やわらかい手
面白かったし,感動もしたし,元気ももらえる作品。
お勧めです。
どうみても,ごく普通の,冴えない初老の主婦マギー。
ぬいぐるみのような体型と,堪え忍んでいるような,地味で控えめな雰囲気。ハローワークでは,「あなたの年齢での就職は無理!」と,無惨に断言された彼女が,最愛の孫の治療費のために,藁にもすがる思いでくぐった「性風俗」の店。
イギリスのコメディーは「弱者の開き直りによる奮闘物語」を描くのがとってもうまい。その奮闘ぶりは,どれも奇想天外な設定で,ラストは爽快なハッピーエンドに終わる。たとえば「フル・モンティ」とか,「カレンダーガールズ」とか「キンキーブーツ」とか・・・・。
このやわらかい手は,少し暗めの印象を受けるが,それでも主人公のマギーが,思いがけずに飛び込んだ性産業界で思わぬ成功をおさめ,次第に人間としても女性としても,したたかに輝きを増してゆく過程を観るのは,気持ちが晴れ晴れするものだった。
それにしても,この作品の見どころのひとつには,彼女が売れっ子になった「客を手だけで絶頂に導く」という仕事があると思う。「日本式」だ,とオーナーのミキは自慢していたが,・・・・・・ホントにあれって日本にもあるの?
壁を隔てた客にとっては,若さも容姿も必要なく,一番重要なのは「手」の滑らかさや柔らかさとそのタッチ。そう,マギーは「ゴッドハンド」の持ち主だったのだ。
愛する者のために腹をくくった人間ほど
強いものはない。
しかし彼女は本来,芯に強さを秘めていた女性だと思う。最初こそ,怯えたり躊躇したりしたけれど,開き直るのも順応するのも早かった。誇りとユーモアを失わず,やがては自分の仕事を,隠すことも恥じることもなくなってゆく・・・・。
マギーが,今まで自分を見下してあれこれと詮索してきた友人たちに,仕事のことを告げて胸を張り,友人たちの反応を面白がるシーンは何とも小気味がいいし,彼女の生きざまにオーナーが次第に惹かれてゆく姿も,味わい深い。それまでマギーに冷たかった嫁が,真実を知って初めて彼女に感謝するシーンもまた心に沁みる・・・・。
設定の特異さと「怖いもの見たさ」にも近い好奇心の赴くままに,ストーリーを追いかけてゆくと,何とも心地よく程よい感動が待っていた・・・・そんな感じの名品だ。女性には特にオススメ。
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» 「やわらかい手」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
とても面白く見ました。ちょっとどことなく、カウリスマキっぽい感じがあったかな^^
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» 「やわらかい手」そしてマリアンヌ・フェイスフル [寄り道カフェ]
IRINA PALM
2006年/イギリス・フランス・ベルギー・ドイツ・ルクセンブルグ/103分/R-15
at:ガーデンシネマ梅田
久々に渋い!と思わせてくれる作品でした。
この渋さは、人生の襞を感じさせるマリアンヌ・フェイスフルの、彼女のハスキー・ボイスにもにた存在感と、本作が長編2作目とは思えないサム・ガルバルスキー監督の確かな演出センスと、ロンドンとその郊外を舞台にした落ち着いた雰囲気からくるんだろうなって思う。風俗店のオーナーを演じるミキ・マノイロヴィッチの味がさらに... [続きを読む]
ななさん、こんにちは~!
私もこの映画、とても楽しく見れました。
日本式ってのには、驚いた日本人が多かったと推察・・(^^;)
ところで、この主人公のおばちゃまの若かりし頃のお姿などを見て、もうビックリ!!!凄く可愛く綺麗な女の子だったのね・・・と。YOU-TUBEなんかでも、アランドロンとの映画の共演の時、皮のジャンプスーツを着てるんです(脱ぐシーンもちょっとだけある) 噂ではルパン3世のフジコちゃんのイメージは彼女から来てるとか!
TBさせて頂きました~★今日はちゃんと届いているといいな。
投稿: latifa | 2008年9月10日 (水) 08時40分
latifaさん,こんばんは
になりましたよ!
