リトル・ダンサー
イギリス北部の貧しい炭鉱町に住む11歳の少年が,クラシック・バレエに夢中になり、「男がバレエなんて!」という家族の反対や逆境を乗り越えて,ダンサーになりたいという夢を叶える,爽やかなサクセスストーリー。
ジャンパーのグリフィン役で,結構渋く成長したジェイミー・ベルを見て,久しぶりに彼の初々しいデビュー作を観たくなった。で,久々の再見の感想だけど,やっぱりデビュー時の彼は可愛いし,演技の才能も,このころから確かなものを感じるなぁ。
この手の夢を叶えるサクセスストーリーは,ありがちで,大したひねりもないけれど,この作品の最大の魅力になってるのは,ジェイミーが演じたビリー少年のキャラクター。
ボクシング教室に通う(というか,父親に通わされている)ビリー。彼は,たまたま同じ場所でやっていた,ウィルキンソン先生のバレエ教室の練習風景に心惹かれて,父には内緒で弟子入りする。
「男の子なのにバレエが好きな自分」に対する戸惑いや,チュチュを纏った少女たちにひとり混じって練習するバツの悪さは,当然感じただろう。それでも「バレエが好き」という思いに突き動かされている,一途で不器用なビリー少年の,「切なげな しかめっ面」が何ともいじらしくて好きだ。
ロイヤル・バレエ・スクールのオーディションの時とか,合格通知の結果を家族に知らせるときとか,普通なら笑顔になるべき場面でも,感極まったビリー少年の顔は,やっぱり泣き出しそうな,しかめっ面だった。
そして彼のダンスは,華麗なテクニックこそないけれど,内側に秘めた情熱があふれ出てスパークしているような,熱いものを感じさせる。
愛すべきキャラはビリー少年だけではない。
妻に先立たれた寂しさを押し隠してストに明け暮れ,子どもの前では肩肘張って生きている,頑固親父のパパ。「プロのダンサーになるのが夢だった」という痴呆症の始まった祖母。ぶっきらぼうで乱暴だけど,心の中ではビリーを愛している兄のトニー。内向的で女装趣味のある,ビリーの親友のマイケル。こんな田舎町で,細々とダンス教室を開いているウィルキンソン先生。
彼らはみな,見方によっては、そこはかとなく,人生の「負け組」の雰囲気を漂わせている。しかし世渡りは下手でも,彼らなりに,懸命に生きている姿は微笑ましく,応援したくなる。
死んだ母からビリーに当てた手紙とか,親友マイケルとの友情とか,心暖まるエピソードはたくさんあるけど,やはり一番ぐっと来るのは,一徹なパパのビリーへの思いだ。
最初は「バレエなんてとんでもない」と,力ずくでやめさせようとしていたパパ。でも,息子の才能に気づいてからは,己の節を曲げ,スト破りをしてまで,ビリーの夢を叶えてやりたいと願うようになるパパ。
故郷ダーラムを一歩も出たことがないのに,オーディションの付き添いのためロンドンに行き,審査員の前でも内心の気後れを見せまいと,昂然と頭を上げ,胸を張るパパ。合格通知がくると,飛ぶようにパブに駆けてゆき,全身で喜びを表現するパパ。
・・・・彼の生き方もまた,
息子のビリーと同じように,不器用でまっすぐだ。
そしてやはり一番の感動シーンはラスト。
パパがトニーといっしょに,成長したビリーの「白鳥の湖」の初公演を見にゆくところ。昔よりちょっと年をとったパパと,そんなパパを引率する役目のトニー。客席にはビリーの親友のマイケルの姿もあった。幕が上がり,目くるめくライトの中を,美しい鳥のように力強く飛翔するビリーの姿と,それを目をうるませ、息を呑んで見つめるパパの顔・・・・。
パパたちに負けないくらい,ビリーの成長を見守ってきた私たち観客にとっても,最高のラスト。何度見ても,必ず心があったかくなる,素敵な作品だ。
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コメント
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ななさん、こんばんは~
このジェイミー、あのジェイミーなんですよね~。意味不明?(笑)
いや~~大きくなったもんだと思って~・・・
しみじみ・・・
この時って、本当はとっても上手いのに~ヘタに踊ってたんですよね?最初・・・
すご~~く初々しかったな~というのが一番の感想。
そして、パパがいいんだよね。。。
父親って、愛情の表し方がヘタだから~こういう風にしか出来ない。そのぎこちない愛が感動です・・
どんな国でもどんな時代でも、父親ってこうなのかな~って思えました。
ラストも素晴らしいですよね~
話は変わりますが~
うちのマリーちゃん、またハンターの季節になって~
今朝、リビングにレミーが・・じゃなかったネズミさんが転がってました。。。
投稿: マリー | 2008年3月18日 (火) 00時38分
マリーさん こんにちわ
コメント,いつもありがと~
そう,このジェイミーは,あのジェイミーです。
雰囲気変わったね~~。
表情の演技が素晴らしいのは同じだわ。
ほんとはうまいのに,わざとぎこちなく踊ったりするところも
すごいですね。彼の俳優人生これだけでおわらずに,
成人しても活躍してるのも納得です。
これって,あらためて見てみると
登場人物がみんな愛すべきひとたちで
とっても心があったかくなりました。
パパの不器用だけど熱い愛に感動しました。
マリーちゃん, 春になったのでお出かけが多いのね。
ハンターと恋の季節ですね。
うちのは,ひなたぼっこを満喫してますわ。
若い頃は雀を捕ってきて,くちばしと足だけ食べ残して放置してました~
投稿: なな | 2008年3月18日 (火) 10時01分
懐かしいです^^
ジェイミーこんな感じだったんですよね^^
細かいところはかなり忘れてしまっているので
ななさんの感想読んでいたら、また観たくなって
しまいました^^
ラストは感動したのといい映画だったことくらいしか
覚えていないσ(^◇^;)
>最高のラスト。何度見ても,必ず心があったかくなる,素敵な作品だ。
そうですよね^^やっぱりそのうちにまた鑑賞
してみよ~~と!
