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2008年12月21日 (日)

マリア

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この季節にもっともふさわしい作品ということで・・・・。
昨年のクリスマスに劇場で観る予定だったけど,果たせなかった。DVDで観て,今頃アップ。キリスト降誕の物語の映画化はたくさんあるけど,(マイナーなものも含めて)これは,マリアというより,ヨセフに焦点を当てた物語だったようだ。

私はクリスチャンなので,聖書のこの箇所(キリスト降誕)は小さい頃から暗記するくらい触れてきたけど,マリアの夫であるヨセフについて,聖書にはその人物像は詳しく記述されていないのである。彼については,イスラエル12部族ではユダ族であり,ダビデ王の子孫であり,そして職業が大工ということしか書かれていない。彼がキリストの父となったいきさつについて書かれてある聖書の箇所を引用してみると・・・・。
Cjd25 イエス・キリストの誕生は次のようであった。その母マリヤはヨセフの妻ときまっていたが,ふたりがいっしょにならないうちに,聖霊によって身重になったことがわかった。夫のヨセフは正しい人であって,彼女をさらし者にしたくはなかったので,内密に去らせようと決めた。彼がこのことを思い巡らしていたとき,主の使いが夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。その胎に宿っているものは聖霊によるのです。マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ,ご自分の民をその罪から救ってくださる方です。」このすべての出来事は,主が預言者を通して言われたことが成就するためであった。・・・(中略)・・・ヨセフは眠りからさめ,主の使いに命じられたとおりにしてその妻を迎え入れ,そして,子どもが生まれるまで彼女を知る(=肉体の関係を持つ)ことがなく,その子どもの名をイエスとつけた。(マタイによる福音書1章18~25)
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キリスト誕生の時代のユダヤ。
ローマ圧政下にあって,旧約聖書の預言を信じ,ひたすら救世主の訪れを待ち望んでいたイスラエルの民。・・・・そんな中で,イエスを身ごもった少女マリア。
聖書や聖画のイメージとちょっと違って,演じるケイシャ・キャッスル=ヒューズは,一見,ごく普通の少女に見える。

キリストの母に選ばれる,ということは,実は大変な試練をも受ける
,ということだ。天使は「おめでとう,恵まれた方」と祝福の言葉を投げかけるけれど,パッションの映画でも目にしたように,後に彼女は,最愛の息子の十字架の死に立ち会わなければならないのだから。強靭な信仰がなければ,なかなかどうして,「キリストの母」などという役は務まるものではない。

天の使いに答えるマリアのセリフ。「私は主のはしため(=侍女)です。お言葉どおりのこの身になりますように」という返答は,信仰なしには到底言えない凄いセリフだといつも思う。いくら救世主を待ち望んでいるユダヤの民だからとて,一少女が「神の子を身ごもった」と言っても,信じてもらえるとは思えない。

戒律の厳しいユダヤ社会では,未婚の身で妊娠することは「石打ちの刑」に相当する大罪だ。それに許嫁のヨセフは何と思うだろう??それに何より天の使いの言葉は本当なのか?・・・・さまざまな疑いや恐怖や心配にもまさって「神には不可能なことはない」という確信が,マリアにはあったのだろう。
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そして,神のお告げと愛するマリアを信じ,世間の思惑や常識を超えて,キリストの誕生を全身全霊でサポートしたヨセフ。彼の信仰の深さと,妻への愛の強さは感動的だ。それまでの降誕劇の映画化では,添え物的な役割だったヨセフの献身が,今作ではクローズアップされ,「そうだよな~,ヨセフってほんとうにこんな人だったかも」と素直に感動できた。

おそらく男性優位だったに違いないこの時代(結婚相手も親が決めるし)に,こんなに優しく妻に尽くす夫はきっと珍しかったような気もするけど,臨月になってのベツレヘムへの長旅とか,夫婦ふたりだけの孤独で不便な出産とか,あらゆる困難の中で発揮されるヨセフのゆるぎない優しさがあってこそ,マリアはイエスを無事に生むことができたのだ。マリアはイエスの母として神に選ばれた女性だったが,ヨセフもまた,イエスの父として神に選ばれた男性だったのだ,とあらためて思う。
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こうして聖なる夜に,救い主は黄金の宮殿ではなく,粗末な家畜小屋(洞窟)でひっそりと誕生した。見守るのはうら若い夫婦と,物言わぬ家畜たち。訪れたのは異邦人の博士たちと,下層階級とされていた羊飼いたち。それはいかにも静かで,清らかで,畏れにも似たおごそかな空気に満たされた夜だったに違いない。

