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2008年3月23日 (日)

それでもボクはやってない

001
「どうしても晴らせない冤罪」という地獄に落ちてしまった
ものすごく不運な,ひとりの青年の物語。

これは,日本の裁判制度のあり方を,
容赦なく浮き彫りにした作品だ。

2時間半の間,息を詰めてストーリーの行方を見守る間,展開のあまりの理不尽さに,わが目や耳を疑うような驚きを感じ,憤りやもどかしさで,胃がチリチリした。コミカルな味付けもところどころあったけど,全編を通じて,ものすごく真摯な描き方をしていた。
よくできたドキュメンタリーみたいに。

あらすじ:
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、通勤ラッシュの電車で女子中学生から「痴漢したでしょ」と訴えられてしまう。まったく身に覚えのない金子は、話せば分かってもらえると思い、大人しく駅の事務室に行った。しかし、「ボクはやってない!」という訴えもむなしく、そのまま警察に連行されてしまう。その日から、留置所暮らしを余儀なくされた金子の無実を訴える戦いが始まった。(シネマトゥデイ)

Cap006
監督は『Shall We ダンス?』周防正行。主演の加瀬くんは,『硫黄島からの手紙』でも,かわいそうな役だった。わりと影の薄い地味顔の彼だが,目にさまざまな感情を込める演技が素晴らしい。特に,この作品の彼の目からは,受けた仕打ちに対する,驚き・怒り・絶望・いらだちなどが,手に取るように伝わってきて,観ているこちらもすっかり彼に共感して,怒りの拳を握り締めていた。

Cap011
それにしても,金子青年や,彼の家族や友人たちと同様,私たち観客もまた,裁判は,罪人が裁かれるところだと,今までずっと思ってきたのではないか。それがそうとも限らないこと,そしていったん裁判が始まったら,冤罪を晴らすことは至難の技であるという何とも恐ろしい事実を,この映画は,克明に我々に突きつけてくる。

Cap020
罪を認めて示談にすれば即釈放だけど,無罪を主張すればずっと拘留される。有罪か無罪かを検討もせずに,なかば脅迫めいた取引を口にして,都合のいい調書しか作らない警察。

「無罪」判決を出すと何か個人的に都合が悪いことがあるのかと,思わず勘ぐってしまいたくなるような,裁判官の傾向。(実際にそうなのか?)特に,金子青年の場合,再現フィルムや目撃者の証言などが出てきたときに「これはイケル!」と思ったのに,それさえも無効にされてしまい,「何や,この裁判官annoy」と私は怒り心頭に達した。

Cap015
この映画の法廷シーンの,醸し出す緊張感はすごい。今までサスペンスドラマなどで目にしていた法廷シーンとは全く別物で,息詰まるくらいリアルだ。これを劇場で観たら,自分も傍聴席に座って裁判の行方を見守っているような,錯覚が起きるだろう。
「彼の冤罪は晴らせるのか?」という思いがつのり,証人や弁護士や裁判官の一言一句を聞き逃すまいと固唾を呑んで見守った。

結末はとっても虚しかった・・・・。でもこれが日本の裁判制度の現実だとしたら,誰もがあらためて戦慄を覚えずにはいられないだろう。

あなたや私も,いつ,金子青年のような落とし穴に落ちないとは限らない。そして,この映画に描かれていることが事実だとしたら,ひとたび冤罪の疑いをかけられたら,無実を主張すればするほど,事態は悪くなるケースだってあるわけだ。「だってやってないんだから,有罪になるわけはない」なんて,暢気に言ってられないではないか。

Cap022
罪を犯したかどうかは,本人と神のみぞ知ることなのに,人が人を正しく裁く,なんてほんとうに可能なのか?と暗澹とした思いになる。「裁判所は真実を明らかにするところではなく,証拠を吟味してとりあえず有罪か無罪かを決定するところ」だと劇中でも言われていた。人は万能ではないから,もちろん真実でない結果が出る可能性はあるわけだけど,それでも裁判所は,真実に向かって全身全霊で取り組む姿勢が欲しい,と思う。

おそらく,「感動した」とか「面白かった」とかいう感想を言うべきではない作品かもしれない。描かれていることはずっしりと重く,非常に深刻な情報提供と問題提起をして終わる作品だった。

・・・・・しかし,何はともあれ
傑作である,と思う。

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コメント

ななさん、こんにちは!
これ、去年度の自分のベスト1だったかな・・(自分で書いたものの記憶が怪しい・・)とにかく、ベスト3に入る作品でした!!

知らなかったこと、一杯知る事が出来たし、ここまで綿密に調査を重ね?それを解りやすく映画で世間に見せてくれた監督は、すごい!って思います。

これを見てからは、混んでいる電車に乗る時は、背中から乗りなさいと、旦那に言いました。

latifaさん こんばんは!
わ~い,今回はばっちりTB入りましたよscissors

これ,劇場で観たかったなぁ。あの臨場感を味わいたかった。
でも,劇場で観たら,怒りは倍増してしまったかな。
金子くんに感情移入しすぎて。
監督,リサーチに凄い時間と労力をかけたそうですね。
それをほんとにわかりやすく,そして深く訴えてくれて
無知な自分はとても勉強になりました。
「痴漢に間違えられたら,人生終わるよ!」って
確かに身内の男どもにこんこんと警告したくなりましたね。

