« バットマン・ビギンズ | トップページ | 七夕に想うBBM/ブロークバックマウンテン番外編5 »

2008年7月 7日 (月)

エンジェル

Cap050
フランソワ・オゾン監督が贈る,
かわいらしくも愚かしい,一人の女性の物語。

あらすじ: 1900年代初頭のイギリスの下町で、母親とともにほそぼそと暮らすエンジェル(ロモーラ・ガライ)は、あふれんばかりの想像力と文才が認められ、16歳にして文壇デビューを果たす。幼いころからあこがれていた豪邸“パラダイス”を購入し、ぜいたくで華美な暮らしを始める。そんな中、彼女は画家のエスメ(ミヒャエル・ファスベンダー)と恋に落ちるが……。(シネマトゥデイ)

生まれ育った境遇に満足せず,名声と成功,上流社会の生活に憧れたエンジェル。少女の頃から,鼻もちならないくらい,傲慢で不躾で自信に溢れていた。母や叔母への暴言,出版社への不遜な態度,成金趣味・・・・彼女のいやな点をあげればキリがない。作家としての才能は確かなものだったのか,それともこの時代の大衆が求めるものを,たまたま彼女が書くことができたのか・・・・?

Cap065

母親や夫の死に際し,悲しみに暮れるエンジェル。その気持に偽りはないのだろうけれど,葬儀の際には,彼らの死の場面や生きざまを,ドラマチックに脚色して語り,注目を集めることも忘れない。そんなエンジェルをみていると,「自己顕示欲の塊だな~」と思ってしまう。

夫のエスメのことは,激しい情熱を傾けて愛していたが,出征するときの取り乱しようと「戦争が私たちを引き裂いたのだから,銃後の支えはまっぴらよ」という勝手な発想には,「自分のために愛してるんじゃ?」と思った。
Cap047
・・・・・そう,オゾン監督の描くこのエンジェルというヒロイン,かなり「イヤなオンナ」が入ってる。それと同時に,一途で可愛いオーラも十分備えていて,どこか憎めないところもあるのだけど。

そして,庶民出身の女性のサクセスストーリーかと思いきや,終盤になって「えっ?もしかしてサクセスではなくて,その逆?」という思いがグルグル・・・

夫の愛人に対決しに行き,彼女が誰かを知って打ちのめされるエンジェル。どんなに輝かしい成功をおさめて富を手にしても,氏素性から来る天性の品格には太刀打ちできないもんだなぁ・・・。
Cap055_3
 ・・・・勝負は一目瞭然

死を迎える彼女の傍らには,献身的に彼女に尽くしたノラしかおらず・・・・「あなただけが私を愛してくれた」とつぶやくエンジェルが痛々しい。彼女の夢見た人生,手に入れた成功って,すべて虚構にすぎないのか?その作品が世から忘れ去られるのも早く,死後には何も残らない・・・。

オゾン監督の紡ぐ豪華絢爛で,
夢のように美しい映像美。

美しいヒロインとうっとりするほどの衣裳の数々。しかし,根底には,モーパッサンの短編集から感じるような,ちょっぴり意地悪で,シニカルな視線もあるような・・・・。
D0117645_22595675
女性をこういうふうに描くオゾン監督・・・・
以前に書いた,BBMの番外編の記事「ゲイネスって・・・」というのを思い出した。

« バットマン・ビギンズ | トップページ | 七夕に想うBBM/ブロークバックマウンテン番外編5 »

映画 あ行」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
いやいや、オゾン監督、恐るべし。
私もこの監督さんはオンナ心をわかってると同時にイジワルなところあるなあって..
昔、女性からイタイめにあったのかよ!と思った^^;
なるほどゲイネスか。わかるわかる。
この映画がすごいは、ツボにはまるねー(立ち読みばっかだけどいつも笑いこらえてるもん・笑)

エンジェル、愚かで嫌なオンナなのに、憎めないですよね。
夫の愛人と対面した時のあの衣装とメイクが敗北を意味してたね・・
この監督さんの感性は好き♪

アイマックさん こんばんは

ね!オゾン監督,女性を見る目が意地悪っぽいよね。
ゲイの監督だから,もともと女性嫌いなのかな。
この監督さんの作品の男優さん,顔もだけど
しなやかな筋肉が綺麗なんだよね・・・「ぼくを葬る」も。

成り上がりヒロインをどうしてあんなに
イヤな女に描くのかな~と真意を測りかねていたら
最後にいっぱい食わせて終わっちゃった・・・
でも後味はそんなに悪くないのよね,これが不思議と。
オゾン監督自身が,可愛くて憎めない意地悪を仕掛けるひとなのかしら。
わたしも,この監督の美的な感性は大好き!

