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2008年6月の記事

2008年6月29日 (日)

奇跡のシンフォニー

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見よ!この可愛さ!
 (フレディ・ハイモア君ね)

音楽の天才(ほとんど神童に近い)の家なき子物語。と~っても純真で,かわいらしくて,優しいお話ではありました。ただし,期待してたほど,泣けなかったけど。(実はちっとも泣いてない)

あらすじ: 孤児院で育ったエヴァン(フレディ・ハイモア)には豊かな音楽の才能が備わっていた。ある晩、エヴァンは不思議な音を追い、施設からマンハッタンへと導かれる。さまざまな出会いにより、エヴァンの音楽の才能は開花。同じころ、離ればなれとなっていた両親も、それぞれの思いを胸にニューヨークへと赴いていた。(シネマトゥデイ)
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ハイモア君演じるエヴァンは,演奏が上手い,とかいうレベルじゃなく,自然に心に音楽が湧きあがるようなモーツァルト級の天才らしい。身の周りのあらゆる音が,彼には音楽に聞こえ,誰に教わらなくても,どんな楽器でもいつのまにか弾きこなす。

彼の両親もまたミュージシャン。
母のライラ(ケリー・ラッセル)はジュリアード出身のチェリスト。父のルイス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)はバンドのヴォーカリスト。彼らはロマンスに導かれて一夜を共にした後,別れることを余儀なくされるが,ライラはすでにエヴァンを身ごもっていた。出産は演奏活動の邪魔になると考えたライラの父は,交通事故で早産したエヴァンを,ライラには死産と告げて勝手に施設に預けてしまう。

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今でも愛しているかつての恋人が自分の子供を産んだことを知らないルイス。自分の産んだ子が死んだと思っているライラ。そして,いつの日か両親に巡り合えると信じているエヴァン。

巡り合うべき家族である彼らは,いつどのようにして出会うことができるのか。賜物として天から彼らに与えられた音楽は,どのような再会の奇跡を起こすのか。まるで「君の名は」のような,はたまた韓国ドラマのような,出生の秘密と,やるせないすれ違いが描かれていたのだが・・・。
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エヴァンの音楽の才能が認められていきなりジュリアードで成功って,いくらなんでも不自然・・・とか,エヴァンもライラもルイスも,純情すぎて嘘っぽいとか,耳に残るほどの曲がなかった(あくまでも私の場合)とか,細かいところはけっこう気になった。(あと,ハイモア君のギターはうまかったけど指揮はイマイチだとか・・・

一番じ~~んとしたのが,街角でギターを弾いてるエヴァンと,ルイスが互いのことを知らないままギターを通した交流をする場面。
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父子ということはお互いまだ知らないのだけど,心が通じ合って二人でハーモニーを奏でるさまは,胸が熱くなった。ここは場内でも,鼻をすする音がたくさん聞こえたなぁ。観客はおばさま連中が多かったし。・・・・え,私?いや,ここでもやっぱり泣くほどではなかった。

ジョナサン・リース・マイヤーズは,アクの強い役が多いし,またそれが似合うのだけど,この作品の彼は,爽やかで一途で,程よい哀愁も感じられて,素敵だった。彼自身,わけありの子供時代を送ってきたから,この作品にはもしかしたら思い入れがあるかもしれない。それにしても,彼は歌もギターも上手い。(歌い方はちょっと癖があるけど,そこがまたいい。)

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ロビン・ウィリアムズが,「オリバー・ツイスト」のフェイギンのような,家なき子たちの面倒も見ながら食い物にもしているストリート・ミュージシャンを演じていて,異彩を放っていた。いまいち説明不足のキャラではあるが,さすがの貫録で作品を締めていたと思う。

2008年6月28日 (土)

インディ・ジョーンズ/ クリスタル・スカルの王国

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文句なしに楽しい作品だった。
ほぼ20年ぶりのインディ。
うう…冒頭からなつかしくて涙が出そう・・・・。

ハリソン翁(失礼!)は姿勢はちょっとじじむさくなったけど,あの飄々としたたたずまいや時折見せるいたずらっぽい表情や向こう見ずなところは健在。過激かつスピーディーなアクションシーンだって,手加減なし。さすがに彼が敵に取り囲まれたり,ボコられたりするシーンは「ジイサンをいじめるな!」と思ってしまったけどさ。
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今回のお宝は,南米アマゾンの山奥に眠るクリスタル・スカル(水晶ドクロ?) 何でも人を洗脳するミラクルパワーがあるそうな。

それを狙うのはスターリンの秘蔵っ子の女軍人スパルコ。
この役を演じたケイト・ブランシェットが最高にクール。
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もともと凛とした姿勢や,腹の底から響く低音のハスキーボイスのせいで,男前な役が似合う彼女だが,黒髪でシャープなシルエットのボブで,軍服に身を包んだ彼女は,怖さも迫力も執念深さも,ただものではなかった。(蛇を連想したくなるようなキャラね。)

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そして今回インディと行動をともにするのは,母親と父がわりのオクスリー教授を誘拐された青年マック。(シャイア・ラブーフ) 実は彼の母親はインディの元婚約者で,マックはインディの●●だった…ということが判明するのだが…。彼は、この時代(50年代)の流行なのか,オールバックに撫でつけた髪型の維持に気を使っている血の気の多い若者だが,ものに臆することのない不敵さとか,とっさのピンチの無茶な切り抜け方などは,やはり蛙の子は蛙と思わされる。シャイア君,今回はキリっとしまって,なかなかカッコよかった・・・。

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ンディ・シリーズには欠かせない,カーチェイスしながらの格闘とか,虫さんの大群の襲撃とか,ジェットコースター的な脱出劇(今回は滝下り)とか,建物の派手な倒壊とかは,今回も漏れなく楽しめた。