こんばんは♪
私もこの作品は昨年のベストワンだったかな。
とにかく久しぶりの周防作品を堪能しました。
いつも目新しい題材を提供してくれますけど、裁判員制度間近のニッポンにガツンと一発与えたような気がします。
それにしても無罪になる確率がほとんど無いなんて酷すぎますよね。
裁判官さえアレレ?な判決を下す事があるのに、素人の裁判員は口のうまい弁護人に意思を操られてしまいそうで怖いです~。

ミチさん こんばんは

周防作品ってあらためて素晴らしいって思いました。「Shall We ダンス?」も,私はリメイクより断然オリジナルの方が好きなんですよ。

>裁判員制度間近のニッポンにガツンと一発与えたような気がします。
・・・ですよね!
無罪になる確率がそんなに低いなら,裁判する意味ないじゃん!とか思ってしまいます。
「無罪」と「死刑」は判決を下しにくいのかな。
でも,真実が通らない裁判なんて,絶対おかしいですよね。
いろいろどっぷりと考えらせられた作品でした。

ななさん、こんばんは!この映画は、非常に見ごたえがありましたね~、特に裁判シーン、おっしゃるように、自分が傍聴席にいるような、ときには被告席にいるような緊張感で、胃が痛くなってきそうでした。

この映画を観なかったら、日本の裁判制度の危険性に気づかなかったと思います。非常に難しいテーマを敢えて使用し、問題提起をした監督は凄いの一言に尽きます。

ところで、熱演していた加瀬さん、先日の日本アカデミーで賞を獲れず、残念でした。絶対彼だと思っていたので、がっかりでした・・・。

JoJoさん こんばんは
ほんとうに素晴らしい作品でした。
鑑賞後は,とてもやりきれない気持ちになりますが
監督に拍手したい思いも湧いてきましたよ!

これを観ることで,裁判制度の欠陥に気がついた人って凄い数でしょうね。
反対に,映画化してもらえなかったら,いつまでもわからなかったことだと思うと・・・shock

加瀬くん,アカデミー賞ダメでしたか。それは残念!
でも,彼はとてもいい俳優さんだから,きっといつかは獲ってくれることでしょう!

ななさん、今晩は。TB&コメントありがとうございました。
先にコメントされた方々に倣って言うと、僕も昨年度の日本映画のベスト1に挙げています。もっともまだ見落としているのが多いのであくまで暫定1位ですが、たぶんこれを越えるものはないでしょう。
周防正行監督は「ファンシイダンス」の頃から大好きな監督でしたが、ガラッと作風を変えたかのようなこの作品には衝撃を受けました。「えいっ」とばかりに投げ込んできた直球に手もなくはじき飛ばされましたよ。フィクションより怖い現実を抉った戦慄の1本でしたね。

ゴブリンさん こんばんは

ゴブリンさんもこれを昨年度の邦画ベストワンに推しますか!納得ですね。
>「えいっ」とばかりに投げ込んできた直球に手もなくはじき飛ばされましたよ。
直球も直球,そして剛速球でしたね。
こんな映画が撮れる周防監督ってすごいと思いました。
おっしゃるように,下手なフィクションよりかずっとリアルで
しみじみ恐ろしい思いがする作品でした。
なんとかしなければいけませんね,ニッポン・・・sweat01


コメントありがとうございました。

首都圏にいたときは、遠くから通っていることもあり、座って通勤していたので、この手のトラブルに巻き込まれる可能性はやや低かったんですけど、とにかく恐ろしい話です。

四国は昔よく行ったのですが、最近ごぶさたしてます。今いるところは天気が良ければ四国が見ることができます。ひさしぶりに行ってみたくなりました。

ぼくの方にもリンク貼らせていただきました。これからもよろしくお願いします。

クラムさん,こんばんは
このお話,男性にはひとごとではありませんね~wobbly
痴漢に間違えられるなんて災難,都会ならいつ降りかかってきてもおかしくないですよね。
・・・・そしていったん逮捕されたら・・・おお,怖い。

四国はいいところですよ~。山が綺麗でうどんnoodleが美味しいです。
・・・それに痴漢にも間違えられません。
(電車trainが絶対満員になりませんから)
リンク,早速貼らせていただきました。そちらにも貼っていただいて,嬉しいです。

最近痴漢を逆手にとった冤罪事件がありましたね。

加害者の女に良心の呵責があったおかげで(翌日自首したそうで)無罪放免になりましたけど、もし女が性悪だったら...
でもあの映画での女子中学生は、人違いしたわけであって、決して彼を陥れたわけではないんですね。本当の痴漢はきっと「あいつ」だ、このヤロー!罪をなすりつけやがってー!でもそれを証明するものはない。そこが怖かったです。
ところで作品とは関係ない部分で一つ不思議に感じた事がありました。
大変下世話で申し訳ないんですが、周防監督11年ぶりって...もちろんこの映画製作のための取材・準備期間を十分取ったのは知っていますが、それでも映画監督って何年も仕事しなくても大丈夫なんでしょうか? ←つくづく自分は小市民だなあ。

garagieさん こんばんは
私は,この映画の被害者の女子高生も
「示談金目当てで仕組んだんじゃ・・・?」と一瞬思ったくらいです。
法廷での彼女の発言が矛盾してるように思えたときに。
でも,そうではなかったようですね。
とにかく金子青年が可哀想で腹がたって仕方なかったです。
周防監督,たしかに11年間は充電期間としては長すぎですね。
スランプだったのかしら?
11年前の作品の主演を演じた役所さんは
さすがに年月を感じさせる貫禄がついていましたね。

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