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2008年6月26日 (木)

再会の街で

Img20071112_2 
あらすじ: キャリアと愛する家族に恵まれ、誰もがうらやむ順風満帆な人生を送るニューヨークの歯科医アラン(ドン・チードル) ある日、彼は911の飛行機事故で妻子を亡くし、消息がわからなくなっていた大学時代のルームメート、チャーリー(アダム・サンドラー)を街で見かける。元歯科医のチャーリーは、今や世捨て人のような生活を送っていて……。(シネマトゥデイ)

アダム・サンドラーの出演作を観たのはこれが初めてだが,彼の顔は知っていた。なんだか髪型を変えるだけで,雰囲気が全然違う・・・。
Adamsandler
こちらが,おなじみの素顔

Adamsandler932
で,これが今作の彼。

これは,心に途方もなく深い傷を負い,現実の人生を生きることを放棄していたひとりの男性が,再会したかつての親友に心を開いてゆき,再生への一歩を踏み出すまでの物語だ。

チャーリーの家族を奪ったものは,911事件という設定だけれど,この作品からは,政治的なメッセージはあまり感じ取れない。

愛する者を一瞬にして奪われた人間の言いようもない悲しみや埋めようのない喪失感,そしてその傷は果たしていやすことができるのか・・・ということがシンプルに,そして丁寧に描かれていたように感じた。

あまりにも大きい悲しみから受けた心の傷の癒し方は,
きっと,人それぞれなんだと思う。


同じような体験をした人と語り合い,ともに泣くことで,悲しみを和らげる人々がいる。互いに傷口に薬を塗りあうようにして,彼らは悲しみを癒してゆく。じっと一人で抱え込み,ひたすら耐える人もいる。時間はかかっても,いつしか傷口はふさがり,悲しみは彼らの中で浄化されてゆく。

そしてチャーリーは・・・彼の傷はまだ生々しすぎて,少しでも触れられると,受けたときと同じ激しい痛みに襲われていたのだろう。
Cap004_2
思い出したくない・・・・触れられたくない・・・・。
誰かと分かち合うことなど,まだ到底できない・・・・。


妻子が生きていた頃の,幸せな生活の余韻をすべて捨て去り,まるでオタク学生のように,ゲームと音楽の世界に逃避しているチャーリー。彼が街で偶然再会した,かつてのルームメイトのアラン(ドン・チードル)と親しくすることができたのは,アランが彼の妻子とは面識がなかったから。彼の傷に直接触れるような質問や話題をしかけてこない人間だったから。

その気持ちは,とてもわかる気がする。
私も,すごく辛い体験をしたとき,自分の事情を気遣われるのが,いやだった。相手が善意のかたまりであるとわかっていても,何も聞かないでほしかった。傷口に包帯を巻きたくて,手を差し伸べているとわかっていても,
とにかく傷に向かって手を伸ばされること,それ自体が恐怖だった。

チャーリーの人生を取り戻してやりたいと願うアラン。娘婿と,悲しみを分かち合いたいと願う,チャーリーの舅夫婦。チャーリーから「君は若すぎる」と信用されない精神科医のアンジェラ。皆がチャーリーの幸せを願い,再生への道を模索するのだけど・・・・・。
Cap013
物語が進むにつれ,彼の心の傷の深さ,そしていまだに血を流し続けているような,その痛みに,言いようのない気持ちになる。ほんの少しでも彼の心の傷に触れると,パニック状態に近いキレ方をするチャーリー。彼としては,精一杯の自己防衛なのだろうけれど・・・。

周囲の人々はなんとか自分なりのやり方で,彼を社会復帰させたいと願うのだけど,効果がなかったり,裏目に出たり・・・。

それでも,少しずつ,夜は明けてゆく。
アンジェラの懇願にも近い言葉で,妻子の思い出をアランに初めて語るチャーリー。封印していたものを自分の中で解き放った彼は,やはりその反動のように,強い厭世感に取りつかれ,自暴自棄な事件も起こす。
002
劇的な癒しがあって,すべて解決するわけではない。
一進一退・・・・という感じ。そう,ちょうど重い病が少しずつ回復の兆しを見せ始めるときのように。舅たちとの和解も,心のつながりも,これから一歩ずつなんだな,と思わされる。

彼の再生への道のりは,きっとこれからもゆるやかに進んでいくだろう。彼の傍で,彼の心を優しく見守るアランたちに助けられて。
様々な表情を見せながら彼らを包み込む
ニューヨークの街並みが美しい。

