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2008年11月21日 (金)

中国の植物学者の娘たち

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あらすじ: 厳格な植物学者の父親とアン(リー・シャオラン)が暮らす植物園に、実習生としてやってきたミン(ミレーヌ・ジャンパノイ)。両親を亡くし孤児院で育ったミンと、母を亡くして以来、父親と2人きりで生きてきたアンは姉妹のように心を寄せ合う。やがて2人の関係は許されない愛へと高まってゆくが、そんなある日アンの兄が現れる。(シネマトゥデイ) 

一番心に残ったのは,この時代の中国では,同性愛が極刑になるほどの犯罪だったんだな〜という事実だ。犯罪って・・・・藍宇(ランユー)の原作でも「同性愛は犯罪」だという文があって「へええ」と思ったものだが,まさか,死刑に相当する罪になるとは!
Cap036
主人公の二人の少女が惹かれあったのは,互いの孤独な境遇が似ていたから。肉体の結びつきよりも先に生じたのは,魂の結びつきだった。

世間から隔離された植物園で,厳格な父親の助手を勤めるだけが人生だったアンと,孤児院育ちの天涯孤独なミン。 あるときは薬草を求めて山に登り,あるときは蒸気のたちこめる温室で,二人きりで仕事をするうちに,彼女たちは互いにかけがえのない存在となってゆく。

同性愛映画ではあるけれど,エロティックな場面は最小限に抑えてあるので,上品な官能の香りは全編に漂ってはいるが,いやらしさは皆無である。ベトナムで撮影されたという映像はむしろ,幻想的な名画のような美しさがあり,アンとミンの二人の,たおやかでみずみずしい美しさには,思わずため息が・・・・。二胡を使った流れるような音楽や,吐息とともに囁かれる中国語・・・・とにかく全てが美しい。
Cap049
二人がいつまでも一緒にいられますように」という願いを込めて大空に放たれる鳩の群れ。ただアンと一緒にいたいという理由だけで,アンの兄の求婚を承知するミンの思いの深さ。二人の少女の互いを想う気持ちは,いかにも純粋で美しく思え,それに比べて,彼女たちをまるで所有物のように扱う男性たち・・・父親と兄・・・・には嫌悪しか感じない。

・・・・そして,あろうことか,父親の訴えによって逮捕される二人。それまで描かれてきた,美しくイノセントな世界から,いきなり奈落の底に突き落とされるような,ラストへの残酷な展開。
Cap061
刑が宣告されたときに,法廷で最後に見かわす二人のまなざし。すべてを受け入れた二人の表情は,あくまで静かで,後悔や悲しみの影はなく,神々しくさえ見えた。

親しかった山院の僧侶と,ミンの孤児院の保母の手によって,二人の遺灰は生前二人が慣れ親しんだ湖に撒かれる。「二人の遺灰を合わせて撒いてほしい。そうすれば安らかに眠れるから・・・」というミンの遺言は,ブロークバックマウンテンのジャックの遺言を思い出させる。
Cap054
愛は,はたして人の手で裁かれてよいものだろうか。


法や偏見によって断ち切られる絆,
「一緒に生きたい,ただそれだけ」という,二人の切ない願い
二人きりで過ごした桃源郷のような美しい自然の存在

そんな点もブロークバックマウンテンを思い起こさせる物語だった。

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コメント

ななさん、こんにちは~!
>先に生じたのは,魂の結びつきだった
そうそう、そうなのよね。だから彼女らは、相手こそが失いたくない唯一で最大のもの・・というかだったのかもしれませんね。
相手を失ってしまったら、また一生孤独な以前の生活に戻るだけなんだものね・・・。

いやらしさが無くて、綺麗に映像が撮れていて良かったです☆

latifaさん こんばんは
彼女たちが互いにあんなに孤独でなかったら
そして周囲に彼女たちの愛の対象となれる優しい男性のひとりでもいたら
そうしたらあの絆は生まれてなかったのでは?と思いました。
そう思うと,この物語に出てくる男性に腹が立っちゃって・・・。
>いやらしさが無くて、綺麗に映像が撮れていて良かったです☆
「中国のお針子」の監督さんだから,いやらしい映像は撮らないだろう,と安心して観れましたよ。


