ラスト、コーション
第64回ヴェネチア国際映画祭で,金獅子賞を受賞したアン・リー監督作品。1942年の,日本占領下の上海を舞台に描かれる,抗日運動に身を投じる女スパイ、ワン・チアチー(タン・ウェイ)と、特務機関のリーダー,イー(トニー・レオン)との禁断のラブ・サスペンス。
女スパイが暗殺目的で仕掛ける恋という,緊迫したストーリーなのに,ラストに近づくにつれ次第に涙腺が緩み,鑑賞後は胸をかきむしられるような重い切なさが押し寄せてきた。私はBBM(ブロークバック・マウンテン)を劇場で観ていないが,もし観ていたら,これとよく似た余韻を感じたかも知れないと思う。
歴史背景を詳しく知らないのだが,トニーが演じたイーは,当時の日本占領下の上海で,抗日分子を捕らえては殺害していた冷酷非道な男。実年齢(45歳)より若々しくみえるトニーは,この作品では老けメイクをしたらしい。
この作品のトニーは,それまでの出演作の彼と違って,不気味で冷ややかで,得体の知れない恐ろしい雰囲気を纏っている。仕事柄,いつ命を狙われるかわからない彼のまなざしは,人の心を見透かすように,暗くて抜け目が無い。
一方,チアチーを演じたタン・ウェイは,ファム・ファタールというイメージの麗人ではなく,羽二重モチにお雛様の目鼻をくっつけたような,どちらかというと愛くるしい顔立ち。そんな楚々としたところが,スパイに見えなくて,疑り深いイーも騙されたのだろうか。笑顔はあどけない童顔の彼女だが,ここぞというときは,どきりとするくらい妖艶なまなざしをイーに見せる。
この二人の性描写の激しさは,「ポルノでもないのに,なぜそこまで描く必要があるのだろう?」と観る前は疑問に思っていた。文字通り,目のやり場に困って,しかたなく二人の表情ばかり見ていた私だが,「イーはなんて痛ましく,苦しそうな表情をするのだろう」と感じた。そこには「恍惚」とか「快感」とか「陶酔」とかいうものは少しも感じられない。
重い使命を帯びて,死と隣りあわせの殺伐とした人生を送っている孤独な男は,このような愛し方をするのだろうか。まるで心の中に溜め込んだ負のパワーを,激情とともに相手にすべてぶちまけ,破壊したがっているみたいだ。
そして,それに応える彼女もまた,愛の場面の一瞬一瞬が,命を削るような真剣勝負だったろう。ほんの少しでも疑われたら,自分の命はない。この二人の愛し合うシーンは,とても過激ではあるのだけど,エロティックというよりは,まるで命がけの闘いのような緊迫したものを感じる。
リー監督だから,この作品もまた,台詞で気持ちを説明することは,勿論ない。俳優の仕草や表情から,観客はその心境を,まるで行間を読むように推し量らねばならない。
チアチーの歌に,涙するイーの表情。
時折ふっと,彼女にだけ見せる,柔らかなまなざし。
そして愛の証のあの指輪。
彼は確かに彼女を信じ,心から愛するようになっていたのだろう。しかしチアチーは?彼女は目的遂行のために,憎い敵に近づいているわけだから,はじめは彼に対して憎しみや恐れしか抱いてなかったはず。しかし,いざ決行というその大事なときになって,彼女は・・・・。(すいません,ここからネタバレします。そうしないと感想が書けないので)
イーに「逃げて」と告げて彼の命を救うことは,すなわち自分の死と仲間への裏切りに繋がる。彼女にそこまでさせたのは,やはり彼への愛だろう。それも,自分を捨てて省みないほどの強い,深い愛だ。
いったい彼女はなぜ,
イーを愛するようになったのか?
