々としたタッチと心に沁みる美しい映像で綴られる,ある兄弟の物語。
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釣り好きの牧師を父として育った二人の兄弟,ノーマンとポール。兄のノーマンは堅実な優等生。弟のポールは無鉄砲で天真爛漫。幼い時からいつもいっしょに釣りをして過ごした仲の良い二人は,正反対のタイプ。成長するに従い進む道は異なってゆき,お互いに相手に対して,自分にはない魅力を内心うらやましく思う気持ちを秘めている。
Cap103_3
兄のノーマンは,賭け事に明け暮れている弟の自由奔放な生き方を心配しながらも,彼の天才的な釣りの技術に一目置き,同時に生真面目で面白みのない自分に比べて,誰からも愛される弟の魅力をうらやましく感じる気持ちもあったと思う。

そして,ブラピの演じたポールは,順調にエリートコースを進み美しい女性と婚約する兄に対して,やはり複雑な劣等感めいた思いを秘めている・・・・。

愛情深い牧師の家庭で育ったこの二人は,それゆえに兄弟間の愛情も深かったけれど,兄弟ゆえに生じる競争心や嫉妬心・・・・もうこれは本能的なもので,どの兄弟姉妹のあいだでも見られる普遍的な業(ごう)のようなものだろう。
Cap142_2
二人の両親がまた素晴らしくて。

質実に,手塩にかけて二人の息子を育て,折に触れて適切な教えを与え,しつけてきた,今の時代にはとてもお目にかかれないような,理想的な両親の姿がそこにはある。よい意味での父権が健在で,母親はそれをしっかりサポートしている家庭という感じ。
Cap108
もちろん両親は,ノーマンもポールも,どちらもわけへだてなく愛していたろう。しかし,あえて言うならば,両親が誇りとしていたのは優等生のノーマンの方であり,愛しく思っていたのはやんちゃなポールの方だったのではないだろうか。どちらも比べようのないくらい大切な息子。しかし,正反対の二人だったからこそ,それぞれの個性に応じて,両親の愛の深さは同じでも,愛し方は違っていたと思う。
Cap162
そして,二人の息子は,それを敏感に感じ取っていたに違いない。

シカゴで大学教授の職を得たノーマンの報告を喜ぶ両親を前にした,ポールの寂しそうな表情。・・・・・このときの演技を観て,抱きしめたくなるほどブラピが愛おしくなった。ベンジャミン・バトンでも存分に見せてくれた,寂しげな表情・・・・この頃からもう観客の心をわしづかみにしていたんだ~。

両親は自慢の息子のノーマンとは別の愛し方で,ポールを愛していたと思うけど。ポールがあんな非業の死を遂げた後の両親の失意ぶり・・・・。「あの子は釣りの名人だっただけではなく,美しい子だった・・・」とつぶやく父親のセリフが忘れられない。(「美しい子」には深く同意)
Cap160
しかし,この作品のブラピは,驚くほどレッドフォードの若いころに似ている。彼の息子だと言っても通用しそうなくらいに。・・・・・この作品では特に,きらめく川の流れを背後にしたブラピの爽やかな笑顔が,くらくらするくらい魅力的なのだ。

面白いことに,40代になった現在のブラピと40代の頃のレッドフォードは,ここまで似てはいない気がする。きっと互いに,20代の頃が一番似ていたのだろう。
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スローモーションで撮られたフライ・フィッシングのシーン。
優雅な弧を描いて水面に放たれる釣り糸は,
まるでしなやかな鞭のよう。
川面にきらめく漣(さざなみ)も,
澄んだせせらぎの音も・・・・

そして,理解ができなくても,愛さずにはいられない家族の絆の確かさも・・・・

何もかもがたまらなく美しく心に沁みる作品。
レッドフォード監督の,繊細で優しい感性がうかがえる作品だ。
Cap109
※余談・・・・この作品で出てくるボイラー・メーカーというお酒の飲み方が面白い。酒場でノーマンが注文するシーンがあるが,ビールのジョッキにウィスキーを満たしたショット・グラスを放り込んで沈め,一緒に飲む飲み方。つまりウィスキーのビール割りなのだが,ショットグラスを沈めるやり方がワイルド。この飲み方,イーグル・アイでもヒロインのレイチェルがバーで女友達と乾杯するときにやっていた。