私たち信者は,毎年クリスマスが近づく度に,2000年前のあの夜に実際に起こった出来事にしばし思いを馳せ,救い主の誕生を感謝し,祈りと賛美を捧げるけれど,この作品を観てからは,それまでついつい忘れがちだった「ヨセフの愛と献身」もまた,心に留めようと思った。

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コメント

んばんは!
季節的にぴったりな映画だね。笑
クリスチャンではないけれど、この話は共感できたし、クリスマスの意味が分かった気がした。

>つい忘れがちだった「ヨセフの愛」にも感謝をしたいと思った。

ヨセフの愛は献身的だったね。
おごそかな出産のシーンは感動で涙でました。

アイマックさん,こんばんは
早速のコメントありがとう
お伺いしようと思ってたのに
先を越されてしまいましたね~
この作品ね~,観たのがDVDで夏だったから
アップするにはさすがに時期的にね~
それで今まで放置していました。
ヨセフにこんなにスポットが当たった降誕劇は新鮮でした。
教会の劇でもヨセフってそんなに台詞もないし
ただ立ってるだけとかね~,浮かばれない存在だったのに
「実は偉かったのね,」と感動しましたよ~。

こちらにもお邪魔を...
ななさんクリスチャンなんですか?ではなおさら感動されたかと思います。
私は無宗教ですが、この作品や「パッション」「ベン・ハー」等、イエス・キリストを描いた作品を観て感動を覚えますね。
昨年の12月にシアターにかかっていた映画でしたが、今とてもタイムリーな時期のレビューでまた観たくなってきました。
Happy Christmas!

こちらにも。すみません、アフターウェディングの名無しは私です。
これ↑見よう~~見ようと思っていたの。
うちは子どもの学校がキリスト教系で、先日
ミサに参加してきましたよ。降誕劇もバッチリ
聖書に親しむ機会ができたからこそ、こういう映画も鑑賞したいなって。パッションも痛々しかったけれど結構好きでしたし。
確かにヨセフは、あまり注目していなかったりしますものね。
ななさんも素敵なクリスマスをお迎えくださいね
~~

ななさん、こんばんは♪
DVDが出たのに鑑賞されていないのかなぁ~と思っていました。
いつものように美しい文章を連ねていらっしゃいますが、イマイチだったんですね?
私はいい映画だなぁ~って思いました。
何だか心洗われるような気持ちになったの。
静かな物語でしたが、優しさがあったなぁ~って記憶しています。
ヨセフに焦点を当てたのも良かった♪心優しい人でしたね~ジーンとしました

突然で申しわけありません。現在2008年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票は1/15(木)締切です。ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.movieawards.jp/です。

margotさん こちらにもありがとうございます。
そうなんですよ,叔父が牧師なもんで
うちは家族全員クリスチャンです。
>ではなおさら感動されたかと思います。
う~ん,それが感動とはまた違うのですが・・・(汗)
宗教的にはそんなに感動しなかったのですよ~
ある意味,聞き慣れた物語でもありますから。
でも人間ドラマ的にとらえて,ヨセフの人物像とかに新鮮な感動を覚えました。
>私は無宗教ですが、この作品や「パッション」「ベン・ハー」等、イエス・キリストを描いた作品を観て感動を覚えますね。
信者でないかたが,キリストの生涯を映画などで目にして
感動してくださるのは,とてもうれしいことです。

みみこさん こちらにもありがとう。
>うちは子どもの学校がキリスト教系で、先日
ミサに参加してきましたよ。
おお~,それは素晴らしい!(←何が?・・・意味不明)
クリスマスは飲み会もいいけど,
やっぱり教会とかの雰囲気を少し味わうのも
感慨深いものがあると思います。
>パッションも痛々しかったけれど結構好きでしたし。
おおおお,あれは痛いです。でも私も信仰うんぬんを抜きにしても
けっこうあれは好きです。というか,痛いの平気です。
クリスマスは1年で一番大切な季節ではありますね。
今日はちょうどイブで,教会でキャンドルサービスがありました。
うちは小さい子供もいないので,今夜のサンタの訪問はありませんけど。(*^-^)

由香さん こんばんは
>DVDが出たのに鑑賞されていないのかなぁ~と思っていました。
いや,すぐに観たのですが,なんせ夏に観たので
盛り上がりに欠けましたのよ。
それに,期待しすぎたってこともあると思いますが
「普通の」降誕物語でした。でもその「普通」ぽさが
ヒューマンドラマのようで,新鮮でした。
降誕の夜の青い光を中心とした静かな映像は
当時の様子をよく再現していたと思います。
実際にあんな感じだったろうな~と思うと,おごそかな気持ちになりましたね~。
ヨセフのようなひと(性格がです)理想ですよね!