そして,いつからイーを愛し始めたのだろう。
あの「逃げて!」は,観客にはずいぶん唐突に思えたけれど,もしかしたら彼女自身も予測せず本能的に口をついて出た言葉で,彼女はそのとき初めて彼を愛していることに気づいたのではないか?あの瞬間まで,彼女はちゃんと計画を実行するつもりだったはずだ。
彼女の口から出た「逃げて!」という言葉。それは,その瞬間まで彼女が心の中に自分でも自覚せずに封印していた,彼への発作的な愛の告白だったのではないか。ちょうど,BBMのイニスが,ジャックとの最初の別れのあと,意味もわからず嘔吐したように,彼女もまた,理性よりも愛の本能に突き動かされたのではないか。
彼女が彼を愛した理由・・・・それは語られていないけれど,彼女が訓練を受けた筋金入りのスパイではなく,とくに愛に関しては初心な娘であったことを考えると,激しすぎる彼との刹那的な行為や,彼女にだけ見せる彼の優しさや愛情に触れるうちに,自分でも気づかないうちに彼を愛するようになったとしても不思議ではない。
むしろ愛さないほうが不自然なくらい,
身も心も一体感を感じる関係だったのだ,と思う。
しかし,その愛に気づいたところで,この二人には決して未来はない。彼が死ぬか,彼女が死ぬか・・・・。どちらかが死ぬしか,道のない絶望的な関係だからだ。それも,ただの死ではない。相手から殺される,という死に方である。
殺される方も,生き残る方もともに地獄。ともに哀れだ。 しかしおそらく,相手の死を命じ,生き残るほうがずっとずっと辛いだろう。
そしてその運命を引き受けたのはイーだった。
彼女が処刑されるそのとき,イーはどんな気持ちだったろう。もちろんここでイーに説明的な台詞を言わすような野暮なことは,リー監督はしない。
ただ,ラストシーン,明かりを消したチアチーの部屋で,トニーが見せた表情がすべてを物語っている。あの涙。まるで子供のように無防備に悲しみをさらけ出した顔。普段はうまくあしらっている妻にさえ,取り繕うことができないほどの,深すぎる彼の哀しみ。
愛する女性に騙されていた,ということよりも,彼にとって耐え難いのは「彼女もまた彼を愛してくれていた」という事実かもしれない。そして仲間を裏切ってまで彼を救おうとした彼女を,自分が処刑せねばならなかったことも。
この救いのなさ,「一体彼らはどうすればよかったのか?」と繰り返し問うてみても,所詮出ない答え。ひたひたと押し寄せてくる哀しい余韻・・・・・これらはすべてBBMで感じた懐かしい痛みだった。ああ,やはり,リー監督だなぁ,やってくれましたなぁ,と当分どっぷりと余韻にひたりそうな予感がする。
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LUST,CAUTION
色・戒
2007年/中国/158分/R-18
at:TOHOシネマズ梅田
<加筆してます。>
まだ2年前の「ブロークバック・マウンテン」を観た後の、胸に押し寄せてきたあの感覚が蘇ってくるというのに、そして先日のヒース・レジャーの急死に、再び思い出してしまったというのに……
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「ブロークバック・マウンテン」でオスカーを受賞したアン・リー監督の最新作。
「映倫 R-18」指定で、過激な性描写が話題の本作。
原題は「色・戒」、英題は「LUST, CAUTION」。
LUSTは「肉欲(を抱く); 渇望(する)」・・・の意味。
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『ラスト、コーション/色|戒』
LUST, CAUTION/色・戒(米・NC-17指定、日・R-18指定)
(2007年・アメリカ=中国=台湾=香港/158分)
公式サイト
第64回ヴェネツィア国際映画祭/金獅子賞・金オゼッラ賞(撮影賞)
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Lust,Caution/色・戒(中国・アメリカ)【DVD】
監督:アン・リー
出演:トニー・レオン/ワン・リーホン/タン・ウェイ/ジョアン・チェン
あなたはタブーを目撃する。
2007年度ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞と金オゼッラ賞(撮影賞)を受賞。
『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督最新作。
タイトルのラストは性欲のことだったのね^^;
激しい性描写が話題となり、アメリカではNC-17指定、日本ではR-18指定、中国では7分間短縮されたバージョンが公開された。
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1942年、日本軍占領下の上海。女子大生チアチー(タン・ウェイ)は、抗日運動に心血を注ぐ
クァン(ワン・リーホン)に秘かな恋心を抱き、彼と行動を共にする中で次第に感化されていく。
やがてチアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イー(トニー・レオン)に
近づき暗殺を遂行する危険な任務を与えられる。さっそく身分を偽りマイ夫人と名乗り、イー夫人
(ジョアン・チェン)に接近。冷徹で用心深いイーを誘惑する機会を窺うチアチーだったが・・。
男と女、やっぱり一筋縄ではいかないというか
愛と憎し... [続きを読む]
こんばんは!