ためしにやってみたら,美味しい。当然酔いは早くなるが。誰に見せるわけでもないのにグラスをボトン!と放り込んでも虚しいだけなので,私の場合はタンブラーにウィスキーを注いでビールを注ぎ足して作っているけど。ウィスキーはこの場合,バーボンがいい。ちなみにこの飲み方,韓国では爆弾酒というそうな。

2009年3月 3日 (火)

イントゥ・ザ・ワイルド

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そして,僕は歩いて行く
まだ見ぬ自分と出会うために


あらすじ: 大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は車や財布を捨て、自由を手に入れるための放浪の旅に出る。労働とヒッチハイクを繰り返し、アメリカからアラスカへと北上。アラスカ山脈の人気のない荒野へと分け入り、捨てられたバスの車体を拠点にそこでの生活をはじめる。(シネマトゥデイ)

・・・・最初,なかなか主人公のクリスに共感できなかった。
人生も折り返し地点にさしかかるほど年を重ねてくると,さまざまなしがらみに幾重にもがんじがらめに縛られているものだ。家族や社会への責任も,すっかり自分の一部になってしまっている。いまさら無責任に捨て去るわけにいかない。
Cap047
だから家族も資産も自分の名前さえ捨てて,荒野へと放浪の旅に出るクリスの生き方や価値観からは,若さゆえの傲慢さや甘え,無謀さしか感じることができなかった。

しかし,とは言っても,軽快なBGMに合わせて,息を呑むほどの大自然の中を,苛酷かつ気ままな旅をしてゆくクリス・・・・つまりエミール・ハーシュの姿のなんと自然体で魅力的なこと。そこには,共感できないにも関わらず,どうしても目を離すことができないような煌めきがある。

そして,クリスの生い立ちや家庭,特に両親の事情などが明らかになってくるに従って,彼の繊細さや純粋さ,両親に対してためこんだ怒りがなんとなく理解できた。彼にとっては,なんの価値も見いだせなかった偽りの生き方を捨てて,出発した自分探しの旅。美しいけれど人間を拒絶する厳しい大自然の中でのサバイバルは,まさに命懸け。私たち観客は否応なしに彼の旅を追体験し,彼の心に寄り添わざるを得ない。
Cap054
過去のしがらみも,未来の計画もない生き方。
旅の途中で出会う人々との関係は,それぞれあたたかいものではあるけれど,一期一会であり,その絆は永続的ではない。確かになんという究極の自由!責任は自分に対してだけとればよい。しかし,その代償として,文明の見返りも生活の保障も何もない孤独に甘んじなければいけない

・・・・大自然の中で太古の人間のように,ただ「生きる」ためにだけ生きる。そんな生き方は,もちろん私の好むことろではないけれど,それでもそれを追求したクリスの純粋さには,惹き付けられるものがあり,うらやましいと思う自分も確かに存在する。
Cap069
結局,彼の最期は悲惨なものとなるのだが,自業自得と切って捨てる思いにはとてもなれず,彼なりに幸せで豊かな人生だったのだと,素直にそう思えた。

うーん~。なんて深くって哲学的な作品。観る人によってさまざまな感じ方があるし,自分の価値観を問い直したくなる物語だ。確かにこれは,酸いも甘いも噛み分けたショーン・ペンしか撮れない傑作かも。

たとえどんなに煩雑なしがらみであっても,わたしは社会と繋がっていたいし,人との絆や物への愛着を忘れたくはない。そしてそこから生じるプラス面もマイナス面も,まとめて享受したい,という思いを新たにした。だって,やっぱりたったひとりで大自然と生きる必要性をわたしは感じないから。
Cap052_2
・・・・・クリスのような生き方ができるのであれば,
それはそれで素敵だと思うけれど。

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