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    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。

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2008年12月の記事

2008年12月29日 (月)

ワールド・オブ・ライズ

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いやー,まいった。いかにも密度の濃い,見事な作品だ。
リドリー・スコットらしい,ずっしりとした重い手ごたえを感じる作品。対テロという使い古されたテーマだけど,実際に現地で繰り広げられる緊迫感あふれる情報戦が息詰まるほどにスリリング。

フィクションだけど絵空事ではない」とプロローグで語られているように,実際に今現在もこういうことが行われているのか。・・・・戦慄
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主要登場人物は3人の男。
現地で実際に命を張って潜入するエージェント,フェリス。安全な本国から携帯一本で指令を飛ばす,彼の上司ホフマン。そして,現地で絶大な力を持つヨルダン情報局の「王」ハニ・サラーム。テロ防止という目的は同じでも,三人の考え方や価値観は全く違う。

アラブの言葉を自在にあやつり,現地の人々の暮らしにも溶け込んでいるフェリスは,実際に身の危険を犯しながら最前線で行動する男だ。信念だけでなく,人を愛する優しい心も持ち合わせている熱い男を,髪を黒く染め,顎髭をたくわえたレオが,幾度も満身創痍になりながら最高にカッコよく演じている。

一方,ラッセル・クロウが演じるホフマンは,アラブ世界を蔑視する考えといい,自らの手を汚さずに命令だけするところといい,まるでアメリカの傲慢を象徴するようなキャラだ。
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彼は自分は安全な場所にいながら,子供の世話やスーパーでの買い物の最中に,携帯から冷酷な指令を事もなげに飛ばす。目的のために捨て駒となる,現地アラブ人の命などなんとも思わない。メタボ気味の体型も含めて,とってもイヤな感じの狸オヤジなのだが,「ラッセルだし,そのうち何かいいところを見せてくれるんだろうな~?」と期待してたにもかかわらず,・・・・ラストまでイヤな狸オヤジのままだった。

「俺だけを信用しろ」と大きなことを言ったわりには,フェリス救出に関しては,みごと敵に「煙に巻かれて」しまうし。CIAの誇る上空からのハイテク監視システムも,あの時は何の役にも立たなかった。・・・・しかしこういう嫌味なキャラをさらりと演じてしまうラッセルって,やっぱり凄い。(しかしファンとしては,体型はもとに戻してほしい。)
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そして,最後のひとり,ヨルダン情報局のハニ。
彼が取る情報収集の方法は,CIAとは正反対の,アラブ流の仁義に訴えるやり方。目的のためにはやはり冷徹な面もあり,「嘘は嫌いだ」とフェリスを牽制しておきながら,自分は一番大きな嘘を仕掛けてくる。しかし,鑑賞後に思い返してみれば,このハニが一番カッコよく思えた。

原題の「BODY OF LIES 」は,「嘘の塊」くらいの意味だという。キャッチコピーの「どちらの嘘が世界を救うか」というのは,ちょっと違うような気もする。

「世界を救う嘘」という言葉は,カタルシスを予感させるが,この作品からそんなものは感じられなかった。むしろ,「終わりのないイタチごっこ」を見せられ,「手段を選ばないところはCIAもテロリストと同じ」という,虚しい疲労感が残る。確かに狙ったテログループはラストに逮捕されたけれど,フェリスが受けたダメージは,以後の任務を放棄させるほど大きかった。

テロ対策は,今後も解決を見ない問題だと思うし,実際に,こんな壮絶な情報戦が繰り広げられているのだろう。ラッセルが体現して見せた「傲慢なアメリカ」が心に残る。

2008年12月27日 (土)

シークレット・サンシャイン

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DVDで鑑賞。今年のシメにこれまた凄い作品を観てしまった。心にずしんと響く作品だ。人間であることが辛くなってしまうような。そんな厳しい現実を,容赦なくつきつけてくる作品。それでも不思議と,鑑賞後に残る余韻は優しくあたたかい。

久々に素晴らしい手ごたえの韓国映画に逢えた!監督さんは「ペパーミントキャンディ」や「オアシス」のイ・チャンドンさん。なるほど,納得だ。

題名の「シークレット・サンシャイン」は,ヒロインが越してきた町の名前「密陽」(ミリャン)のこと。そう,秘密の陽射し。なんのこっちゃ?と思うけど,それが何を指しているのか,鑑賞後にわかって,なんともいえない感動がわいてきた。

ヒロイン,シネの運命は苛酷の一言につきる。
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夫に先立たれ,夫の故郷ミリョンで心機一転の生活をはじめたのに,愛する息子は無残にも誘拐犯人の手で命を奪われてしまう。そんな彼女が立ち直るためにすがったキリスト教の信仰。一時は心に平安を得たようにみえたシネだけど,犯人に赦しを告げに刑務所に面会に行ったとき,犯人の「私も入信して神の赦しを得ました」という言葉に衝撃を受ける。

自分が犯人を赦す前に,
神はすでに犯人を赦していた・・・・

そのことを,どうしても受け入れられなかったシネ。

ほんとうに犯人を心から赦していたなら,彼の入信を共に喜べるはず。彼女はやっぱり感情の上では犯人を赦していなかったのだろう。しかし,それが当たり前であると思う。「汝の敵を愛しなさい」というみことば。これは人間には,実は実行不可能なことだと思うし,シネの場合,そんなに無理して早く赦さなくてもいいのではないか?とさえ思った。人間の心は,そう簡単にわりきれるものではないと思うから。
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赦すことで,より一層の心の平安を得ることを期待したシネは,反対に深く傷つき,信仰は一転して神に対する怒りと失望に変わる。それから彼女は,ことあるごとに不敵に天を仰ぎ,神に対して挑発的な言葉を投げつける。神に喧嘩を売ってる,そんな感じだ。万引き,野外伝道集会での妨害,そして極めつけは教会の長老への性的誘惑。その最中に天を仰いで「見てる?」と神に呼びかけるシネ。