早速ですね。さすがですね。仕事が早いなぁ。(感服)
しかも、つくづく納得な記事ですね。
ななさんらしく、無邪気で素直でありつつ、丁寧に積み上げた感じの記事で、唸ります。
たしかにアン・リー監督やってくれた、って感じですよね。
私は、途中まで引き気味で見ていて、イーはもう一人のイニスなんだな、と感じた時に、ぐっと引き込まれたんですが、エンディングあたりで、
「今度こそ死なせてやればよかったのに」
と思ったら、自然と涙が出ましたね。←勝手に話を変えるなって(この話は原作ありだそうなので、ハナっから無理ですが)。
新生活スタート、多少負荷がかかると思うので、記事も、気楽に書き続けてくださいね。
投稿: ゆきちママ | 2008年3月27日 (木) 02時10分
ななさま、こんにちは。コメントとTBをいただきありがとうございました。
物凄く重い映画でしたね・・・。映像も美術も音楽も一級品、描かれる愛はこれまた一筋縄ではいかない愛。
考えても語っても尽きないものを感じます。
あの「逃げて」、私はそんなに唐突だとは思いませんでした(ビックリしたけど)。
チアチーは最初からイーに惹かれていたように見えたし・・。あれが100%「演技」だったら凄い~。
ところでBBMはDVDでご覧になったのですね。スクリーンで観たいですね・・・。
追悼上映のあった地域の方が羨ましいです。
ではでは、また来ます。
投稿: 真紅 | 2008年3月27日 (木) 16時26分
ゆきちさん,こんばんは
コメント1番乗り,ありがとうございます。
そしてまた,いつもいつもお越しくださるのが,草木も眠る丑三つ時で
家事と育児でお疲れでしょうのに,いったいいつ眠るんだろう,と感心したり,心配したり・・・。
>ななさんらしく、無邪気で素直・・・・
えええぇ~~これ,無邪気で素直ですか~?そーか,そう映るのか・・・
普段のななさんは,実はひとの裏ばっかり探ってるヒネクレタ人間でありますよ。
>エンディングあたりで、「今度こそ死なせてやればよかったのに」・・・
・・・確かに。普通の人間じゃ,あの状態で生きるのは死ぬより辛いかも。
後悔の中で生きていくのは,イニスと同じですが
なんて救いがないんでしょうね~~。
観終わった後,なんとも寂しい,哀しい気持ちになりましたよ。ううう。
新生活,ですが一昨日新しい職場に挨拶に行きました。
いい人ばかりでなかなか好感触でしたが
きっと向こうもかぶってるだろうからな~~
当分は,化かしあいだな。
投稿: なな | 2008年3月27日 (木) 21時39分
こんばんわ~
僕もチアチーがいつからイーを好きになったのか?その前にあの激しい性描写がどうして必要なのか?あのシーンに意味があるから、リー監督は濃密に撮ったんでしょうが・・・その辺をもっと知りたくぜひ2回目を見たいと思います。ちなみに原作を買ったのですが、映画も原作に忠実だと思いますが、性描写はなかったですね、原作もちゃんと読み込んでないんでまた読みたいな~、「逃げて!」は僕も唐突に聞こえたし、原作でも予想外に出た言葉というような感じだったと思います。ラストの方で断崖絶壁の撮り方がとても恐ろしく感じたり、指輪がキーポイントだったり、そしてラストのトニーの悲しげな顔など印象的なシーンがいくつかありました。なかなかよくできた映画でした。
ところでヒースの追悼上映「BBM」を渋谷のメンズデーで見てきました。やはり劇場で見るBBMはいいですね。男性ばかり15,6人くらいでしたが、皆さんヒースに会いに来てくれたんだ~!って何となく感じましたよ。
投稿: イニスJr | 2008年3月27日 (木) 22時33分
真紅さま,こんばんは。
この映画,ほんとに重くて苦しくて,それでも美しい作品でしたね。
音楽も素晴らしかったです。主題曲が哀愁を帯びていて,サントラ欲しくなりました。
しかし,やはり,リー監督らしい作品でしたね。
主人公の気持ちとか,後でいろいろ推し量って悶々とするように作られていますね。
でも,BBMの後味は,切ないけどどこか癒されるものも感じたのに
これは,奈落の底に落ちていくような絶望を感じました。
BBMを上回る感動や余韻ではもちろんありませんが・・・(あれを越える作品はないです)
この作品もかなり好きです。
投稿: なな | 2008年3月27日 (木) 22時35分
イニスJrさん こんばんは
わたしも原作読んでみたいです!明日本屋で探してみよう。
ふーん,原作にはあんな性描写はなかったんですか?