物語が佳境に入ると,インディ御一行は,まるで遊園地の絶叫アトラクションをノンストップでまわっているかのよう。

この,ありえないくらい激しく楽しいアクションの連続(手に汗握るのだけど,同時にどこかコミカルだから,観てて楽しいのが特徴)と,窮地に陥った時のインディの「ええい!ままよ!」という無茶な戦法が功を奏するところが,インディ・シリーズの醍醐味のような気がする。「そうそう,インディのアクションってこんなに楽しかったんだ~!」と,過去のインディ作品を思い出しながら観た。

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そして、このシリーズは必ず、「魔法・魔術」とか「宗教的な奇跡」とかいう,人智を越えたパワーが最後に登場するのだが,スピルバーグだし,そろそろアレを出すかな〜と思ってたら,やっぱりアレが出てきた。(さすがに,アレにはちょっと引いてしまった。

そしてラストは,意外にも,めでたく末広(すえひろ)で。最後に,吹き込んできた帽子をマックが拾うシーンでは,「お,後継者確定かな?」と思ったが,すかさず拾い上げて被ったのは,やはり他ならぬインディ。まだまだ現役だとその後ろ姿が語っているようで,心にくいラスト。

久々に元気なインディに会えただけでも心踊る一作だ。スピルバーグとルーカスが,おそらく大はしゃぎしながら,目を輝かせて作った作品じゃないだろうか。

2008年6月26日 (木)

再会の街で

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あらすじ: キャリアと愛する家族に恵まれ、誰もがうらやむ順風満帆な人生を送るニューヨークの歯科医アラン(ドン・チードル) ある日、彼は911の飛行機事故で妻子を亡くし、消息がわからなくなっていた大学時代のルームメート、チャーリー(アダム・サンドラー)を街で見かける。元歯科医のチャーリーは、今や世捨て人のような生活を送っていて……。(シネマトゥデイ)

アダム・サンドラーの出演作を観たのはこれが初めてだが,彼の顔は知っていた。なんだか髪型を変えるだけで,雰囲気が全然違う・・・。
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こちらが,おなじみの素顔

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で,これが今作の彼。

これは,心に途方もなく深い傷を負い,現実の人生を生きることを放棄していたひとりの男性が,再会したかつての親友に心を開いてゆき,再生への一歩を踏み出すまでの物語だ。

チャーリーの家族を奪ったものは,911事件という設定だけれど,この作品からは,政治的なメッセージはあまり感じ取れない。

愛する者を一瞬にして奪われた人間の言いようもない悲しみや埋めようのない喪失感,そしてその傷は果たしていやすことができるのか・・・ということがシンプルに,そして丁寧に描かれていたように感じた。

あまりにも大きい悲しみから受けた心の傷の癒し方は,
きっと,人それぞれなんだと思う。


同じような体験をした人と語り合い,ともに泣くことで,悲しみを和らげる人々がいる。互いに傷口に薬を塗りあうようにして,彼らは悲しみを癒してゆく。じっと一人で抱え込み,ひたすら耐える人もいる。時間はかかっても,いつしか傷口はふさがり,悲しみは彼らの中で浄化されてゆく。

そしてチャーリーは・・・彼の傷はまだ生々しすぎて,少しでも触れられると,受けたときと同じ激しい痛みに襲われていたのだろう。
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思い出したくない・・・・触れられたくない・・・・。
誰かと分かち合うことなど,まだ到底できない・・・・。


妻子が生きていた頃の,幸せな生活の余韻をすべて捨て去り,まるでオタク学生のように,ゲームと音楽の世界に逃避しているチャーリー。彼が街で偶然再会した,かつてのルームメイトのアラン(ドン・チードル)と親しくすることができたのは,アランが彼の妻子とは面識がなかったから。彼の傷に直接触れるような質問や話題をしかけてこない人間だったから。

その気持ちは,とてもわかる気がする。
私も,すごく辛い体験をしたとき,自分の事情を気遣われるのが,いやだった。相手が善意のかたまりであるとわかっていても,何も聞かないでほしかった。傷口に包帯を巻きたくて,手を差し伸べているとわかっていても,
とにかく傷に向かって手を伸ばされること,それ自体が恐怖だった。

チャーリーの人生を取り戻してやりたいと願うアラン。娘婿と,悲しみを分かち合いたいと願う,チャーリーの舅夫婦。チャーリーから「君は若すぎる」と信用されない精神科医のアンジェラ。皆がチャーリーの幸せを願い,再生への道を模索するのだけど・・・・・。
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物語が進むにつれ,彼の心の傷の深さ,そしていまだに血を流し続けているような,その痛みに,言いようのない気持ちになる。ほんの少しでも彼の心の傷に触れると,パニック状態に近いキレ方をするチャーリー。彼としては,精一杯の自己防衛なのだろうけれど・・・。

周囲の人々はなんとか自分なりのやり方で,彼を社会復帰させたいと願うのだけど,効果がなかったり,裏目に出たり・・・。

それでも,少しずつ,夜は明けてゆく。
アンジェラの懇願にも近い言葉で,妻子の思い出をアランに初めて語るチャーリー。封印していたものを自分の中で解き放った彼は,やはりその反動のように,強い厭世感に取りつかれ,自暴自棄な事件も起こす。
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劇的な癒しがあって,すべて解決するわけではない。
一進一退・・・・という感じ。そう,ちょうど重い病が少しずつ回復の兆しを見せ始めるときのように。舅たちとの和解も,心のつながりも,これから一歩ずつなんだな,と思わされる。