とても心に沁み入る,優しい物語だった。

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映画 さ行」カテゴリの記事

コメント

 ななさん、こんばんわ
これも年間パスポートで見ました。アダム・サンドラーは「50回目のファーストキス」「もしも昨日が選べたら」を見てますが、今回はシリアス?路線でしょうか?でも病んでるせいかそんなにシリアス=真面目には見えなかったですが(笑)でもラストの方に近づくに従い、どれだけ辛かったかがわかりました。ラストの方であの同じく病んでるドン・チードルに迫った女性とうまくいったんでしょうか?あの女性の医者に迫るシーンは何だか笑ってしまった。
 その真面目でいい人キャラのドン・チードルは演技うまいし、いい味出してましたよね~?大好きな俳優さんです。こんなにいい人って珍しいってか、僕は大好きですけどね。あんな友人がいたら幸せだ~

ななさん、こんにちは。
ななさんの傷ついた時のことと、この映画とを書いている部分、じ~んと来ました。

アダムサンドラーは、実はちょっと苦手な外貌だったのだけれど、この映画では、結構好みのルックスでした(髪型や服装で、そこまで変わるんか~自分w)

舞台や音楽や小物(あのスケーター?みたいなやつ)も良かったですね。

イニスJrさん こんばんは
これもご覧になったのですね~。なんだかミニシアター系のヒューマンものの好みが似てるような気が・・・。
アダム・サンドラーって顔は知ってたけど,これが初見です。本来は,ラブコメ路線のひとなのでしょうか?いつもの髪型より,この作品の髪型のほうが男前度は上がってるような気がしました。シリアスな役もうまいですね。(ったって,彼の他の演技を観たことないんですけどね)
ラストで病んでる女性(彼女は「トロイ」でヘクトルの妻役でしたね)とロマンスが始まりそうな予感はしましたね。でも,実際のところ,病んでる同士はうまくいかないと思いますよ~。だって,どっちも包容力ないから。
ドン・チードルは「これぞ善人!」という役が似合いますね。この作品でも,彼の決して押しつけがましくはないけど,たゆまない優しさのおかげで,チャーリーは救われたのだと思います。男性同士の友情っていいですね~。
明日はいよいよ!「インディ」観に行きます。ご覧になりましたか?ハリソンというより,シャイア君も目当てなんですが。それと,「奇跡のシンフォニー」。これも,ハイモア君より,ジョナサン・リース・マイヤーズ目当てですけど・・・

latifaさん,こんばんは
今回はTB届きました!嬉しい!
私からおうかがいしようと思っていたのに
先を越されてしまいましたね~。後ほどおうかがいいたします。

>ななさんの傷ついた時のことと、この映画とを書いている部分、じ~んと来ました。
あはは,どんな人生送ってきたんだ?と思われるかも。
でも,私もかなりつらい時期があって,結局誰にも触れられることを拒否したまま
自分の中で封印→風化させたクチです。
ただし,私はその間も,チャーリーみたいな世捨て人にはなりませんでしたけどね。
チャーリーほどの悲しみでもなかったし・・・
アダム・サンドラー,私も実はちっとも好みではないのですが
この映画の彼はなかなかよかったですね。
あの立ったまま走るミニ・スクーター,初めて見たけど乗ってみたいですね!


こんばんは!
私も昨日鑑賞しました。
いい映画だったねー。
アダム・サンドラーのシリアスな演技に泣いてしまった。。
ほんと辛い体験をした人しかわからない悲しみがよく描かれていて
心にしみました。
クスッと笑えるシーンもありで、後日感想かきまーす!

こんばんは!
アイマックさんも,同じ作品見たんだね~(嬉)
いい映画でしたね,人間がとてもよく描けてて。
傷ついている人に対する接し方,とかもいろいろ考えさせられたわ。
無神経は一番いけないよね。
アイマックさんの感想も楽しみです!
またアップしたらTBさせてくださいね。

ななさん、こんばんは。
チャーリーが夜、一人でミュージカル映画を観ているシーンに胸が詰まりました。あのミュージカルはフレッド・アステアとリタ・ヘイワース主演の作品ですが、とてもハッピーな作品なんですよ。だから、余計に彼の孤独が際立って・・・。
アダム・サンドラーは本当に良い演技でした。コメディ俳優としての彼しか知らなかったので、ここまでの演技ができるとは・・・と驚きました。

mayumiさん おはようございます。
チャーリーのミュージカル鑑賞シーン,
私も印象に残りました。
アステアのあの作品(題は知らないけど)のあのシーン
よくあちこちで目にしたことがありますが
有名なシーンなのでしょうか。
アダムは初見でしたが,ほんとに心に響くいい演技をみせてくれました。
「こんなひと,いたんだ~」と驚きでしたね。