お久しぶりです。
「エンジェル」TBもって遊びに来ました。
フランソワ・オゾン大好きな私。「8人の女たち」以降、オゾンシリーズは中断してますが、そのうち「ふたりの五つの分かれ路」と「スイミングプール」もそのうち記事あげます。
「エンジェル」は賛否両論みたいだけど、私は好きだわ。
ロモーラ・ガライは「ダンシング・ハバナ」で初めて見たけどいい女優になったなって思う。「つぐない」でも良かったわ。
七夕にブロークバック・マウンテンに思いを馳せるななさんももロマンティックね。映画みてロマンに浸るって素敵だよね。

ななさん、こんにちは☆
私も、この監督さん、女性のしたたかさとか、策略的なところとか、嫌な部分を描きまくってくれたなぁ・・・と思いました。でも男性の中にだってそういう人いると思うし、女性だけが持った特質じゃないと思うんだけどなぁ~(`ヘ´)

で、ななさんが以前に書かれた「BBMの番外編の記事「ゲイネスって・・・」も拝見させて頂きました~^^
 ゲイの方には、メカに弱い人が多いっていうのは、初耳でした。そちらの記事も、とっても面白く読ませてもらっちゃいました☆

シュエットさん こんばんは!
オゾン監督の生き字引のようなシュエットさん宅に
TBを差し上げるつもりで準備していたら
先を越されてしまいましたわ

この作品,私も好きですよ。かなり好きかも。
主人公のエンジェルに共感はできなかったにせよ
オゾン監督作品って,共感できなくても素敵な作品多いです。ロモーラ・ガライがダンシング・ハバナのあの美女とは
気がつきませんでした。
この作品ではかなりの演技力を披露していますね。

>七夕にブロークバック・マウンテンに思いを馳せるななさんもロマンティックね・・・
いやいや,映画の世界に浸るとき以外は
極めてドライで,現実的なわたしです。


latifaさん,こんばんは!
この監督さんの描く,女性のしたたかさや策略的なところ
それに我儘さとか感情的なところとか・・・
歯に衣を着せずって感じでしょ。
考えてみればすごく醜いのだけど,綺麗な砂糖衣をかけてる感じもする・・・
男性もそんなひといるけど,女性の厭らしさは
子宮でものを考える一種の本能的な香りがするのよね。

ゲイのかたのメカ・オンチ・・・私もそれまで初耳だったんですけど。
でも,たしかに,理系よりアーティスト系にゲイのかたは多いですね~。


 ななさん、こんばんわ~
 この映画、年間パスポート(年会費¥10000で年間52本見放題)でかかってたのに見逃してしまったんです。ただこの初オゾン監督の写真を見てカッコイイ!と思ってしましました。最近の映画監督の中にはカッコイイ人が増えましたねえ~、「ゾディアック」のD・フィンチャーや「ゼアウィルビーブラッド」のP・T・アンダーソンとか・・・、このオゾンさんもオシャレでカッコイイですね。ななさんの記事を読んで見とけば良かったと後悔!
 そういえば今日年間パスポートで「君のためなら千回でも」を見ました~、とてもいい映画でした、オススメします。機会があればぜひ、ななさんも感動してくれると思いますが・・・

イニスJrさん こんばんは
年間パスポートって 10000円で52本観放題って,いいですね~。たくさん見なきゃ損ですね。
オゾン監督,かっこいいでしょ。彼の作品のイメージに合ってますね。情熱的な,洗練された感じですね。
別に顔で映画を撮るわけじゃないけど,やはり大好きな作品の監督さんが素敵だと嬉しくなりますね。私は美形かどうかは知りませんが,スピルバーグの顔とか好きです。ジェームス・キャメロンも好きですね。
「君のためなら千回でも」って,観たかった作品なのですが,見逃しました。「チョコレート」の監督さんでしたっけ。「ユナイテッド93」のハイジャック役のひとが主演してるそうで・・・。邦題もいいですね。DVDが出たらレンタルしてみます。