彼の再生への道のりは,きっとこれからもゆるやかに進んでいくだろう。彼の傍で,彼の心を優しく見守るアランたちに助けられて。
様々な表情を見せながら彼らを包み込む
ニューヨークの街並みが美しい。

とても心に沁み入る,優しい物語だった。

2008年6月20日 (金)

ラスベガスをぶっつぶせ

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いかにも痛快そうな邦題。「オーシャンズ・シリーズ」っぽいテイストかな~?と期待していたが・・・

これが案外,教訓じみた,若者の成長物語の要素もあったのが意外だった。ま,あんなやり方がまかり通ったまま終わると,世の中はアタマのいいもん勝ち!というオチになって,ちと後味が悪いかもしれないよね。
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あらすじを詳しくバラすと反則なので,全体から受けた印象を羅列すると。

私は自分が完全な文系で,その反動のように数字オンチなので,ベンみたいな数字の天才が,まぶしくて仕方がない。(何せ,私の一番苦手な教科は,数学と物理と化学だったから・・・)だから,歩く計算機のようなベンの頭の中がどうなってるのか,のぞいてみたい気がする。アタマの中をきっといつも数式が飛び交ってるんだろうな,それも整然と。

最初はどちらかというと,地味でモッサリしたガリ勉生にしか見えなかったベンが,ラスベガスで成功をおさめ,自信と富を手にしていくうちに,どんどんあか抜けて,モデルのようにかっこよく変貌していくのを見るのは,確かに痛快だった。
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しかしなぁ,彼らが自分の武器である「数学の才能」を駆使して,あのような不正(違法ではないらしいが,不正には変わりはない)をしたのは,若者特有の向こう見ずな腕試し&肝試しとして,「大目に見てあげようかな?」と思わなくもなかったけど,彼らをある意味食い物にしていた「やくざの元締め」みたいな教授はいただけない。

ベンたちが何の良心の呵責もなく,かせいだ大金を湯水のように使って放蕩三昧を繰り広げるシーンは,さすがにか~るくムカツいたりしたのだけど・・・

そうこうするうちに,くだんの教授は「いただけない」どころか,人間的に判断してとんでもない悪党だってことがわかり・・・
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いや~~,ケビン・スペイシー(結構好き),こんなヤなやつの役なのか?と途中でびっくりした。画面に乗り込んで一発殴りたくなるような,ほんとにいやなヤローだよ。

でも,ベンたちにとって順風満帆だった物語が一気に暗転し始めたとき,心の中で「ほ~~ら,言わんこっちゃない。バチが当たったぁ~~」と叫んだ観客は,きっと私だけではあるまい・・・・。

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数学の天才って,こんなこともできるんだぁ・・・と,目からウロコの作品でもあり,同時にやっぱり真面目に地道にまっとうに生きていくのが何より,と妙に納得できた作品でもあった。最後まで先の読めないストーリー展開は面白かったなぁ。

主演のベン・スタージェス君は,最初はそういいと思わなかったけど,中盤あたりからどんどん洗練されて,なかなかよかった。「可愛いかっこいい」タイプですね。濃いまつ毛にふちどられた黒い瞳がキュートだ。トムクルをかわいくした感じかな~~?要チェック!

2008年6月16日 (月)

ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛

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実はカスピアン王子だけを目当てに,劇場に出かけたといっても過言ではなかったが… ちょっと感動 した。ただし,おそらく皆さんとは異なるツボで。

原作者のC・S・ルイスは神学者でもあるので,この「ナルニア国物語」も,キリスト教の神髄をファンタジーの形で子供たちに伝えようとするルイスの意図が込められているように思う。実際,キリスト教書店や,教会の子供用図書コーナーには昔から「ナルニア国物語」のシリーズが置いてあった。
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キリスト教の世界観では,
善悪の闘い=神とサタンの闘い。
人間は神に従うか,サタンの側につくか・・・・終末の日まで,この世界は実は神の軍勢と悪魔の軍勢の終わりなき勢力争いに晒されている。そして最後の戦い(ハルマゲドン)まで,サタンの軍勢の方が優勢に見える。で,この物語の登場人物などをキリスト教的に解釈するとしたら・・・

◎ナルニアの動物や民=キリスト教徒
◎テルマールなどの敵国=異教徒
◎白い魔女=サタン
◎ペペンシー兄妹=キリスト教の指導者(使徒)たち
◎アスラン=イエス・キリスト
◎カスピアン王子=敵の異教徒から改宗した指導者

・・・・のような気がする。
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第1章 ライオンと魔女」の隠されたテーマは,サタンの誘惑に負けた二男エドマンドの罪(=人間の原罪)の身代わりに処刑されたアスラン(=キリストの十字架の死と復活)だったと思う。

で、この2章は何を言いたいのかな~~と,そこはついついキリスト教徒の深読みをしてしまった。そしたら,なんだかいろいろ信徒の心得みたいな教訓がこめられているように思えてならなかった。

心得その① 
信仰とは,見て信じるものでなく,見えないものを信じる力である。幼児のように純粋に信じる心を神は祝福する。(末っ子のルーシーだけがアスランに会えたのはそのせい?)
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心得その② 
戦いのときは自分の力に頼らないこと。神の力なくしては勝利はない。特にこのような,光と闇との戦いの場合は。(はじめ自分たちの力だけで戦おうとしていたピーターが苦戦したのは,アスランを信じなかったから。神が不在のように思える時も,信じて,
まず神にすがらなくてはならない。)

心得その③
 
いつの場合も,サタンは懇願し,誘惑し,あざむくものである。(特に指導者に対するサタンの誘惑と攻撃は大きい。ピーターもカスピアンも白い魔女にあわや,騙されそうに・・・)