投稿: ひろちゃん | 2008年3月20日 (木) 23時49分
ひろちゃん,こちらにもコメントありがとうございます。
そう,ジェイミー,こんなに可愛かったんですよ。
もともとちょっと,おサルの入ってる顔かもしれませんが,
初々しくて,いじらしかったです。
今にして思えば,この役って結構難しいです。
一途なだけでなく,不器用な感情も表現しなくてはならないし
ジェイミーの演技力は大したものだと思いました。
ほんとに感動作ですよね!
投稿: なな | 2008年3月21日 (金) 00時20分
こちらにもお邪魔しますー。
邦題は「リトルダンサー」ですが、原題は「ビリー・エリオット」なんですよね。ミュージカルも見てみたーい。
もう今ではびっぐなジャンパーだなんてね。笑
もっともっとBIGになって欲しいです。
彼の次回作はダニエル・クレイグ&リーヴ・シュライバーと共演ですねー。日本でも公開があると良いのですが…。
私は元々大人になったビリーが踊る「SWAN LAKE」というマシュー・ボーンのバレエファンでして;
穴があくほど「リトルダンサー」と「SWAN LAKE」のDVDは続けて見ておりますです;
投稿: シャーロット | 2008年3月29日 (土) 22時00分
ななさんおじゃまします。
ずいぶんと懐かしい作品をご覧になったんですね
この作品は心に残る作品の中のひとつですよ!
少年のバレーにかける情熱と家族の思いなどジー
ンときました。
炭坑のストよりもジミーの夢をだけでもかなえよう
と長男に訴えるお父さんの姿とラストの表情にぐっ
と来ました。
面白いのはジミー君のお友達ラストでやはりそっちにい
ちゃったんだねって(^^;
投稿: せつら | 2008年3月30日 (日) 11時23分
シャーロットさん
こちらにもコメントありがとうございます!
ジェイミー,正統派のイケメンというわけではないから
主役はあんまりまわってこないけど,着々と堅実に仕事をこなしていってる感じですね。
次回作はダニエル・クレイグとですって?
それは楽しみだなぁ~~~。
シャーロットさん,バレエがご趣味なんですね~
とっても素敵だわ~~^
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 20時13分
せつらさん こんばんは
TB,コメントありがとうございます。
私もこの作品が大好きで,DVDも持ってるんですよ。
一途で不器用なビリー少年のキャラクターが
なんとも言えず、愛らしくて。
パパやお兄さん,おばあちゃんのビリーへの愛もよかったし
親友マイケルもよかった。
そうそう,マイケルにとって,ビリーはきっと初恋の相手だったんですね。
彼もまた,自分の道を貫いた感じで,ほほえましかったなぁ。
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 20時18分
やっぱりさ、ななさんと好きな映画がかぶるね、ほんとに(笑)
この映画はマイベスト5にはいる映画ですよ。
愛すべき家族、近所のへんな女の子、女装趣味の男の子、ダンスの先生、ビリーのまわりにいる人がみな魅力的なんだよね。
おとうさんの最後の笑顔は何度見てもいい。
白鳥のジャンピングも圧巻!!!ブラボー!
音楽もすてきだったわ♪
イギリスの労働者階級ものは秀作が多いですね。
投稿: アイマック | 2008年4月 2日 (水) 23時34分
アイマックさんほんと,好きな作品かぶりますね!
なんたってBBMファン同士ですもんね
好きな傾向も似てますよ~!
これのジェイミーはほんとに好き
彼が火の玉のようになって,ひたむきに踊るところは
何度見ても応援したくなります。
周りのひとたちもみんな,少しずつかっこ悪いんだけど
そこが,とても魅力的!
イギリスの労働者階級の映画・・・「心優しい負け犬たちの成功物語」とでも言いましょうか。
「フル・モンティ」「キンキー・ブーツ」「カレンダー・ガールズ」とか・・・
感動作が多いです。
投稿: なな | 2008年4月 3日 (木) 00時42分