キリスト教徒の立場から言わせてもらうと,神は間違っていない。赦しは等しく誰にでも与えられるものであり,どんな極悪人にも,自分を傷つけた相手にも,神の愛は平等に注がれるからだ。

しかし,そのことがネックになって,シネのように神に失望し,信仰が挫折する信者は多々いるし,そこがキリスト教の難しいところで,いわば「弱点」だとも思う。(教義上の弱点という意味ではなく,信仰する側から見て受け入れがたい,という意味だ。)神の愛や赦しが,憎い敵にも惜しみなく注がれるのを,誰が手放しで喜ぶことなどできようか。 
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人から受ける傷より,
神から受ける傷の方が深い場合もある。


信仰は高揚するときもあれば,停滞するときもあり,神の沈黙や不当に思える出来事など,ささいなきっかけで,神への憎悪にまで変貌することもある。信仰をきっぱりと捨てることができれば,まだ楽なのだろうけれど,一度神の存在を信じてしまったものは,そう簡単に神のことを忘れるわけにはいかない。この物語のシネもまた,深い絶望の中でも,やはり神の存在は否定することができず,神に対して,恨み事や挑戦的な台詞を投げかけ続けずにはいられない。

監督がキリスト教について否定的な考えを持っているのかどうか,そこらあたりはよくわからないのだけど,少なくともキリスト教について,何らかの思い入れの強い人なのでは?と思った。教会の人々の表情,雰囲気,入信したばかりの頃のシネの輝くような表情,路傍での賛美や伝道集会の様子などはとってもリアルで,詳しい。

もしかしたら監督はシネのように,信仰上の挫折を体験したことがあるのだろうか?信仰と挫折,神への怒りに関して,信仰体験が皆無の人には,ここまで深い洞察はできないような気がする。キリスト教批判ではなく,神に絶望した人間の苦悩を描きたかったのかな,と思った。
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そして,そんなシネの傍らで,いつも彼女を見守り,陰に日向に力になってきたジョンチャン(ソン・ガンホ)。彼のシネへの思いは一方的であり,純真であり,控え目ながらも,決して絶えることはない。シネに「俗物」と思われても,時には迷惑がられたり,その存在を忘れられても,彼女を支えることをやめない。

不器用でお人よしの,愛すべき地味キャラを演じたソン・ガンホ。やはり最高にうまい。この暗澹とした物語の中で,私は彼の存在にどれだけ癒されたことだろう。

ラストシーン・・・・裏庭で髪を切るシネのために鏡を持つジョンチャン。静かでおだやかな光景。カメラは横にスライドして,庭の片隅をひっそりと照らす陽だまりを映し出す。このシーンを見て「ああ,そうか・・・」と思った。シークレット・サンシャイン。秘密の陽射しとは,神のように天から燦々と降り注ぐ陽光ではなく,傍らで控えめに存在する愛,つまりジョンチャンのことなのかと。

シネはきっともうすぐ,そのぬくもりに気づくだろう。
まぶしい陽射しのもとでは,見逃していたささやかな光に。

息子を失った悲しみや,神への怒りや絶望からも,立ち直れる日が来るかもしれない。・・・・いや,立ち直ってほしい,ぜひとも。

この作品でカンヌで主演女優賞を獲得したチョン・ドヨン。韓国きっての素晴らしい演技派女優だ。彼女とソン・ガンホ,そしてイ・チャンドン監督。これだけ揃っていて傑作でないはずがない。ランキング記事を書く前に観ていたら,間違いなく今年のマイ・ベストテンに入れていた,と思う。

2008年12月25日 (木)

2008年度マイベスト作品

Cja32 今年もあとわずかになってきましたね~。
2008年になって公開された作品,劇場鑑賞とDVDになっての鑑賞と,数えてみると50本くらいでした。その中で独断と偏見で,マイベストを選んでみました~。

作品賞(10位まで勝手にランキングnote
crown1位 ダークナイト
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これはもう文句なし!

crown2位スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
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美しさ,哀しさ,グロさすべて満点!

crown3位 レッドクリフPartⅠ
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武将たちのカッコよさに痺れた~!

crown4位 ラスト、コーション 色|戒
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激しく哀しい愛に言葉もなく・・・・。

crown5位 つぐない
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ひきさかれた恋人たちに涙・・・

「ラスト、コーション」と「つぐない」は,
悲恋大賞もあげちゃいます!

crown6位 君のためなら千回でも 
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ラストの爽やかさに癒される。

crown7位 アフター・ウェディング
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家族の絆,死・・・心の琴線に触れる。

crown8位 ウォンテッド
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斬新なアクションに惚れた!

crown9位 幻影師アイゼンハイム
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とにかくノートンが素敵!

crown10位 ワールド・オブ・ライズ
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重い・痛い・深い!でも傑作です。

そのほかいろいろ賞として・・・
ribbon文芸大賞   ブーリン家の姉妹     
ribbonホラー大賞  ミスト
ribbon邦画作品賞   おくりびと
ribbon金かかってるで賞   王妃の紋章
ribbonシブいで賞   イースタン・プロミス
ribbon監督賞   ある愛の風景アフター・ウェディング
         スザンネ・ビア

shine主演男優賞shine
もちろん!ダークナイトのヒース・レジャー!
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・・・・いとしのジョーカー様

・・・と,あと一人,今年ブレイクしっぱなしの,
ジェームス・マカヴォイ
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shine主演女優賞shine
ケイト・ブランシェット
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エリザベス;ゴールデンエイジや,インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国アイム・ノット・ゼア(未見だけど)で,彼女の変幻自在な底力を,十分に見せつけてもらえた年でした。

2009年も,素晴らしい作品にたくさん出会えますように!
・・・・そして,できるだけ劇場へ行けますように~(悲願crying
fuji それでは皆さま,よいお年をお迎えください!