心得その④
 
私的な復讐心を神は喜ばない。「復讐は,私の仕事だ」と旧約聖書にあるとおり。たとえ敵でも,改心すれば赦される。(敵の息の根を止めないシーンや,赦すシーン,あれも決してヘタレなわけじゃないんですね~。)

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・・・と,私にとっては結構,説教くさい物語でございました。信徒に対する「気をつけましょう」という教訓がいっぱいあって,襟を正したくなることしきり。特に指導者であるピーターやカスピアンでも,傲慢とか,私的復讐心とか,悪魔の誘惑とかには弱いものだ。人間だから。

アスランにも,「隠れてないで,早く自分から助けに来いよ~~」とも思ったけど,人間の自由意思も尊重している神は,「真剣に呼び求めるまで来ない」のだ。・・・わざとね。

しかし,こんな抹香くさいことを抜きにしても,前作よりは見所の多い,質の高いファンタジー作品だったと思う。
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前作は,ペペンシー兄妹がまだ子供っぽかったから,戦闘シーンも何か子供だましみたいだったが,4人ともそれぞれ成長していたので,闘うシーンも様になり,迫力や面白さがぐっと増していた。

お目当てのカスピアン(ベン・バーンズ)は,東洋的にも見える顔立ち(キアヌ風?)で,黒曜石の瞳の持ち主。この方,スタイルや身のこなしもとってもかっこよくて,まさに王子のルックス!中世のコスチュームの似合うこと!

そしてもう一人,長男のピーターがナイスガイに成長しつつある~~!(輪郭とかが,若い時のヒース・レジャーにちょっと似てる・・・,と私には思えて・・・
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それにしても,ファンタジー作品のCGねずみやCGリスって,魔法にかけられてでも思ったけど,ほんと可愛いなぁ~~,しぐさや表情が。

2008年6月15日 (日)

フロム・ヘル

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リリースされたばかりの,スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師のDVDを観たら,同じジョニー主演の,この作品を再見したくなった。

舞台は同じ19世紀の陰鬱なロンドン・・・そしてコスチュームが世界一似合うジョニーが演じたのは殺人鬼の役ではなく,捜査の指揮をとるアバーライン警部

白状すると,私は「実際にあった迷宮入りの連続殺人犯の物語」が大好き。なぜ好きなのか,説明しろと言われても困るけど・・・。
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ゾディアックとか,「切り裂きジャック」とかはお気に入り殺人事件のベスト・スリーに入る。この作品を観て,「切り裂きジャック」関連の文献をいろいろ調べて,映画のストーリーと比べるのも楽しみの一つだった。(被害者の女性の名前とか,彼女たちの背景とか)しかし,これは迷宮入りの事件だけに,いろんな犯人説が今も残っていて,映画ではフリーメイソンと王室の陰謀説を採用していた。

ロンドンの貧民窟の最下層の娼婦たちばかり狙った事件。猟奇的な変質者の仕業と思われたこの事件の背後には,実は途方もなくスケールの大きい犯人がいた・・・・というのがなかなか面白いし,この時代の秘密結社の何とも不気味な雰囲気にも興味をそそられる。

全編,ダークな映像だけど,そのなかで多用されている「赤」の色彩がはっとするほど美しい。多量に流される血の色は,まるでトマトジュースのようなオレンジがかった鮮やかな「赤」だ。
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そして,作中に使用されている当時の家具や小物や衣装なども,細部に至るまで,こまやかな配慮が見られる。特に,ジョニーがアヘン入りアブサンを飲みながら入浴するシーン浴槽の美しいこと!あれは芸術品だ。(中に入ってるジョニーもまた芸術品・・・)

ジョニー演じたアバーライン警部は,妻子を失ったトラウマや,こんな暗い時代の犯罪(なにしろスウィーニーやオリバー・ツイストの時代だから)に深く関わる仕事のストレスのせいか,アブサンやアヘンを常用している。そして彼は犯罪の予知夢めいたものまで見ることができる。

凄惨な犯罪の捜査だけでなく,
犯罪者の心の闇まで覗くことができるアバーライン。
ほとんど孤軍奮闘で巨大な陰謀と闘い,
愛する女性を犯人の毒牙から助けるアバーライン。

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彼を演じたジョニーの,知的だけど,どこか憔悴した,放心状態のような雰囲気.。やっぱりなんてセクシーな男性(ひと)だろう・・・

グロが極端に苦手な方にはお勧めしないけど,テンポのよいストーリー展開や,ダークな映像美や,迷宮入りの事件に,納得のいく犯人像をちゃんと描いている点では,高評価な作品だと思う。
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・・・それになんといっても,
ジョニーが美しいったら!!!

2008年6月13日 (金)

4分間のピアニスト

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なんとも,洒落た・・・というか意味ありげな,センスのよい邦題だ。加えて,手錠につながれたヒロインの後姿のポスターに,ひどく興味をそそられる。

あらすじ: 80歳になるトラウデ(モニカ・ブライブトロイ)は、60年以上女子刑務所でピアノを教えている。彼女は何年も貯金して新しいピアノを購入するが運送に失敗し、その責任を追及される。早急に彼女のピアノレッスンを受ける生徒を探す必要に迫られたトラウデは、刑務所内でジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)という逸材と出会う。(シネマトゥデイ)

これは,二人の女性トラウデ・クリューガー先生と女囚ジェニーの,音楽をめぐる,闘いと絆の物語だ。
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たぐいまれなピアノの才能を持ちながら,,殺人の罪で服役中のジェニー。過去に,同性の恋人をナチに処刑された,重い秘密をもつクリューガー先生。閉ざされた塀の中で出会った二人の女性は,どちらも一筋縄ではいかない過去を持ち,他人と妥協も打ち解けもせず,最初から激しく反発しあう。