ついでにこちらにもお邪魔します。
風景が美しい作品でしたねー。
2人の行く末が想像できてしまったのと、「西洋人が好きなアジア」風な映像で
私としては大好きな作品とはいえないのですが、なにしろあの植物園の美しさには
うっとりでした。
一緒にいられるから、という理由でミンに自分の兄との結婚を勧めるアンには
ビックリしましたが・・・。

へえ、こんな映画あるんだ。
レズビアンものって少ないんだけど、アジアものは珍しいね。
植物園というのもそそられる。

>二人きりで過ごした桃源郷のような美しい自然の存在・・・・

ほんとBBMを思い起こされる。
レンタルにあるかなあ。

sabunoriさん,こちらにもありがとう
>「西洋人が好きなアジア」風な映像・・・
綺麗すぎるというか,エキゾチックな香りがしましたね。
でもあの植物園の温室のハーブ浴?いっかい体験してみたいな~
>一緒にいられるから、という理由でミンに自分の兄との結婚を勧めるアンには
ビックリしましたが・・・。
即座に承知したミンにもびっくりしましたよ~。
あそこは考えが甘かったですねー。

アイマックさん こんばんは
マイナーな作品ですよね,きっと。
私もビアンものは初めて観ましたね。
東洋のものは,ゲイものでも,なんか見やすいです。
同じアジア人が演じると,きわどいシーンでも
あっさり綺麗に感じてしまいます。
この作品は,私だけかもしれませんが
遺灰のエピソードとか,BBMを連想してしまうんですよ。
レンタルにまだ出回ってると思うので
機会があればぜひ・・・
アイマックさんの感想も聞いてみたいです。

こちらの作品、気になりつつ、劇場で観れなくて・・・DVDで観たのですが
レビュー書けてません。。。

切なかったです。
この2人も、風景も全てが美しかったので
余計に切ない想いが・・・

『ブローク・バック・・』私も思い出してました。
時代とはいえ、本当にこういう目に合っていた方もたくさんいらっしゃるのでしょうね。
人を裁く・・ということが、分からなくなってきます。

マリーさん こちらにもありがとう。
マイナーですが大好きな作品です。切ない・・・。
>『ブローク・バック・・』私も思い出してました。
きゃー,マリーさんも?
同じ感じ方をマリーさんもしていたと聞いて嬉しいです。
>時代とはいえ、本当にこういう目に合っていた方もたくさんいらっしゃるのでしょうね。
イスラム圏では,今でも同性愛は死刑になる国もあると聞いたような気がしますが
事実だとしたら,ほんと怒りを感じますね。
裁かれてよいのは,人を傷つける犯罪のようなものだけで
愛や信条は裁いてはいけないと思います。人間同士で。


こんばんは~♪
こちらにおじゃましてからWOWOWで放送されたんですよ~!もうタイミング良すぎ('-^*)/

映像、二人の女優さんキレイだったね。あれってハーブ浴だったんだ!気持ち良さそうだったんで、麻薬かと思っちゃったよ~(^o^;)
あとで訂正しなくちゃ。。
ラストは理不尽だよね~。楽園は不幸を招くのか、、
いい映画、紹介してくれて、ななさん有難う~(*^_^*)

おお,アイマックさん,アップされたのですね~
そうですか,WOWOWで放送されたんですか!
>映像、二人の女優さんキレイだったね。
私には,リー・シャオランの方は島田陽子の若いころに
ミレーヌの方は沢口靖子にも見えましたね~
ハーブ浴・・・でもあれって,幻覚効果もあったから
麻薬ともいえなくはないですよ~,きっと。
>ラストは理不尽だよね~。楽園は不幸を招くのか、、
地上の楽園はひとときの夢・・・というのは
いつの時代も変わらぬ真理のようです。
BBMもそうでしたね。
こういう悲劇の恋人たちは,天国で結ばれるしか道はないのかしらね・・・。

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