 

2008年12月24日 (水)

地球が静止する日

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地球を滅亡から救う目的でやってきたエイリアンによって,人類が滅ぼされそうになる物語。その無機質な美貌ゆえか,人間を超越した役が似合うキアヌが,宇宙からやってきた使者クラトゥを演じる。これ,50年前の作品のリメイクらしい。

一言で言うと,楽しめたところもあったが,とちゅう何度か眠くなったのも事実。宇宙から飛来した謎の球体。攻撃されて傷ついたエイリアンの外殻(つーか皮?)がはがれて,現れた地球人そっくりのイケメンのクラトゥ(キアヌ)。彼がスーパーパワーを駆使して,軍のもとから逃走するくだりは,なかなか面白かった。
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しかし中盤あたりからラストにかけては「?」な点や,物足りなさがたくさん出てきて・・・・。鑑賞後は「これだけ?」というトホホな感想に。

地球規模の危機なのに,アメリカだけで対処してるし。
でもって,大統領でてこないし(電話の声のみ)
人類が滅ぼされるか否かの,すごく大切な問題なのに,
キアヌとジェニファーと子供だけの,
狭い範囲でしかお話が展開しないし。
きっとたくさん死者も出ただろうに,逃げ惑う人々とか
パニック状態の映像も薄かったし。


テーマはよいのに,描きこみ不足が多すぎたように感じた。
人類の存続が地球のためにならない,という理由は環境破壊のせいだろう。しかし,そこらへんもっと,破壊の実態を証明する映像を入れてくれるとかしないと,キアヌの言葉だけではいかにも薄い。ジェニファーの「人類は変われるわ!」という懇願も,何を根拠に言ってるのか,説得力がなさすぎる。繰り返し言えばいいってもんじゃないだろう。

・・・・・まぁ,後でその証拠にみせたのが,「親子愛」だったわけだが,それまでの背景(ジェニファーの継子への思いとか,継子がジェニファーに反発する気持ちとか)が表面的にしか描かれてないため,あの親子愛も唐突に思えて,そんなに感動できなかった。

親子愛の存在くらい,何十年も地球に潜入していた先輩の中国人エイリアンは,とっくに承知で,上に報告してるはずなんだけどなぁ~~?
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それに,ほんとのこと言うと,あの継子の少年には,途中まで本気でイラついていた私。言うことすること何もかも 可愛げがない。「子役でこんな嫌な子初めて~」と眉をひそめていたら,あの子,ウィル・スミスさんの息子さんだったのか~!それがわかってからは,「パパなら殺してる」とあの子が言うたびに,ウィルの顔が浮かんでしまう。・・・・・にしても,あの子とジェニファーの間に後に生まれる絆も,薄っぺらに見えてしかたなかった。これは役者のせいではなく,脚本の問題だろう。

大事な見せ場の部分を,台詞だけで説明しないでほしかった。台詞に頼ってお話を進めようとするのは,稚拙だと思う。・・・・肝心なことは,台詞がなくてもちゃんと観客に感じ取らせなきゃ。
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あんな子供だましの理由で人類を許しちゃったクラトゥ。帰って上司のエイリアンをうまく説得できるのか?・・・・観客も説得できてないというのに(爆)。

キアヌはよかった。彼には満点あげたい。
あと,ジェニファー・コネリーの美しさにも。

2008年12月21日 (日)

マリア

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この季節にもっともふさわしい作品ということで・・・・。
昨年のクリスマスに劇場で観る予定だったけど,果たせなかった。DVDで観て,今頃アップ。キリスト降誕の物語の映画化はたくさんあるけど,(マイナーなものも含めて)これは,マリアというより,ヨセフに焦点を当てた物語だったようだ。

私はクリスチャンなので,聖書のこの箇所(キリスト降誕)は小さい頃から暗記するくらい触れてきたけど,マリアの夫であるヨセフについて,聖書にはその人物像は詳しく記述されていないのである。彼については,イスラエル12部族ではユダ族であり,ダビデ王の子孫であり,そして職業が大工ということしか書かれていない。彼がキリストの父となったいきさつについて書かれてある聖書の箇所を引用してみると・・・・。
Cjd25 イエス・キリストの誕生は次のようであった。その母マリヤはヨセフの妻ときまっていたが,ふたりがいっしょにならないうちに,聖霊によって身重になったことがわかった。夫のヨセフは正しい人であって,彼女をさらし者にしたくはなかったので,内密に去らせようと決めた。彼がこのことを思い巡らしていたとき,主の使いが夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。その胎に宿っているものは聖霊によるのです。マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ,ご自分の民をその罪から救ってくださる方です。」このすべての出来事は,主が預言者を通して言われたことが成就するためであった。・・・(中略)・・・ヨセフは眠りからさめ,主の使いに命じられたとおりにしてその妻を迎え入れ,そして,子どもが生まれるまで彼女を知る(=肉体の関係を持つ)ことがなく,その子どもの名をイエスとつけた。(マタイによる福音書1章18~25)
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キリスト誕生の時代のユダヤ。
ローマ圧政下にあって,旧約聖書の預言を信じ,ひたすら救世主の訪れを待ち望んでいたイスラエルの民。・・・・そんな中で,イエスを身ごもった少女マリア。
聖書や聖画のイメージとちょっと違って,演じるケイシャ・キャッスル=ヒューズは,一見,ごく普通の少女に見える。

キリストの母に選ばれる,ということは,実は大変な試練をも受ける
,ということだ。天使は「おめでとう,恵まれた方」と祝福の言葉を投げかけるけれど,パッションの映画でも目にしたように,後に彼女は,最愛の息子の十字架の死に立ち会わなければならないのだから。強靭な信仰がなければ,なかなかどうして,「キリストの母」などという役は務まるものではない。