ななさん、こんばんは。

いやー本当にしばきたくなるくらいイヤな女でしたね(爆)。
でも自分の心に正直に生きたという点においては尊敬に値すると思います。
まあまわりのことなんてこれっぽっちも考えていないわけですから、やっぱりイヤな女なんですけど。

ロモーラ・ガライって「ダンシング・ハバナ」の時はディエゴよりも、この映画ではマイケルよりも「ドーン」として見えるような気がします。まあつまり存在感があるっていうのか。
これって女優としての器の大きさなのかしらねえ。

映画としてはワタシも好きな映画ですよ~~。
ハッピーエンドでないところに好感が持てます。

こちらからもTBさせてもらいますね。

dimさん,こんばんは!
イヤな女が主人公・・・っていう点では
「風と共に去りぬ」を思い出したりもしましたが
けっこうこの手のヒロインは,面白く観れます。
でも,確かにしばきたくなるようなイヤな女で
ぜった~い,周囲にいてほしくないタイプですね。
彼女に一途につくしたノラって偉いわ・・・
ロモーラ・ガライ・・・演技派だとは思ってなかったですね。
大柄・・・なのかな?顔は小顔だけど。
でも「ダンシング~」の時は,相手役が小柄だったような気も・・・。
長身のマイケルよりでかく思えるのは,やはり存在感?
マイケル,影の薄い役だったからか・・・?


こんばんはー♪
私はホントにエンジェルという人がむかついて仕方なかったよー。
すごいオーラとかなにもないのに何で!!ってね☆
ちょっとカワイそうにおもうところもあったけど、
結構「ほら見た事か!」なんて思っちゃった☆
シャーロットランプリングの視線、、、めちゃめちゃ怖かったね。

こんにちは~~。
この作品のレビューが何故か書けないでいます(汗)
オゾン好き?なので、今年公開されて(遅れて公開でした)鑑賞したんですが~

彼って、今まで女性の心の機微を上手に描いてくれたので・・・
今回の作品も、エンジェルに対しての嫌悪だけではなかったっなぁって。
もちろん、近くにいたら「やな女」って思ってしまうかもしれないけど~それだけじゃなくて女性の哀しさ、憐れ・・などをヒシヒシと感じてしまった。

ラモーラ・・・“オゾン監督の新たなミューズ”って言われてたけど、私の趣味ではなかったかな?
やっぱリュディヴィーヌ・サニエ(言いにくい!笑)が好き。


ななさんこんにちは~

本当に鼻持ちならない嫌なおんなでしたね~特に少女時代の彼女といったら!見ていてイライラしっぱなしでした。

ラストはまさかこういう展開だとは私も思わず・・
そうそうあの勝負は完全に負けてましたね~

ななさん、こんにちわー。
エンジェル、ここまでの女だと逆にすごいなーっと感心してしまいました(笑
ここまで自分のために頑張れるなんて、並大抵の努力じゃないはず!!
っと思いつつも、友達にはなりたくないタイプです。
でもラストは少しかわいそうにもなりましたが・・・
でもそれは彼女が自分で引き起こしてしまったことですから、自業自得でもありますね。
それでも軽く尊敬してしまいます。

きららさん
ほんとにね~~,エンジェルはオーラというより
強引さ(と運のよさ?)でのし上がっていったようにも思えました。
でも「にわか上流」は,生粋のお嬢様の品格には
はるかに及びませんでしたね。あそこはやはり,哀れですが
いい気味でもありました・・・
シャーロット・ランプリング・・・年々,凄みを増してますね。