と言うことは,やっぱりリー監督,何かを狙ってあれをわざと入れてますね。ううむ。
無駄なシーンは決して入れないひとだから。BBMでも原作にない2晩目のテントシーンを入れたように,あの過激な性描写も,何か意図があるのでしょうね。
しかし,成就しない愛,というテーマは同じですが,BBMに比べてこちらは難解でもあります。好き嫌いは分かれそうですね。苦手な人の方が多いかも。
おお,BBMの追悼上映を観られたのですか。
・・・死ぬほど羨ましいです
東京にはメンズデーなるものがあるのですね。BBM鑑賞に男性ばっかし15,6人って,それは・・・
(あ,メンズデーだからか)
投稿: なな | 2008年3月27日 (木) 22時57分
こんばんは!
流石にリー監督の作品に精通しているななさんだわ~
思い入れタップリの感想を堪能させて頂きました♪
私はねぇ~この作品を観賞した時は、『どこにも愛なんて感じないなぁ~』なんて思っちゃったのよ
ところがですね、カメレオン由香として名高い私としては(笑)、皆さんの色々な感想を読むうちに・・・ワンとイーの気持ちがヒシヒシと分かってきたような気になってきて・・・もう1度観たら印象が違うんじゃーないかな?なんて思っていますぅ~
ブログのいいところって、自分の気がつかないところを気づかせて貰えるところだわ~(ザ・能天気)
だから・・・また観た時にシトシト涙を流しても・・・笑わないでね
投稿: 由香 | 2008年3月27日 (木) 23時10分
こんばんは♪
確かに救いのない愛・・でしたね。
だからほんとに切ない。
そしてやはり、「逃げて」と言った瞬間に初めて、
彼女は彼を愛していると自覚したのだと思いますわ・・・
投稿: non | 2008年3月27日 (木) 23時38分
由香さん こんばんは
いえいえ,私も,BBMでリー監督の手法に慣れてなかったら,この作品は初見では「は?」と思ったかも。
BBMでさえ,初見時は「え,もう終わり?」と思ったくらいですから(おまけにあのシャツの意味がわかんなかったし),リー監督の作品はいっぺん観ただけではわからないところがあると思います。
でも,なぜか後を引くのでもう一度見直したくなり,見直すたびに切ない発見がある・・・そこがこの監督の作品の最大の魅力ではないかと。
でも,この作品女スパイだの,政府の要人だのって,自分が想像もつかない世界だから,余計に感情移入しにくいですね。(ワイオミングの羊飼いのほうがずっと想像しやすかった・・・)
DVDになったら,私も細かい表情ひとつひとつ,じっくり見直してみたいです。
ま,BBMほどはハマラないと思いますが・・・
投稿: なな | 2008年3月27日 (木) 23時46分
nonさん こんばんは
TB,コメントありがとうございました
そうですね~,私はまるで失恋でもしたような哀し~い顔で劇場をあとにしました。
しばらく気持ちが落ち込んだままでしたわ・・・。
チアチーの「逃げて」は,何にも勝る愛の告白だと思いましたね。
投稿: なな | 2008年3月28日 (金) 00時27分
またまた来ちゃいました♪ しかもまた、草木も眠る丑三つ時ですね。膝に子どもを抱えながら書いてます。(;´▽`)ヾ
彼は、目が覚めた時にママが抜け出していることがすごく気になるらしく、寝る前に釘を刺されたりすることもあります。
でもまぁ、やる時はやらないとストレスが溜まるので、少し我慢してもらってます。
大丈夫、寝てますよ。子どもと一緒に昼寝するという技がありますからね! 春休みは上の子もいるので、やややりにくいですが、子ども達もママの昼寝に慣れているので、けっこう寝かせておいてくれますヨ。
(夜中目を覚ますのは、年のせいで眠りが浅くなったのもあるかも?)