この二人に共通するものは
音楽に対する情熱のみ。

幼少のときからコンクールに数多く出場した経験のあるジェニー。しかし,彼女は,自分のなかに,激しく躍動する音楽をもっていた。「低俗な音楽はやめて」と,クラシックしか認めないクリューガー先生。

「低俗?でもこれは私の音楽よ。」
二人の心は近づいたと思うと,
すぐまた離れることを繰り返す。


内にためこんだ怒りを,ときに驚くほど激しく爆発させるジェニー。それは他者に対する自暴自棄な暴力となり,そんな彼女に戸惑いや怒りも感じるクリューガー先生。
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いつも自分の周囲に目に見えないバリヤーをはって,心の中に他人を入り込ませないように生きているようにみえる,クリューガー先生。前かがみの足取りや,深く刻まれた皺や時にその口を衝いて出る,他者への痛烈な皮肉・・・。顔の皺と同じように,彼女の人生に深く刻まれた傷跡とはどんなものだったのか・・・・。

それでも,二人をつなぐ,一見もろそうに見える絆は切れることはない。誰も理解してくれなくても,たとえ塀の中に囚われていても,自分の内に溢れだす「音楽」から逃げることができないジェニーと,そんなジェニーに「あなたの使命は演奏することよ」という確固たる信念で臨む先生との絆。

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先生の言いつけを守って,練習に励み,クラシックを見事に演奏してコンクールを勝ち抜くジェニー。でも,そんな彼女に刑務所内の女囚や看守からの嫌がらせや妨害は繰り返され・・・

いろんな難関を超えて,ついにジェニーは4分間だけ,オペラ座のコンクールで演奏することを許される。演奏を終えると,再び手錠が彼女を待っている。

そして,いよいよ運命の4分間,
彼女が弾いた曲は・・・・・。


出だしだけは,それまで彼女が練習を積んできたメロディーが美しく流れたが,その後,ジェニーは仰天するような,激しい即興曲を弾き始めたのだ!抑え込まれていた彼女の心,彼女の人生に対する怒りを,根こそぎぶつけるような演奏法で。
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この4分間の演奏は圧巻!だった。
まさにおきて破りの演奏の仕方とパフォーマンス。しかし,その中にたぎる嵐のような情熱が,聴衆の心を強く揺さぶり,演奏終了後は,会場は一瞬の沈黙ののちに,割れるような拍手に包まれる。

ジェニーの眼は,まっさきに恩師クリューガー先生の顔を探していた。「クラシックしか認めない」点では決して譲らなかった師が,今の自分の演奏を聴いて,どういう感想を持ったか,きっと彼女は知りたかったのだと思う。

そしてジェニーの目に映ったのは・・・涙ぐみながら,心からの拍手を送っている先生の姿だった。先生は,きっとこのとき悟ったのだろう。ジェニーの天賦の才は,楽譜通りに巧みに演奏することではなく,「創り出す」才能なのだと
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恩師の目に浮かぶ涙と賞賛の表情を目にして,ジェニーはやっと自分がほんとうに理解してもらえたことを確信したのか・・・彼女もまた,先生に向って,うっすらと満足げな微笑みを浮かべる。

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まさに本当に繋がったこの瞬間・・・・
ジェニーの手には,かちりと手錠がかけられ,
物語は幕を閉じた。

二人の女性の過去や抱えているトラウマをもっとわかりやすく描いてほしかった気もするが・・・この作品の主演ふたりの女優の火花を散らすような真剣勝負は見ごたえがあり,特に新人のハンナー・ヘルツシュプルングの,追い詰められた手負いの獣のような演技は,素晴らしかった。

2008年6月11日 (水)

28週後・・・

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前作の「28日後・・・」は,その一味違ったテイストが結構好きな作品だった。主演のキリアン・マーフィーも好きだし。で,その続編の「28週後・・・」は,キリアンが出てないというだけの理由で,せっかく劇場公開されたのに観に行かなかったのだが,先日DVDで鑑賞してみて,驚いた。

ある意味,前作より面白い・・・というか,
完成度が高い。


もともとこのシリーズに登場するゾンビ・・・じゃなくて感染者は,筆舌に尽くしがたいほど凶暴で,発病するやいなや,全力疾走で人間を追いかける。その足の速さも恐ろしいが,感染する速さも類を見ない。噛まれるなり,血液をかけられるなりした被害者は,数秒後には感染し,瞬時に人を襲うモンスターに変貌する。

愛する家族や友人や味方が,一瞬ののちに自分を襲うという救いのない怖さがこのシリーズの特徴だし,オリンピックの陸上選手さながらの猛スピードで群れをなして追ってくる感染者集団の恐ろしさったらない。
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物語は,英国が感染者によって壊滅してから28週後。感染者は飢餓のため死に絶え,(ゾンビでない彼らは,食糧がなくなると死ぬ)NATO軍は英国の復興に乗り出し,外国で難を逃れていた人々の帰国が始まる。スペインから帰国したタミーとアンディの姉弟は,災難を生き残った父のドン(ロバート・カーライル)と再会し,母のアリスは感染者の犠牲になったことを知らされる・・・。

感染が収まったからと,安心した人々が帰国したロンドンで,再びあの地獄が始まるのだろう・・・という予測は容易についた。しかし,怖さやグロさは,前作をはるかにしのぐ,メガトン級のものだった。

安全地区を抜け出して生家に戻った姉弟(なんて思慮に欠ける!が,保菌者として生存していた母アリスを発見し,そこから恐ろしい悪夢が再び・・・・。
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軍隊はいざとなると全く頼りにならないし,脅威になることもある」というダークな教訓は,前作でも感じたけど,本作からも,ひしひしと感じる。