アダム・サンドラーものはいろいろ観ているんですよひらりんは。
その中でも、この作品が一番シリアス演技でしたね。
たいてい、おちゃらけキャラか脳足りん系が多いんです。

ひらりんさん こんばんは!
アダム・サンドラーにお詳しいのですね~
で,おちゃらけキャラか脳足りん系?
それでは,この作品では180度違ったキャラを演じたわけですね~。

こんにちは〜
感想UPしました。
アダム・サンドラーには泣かされてしまいました。。
苦しんでる姿が痛々しくて・・・
人生相談のようなお話で、とても共感できました。
哀しみも人それぞれ大小があるけど、時間がかかっても人は前へ進んでいくようになってるんだね、
NYの町並みが優しく感じました。

ななさん、メッセージありがとう。
TBごめんなさいね。拒んでるわけではないんだけど、エキサイトはどうかすると不安定。申し訳ない。
この作品観るまでは、あちこちの作品でドン・チードル観すぎていたし、又ハリウッド的に9.11で感動を…って思ってみたらよかった。アダム・サンドラーちょっと見直した。法廷では思わず涙ぐんでしまったわ。

アイマックさん こんばんは
レスがいつもより遅れてすまんです・・・
ただいまBBMに遭難中だから・・・
チャーリーの告白シーン,アダムの切ない泣き顔が
涙を誘いましたよね!

>哀しみも人それぞれ大小があるけど、
>時間がかかっても人は前へ進んでいくようになってるんだね、
そうだね~,悲しみから逃避するのも本能なら
悲しみをを癒すのもまた人間の,
生きてゆくためには必要な,大切な本能ですね。
いろいろ考えさせられる,いい映画でしたよ~。


シュエットさん こんばんは
いえいえ,ココログも負けないくらい不安定ですよ~
FC2さんからのトラバを,がんがんはじいちゃう悪いコです,ココログ。
いい意味で予想を裏切られた作品でしたね。
ドン・チードルはたしかにこの作品でも善人なのだけど
一味違った,「気弱さ」がよかったです。
あんなに奥さんの尻に敷かれちゃって・・・
>アダム・サンドラーちょっと見直した。
え?今までそんなに彼の印象悪かったの~~?

今の世の中、傷つくことが増えています。結果として犯罪に走ってしまったり、この主人公のように自分の殻に閉じこもってしまったり。本当は家族の愛が心を少しずつほぐしてくれるのが理想なんだけど、彼の場合はその家族を突然失ってしまったわけで。
やりきれない辛さをA.サンドラーがうまく演じてました。D.チードル演じる男性の不完全さにも好感を持ちました。

※TBがうまくいかないみたいです。また改めて。

クラムさん
TB,ご迷惑かけてます。ココログは不安定なんですよ~。
家族を失うことほど,辛いことはないですね。
誰にも打ち明けられないとしたら,殻に閉じこもるしかないですよね。
コメディを演じられるひとって,案外シリアスもうまい人がいますね。
A・サンドラーもそうですが、ウィル・フィレルの「主人公は僕だった」を観たときもそう思いました。
ドン・チードルの不完全さ,よかったですね。
ある意味,不完全なところもあるひとでないと,相手の痛みはわかりませんから。

お邪魔します~

いい映画でしたね。
重めでしたし、気分が明るくなるようなストーリーではないですが、希望が持てるラストが好きでした。

最後ご両親との会話に泣けました。

こんばんは☆
重たい内容だけどちょこっとユーモアもあったりして。。とてもステキな作品でしたね。
アダム・サンドラーがあんな演技派っぽいの初めてみました!
さすがのドン・チードルといい感じでしたね。
あの乗り物も楽しそうだったなー☆

おお,hitoさん,お久しぶり
TBたくさん,ありがとうございました~。
ラストの救いがいいですね。
人間の再生能力っていいなぁ・・・としみじみ思ったし
ひとは一人じゃないんだなって,感じさせてくれる物語でした。
チャーリーが義父母にやっと心を開きかけたときのあの表情や
キスされて思わず泣いちゃう義母の姿も心に残りましたね。