さて。
チアチーとしては、嘘と本気の交錯する愛人生活の末、結果として、自分の死で愛を証明したような形になったと思います。仲間を死なせてしまったのは、釈然としないですけどね。(-"-;)
イーだって、彼女に騙されていたことを知って、でもそれ以上の愛で命を長らえたことも知って、それはある意味嬉しかったでしょうが、誰も信じられなかった彼が、唯一心の中を明かして、心の底から信じようとした相手を失って、それでも生きていく、ということはあまりにも哀れですね。本当に救いのかけらもないです。
チアチーの腕で死なせてやりたかったな。
私から見ると、ななさんのレビューは、ストレートで明快で、自分の感じたままに書いている感じがして、素直でいいなと思います。o(^-^)o
投稿: ゆきちママ | 2008年3月28日 (金) 03時42分
こんばんは
TB&コメント、ありごとうございました
自分が愛した女性を処刑するイーの悲しさを
トニー・レオンは見事に表現していましたよね
もしかしたら、イーは、
あんな形でチアチーに助けられるよりも、
いっその事、暗殺してくれた方が良かったと、
思っていたのかもしれません…
チアチーが言った「逃げて」の言葉から私が感じた事なのですが、
彼女は、あの指輪を見るまでは、
イーがチアチーの事をどれだけ愛しているのかを
実感できていなかったと思うのです
イーを騙している自分の心を見透かされているようで、
彼に愛されているというよりは、疑われているのではないかと、
内心ヒヤヒヤドキドキものだったのでしょう
そんなふうに心の何処かでイーに怯えていた彼女でしたが、
ストレートに愛情の形として見せられた指輪と、
「宝石に興味はない。君が着けているのを見たいんだ。」
という明確な愛の言葉に、
イーの純粋な愛情を実感してしまい、
もう、これ以上、イーを騙す事は出来なかったのではないかと…
そこが、純朴な学生だったチアチーらしくもあり、
せつなく感じてしまいました
チアチーも、イーも、ユイミンも、
未来のない愛情を心に抱えてしまいましたが、
愚かだと分かっていても
理性だけでは白黒つけられない感情が
人間らしさを物語っている作品でした
投稿: テクテク | 2008年3月28日 (金) 20時27分
ゆきちさん,再コメントありがとうございます
やはり丑三つ時にお出ましですね~~
次男くんは,やっぱりママを独占していたいんですね。可愛いわ
そっか,お昼寝という手がありましたね。
それは疲労回復にはもってこいですね。
>チアチーとしては、嘘と本気の交錯する愛人生活の末、結果として、自分の死で愛を証明したような形に・・・
「自分の死で愛を証明」って,ちょっとニュアンスが違うけど,ジャックを思い出してしまいました。
彼は死んでからイニスの心を永遠に獲得したんですもんね~うえ~ん,やっぱり,これ,切なさがBBMに激似じゃないですか!
>イーだって、彼女に騙されていたことを知って、でもそれ以上の愛で命を長らえたことも知って、それはある意味嬉しかったでしょうが・・・
彼女が彼を助けようとせずに暗殺がバレるよりは,そりゃ嬉しいでしょうね,でもそんな彼女の処刑を命じたのは自分ですから,ものすごく辛かったと思います。
この映画の救いのないところって,愛する相手を殺さねばならなかった点でしょうね・・どんなに辛いか,想像もつきませんよ。
>チアチーの腕で死なせてやりたかったな。
そうそう,心中すればよかったのよ!・・・でもそんなハッピーエンド(?)をリー監督が撮るわきゃないし・・・。リー監督,そんなに悲恋がお好きですか?なにか個人的にトラウマでもあるのか?やはりゲイネスのいじわるな香りがプンプンしますね,彼。そこが魅力ですが。
>ななさんのレビューは、ストレートで明快・・・
そうですか。ありがとうございます。よく,会話でも「ジョブがなくていきなりアッパーカットを見舞うような突っ込み方をする」と評されます
投稿: なな | 2008年3月28日 (金) 21時06分
テクテクさん こんばんは
熱く,深いコメントをありがとうございます。
>いっその事、暗殺してくれた方が良かったと思っていたのかもしれません…
彼らのようなシチュエーションの場合,生き残るほうが地獄でしょうね。
もし,暗殺が成功していたら,イーではなくチアチーの方が後悔に責めさいなまれていたでしょう。(彼女の場合は後を追うかも・・・)
>彼女は、あの指輪を見るまでは、イーがチアチーの事をどれだけ愛しているのかを実感できていなかったと思うのです
ああ,そうかもしれませんね!イーは猜疑心の塊のような,凶暴さも秘めた男ですから,彼女は惹かれつつも,彼を恐れる気持ちもあったでしょうね。
それにしても,指輪の注文の知らせ方といい,出来上がったときの「君がはめているのを見たい」という台詞といい,イーは不器用なようでいて,凄い殺し文句を言ってますね。・・・あれで落ちない女はいないんじゃ・・・?