28週後に危険なしと判断して,はやばやと一般人の帰国を許した判断の甘さや,アリスを隔離していた病室になんの見張りもつけてないずさんさや,緊急事態になると,一般人まで無差別に「殲滅(せんめつ)」する非情さ・・・・。

そしてまた,「感染しているかも・・・」という危惧さえ思い浮かばず,保菌者の妻とディープ・キスしちゃうロバート・カーライル。一度見捨てた妻への謝罪と愛の気持ちが,あんな結果を生むなんて,なんという・・・・。

そう,この作品の恐ろしさは,感染者に襲われる恐怖だけではない。この手のハリウッド作品の,いわば「お約束」である,惨状の中ゆえに際立つ,ヒロイズムや救いの感動が全くないのだ。
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どう考えても善人で,主演のロバート・カーライルが早々と感染してあんなことになっちゃってから,なんか嫌な予感はしてたのだけど・・・。

崇高な自己犠牲のヒロイズムは,まったく報われない。
何があっても揺るぎない肉親の愛情や絆も存在しない。
善意はことごとく裏目に出,親切は途方もない仇になる。


まったくもって,やりきれない程の絶望と恐怖に襲われるが,実際にこんな惨状に見舞われたら,どれも起こりうることであり,リアルなところがまた恐ろしい。

それでも,パニック・ホラーとしては異色である,という点で,やはり面白かったし,スピード感やわかりやすさ,という点でも,前作よりよくできていたかも。それに全編に漂う絶望感は,ここまで徹底されると,かえって心地よかったりする。(私だけ?)

そこまでやるか?というくらい残酷でグロいシーン(眼潰しとか,スプラッターまがいとか)も出てくるので,そんなのが苦手な人には,決してお勧めしないけど。

そして,続編を作る気まんまんな意気込みも感じた。「28ヵ月後」「28年後」と続いていくのだろうか?それにしても28にこだわるのは何故?

2008年6月 7日 (土)

トロイ

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今頃~~?という古い作品の感想だが,この手の歴史スペクタクル(有名俳優が出演しているものに限る)は大好きなので,DVDも持っていて,定期的に見直している。「キングダム・オブ・ヘブン」とか「グラディエイター」とか「アレキサンダー」とか「ブレイブハート」とか,勇士たちの壮大な闘いの物語は,やはり何度観ても血が騒ぐのである。これは特に出演陣が美しかった (第一声がそれって・・・
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もちろん主役のブラッド・ピットは,40歳とは到底思えない見事な筋肉と運動神経で,闘いの場では,文字通り「蝶のように華麗に舞いながら的確に敵を倒す」カリスマ的な戦士アキレスをパーフェクトに演じていた。

複雑で激しく,やや未熟な面もあるアキレスの性格面も,人物描写がやや雑な脚本であるにもかかわらず,彼はうまく演じていたと思う。横っ跳びにジャンプして,目にも止まらない早業で敵の急所に槍を突き立てるあの技は何度観てもため息もの。

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・・・・しかし,私的には,この作品の中で私が一番シビレたのはエリック・バナが演じたトロイの王子ヘクトル。

もうもう,このひとは武勇もさることながら,人格者であり,理想的な王子,父親,息子,夫,そして兄なのだ。エゴイストでナルシストな面もあったアキレスとは対照的に,冷静で肝が据わっていて,広い心を持った,成熟度の高い「男の中の男」である。だからこそ,弟のしでかした歴史に残る不始末の尻拭いをするはめになるのだが・・・・。

Cap089
だもんで,アキレスとヘクトルの世紀の一騎打ちでは,内心ヘクトルを応援してしまう・・・。かれが倒されるシーンは,何度観ても辛いわ~~。

Cap080
そして,この作品では何度観ても「舌打ちしたくなるほど情けない」役なのがオーランド・ブルームが演じた,ヘクトルの弟パリス。

自国を滅ぼすもとになったヘレンとの軽率な恋とか,困ったときはすぐにパパやお兄ちゃんに泣きつくとことか,世間知らずな目論見の甘さとか・・・。
オ~,マイ・オーリー~~!(別にファンではない)
ほんとに,こんなキャラでよかったのか~~?

しかし,彼をダメ人間にしたのは,もしかしたら甘やかして庇ってばかりいた,父や兄の責任もあるかも~~?ママがいないから(早死にしたのか?)ふたりともついつい末っ子のパリスを甘やかしたのね,きっと。どっちにしても,これを観てからしばらくは「オーリー=弱虫」をつい連想してしまったわ(ゴメンよ~)

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んで,パリスにそそのかされてトロイまで駆け落ちしてきたスパルタの女王ヘレンのキャラも不完全燃焼だった・・・。

演じたダイアン・クルーガーは,「完璧」ともいえる美貌を,この作品であますところなく見せつけてくれたけれど,敵国の王子を狂わせるファム・ファタールかと思いきや,これが案外「気弱でいじいじと後悔」なんかするシーンがあるから,歯切れが悪いったら!

