男たちの挽歌
血と銃弾で描く男の美学
香港ノワールはここから始まった・・・・
レッドクリフがあまりにも面白かったので,ジョン・ウー監督の原点とも言われる,この英雄本色(男たちの挽歌)を鑑賞〜〜。実はDVD(デジタル・リマスター版)を持ってたのだ。未見のまま,しまいこんでたけど。きっと,レスリー・チャン目当てで買っておいたのだろう。
1986年製作のこの映画,それまでカンフー・アクション中心だった香港映画に新しい流れを起こしたそうな。ガン・アクションは・・・さすがジョン・ウーらしいスローモーションの多用や,派手な吹っ飛びシーンなどが満載で,今ならそう珍しくはないものの,当時としては確かにどんなにか斬新,かつ衝撃的でクールに見えただろうな〜と思う。
二丁拳銃水平撃ち
うーん,とにかく,かっこいいです。
はっきり言って,この時代なんで髪形もファッションもダサく見えるけど,そしてレスリー以外はイケメンも出てこないけど(チョウ・ユンファもイケメンとは少し違うと思う)それでも,黒社会に生きる男たちの生きざまや,台詞,しぐさの一つ一つにいちいち痺れる。
そして,アクションだけでなく,きっちりと描かれた人間ドラマは,少し演歌っぽいのだが,泣かせる。極道の兄ホー(ティ・ロン)と警官の弟キット(レスリー)の間の確執と愛情,そしてホーとマーク(チョウ・ユンファ)の間の,胸が痛くなるほどの友情。
チョウ・ユンファの表情の変化は, ある時は甘く,ある時は凄みを帯びて,ほんとに自由自在だ。若い時から「ただものではない底力」をずっしりと感じさせてくれる。黒のロングコート姿でマッチ棒をくわえた姿も,ボロッちい服を着て満身創痍の姿も,惚れぼれするくらい決まっている。
そして,極道の兄をどうしても許すことができずに葛藤する弟を演じた,レスリー。私は,彼の倦怠感ただよう色気が好きなのだが,この作品のレスリーは,そんな雰囲気は微塵も出さず,前半はまるで高校生のように無邪気で明るく,後半からは,和解を求める兄をひたすらはねつける,若さゆえに感情が暴走する一徹な青年を演じている。
彼が兄に激しく食ってかかるシーンは,兄ホーの深い愛情を知っているこちらとしては,ホーが気の毒でたまらなくなるが,それでもレスリーの表情の美しさにはうっとりと見とれてしまう。・・・・・こんなレスリーもまた素敵だ。
しかし,この頃からウー監督作品に出ていたレスリー。・・・・生きていたら,絶対レッドクリフにも,もしかして出演していたんじゃないか?ブエノスアイレスで共演したトニー・レオンやチャン・チェンや,さらば、わが愛/覇王別姫で共演したチャン・フォンイーと一緒に。そう思うとちょっと哀しくなった。
ラスト近くの壮絶な銃撃戦,再び取り戻す兄弟の絆,そしてマークの運命。このシーンは,緊迫感と感動が同時に味わえる名場面。とりわけ,キットが兄に黙って拳銃を渡す場面が大好きだ。
かなり古い作品にもかかわらず,今観ても,色褪せない魅力が詰まった作品。それにしてもウー監督,やはり闘う漢(おとこ)をカッコよく撮るよなぁ〜♪
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» 春の「香港映画大好き祭り」!! [☆お気楽♪電影生活☆]
香港映画大好き!なブログ★にわか香港映画ファンの映画ノート★さんが、
またまた楽しいお祭りを開催中です!
今回のお祭りは“春のお祭り!「香港映画大好き祭り」”♪ [続きを読む]
ななさん♪
TB&コメ、ありがとうございました。
私はこれ、89年にTVでの初放送時に観ました。
出演者の誰を知っているわけでもなく、
日本公開時に予告編をTVで観たのを覚えていたので
なんとなく観たのですが・・・
スローモーションの銃撃戦や
ユンファの二挺拳銃にど肝を抜かれ
なんだ!これは?状態に陥り・・・
現在に至っております(笑)。
レスリーが生きていたら・・・そうですね
『レッドクリフ』に出ていたかも。
ユンファは初め劉備役で出演の予定だったらしいですが・・・
わらじを編む、ユンファも好かったかも(笑)
投稿: ひらで~ | 2008年12月 2日 (火) 09時27分
ひらで~さん,こんばんは
>89年にTVでの初放送時・・・
わたしはそのころ,中国映画といえばジェッキー・チェンくらいしか知らなくて
チョウ・ユンファも,レスリーも知りませんでしたわ。
(ユンファを初めて観たのは「アンナと王様」ですもん)
>スローモーションの銃撃戦やユンファの二挺拳銃にど肝を抜かれ・・・
ハリウッドでもお目にかかったことのないアクションだったらしいですね!
レッドクリフだけでなく,レスリーが生きていたら,
あれにもこれにも出てたかも~って思う作品多いです・・・(´;ω;`)ウウ・・・
そうそう,レッドクリフ,ユンファも出演予定だったんですよね~
わらじを編むユンファ,どんな地味な役でもオーラが凄い彼ですから
ぜひ観てみたかったなぁ・・・。
投稿: なな | 2008年12月 2日 (火) 21時57分
こんにちは!
ジョン・ウーを語るための代表的な映画ですよね。
実は見てないのだ。笑
チョウ・ユンファが好みでなかったというのもあるけど、男臭いものが当時はうけつけなかったのだと思う。
二丁拳銃やっぱあるんだ。ハトは飛んでるの?
レスリー・チャン、生きてたらレッドクリフにでてたかもしれないね。。
投稿: アイマック | 2008年12月 6日 (土) 12時13分
アイマックさん,こんにちは!
>実は見てないのだ。笑
きゃはは,でも未見の方,多いと思うよ
なんせ,古いからね。
>チョウ・ユンファが好みでなかったというのもあるけど
うんうん,私も彼のルックスはそんなに好みじゃないのよ。
でも,演技もアクションもやはり凄いなぁ,と
今回しみじみ思ったわ。
ウー監督作品,そんなに数観てなくて
みなさんがおっしゃるお約束の「白ハト」って
どの作品あたりから常連になるのか知らないのだけど
これにはまだ鳩は出てこなかったわ~。
レスリーは健在なら,絶対レッドクリフに出てたと思う。
孔明か・・・周瑜か?そこらへんが似合うよね。
トニー・レオンとまたペアで・・・ね。
投稿: なな | 2008年12月 6日 (土) 17時16分