天の使いに答えるマリアのセリフ。「私は主のはしため(=侍女)です。お言葉どおりのこの身になりますように」という返答は,信仰なしには到底言えない凄いセリフだといつも思う。いくら救世主を待ち望んでいるユダヤの民だからとて,一少女が「神の子を身ごもった」と言っても,信じてもらえるとは思えない。

戒律の厳しいユダヤ社会では,未婚の身で妊娠することは「石打ちの刑」に相当する大罪だ。それに許嫁のヨセフは何と思うだろう??それに何より天の使いの言葉は本当なのか?・・・・さまざまな疑いや恐怖や心配にもまさって「神には不可能なことはない」という確信が,マリアにはあったのだろう。
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そして,神のお告げと愛するマリアを信じ,世間の思惑や常識を超えて,キリストの誕生を全身全霊でサポートしたヨセフ。彼の信仰の深さと,妻への愛の強さは感動的だ。それまでの降誕劇の映画化では,添え物的な役割だったヨセフの献身が,今作ではクローズアップされ,「そうだよな~,ヨセフってほんとうにこんな人だったかも」と素直に感動できた。

おそらく男性優位だったに違いないこの時代(結婚相手も親が決めるし)に,こんなに優しく妻に尽くす夫はきっと珍しかったような気もするけど,臨月になってのベツレヘムへの長旅とか,夫婦ふたりだけの孤独で不便な出産とか,あらゆる困難の中で発揮されるヨセフのゆるぎない優しさがあってこそ,マリアはイエスを無事に生むことができたのだ。マリアはイエスの母として神に選ばれた女性だったが,ヨセフもまた,イエスの父として神に選ばれた男性だったのだ,とあらためて思う。
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こうして聖なる夜に,救い主は黄金の宮殿ではなく,粗末な家畜小屋(洞窟)でひっそりと誕生した。見守るのはうら若い夫婦と,物言わぬ家畜たち。訪れたのは異邦人の博士たちと,下層階級とされていた羊飼いたち。それはいかにも静かで,清らかで,畏れにも似たおごそかな空気に満たされた夜だったに違いない。

私たち信者は,毎年クリスマスが近づく度に,2000年前のあの夜に実際に起こった出来事にしばし思いを馳せ,救い主の誕生を感謝し,祈りと賛美を捧げるけれど,この作品を観てからは,それまでついつい忘れがちだった「ヨセフの愛と献身」もまた,心に留めようと思った。

2008年12月20日 (土)

アフター・ウェディング

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2007年の,アカデミー外国語作品賞にノミネートされた,スザンネ・ビア監督作品。しあわせな孤独ある愛の風景と彼女の作品を観てきたけど,私はこれが一番好きかな。他の2作品では深い余韻は残っても,泣くまではいかなかったのに,この作品では,途中何度も涙がこみあげてきた。

今回もまた,平穏な人生に突然起こる,とてもデリケートなハプニング。降って湧いたように出現した,父娘の絆。ヨルゲンの娘のアナの結婚式に招かれたヤコブは,スピーチの席上で,アナが自分とヘレナとの間にできた娘であることを知る。
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彼はその昔,恋人だったヘレナの妊娠を知らずに別れたのだ。いきなり自分が父親であることを知っただけでもショックなのに,故意に自分を呼び寄せたと思われるヨルゲンの意図がつかめずに混乱するヤコブ。

混乱したのは,彼だけでなく,ヤコブの出現に戸惑ったアナやヘレナも同じ。アナとヤコブはそれでも親子としての心の絆を回復しようとする。というか,彼らを突き動かしたのは,血の繋がった親子ならではの本能的な感情なのだろう。

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養父のヨルゲンの愛情に満たされていながらも,やはり実父の存在を知ると,会いにいかずにはいられなかったアナ。そして青天の霹靂のように出現した娘に,どう接していいかわからない,という顔をしながらも,やはりおずおずと愛情を示すヤコブ。不器用で誠実なヤコブと,いかにも素直なアナの対面シーン。ふたりがごく自然に抱き合う場面は,観ているこちらもほっと息を吐いてしまった。マッツ・ミケルセンの細やかな表情の演技が光る。

この物語の中で輝きを放つのは,実の親子の絆だけではない。血の繋がりのない関係でも生まれる愛情についても描かれている。
養父ヨルゲンとアナの絆。
ヤコブとインドの孤児の少年との絆。
そしてヨルゲン亡き後,ヤコブに託される,
ヨルゲンの幼い双子の息子たちと,ヤコブとの絆。

赤の他人でありながらも,育まれるのは紛れもなく確かな愛情であり,人間が誰かを愛する能力って,予測がつかないものであり,同時に無限のものなんだな,と改めて思う。

また,誰もが避けて通れない死についても,深く考えさせられる物語だ。一家の大黒柱である父親が,愛する家族を残して逝かなければならない時・・・。 ヨルゲンの苦悩と,家族を託せるのはヤコブしかいない,と悩んだ末に取ったその選択。

・・・・よく決断したな,と思う。
妻に号泣しながら漏らした,「死にたくない」という本音。ヤコブに後を任せるのは,未練や嫉妬心もそれなりにあっただろうに,それよりも,家族への愛情の方が勝ったのだろう。

もし私が彼のような立場に置かれたら,自分の不運を嘆くのが精一杯かも。そう思うと,ヨルゲンは,なんて懐の深い人間だろうと思う。もちろん,ヤコブの人柄が信頼できたからこその決断,そしてまた,彼ほどの財力があったからこそ,可能になった計画かもしれないけれど。
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葛藤の末にそれを受け入れるヤコブとヨルゲンの遺族たち。
ヤコブだって抵抗はあっただろう。それまで築き上げてきた生活や,守ってきた大切なものの一部を失うことになるのだから。自分の主義のために生きてきた彼にとって,「家庭を築く」という選択肢は,これまでの人生にはなかっただろう。しかし,実の娘が本当に自分を必要としていることを悟った時,彼は二つの道から一つを選び取る決心をするのだ。