TB,コメントありがとうございます!
これって,いろんな意味で素敵な面白い作品でした!
マリアンヌ・フェイスフルさん,そうなんですってね~
お若いころはとってもナイスバディだそうで・・・。
体型があまりにも変わっていてアワ((゚゚дд゚゚ ))ワワ!!・・・でした。
でも,さすがの貫録の演技で,鑑賞後はヒロインのマギーが
ほんとに大好き
投稿: なな | 2008年9月10日 (水) 20時15分
ななさんが一行目に書いてらっしゃること、私も大賛成♪
ほんとにそうでした!
それにこんな視点で、こんな設定で・・というのはとても新鮮でしたし、大仕掛けをしたり大金かけなくても、アイディア次第ではこんなに面白い作品ができるんだなぁ、ってつくづく思いました。そうそう、わたしもフルモンティを思い出しました♪
さすがイギリスって(^ー^* )フフ♪
見終わって、妙に前向きな気分になれた、とっても素敵な映画でした~♪
投稿: メル | 2008年9月11日 (木) 00時27分
こんにちは♪ TB、コメントありがとうございました☆
味のある良い作品でしたよね(*^^*)
地味だけど大好きな作品です。
そして、波乱に満ちた人生を送ってきたマリアンヌだからこその
味のある演技でしたね(^^)
投稿: non | 2008年9月11日 (木) 12時03分
マリアンヌ・フェイスフルのあの声が良かったわ。
私たち世代では若い時、アラン・ドロンと共演した全裸を黒革のジャンプスーツを着て、バイクに乗ってドロンに会いに行くマリアンヌ・フェイスフルのイメージが強烈で、時代の流れを感じたわ。でも落着いた雰囲気で、修羅場をくぐってきた人の味なんでしょね。
投稿: シュエット | 2008年9月11日 (木) 16時21分
こんばんは!
記事の右上のウサちゃん、かわいいね^▽^
>イギリスのコメディーは「弱者の開き直りによる奮闘物語」を描くのがとってもうまい。
ほんとうまい。ギリギリの線で笑わせてくれるし、人生ドラマとして見応えありますよ。「カレンダーガールズ」とか「キンキーブーツ」は実話というのがもっとすごい!笑
好奇心でみてしまうけど、ハートフルな映画でした。
男性の方は、コソッと隠れて観るかも。^^;
投稿: アイマック | 2008年9月11日 (木) 22時42分
メルさん こんにちは
TB,コメントありがとうございました。
ちょっとお疲れモードでレスが遅れてすみません。
この作品,設定の勝利ですよね!
それと,マリアンヌ・フェイスフルのキャラかなぁ,勝因は。
ハリウッドでは出せない,イギリスらしい,ほろ苦いユーモア満載の
素敵な作品だったと思います。
イギリスの映画って,演歌みたいな暗さがあっても
ラストは程よく前向きになれるものが多いですよね。
こんな作品,大好きです。
投稿: なな | 2008年9月13日 (土) 16時38分
nonさん,こんにちは
ほんとに,じっくりと噛みしめたくなるような作品で
何度も見直したいシーンが結構あります。
とくに,マリアンヌの演じたマギーの表情・・・
いろんな味わいがありましたが
辛酸を舐める体験もした彼女ならではの人間の幅が
マギー役にぴったりでしたね!
投稿: なな | 2008年9月13日 (土) 17時13分
シュエットさん こんにちは
TB,コメントありがとうございます。
マリアンヌ・フェイスフル,若いころは美声だったそうですが
現在のハスキーボイスも,なかなかオツなものでしたね。
若いころは全裸に黒革ジャンプスーツ・・・おおお∑(=゚ω゚=;)
体型は激変しても,表情やしぐさから,育ちのよさや
しっかり生きてきた歴史のようなものが感じられましたわ。
投稿: なな | 2008年9月13日 (土) 19時29分
アイマックさん こんばんは!