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ヘレンのキャラはね~~,なまじ善人の要素を入れずに,潔く悪女に徹した方がいいと思った。「わたしゃ,自分さえよければいいのよん♪」みたいなね。「後悔して泣くくらいだったら,最初からするな!後悔しても後の祭りなんだから,いい加減腹くくれ!」と思ってしまうじゃんか。

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それに比べると,愛を知らないアキレスに,癒しのひとときを与える役のブリセイス(ローズ・バーン)は,セレブ的美女のヘレンとは対照的な愛くるしいタイプ。しかし,彼女はしっかりと自分というものを持っていて,精神的にはずっとヘレンより強く,好感がもてた。

戦闘シーンやCGで再現したトロイの風景は圧巻だし,一度見始めたら最後まで,手に汗を握りながら,もしくはイケメンたちに見とれながら時間がたつのも忘れてしまう作品だ。

それにしても,何度観ても,鑑賞後は,
諸悪の根源のお前らが
生き残るのかよ~~ 

と絶叫したくなるけどね。

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・・・・おまけ画像。やっぱルックスはアキレスが好み

2008年6月 5日 (木)

ONCE ダブリンの街角で

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音楽が好きなので(声楽とピアノを少しやります)劇場で鑑賞する予定だったのだけど,直前に観た「ラスト、コーション」に圧倒されて,この作品は鑑賞予定を撤回して帰宅し,DVDになってからやっと観た。

いや,観たというよりは「聴いた」という作品ですね,コレは。

主人公はダブリンの街で,家業を手伝いながらプロのミュージシャンを夢見る,ひとりの男性。おんぼろギターを街角でかき鳴らし,自作の曲を歌う日々。・・・そしてそこへ現れたのが,花売りなどで生計をたてているチェコ移民の女性。彼女はピアノの才能があり,彼の曲を一緒に演奏することになる・・・・。

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これは,音楽を通して互いに惹かれあった,ひと組の男女の物語。そして非常にシンプルで,かつ,もどかしい恋物語。二人には「音楽」という固い絆が暗黙のうちにあったはずなのに,男性は夢に向かって歩み始め,女性の方は現実を捨てることができなかった。結局,彼二人の歩む道は,一度は交錯しても,再び離れてゆく。

彼らが惹かれあった理由って,すごくよくわかる。
音楽好き同士」,特に演奏を趣味とするもの同士の間には,言葉では言い表せない共通の言語というか,インスピレーションが存在すると思う。たとえ相手のことをよく知らなくても,とにかく,いっしょに演奏して,心地よいハーモニーが生まれた瞬間,彼らは「瞬時に心が通じ合う」のだ。

大好きなものを共有するときの,一体感や高揚感
のせいかもしれない。それって,お互い顔も知らないのに,共通の趣味で結びついてる私たちブロガーの間の絆にも言えることだけど。

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特に彼らは楽器だけでなく,歌もまたデュエットしていた。
異性とのデュエットって,私も体験があるけど,互いの声を寄り添わせようとするから,いやでも魂が共鳴するし,共鳴しない相手とは,美しいハーモニーは生まれない
恋人や夫婦や親友や兄弟・・・そんなパートナーとのデュエットは最高だし,息がぴったり合えば合うほど,互いの間の一体感は誰も割って入れないものとなる。

このふたりの関係は最後までプラトニックであったけど,互いの気持ちは痛いほど画面から,そして彼らの奏でる音楽から伝わってきた。女性に家庭があったこと・・・。それが一番の壁になっていたが,二人ともあえてそれを乗り越えようとはしなかった。それは彼ら二人の,素朴でシャイな人柄にもよるところは大きいと思う。
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それでも,あれでよかったのだろう。ふたりの関係は。
たとえ一緒の人生を歩まなくても,ふたりの間には,妙なるハーモニーを奏でた曲の数々があったのだから・・・。それは誰にも邪魔されることのない,二人だけの世界だったのだから。そのハーモニーは,これからも互いの心の中に生き続けるだろうから。

さりげなくて,つつましやかで,とってもいとおしい物語。
挿入された曲はすべて,彼らの恋の物語のようにシンプルで,素直で,優しい。超低予算の小品でありながら,多くの映画ファン,音楽ファンに愛された作品だそうだが,私もまた,これは大好きな1本になった。

2008年6月 2日 (月)

俺たちフィギュアスケーター

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DVDで鑑賞。
いや~~,笑った,笑った。こんなにも,腹を抱えて笑った映画って,ここ最近では珍しい。自分の他には猫しかいない夜更けの部屋に,響き渡る自分の笑い声というのも,なんだか虚しいもので,これは劇場で観て,他のお客さんと一緒に爆笑タイムを共有したかったなぁ。

ひとことでいえば,すごくまじめに作ったおバカ映画。おバカなのに,ヒューマンドラマのような感動もそこそこ味わえて,でも基本はやっぱりきっちりおバカで・・・という絶妙なバランスがたまらない。
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男性二人のペア・フィギュアという設定がすでに,面白すぎ。そしてその二人が,かつては犬猿の仲のライバルで,正反対の性格で,始めは喧嘩ばかりしていたのだから,なおさらだ。

チャズを演じたウィル・フィレルは,主人公は僕だったではシリアスでナイーブな演技を披露していたが,このようなコメディタッチの作品では本領発揮で,いかにもアクが強く,フェロモンぷんぷんのむさくるし~役だった。(それでも眼力はセクシーかも)

・・・しかし,あんな巨体では,いくらなんでもフィギュアスケーターは無理だろ~っていう思いは,おしまいまでつきまとって消えなかったけどね。ジャンプはどすん!って感じだったけど,セクシーダンスはとっても素敵だった~。

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チャズが最初は目の仇にし,コンビを組んでからは兄弟のように慕うようになる相手,ジミーを演じたジョン・ヘダーって初見だけど,顔の上半分はすごく美しい。口元が惜しい・・・ような気がするけど,どんなもんでしょう?もっとも私は,彼のリスのような歯がそんなに嫌いじゃないけど。

でも,このジミーというキャラ,なんだかとっても「いい人」で癒されるのだ。繊細で,生真面目で,うぶで,親切で・・・・純粋培養されたみたいなアクのなさ。そう,まさにチャズとは正反対。最初はそこが癇に障っていたチャズも,しまいには彼のそんな優しいところが大好きになる。