・・・・見事に善人しか出てこないこの物語を味わいながら,人はこのように相手を愛し,思いやることができるのか・・・と思った。

登場人物それぞれが抱く愛は,
どれも切なく,そして美しく,あたたかい。

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みんな優しくて,繊細で,人生の機微もわきまえている。
それらが妙に心地よくて,でも実際の人生は,そんな人ばかりに囲まれているわけじゃない私は,こんな世界に憧れもして・・・・鑑賞後は,嬉しいような,やるせないような,なんともいえない思いに満たされる作品だった。

2008年12月13日 (土)

ダークナイト待望のDVD!

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待ちに待ったダークナイトDVDリリース!
予約してたので,手元にはとっくに届いていたのだけど,何せ週末になるまでゆっくりと観れなかった。だって特典合わせて五時間近くあるんだもん!週末は週末で1週間の仕事疲れでへとへとではあるのだけど・・・。

ジョーカーに逢うのは4ヶ月ぶり,そして4回目。(劇場で3回観た。)夏の終わりとともに,別れを告げたジョーカーに,また逢えたその感想は。
・・・・・ひたすら懐かしかった。
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ほとんどのシーン,次にどうなるかわかっていながらも,夜の高層ビルの合間を,ハタハタと飛翔するバットマンの姿には見とれずにはおれなかったし,ヒース演じるジョーカーの,恐ろしさとカッコよさには,何度観ても,新たな感動を覚えた。あの,狂気をはらんだ耳障りな声と,美しくさえある,抜群の身ごなし。DVDだから「あ,あの表情と声,もういっかい!」と,何度でも再生できるのも嬉しいところだ。
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これからいつでも何度でも,
マイ・ジョーカーに会えるんだ~!

ジョーカーが我が家に住んでくれてるような嬉しさだ。(言いすぎ?)個人的な事情が入っているとはいえ,こんなに愛おしい悪役は初めて。おお,これはまさしくheart01だわ。

し,しかし,こんな悪役に恋してどうする?自分sweat01
だけど,何と言っても,彼から目が離せないのだから,仕方あるまい。(・・・・・次点の悪役にギャスパーのハンニバルが来るけど)
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特典映像の方はどうかというと・・・・。

楽しみにしていた出演者のインタビューなんかは無かった(泣)と思う。(隅々まで観てないので自信はないが)そりゃ,ヒースのインタビューは無理にしても,他の出演者や役者についての,監督のコメントとか欲しかったけど。代わりに,IMAXとかいう高価な特殊カメラを使った撮影とか,できるだけ実写にこだわった撮影法とかが語られていた。(興味のないところは早回ししちゃった・・・)
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香港の,あのビルから飛行機にダイブするシーンも,スタントを使おうとしていたこと(こ,怖い)や,病院の爆破も実際にやっちゃって,だから本番は一発勝負だったことなど・・・これにはびっくりした!失敗はゆるされない爆破シーンでの,ヒースの病院から出てくる演技が完璧だったこと,などが語られていて,やっぱり凄い!と思ったね。本物の爆破なのに,一度も振り返らずに立ち去るジョーカー・・・・お見事!

ツタヤのダークナイトのコーナーには「アカデミー賞最有力!」とあったけど,もうすぐその結果も出る。今からどきどきしているのは・・・・私だけじゃないよね!

2008年12月12日 (金)

トニー・レオン作品記事

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トニーの出演作・・・・けっこうレビューがたまったので
索引を作ってみました。

インファナル・アフェア
裏街の聖者
花様年華
傷だらけの男たち
ブエノスアイレス
欲望の翼
ラスト、コーション
ラスト、コーション 原作の世界
レッドクリフPartⅠ
レッドクリフPartⅡ-未来への最終決戦ー

2008年12月11日 (木)

花様年華

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おそらく,映画史上,もっとも抑制された濃密なエロスの漂う作品のひとつ。私は確かこれで,トニー・レオンのファンになった。

舞台は1962年の香港。
それぞれの配偶者に浮気をされていたことを知った,隣同士の部屋に住む男と女。互いに強く惹かれ合いながらも,どうしても一線を越えることができない,大人の男女の恋物語を,トニー・レオンとマギー・チャンが演じた。
Cap024
この作品,ベッドシーンはおろか,キスシーンすらないのに,秘めた恋情が醸し出す官能は,めまいを誘うほどに匂い立つ。髪をぴしりとポマードで固めたトニーがまとうスーツと,後頭部を高く結いあげた髪型のマギーの着る,美しいチャイナドレス。・・・・一分の隙もない二人の服装は,まるで一時の激情に流されまいとする,彼らのストイックで強い意志を表わしているかのようだ。

この時代の香港の住宅事情はよくわからないのだけど,二人はアパートというより,下宿屋,という感じの建物に間借りしているので,親密になれば,大家の婦人をはじめ,他の隣人などの大勢の人目につく。彼らは,トニーが小説を書くために借りた部屋で逢引するが,夫や妻のように,簡単に不倫関係を結ぶことはできない。
Cap066 
・・・・・握り合う手と手。・・・抱きしめる背中。涙と告白。
しかし,そこから先には一歩も進めないふたり。
大人であるからこそ,
感情に身をまかせることができない辛さ
を感じる。

カメラは二人のやりとりと表情を追い続け,徐々に高まってゆく互いを欲する思いは,いつ飽和状態に達して弾けてもおかしくはない。しかし,・・・やはり彼らは踏みとどまるのだ。赴任先のシンガポールへ,「一緒に来ないか」と彼女を誘うトニー。マギーの「一緒に行くわ」という答えは,彼女の心の中でだけ,そっと呟かれる。
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この物語のトニー・レオンの雰囲気ってすごく好きだ。