マリーさん こんにちは。

そうそう,マリーさんはオゾン監督作品がお好きでしたね!
この作品は,彼のそれまでの作風とは異質な点もあるそうですね。
「オゾンなのに,舞台が英国??」と思いましたが
雰囲気はやはり,おフランスっぽかったです。
確かに,エンジェルからは,女性の哀しさや憐れも感じましたね。
・・・それを上から冷静に眺めてる,監督の皮肉な目線も
そこはかとなく感じてしまいましたけど・・・
ラモーラは,肌なんか透き通るように美しくて,綺麗な女優さんだなぁと思いましたが
整いすぎて地味な,というかインパクトに欠ける感じもしました。
でも,演技は素晴らしかったです。

hitoさん,こんにちは~
エンジェル,少女時代は,特にわがままでイヤな女の子に見えましたね。
登場した瞬間から,観客を敵に回しそうな勢いで
でも,最期は哀れなものでした・・・。
あの勝負,完全に負けていましたよ~。
よりにもよって,彼女の服装もメイクも,完全にイッちゃってましたし・・・。

なななさん
エンジェルのように,傍若無人に,欲しいものを手に入れるためにがむしゃらに生きてみたい気も確かにしますよね。
ある程度の才能と,強い意志がいるので,誰にでもできることではありません。
その点では,尊敬できる面もありますが,日本人としては「協調性」とかいう資質も,欠かすことができないよね,と思ってしまいます。「和」を乱すので友人になりたくないですよね~~
もっと人を大切にしていれば,あんなさびしい晩年は迎えなかったかな~

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エンジェル:

» エンジェル [小部屋日記]
ANGEL(2007/ベルギー/イギリス/フランス)【DVD】 監督:フランソワ・オゾン 出演:ロモーラ・ガライ/シャーロット・ランプリング/ルーシー・ラッセル/サム・ニール/ミヒャエル・ファスベンダー わたしが書いた甘い人生に、 運命がしかけたビターな罠 フランソワ・オゾン監督は「ぼくを葬る」を観てファンになりました。 初めて英語圏を舞台にシェイクスピア調のドラマに挑戦した意欲作。キャッチコピーも効いてます。 story 1900年代初頭のイギリスの下町で、母親とともにほそぼそと暮らすエン... [続きを読む]

» 「エンジェル」 [寄り道カフェ]
ANGEL 2007年/イギリス・ベルギー・フランス/119分 at:テアトル梅田 フランソワ・オゾン監督作品「エンジェル」 短編王といわれた時代から、ホモセクシャリティを題材に、エロティックな潜在意識をくすぐり、皮肉やブラック・ユーモアをふりまき、オゾンの「毒」は「欲望の挑戦」「タブー侵犯者」「フランス映画界の問題児」といわれ、つねに人間の内面をいとも軽やかなタッチで抉り続けててきたオゾンは、「まぼろし」「ぼくを葬る」で「死の3部作」で人間の喪失感、「生と死」という人間の尊厳の領域... [続きを読む]

» 「エンジェル」 [オバサンは熱しやすく涙もろい]
2007年、ベルギー、イギリス、フランス合作 監督:フランソワ・オゾン 出演:ロモーラ・ガライ、シャーロット・ランプリング、サム・ニール、ルーシー・ラッセル 、マイケル・ファスベンダー 他 原作は20世紀半ばに活躍した英国の女流作家エリザベス・テイラーの小説「エンジェル」だそうな。オゾン監督にとっては初の英語作品である。 1900年代初頭のイギリスが舞台。 下町に住む上流階級にあこがれる16歳の少女が、念願の人気作家となり、富も名声もそして、愛する男までも手に入れる。 彼女は夢を全て実... [続きを読む]

» エンジェル [映画を観たよ]
煌びやか街道まっしぐら! [続きを読む]

» 映画〜エンジェル [きららのきらきら生活]
  ☆公式サイト☆1900年代初頭のイギリスを舞台に、幼いころから上流階級にあこがれ、16歳で人気作家としてセレブの仲間入りを果たした女性の夢と現実を描く人生ドラマ。監督は『スイミング・プール』の鬼才フランソワ・オゾン。1900年代初頭のイギリスの下町で、母親とともにほそぼそと暮らすエンジェル(ロモーラ・ガライ)は、あふれんばかりの想像力と文才が認められ、16歳にして文壇デビューを果たす。幼いころからあこがれていた豪邸“パラダイス”を購入し、ぜいたくで華美な暮らしを始める。そんな中、彼女は画家のエス... [続きを読む]

« バットマン・ビギンズ | トップページ | 七夕に想うBBM/ブロークバックマウンテン番外編5 »

フォト

BBM関連写真集

  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。
無料ブログはココログ