きららさん~
アランとチャーリーのコンビは,微笑ましいセリフもありましたね。

>アダム・サンドラーがあんな演技派っぽいの初めてみました!
私の方は,そもそもアダム本人をを初めてみましたよ~
今度は逆に演技派でないアダムも観てみたいわ。
あの乗り物,一度乗ってみたいですね。ただし誰かの運転でその後ろに・・・


誰しも、本当に心がボロボロになるくらい傷ついたら
そのことをなかったことにしよう、忘れよう忘れようとする
という気持ちになるの、すっごく良くわかるなぁ、と思いました。
実際触れられるのも嫌だと思うし。
ななさんが書いてらっしゃるように、徐々に徐々に、一進一退を繰り返しながら・・ですよね。
自分もボロボロなのにあの両親にかける言葉に、もう胸が詰まりました。
911を前面に出してなくて、誰も少しは心を病んでたり
悩みがあるんだよって所ですごくすんなり入っていけたと思いました。
サンドラーの素晴らしい演技と、私はこの映画で2度目となる彼の長髪に、クラクラもんでした^^
彼は見れば見るほどどんどん素敵に見えてきたし、素晴らしい役者さんだなぁ、と思いました♪

ななさんこんにちは、TBエコーが遅れちゃいました。

この作品はストーリーも素晴らしかったけどうまくストーリ
ーの良さを引き出していたのはアダムさんの演技ですよね
ドンさんは一歩引いた感じでアダムさんの演技を支えていた
しなんか総てが見事でした。
裁判のシーンではなぜ彼があんなに攻められなければならな
いのかいたたまれなかった。
あの弁護士は心底むかついたよ(^^;あの場にいたら殴り
かかってたかも、だいたい生き残った彼も犠牲者であること
を忘れてるよね、そういうこともこの作品は言いたいのかも

メルさん,TB,コメントありがとう

アダム・サンドラーの長髪2度目ですか?
彼は長髪の方が素敵に見えますね。
繊細で,観る者の心に響く素晴らしい演技でしたね。

この作品は,耐えがたい悲しみから受けた深い傷が
どのように癒しを迎えるのか,
リアルに,真摯に描いていたように思えました。
劇的な展開や,いかにもな感動シーンがなく
淡々と進むストーリーや,押しつけがましくない役者の演技のおかげで
深い余韻を残す,素晴らしい物語になっていましたね。


せつらさん こんばんは
アダム・サンドラーの演技はほんとうに見事でした。
彼をキャスティングした製作側も素晴らしいですね。
裁判のシーン・・・・同じような傷を負ったものでないと
決して相手の痛みには共感できないのかなぁ?
でも両親も同じ痛みを体験したわけだし,下宿の管理人の婦人はたとえ体験してなくても,チャーリーの心情を理解できていたから,要は人柄か・・・?
あの弁護士はサイテーでしたね。判事にガツンと言われていい気味だったわ。

ななさん、こんにちは
いい作品でしたね。
アダム・サンドラーはコメディというイメージが
あったので、いつもと違う彼にちょっとびっくり。

同じ痛みを分かち合うことで癒されることもあるけれど
あまりに痛みが激しいと、それすらできないことはありますよね。
その痛みに触れられると攻撃的になったり、その人を憎むように
なったり……。チャーリーもそんな気持ちだったのかな、と思います。アランと出会ったことによって、少しずつその痛みに向き合う
ようになったけれど、それは彼にとってはとても苦しいことだと思うし。でも、それが癒されることの第一歩になったのかも。
大切な人を失った時は、後悔ばかりが先にたつけれど、少しずつ
癒されて、チャーリーも奥さんと娘たちの笑顔や楽しい時のことを思い出せるようになれればいいな、と思いました~。

りらさん こんばんは
私はアダムのコメディ未見なんですよ~
このシリアス演技が彼を観た最初なので
彼がコメディな演技をするというイメージがわきません~。
でも,どっちもできるってことは,いい俳優さんですよね!

>同じ痛みを分かち合うことで癒されることもあるけれど
>あまりに痛みが激しいと、それすらできないことはありますよね。
分かち合う以前に,触れられることが恐怖になってしまう・・・
そんな激しい痛みもあるんですよね。
自分自身も,傷のことをなかったことにしてしまいたいから
治療よりも封印のほうを無意識に選択してしまう・・・
ある日突然家族をいっぺんに失うなんていう悲しみは
アダムのような反応を取らせてしまうんだっていうことが
とってもリアルに思えて,単なる感涙ものとは違った感動を覚えましたよ。


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