物腰が柔らかで,想いを胸に秘めている男。漂うストイックな哀愁。優しさと痛みが交錯する表情が,何ともいえない。こういう知的で,奥ゆかしくて,どこか「耐えている」男って理想なんだけど。

妻に浮気され,愛した女性とは結ばれず・・・・情けないといえばそうなのだけど,トニーは不思議とこんな役がよく似合う。こんなに物静かで優しく,手のかからない夫なのに,なぜに妻は浮気なんか・・・・しかし,こんな夫だからこそ,裏切られるのもまた,世の常なのかも。

カンボジアの朽ちた寺院で,
秘めた思いを壁の穴に向かってささやくトニー。

いったい彼は,どんな台詞を,どんな思いで口にしたのだろう。
Cap038
そして同じように心に焼き付いて離れないのは,成熟した女性のたおやかな美しさを満喫させてくれる,マギー・チャンのチャイナドレス姿。幅広のカラーに包まれた,白鳥のようにすんなりと伸びた首と,しなやかな二の腕。鎧をまとったような硬さを感じさせつつも,夫に裏切られた哀しみからか,時折はっとするほど,無防備な弱さを見せ,そのギャップがとても危うい色気を醸し出すマギー。

彼女が,美しい柳腰を優雅に揺らしながら,
狭い通路を歩くシーン。

朱色と黒,グリーンが多く使われた画面。
夜更けの街頭の裸電球を,激しい飛沫で濡らす雨。
物陰にひっそりと,無言で寄り添う男と女。
トニーのくゆらせる煙草から,ゆらゆらとたちのぼる
絹のような
紫煙までが,なまめかしい。
Cap029
・・・・そう,すべてが官能的でたまらなく美しい作品だ。
まさにこれは,
大人のための極上のラブストーリー。

特典ディスクのメイキングを観たら,トニーとマギーが一線を越えちゃうバージョンもあったことがわかって軽く衝撃を受けた。・・・・・よかったぁ。そのバージョンが使われなくて。この作品の魅力って,やっぱり大人のプラトニックラブゆえ生まれるエロスにあると思うから。カーウァイ監督,思い切ってバッサリとカットするなんて,やっぱ凄い。・・・・トニーとマギーが下着姿で踊るシーンは,かわいくて素敵ではあったけど。
Cap053

2008年12月 8日 (月)

ある愛の風景

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デンマークの鬼才,スザンネ・ビア監督作品。
この監督さんの,しあわせな孤独が素晴らしかったし,この「ある愛の風景」のハリウッド・リメイクの際は,ジェイク・ジレンホールとトビー・マグワイアが兄弟を演じると聞いて,「ぜひオリジナルを観なくては!とDVDで鑑賞。

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仲はよいが,対照的な兄弟,ミカエルとヤニック。
兄は優等生で,弟は気ままなアウトロー。兄のミカエルには美しい妻サラと,可愛い二人の娘たちがいて・・・・。彼がアフガニスタンへ従軍しなければ,平穏な生活は,なんら変わることはなかったのに・・・・。

ビア監督の描くのはいつも,突発的な出来事に平穏無事な生活を乱され,葛藤する人々の物語だ。誰の身にも起こってもおかしくない,不慮の出来事のせいで,露呈される人間本来の弱さや愚かさを容赦なくえぐり出し,善人同士の間に起こる悲劇を描く。と同時に,再生しようとする人間の強さや優しさも描かれる。鑑賞後は切なさとともに,深く人間について考えさせられるのだ。
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しあわせな孤独
の不慮の出来事は交通事故だったが,この作品の場合は戦争。根底には反戦のメッセージも込められているのかもしれない。

戦死の誤報と,ミカエルの捕虜生活の影響によって蝕まれてゆく兄弟の関係や,夫婦の関係。ミカエルの戦死を信じたヤニックとサラは,喪失感から心を寄せ合うようになる。一方,苛酷な捕虜生活で,想像を絶する「ある体験」を強要されたミカエルは,すっかり別人になって帰ってくる。

妻と弟の親密さに気づいて,疑心暗鬼になる兄。兄が不在の間に,兄の家族にすっかり頼りにされるようになった弟。そして,帰ってきた夫の変貌ぶりにうろたえ,なんとか絆を取り戻そうとする妻。両親の間の不穏な空気を感じ取って神経質になる子どもたち。

重すぎる秘密と良心の呵責に耐えかねて,愛する妻子に暴力的な八つ当たりをしてしまうミカエル。幸せだった家庭は,もはや修復不可能なくらい,亀裂が入ってしまったかのようにも思えたが・・・・。
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冒頭とラストに語られる,愛している,何があろうとも・・・というセリフ。たとえ何が起こっても決して揺るがない愛をひとは求め,そしてそれが可能であると思う。しかし,残酷な,あるいは皮肉な運命にひとたび遭遇すれば,愛は思いもよらない脆さをさらけ出す。
それでも,なお再び,愛している,何があろうとも・・・という気持ちを抱くのが,人間の性(さが)なのだろう。そして,やはりそうであってほしいと願う。ラスト,やっと妻に秘密を打ち明けることができたミカエルの号泣するシーンを見ながら,心からそう思った。

リメイク版は,苦悩する兄のミカエル役をトビーが,そして奔放で繊細な弟役をジェイクが演じるそうだけど,こうしてオリジナルを観て,それぞれのキャラや演じる役回りを知ると,なるほど二人とも適役かも~と,とっても楽しみになってきたのだが・・・・公開はいつされるんだろう?日本でも公開してほしいんだけど・・・・。ちなみにサラ役はナタリー・ポートマン。こちらも楽しみ。
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しかし,コニー・ニールセン・・・・グラディエーターの王女役のときから少しも美貌が衰えていなくって感激!完璧なスタイルとノーブルな顔立ちに何度も見とれてしまいました・・・・。