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この二人の結びつきも,チャズのキャラもよ~く考えてみれば,「馬鹿馬鹿しい」ものなのだが,二人のライバルで,大会まえに執拗に妨害工作をする,ウォルデンバーグ兄妹もまたそのキャラが「イカレてる」し,ついでに言えばチャズたちの優勝の決め手になった荒業もまた「イカレてる」よな~,十分。プロのスケーターが観たら「あんなの無理!」って言うだろな~ぜったい。

でも,そんなことすべて横に置いといて,「ウハウハ笑いながら,観たものの勝ち!」のような有無を言わせぬ面白さがある,この作品には。

彼ら二人の氷上での華麗,というよりは男子ペアならではの独創的な演技には目が釘付けになる。男子ペアの演技なんて今まで見たことがないので,とっても新鮮なのだ。しかし,あの技だけは,繰り返しやってると,いつか命を落とすんじゃないかと心配するし,最後に二人が空にぶっ飛んでいったのは意味不明だったけど・・・。

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とにかく,主役ふたりの,それぞれ甲乙つけがたい魅力が,この作品を,さらにすばらしいものにしていたような気がする。二人とも,スケートの特訓もさぞかし大変だったと思うし,その役者魂と演技の才能に,深い敬意を示したい。

それにしても,面白かったなぁ・・・・。なんだか寿命がのびた気がした。たまにはこんな作品もいいよね~~。

 

2008年6月 1日 (日)

題名のない子守唄

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近くの劇場では 公開されなかったので,DVDを心待ちにしていた作品。これに限らず,私の観たい作品は,近くで劇場公開されないことが多い

「ニュー・シネマ・パラダイス
」や「マレーナ」のトルナトーレ監督作品だが,それまでの彼の作品の特徴ともいえる優しさや爽やかさがなく,まるで深い深淵を覗き込んだ時のような,得体の知れない暗い雰囲気を持った作品だった。
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あらすじ:
北イタリアのトリエステに長距離バスでやって来たイレーナ(クセニャ・ラポポルト)は、貴金属商を営むアダケル家のメイドになる。家事を完ぺきにこなす彼女は、アダケル夫人から瞬く間に信頼を得るようになる。また、4歳になるアダケル家の娘テア(クララ・ドッセーナ)とも心を通わせ合うようになるが……。(シネマトゥデイ)

冒頭から,サスペンスタッチで綴られる物語。一番の謎はヒロインのイレーナの過去と,彼女がアダケル家に近づく理由だ。地味な黒い服に身を包んだ,ミステリアスな漆黒の瞳のイレーナ。フラッシュバックで挿入される映像からは,彼女が何らかの売春組織に囚われて,苛酷な人生を送ってきたことが想像されるのだけど・・・・。そして,アダケル家の一人娘テアと彼女の関係も,最初からおぼろげに予想はつくのだけど・・・。
Cap035
東欧からの密入国する女性たちが陥る罠の中に,こんな非人道的なものがあるなんて・・・。人身売買,性の奴隷,そして代理出産と,生まれる子の売買。想像を超えた卑劣な悪の世界に絶句した。「売る」ための子供を12年のうちに9回も出産させられたイレーナ。彼女の「母性」はそのたびに踏みにじられ,人生はもはや修復不可能なほどに深い傷を負っていた。

これは,そんな想像を絶する試練を体験した女性が,奪われた「母性」を取り戻すための闘いの物語なのだろう。しかし,この作品,「母子の絆を描いた物語」であるくせに,単純にしんみりとした感傷にひたりながら観ることができない内容になっているような気もするのだが。

物語は,センチメンタルな要素より,サスペンスの要素の方が断然勝っている。イレーナの過去に関する謎は,かなり残酷で暴力的な描写が多くて圧倒されるし,加えて現在の彼女の身辺にも,怪しげな事件が次々に起こるので,そちらも目が離せない。
Cap051
監督は,「子供の売買や売春組織を告発したいのではなく,あくまでも『母の愛の強さ』を描きたかった」と述べているけど,私は,母の愛うんぬんよりも,イレーナが囚われていた,売春組織の存在の方に,強烈な印象を受けた。

イレーナの辿ってきた人生って,平和な世界に生きてる私たちには,想像もつかない恐ろしいものだ。だから,まずその事実に「驚愕」したり「戦慄」したりするのに忙しく,そちらの方がどうしても強く心に焼きついてしまったのかもしれない。
Cap054
それでも,イレーナがテアに抱く「母の愛」のゆるぎなさと,彼女に心を開いていくテアの愛らしさは,暗鬱な物語の中で,唯一神々しい光のような輝きをもって,胸に迫ってくる。

イレーナの「行き場を求めていた母性」は,テアに惜しみなく注がれ,テアもまた,それを全身全霊で受け止めたのだろう。女は,子供を「生む」だけで「母」になるわけではなく,「愛する」という行為を経て初めて「母」になるのだろうか。この二人の間に一度生まれた絆は,のちに衝撃の事実が判明してもなお,消え去ることがなかった。

イレーナを演じた女優さんは,ロシア系ということだが,まるでバレリーナのような優雅な美しさを持ったひとだ。回想シーンでは金髪だが,黒髪のほうがずっと似合っていた。恐怖,悲しみ,愛情,暗い情熱・・・・彼女は,さまざまな感情を,その美しい瞳に込めてしっかりと演じていた。

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ひりつくような緊張の糸がずっと持続していた物語のラストに,ふいに訪れた,ほのぼのとした癒しのシーン。艱難続きだったイレーナの人生だけど,贖罪を終えた彼女に,やっと再生の光がさしこんだのだろうか。

まさか,この物語が,
このようなあたたかなラストになるとは。

ここにきて初めて,私はためていた息を深々と吐き出した。・・・・と同時に,じんわりとした涙が,ゆっくりとこみあげてきた。

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