うさちゃん,可愛いでしょ~,ちょっとお気に入りです,私も。
「キンキーブーツ」と「カレンダーガール」は,そう言えば
実話だったね~!(゚0゚)
「フルモンティ」は・・・・さすがにフィクションだよね。
そういう実話がある国,イギリスって,やっぱりいい意味で
個性を大切にしてる国民だなぁ~と思います。
・・・・人目をあんまし気にしない,突き抜けたところがあるのかな( ̄▽ ̄)
>男性の方は、コソッと隠れて観るかも。^^;
うふふ・・・殿方のご感想も聞いてみたいですよね。
投稿: なな | 2008年9月13日 (土) 20時41分
ななさん、こんばんわ~
僕はね~、この映画評価できないんですよ、昨今の邦画がいかに泣かせようか(お涙頂戴映画)をバカみたいに繰り返すように・・・泣かせてナンボみたいな・・・(あまりに商業主義すぎ)そしてイギリス映画も2番煎じ、3番煎じ(ご指摘の「フルモンティ」や「カレンダーガール」や・・・)の映画がいくつかありますね~、テーマは大体一緒で題材を変えただけって、今回の題材は日本製の手こき穴ですね(確かにこれ新宿歌舞伎町に昔あったみたいです、噂ではゲイ?男性もバイトしてたとか?)まあ、一応男としてはあの光景を女性観客に見られる恥ずかしさがありますけど、僕だけ?そんな恥ずかしさもあるんでしょうが、僕の評価は低かったです。
ただ役者たちの魅力はありましたね、主役の女優はいい味出てました。もっと違う題材でもいいんじゃないか?と、あんな不純(下ネタ)な題材で話題性を作る製作者の意図がみえみえで・・・、女性は意外にちゃんと見れたんですかね?僕はずっと恥ずかしかった・・・、もうそろそろ、この種の作品は考えて欲しいとまで思いましたよ(笑)
かなり批判的で失礼しました。
先日「イントゥ・ザ・ワイルド」見ましたが、これぞ!見たかった映画でした、主役のエミール・ハーシュが良かった~、ショーン・ペンの演出も良かった~、脇役の俳優たちも良かった~、です。とてもピュアな映画でしたよ!翌日見た「幸せの1ページ」がとてもかすんでしまいました~。
投稿: イニスJr | 2008年9月13日 (土) 23時49分
イニスJrさん こんにちは
おおお,出ましたね,この映画に対する男性の意見。(* ̄ー ̄*)
そっかー,やっぱり東京にありましたか,あんなの。
「手●き穴」とはまたそのものズバリな表現を・・・ψ(`∇´)ψ
男性は,やはりそういう題材をアダルトではない映画に取り入れられるのは,抵抗があるのでしょうかね~,女性観客に見られるのは・・・・。女性は,私もですが他のブロガーさんたちも,そんなに「いや~ね~」なんて思わずに観れたように思います。まあ,半分は興味本位(のぞき見的な)気持ちも入ってるかもしれません。そんな点では,この作品には悪趣味な要素もないとは言えませんよね。
でも,そういう要素も入っていながら,最終的にはマギーの成長物語のような痛快さも感じました。この痛快さ,爽快感というものは,きっと女性観客限定で味わったものだと推察されますけど・・・。
いやいや,あの「穴」に関する情報や,男性としてのこの作品の感じ方など,貴重なコメントありがとうございます!
「イントゥ・ザ・ワイルド」はウチの劇場では上映してないのでDVDになったらチェックしてみますね。ショーン・ペンの映画なら一筋縄ではいかないような気もしますが・・・エミール・ハーシュくんは「ロードオブ・ドッグタウン」のあの子ですね。素敵な青年になってるでしょうね~,楽しみです。
投稿: なな | 2008年9月14日 (日) 13時03分
いつもどうもです。
イギリス映画独特のリアル生活感を感じる作品でしたが、
観終わって、意外とスッキリした後味でよかったです。
投稿: ひらりん | 2008年10月 1日 (水) 02時24分
ひらりんさん こんばんは
>イギリス映画独特のリアル生活感・・・・
泥臭いというか,演歌っぽいというか・・・BGMもそんな感じでしたが
それでも,そこはかとなくハートフルな後味を感じさせてくれるのが
イギリス映画のいいところですよね。
投稿: なな | 2008年10月 2日 (木) 20時15分