2008年12月 6日 (土)

私は貝になりたい

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フランキー堺さん主演のオリジナルドラマは,中学生のとき,ハイライトシーンをテレビでちらりと見た記憶がある。(たしか懐かしの名作ドラマとかいう特集で)そのときに感じた,やりきれないほどの重さ,暗さ,そして哀しさは鮮明に覚えていて,フランキーさんの「生まれ変わったら私は貝になりたい」という声は,今でも脳裏に焼きついている。だから,リメイク版も,ぜひとも劇場で見たいと思っていた。

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2時間半の長尺な物語にもかかわらず,すっかり物語に引き込まれて,長さはあまり感じなかった。中居くんも仲間さんも,ともに素晴らしい演技で,その健気な夫婦愛や,ひたむきに生きようとする姿には,何度も泣かされた。

しかし,こうしてリメイク版を今見返してみても,怒りや哀しみをどこへ持っていけばよいのかわからないくらい,残酷で理不尽な物語である。
戦争によってひき起こされる悲劇を描いた物語は,文学,映画を問わずたくさん接してきたが,これはそのなかでも,やや異色ともいえる,「戦犯の悲劇」にスポットを当てた物語だ。
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主人公の豊松の不運さには言葉もない。
貧しくて,足も不自由で,それでも愛妻の房江と子供と,ささやかな人生を懸命に生きていた彼が,なぜこんな目に合わなくてはいけないのか?彼が法廷で断罪されたのは,捕虜の処刑。軍のトップから順送りに降りてきた命令。最終的には,部隊でもっとも「愚図」だと上官からにらまれていた,豊松と滝田の二人が実行命令を受ける。

法廷で,「捕虜を殺した」ことの責任や,そのときの気持ちをしつこく問いただされても,豊松は「上官の命令には絶対服従だから」「われわれ兵士は牛や馬と同じ」と訴えるしかない。しかし,そのような,「個」を全く抹殺した日本の軍国主義が,アメリカ側にわかってもらえるはずもなく,直接手を下したということで,豊松は直属の上官よりも重い極刑を言い渡される。
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妻,房江の必死の署名集めも,冷たく拒否する人もたくさんいて,やりきれない思いになった。豊松のような,不当に過酷な刑を科せられた戦犯者のことを,当時,同じ日本人なのに知らない人の方が多い・・・というのもまた,激しく疑問を感じたことの一つ。

・・・敗戦後の混乱の中では,戦争が個々に残した爪痕はあまりに大きく,また生きていくのに精いっぱいで,他人のことなど構っていられなかったためか?それともやはり国民も「戦犯」という言葉を聞くだけで,当時の人々は拒絶反応を起こしてしまったのか?

それでも,200名の署名が集まり,もしかして希望が・・・・と誰しも(観客も)思っていた矢先に,いきなりの処刑執行命令。「助かる」と確信していただけに,一転して奈落の底につきおとされた豊松の茫然自失ぶりはものすごかった。ここ,中居くんの演技の正念場・・・・というか,うつろなまなざしと憔悴した様子は,鬼気迫るものがあって,鳥肌がたった。

事前にオリジナルの筋書きを知っている人は,この物語のキモである「私は貝になりたい」というセリフが,ハッピーエンドでは決して出てこない言葉だと承知して観ているから,ラストの衝撃も心の準備はできている。しかし,何の予備知識もなく観た人にとっては,もしかしたら到底受け入れがたいほど,ラストはむごい結末だ。
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心に焼きついて離れない豊松の遺書
こんなにも深く考えさせられる哀しい遺書を,私は他に知らない。「もう人間には生まれ変わりたくない」とまで豊松に言わしめた深い絶望と悲嘆。

気安く慰めの言葉などかけられない・・・・ただ一緒に泣く
しかない・・・。そう感じるほど重い,重い,救いようのない絶望が,豊松の一句一句から,ひしひしと伝わってくる。

オリジナルのフランキー堺さんのあの声も心に沁みたが,中居くんのやさしい囁くような声もまた,涙なしには聞けなかった。
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途中で草彅くんが出てきたのは(友情出演?)嬉しいおまけ。けっこう印象に残る美味しい役だったのでは?同じ戦犯でありながらも,悟りと静謐の境地に達している青年役の彼がつぶやく,「いやな時代に生きて,いやなことをしたものです・・・」というセリフもまた,心に残った。

そして,軍のトップで,「全責任は私にある」と毅然と言いきった矢野中将を演じた,石坂浩二さんの風格はさすが!だった。・・・・・名作のリメイク,ということでいろいろ危惧はあったけど,とても感動できる,そして考えさせられるよい作品なので,ぜひ一人でも多くの方に観てほしい。(←関係者ではありません( ̄▽ ̄)

2008年12月 3日 (水)

僕の恋、彼の秘密

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これは何とも可愛らしい(ゲイの)恋物語だった。
ゲイの物語につきものの,悲壮感や,秘めた思いの切なさは皆無で,どこまでもひたすら明るい。flair こんなに明るくていいのか?と心配になってしまうくらい明るい。まるで画面に,蝶やバラの花やお星さまが飛び交っているようなribbon,超ラブリーな明るさだ。

しかし,切ないゲイものが好みの私だが,それでもこの突き抜けた明るさは,意外なことに,かえってなかなか心地よかった!
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まず劇中に,見事なくらい,ひとりも女性が出てこない。
そして出てくる男性はみんなゲイ。通りすがりの,チョイ役のおじさんに至るまで全員ゲイ。完全なゲイ・ワールドである。全員がゲイの世界だから,誰も人の思惑なんて気にしなくていい・・・というよりは,この世には男性しか存在していなくて,だから男性同士で恋をするのが当然!というような世界にも見えた。
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まるで別世界に迷い込んだような不思議な感じ。しかし,その中で,楽しそうに恋をしたり,秋波を送りあったりしている彼らが,なんだかとても可愛いのである。