日本インターネット映画大賞さま
いつもお誘いありがとうございます。
できるだけ参加だせていただくつもりでおりますのでそのときはよろしくお願いいたします

ななさん~こんにちは!
これ、数日前に、みたばっかりです☆ そして見た後、ななさんちのこのレビューも拝見させていただいていて、おおおっ!!ななさんってば、クリスチャンだったのね?しかもご親戚に牧師様がいらっしゃるとは!!
で、ななさん、さすがわ、お詳しい!!
上のいろいろな方とのコメントのやりとりを拝見していて、なるほど~ そうなのか~ ふむふむ・・と、妙にうなずいてしまうのでした^^

私は幼稚園がキリスト教系で、ミカエル幼稚園という名前だったのですが、もう記憶がうす~くなってしまっていて、礼拝の時にカードをもらって、それが綺麗だったので集めていたのを覚えています。

あと、ホテルとか泊まると、たいがいベットの横の引き出しに、聖書が必ず入っているんですよね♪ それってすごいことだわ~。

ありゃ・・・この映画について書いてないわ・・アワワ(^^ゞ 
この映画見て思ったのは、ヨセフ良い人だ~こんな旦那は最高だな、と思ったのでした。
また後日感想書いたら、TBさせてください!

latifaさん,こんばんはー
そうなんですよ,うちはクリスチャンホームです。
私は普段はイケメン好きで酒豪で,かなり俗化されていますが,
それでもいざというときは,基本はクリスチャンなんですよね。
で,この作品ですが,ヨセフがよかった~に尽きる印象を受けました。
マリアはイメージが違ったなぁ・・・あまり信仰があるように見えなかった。
それは女優さんの雰囲気もあるのだと思いますが
このどちらかというと人間くさいマリア物語の中で
キリストを生むという困難に耐えることができたのは,
ヨセフはもちろんマリアへの愛の力が大きかったからですが
マリアの方は一番に信仰の力が大きいと思うのですよ。
そこらへんの女優さんの表現の仕方が(表情とか)
きっと信者から見たら物足りなかったと思います。
・・うまく言えないけど,彼女の表情からは,「神への畏れ」をあまり感じませんでした。
だからなのか,「パッション」に比べるとこの「マリア」は
信者の間ではそれほど評判になりませんでした。
・・・うちの教会ではね。
>ヨセフ良い人だ~こんな旦那は最高だな・・・
そうそう,これはみなさん口をそろえておっしゃってますね~
日陰の存在のヨセフさんにスポットが当たったのは収穫だと思いました!


栄光在主
ひろくといいます
ななさん、はじめまして!

明日の中高科メッセージ用の資料を探している
なかで、ななさんのHPに辿りつきました。
ヨセフの優しさと信仰。。。イエス様の父として選ばれた人なんだなあと、私も改めて思いました。
マリア、是非今度見てみたいと思います!

また来させてもらいますねー
在主


ひろくさん こんばんは
そしてはじめまして。

「在主」という挨拶はやはり落ち着きますね~
牧師さんか,あるいはCSの先生をなさっているのでしょうか。
アドベントに入ったので
メッセージも降誕物語になりますね。
この作品は「信仰的」というよりは
「ヒューマンドラマ」っぽい印象を受けますが
ヨセフの人となりにスポットが当てられていたのは
とても新鮮に感じました。
またぜひご覧になってください。
メッセージが祝されますよう
お祈りいたします。  在主

こんばんはー、ななさん!
先日「マリア」のブログをCS(中高科)メッセージの参考にさせて頂いた、ひろくです。
はい、CS中高科の教師をさせて貰っていますが、ななさんのブログを参考にさせて頂き、無事にメッセージをすることが出来ました、感謝です!(お祈りも感謝です!)
とはいえその後も忙しくて「マリア」をまだ見れていないので。。。この年末にでも見たいなあと思っています。
(うちの妻は先日宣教師の先生宅で見たということで、とても良かったと言ってました(^^))
ななさんも是非、素晴らしいクリスマスをお過ごし下さいねー
シネマ日記も、また楽しみにして読ませてもらいますね!
在主

ひろくさん こんばんは

再びのご訪問を感謝します。
そうですか,やっぱりCSの教師をされているのですね。
高等部担当というのは,多感な時期の青年たちの導きでもあり
いろいろとやりがいもあるかわりに
難しいところもあると思われます。
私の教会での奉仕は主に奏楽と生け花ですが
お互いに頑張っていきましょう。

明日はクリスマスイブでキャンドルサービスなども
全国の教会で行われると思います。
いずこでも主の祝福が豊かに注がれますように。
そして一人でも多くの方が
本当のクリスマスの意義を知ることができますように。
ひろくさんも奥様も,素晴らしいクリスマスをお過ごしください。
                 在主

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