監督が若い女性というのも驚き。彼女は同性愛映画というよりは,普通のラブストーリーheart01として撮った,と言っていたが,確かに主人公二人の青年の恋は,誰でも応援したくなるほどサワヤカでキュートだ。
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友達を頼って台北に出てきた,田舎出身の17歳のティエン(トニー・ヤン)。うぶで純情な彼が大都会で初めて恋に落ちた相手は,「ラブマシーン」という異名を持つ,プレイボーイのバイ(ダンカン・チョウ)。彼もまたティエンに惹かれ,二人はついにベッドインするが,幸福に舞い上がるティエンを残して,翌朝バイは姿を消す・・・実は彼には「ひとを愛せない」ある理由があった・・・。

Cap044
これが男女のお話なら,まるで高校生の初恋物語のような,ベタな話に引くところだが,美青年×美青年のお話だと,やけに新鮮に感じるから不思議。観ている方も恋愛の原点に立ち返って,もどかしい二人の恋をつい応援してしまう。
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ティエンを演じたトニー・ヤンの,素朴さと恥じらいを含んだ表情はなんとも可愛く,また高級スーツに身を包んだセクシーなバイを演じた,ダンカン・チョウの甘い笑顔は,うっとりするほど魅力的。ティエンを応援したり心配したりする,親友のユーをはじめとする,おネエ言葉のゲイたちのやり取りも微笑ましくて面白い。

コメディ映画だから,笑える台詞や場面も多いのだが,大笑いというよりはくすくす笑い…という感じ。私のお気に入りは,マネキン人形を抱えたバイが交差点でティエンに出会うところ。マネキンが律儀に横断歩道の前で右手を挙げている姿にウケた。

ところで,バイが人を愛せない理由って,どんな凄い秘密なのか?と期待してはいけない。なーんだ,そんなこと?と拍子抜けするような理由だから。でも,いいのだ。そんなことどうでもよく思えるくらい,悩むダンカンやトニーがいとおしく見えるから。
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見終わった後のすがすがしさは格別。
思わずこぼれる笑みを押さえることができなかった。
いやー,よかった,よかった,
幸せになれよ!お二人さん。

2008年12月 1日 (月)

男たちの挽歌

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血と銃弾で描く男の美学
香港ノワールはここから始まった・・・・

レッドクリフがあまりにも面白かったので,ジョン・ウー監督の原点とも言われる,この英雄本色(男たちの挽歌)を鑑賞〜〜。実はDVD(デジタル・リマスター版)を持ってたのだ。未見のまま,しまいこんでたけど。きっと,レスリー・チャン目当てで買っておいたのだろう。

1986年製作のこの映画,それまでカンフー・アクション中心だった香港映画に新しい流れを起こしたそうな。ガン・アクションは・・・さすがジョン・ウーらしいスローモーションの多用や,派手な吹っ飛びシーンなどが満載で,今ならそう珍しくはないものの,当時としては確かにどんなにか斬新,かつ衝撃的でクールに見えただろうな〜と思う。
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二丁拳銃水平撃ち

うーん,
とにかく,かっこいいです。
はっきり言って,この時代なんで髪形もファッションもダサく見えるけど,そしてレスリー以外はイケメンも出てこないけど(チョウ・ユンファもイケメンとは少し違うと思う)それでも,黒社会に生きる男たちの生きざまや,台詞,しぐさの一つ一つにいちいち痺れる。

そして,アクションだけでなく,きっちりと描かれた人間ドラマは,少し演歌っぽいのだが,泣かせる。極道の兄ホー(ティ・ロン)と警官の弟キット(レスリー)の間の確執と愛情,そしてホーとマーク(チョウ・ユンファ)の間の,胸が痛くなるほどの友情。
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チョウ・ユンファの表情の変化は, ある時は甘く,ある時は凄みを帯びて,ほんとに自由自在だ。若い時から「ただものではない底力」をずっしりと感じさせてくれる。黒のロングコート姿でマッチ棒をくわえた姿も,ボロッちい服を着て満身創痍の姿も,惚れぼれするくらい決まっている。
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そして,極道の兄をどうしても許すことができずに葛藤する弟を演じた,レスリー。私は,彼の倦怠感ただよう色気が好きなのだが,この作品のレスリーは,そんな雰囲気は微塵も出さず,前半はまるで高校生のように無邪気で明るく,後半からは,和解を求める兄をひたすらはねつける,若さゆえに感情が暴走する一徹な青年を演じている。
彼が兄に激しく食ってかかるシーンは,兄ホーの深い愛情を知っているこちらとしては,ホーが気の毒でたまらなくなるが,それでもレスリーの表情の美しさにはうっとりと見とれてしまう。・・・・・こんなレスリーもまた素敵だ。
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しかし,この頃からウー監督作品に出ていたレスリー。・・・・生きていたら,絶対レッドクリフにも,もしかして出演していたんじゃないか?ブエノスアイレスで共演したトニー・レオンチャン・チェンや,さらば、わが愛/覇王別姫で共演したチャン・フォンイーと一緒に。そう思うとちょっと哀しくなった。

ラスト近くの壮絶な銃撃戦,再び取り戻す兄弟の絆,そしてマークの運命。このシーンは,緊迫感と感動が同時に味わえる名場面。とりわけ,キットが兄に黙って拳銃を渡す場面が大好きだ。

かなり古い作品にもかかわらず,今観ても,色褪せない魅力が詰まった作品。それにしてもウー監督,やはり闘う漢(おとこ)をカッコよく撮るよなぁ〜♪

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