でも彼がああいう台詞を言いなれているとも思えないので,やはりそこは愛の力の為せる技でしょう。
リー監督の作品は,いろんな登場人物に感情移入できますが,私はイーとワンばかり追っていて,ユイミンの切ない演技を見逃しがちだったので,次回は彼の繊細な表情もじっくりと見て,哀しい三角関係も堪能したいと考えております。
投稿: なな | 2008年3月28日 (金) 21時26分
中国の映画を観ることはあまりないのですが、ラストコーションには、はまってしまいました。
テーマの背景にある戦争にも理解が深まったような気がします。
実話があったそうですね。
投稿: タンウェイ | 2008年3月29日 (土) 14時19分
こんばんは
コメントありがとうございました。
すごく引き込まれて観たものの
実はいまひとつ理解できないところもいっぱいあったのですが、
ななさんの感想を読ませていただいていると
なんと言葉にしていいか分からなかった感情がすっきり整理されていく感じで、
なるほどと唸ってしまいました。
>彼女自身も予測せず本能的に口をついて出た言葉で,彼女はそのとき初めて彼を愛していることに気づいたのではないか?
そうかも。いやきっとそうですね。
仲間の誰よりも頭が良くて、大人びていたチアチーだけど
冷静に考えたら愛に関してはウブな女学生だったわけで。
あれはそんなチアチーの衝動的な愛の告白だったんですね・・・
投稿: kenko | 2008年3月29日 (土) 18時31分
タンウェイさん コメントありがとうございます。
中国映画って,歴史や風俗など,壮大なスケールのものが多かったり
家族のしみじみとした人情を描いていたりするものがあって
素晴らしい監督さんの素晴らしい作品が多いし,
俳優さんも,またしかりですよ
これは日本占領下の中国のお話で
「ラストエンペラー」とか「上海の伯爵夫人」とかも思い浮かべてしまいました。
イーのモデルになった傀儡政府のリーダーの方,いたそうですね。
投稿: なな | 2008年3月29日 (土) 20時43分
kenkoさん,こんばんは
私も最初からすごく惹きこまれて鑑賞しました。
歴史的な背景などは勉強不足だったのですが・・・。
リー監督の作品は登場人物の気持ちを推し量りながら観る作品が多いので
初見ではわかりにくいですね~。
私も,これは初見時の感想ですから,2度,3度見直すとまた
あらたな発見があると思います。
「逃げて!」のシーンはとても印象的でした。
彼女自身も,口走った自分に驚いていたのではないでしょうか。あの瞬間は。
「恋は思案の外」ですね・・・つくづくそう思います。
どんなに理性で抵抗しても,未来がないとわかっていても,
依然としてそこに存在するのがほんものの愛ですよね・・・
投稿: なな | 2008年3月29日 (土) 20時55分
こんばんは!拙ブログにTBとコメントどうもありがとうございました。
いやあ、コメント欄もすごく深い感想が多いですね。
読みごたえたっぷりです。
原作ではまったく性描写って出てこないんです。
でも宝石店に行く時のチアチーの心理の変化なんかがとてもドラマチックに描かれていて、短いけれど、とても濃密なひとときを描いている秀作なのでぜひ読んでみていただきたいですね。
ちなみに「逃げて」のところ、中国語では「快、走」
と言っていて、イーはその通りの動きでしたね。(笑
投稿: しゅぺる&こぼる | 2008年3月29日 (土) 22時10分
ななさん、こんにちは~!
アン・リー監督にお詳しく、思い入れがあるななさんならではの深い洞察and愛情溢れるレビューですね♪
私個人的には、残念ながらそれほど感動する作品ではなかったのですが、いつか機会があったら、またもう一度トライしてみたいな~って思っています★
さっきTB送らせて頂きましたが、もしまたダメだったら、ごめんなさい^^
投稿: latifa | 2008年3月29日 (土) 22時14分
こんばんわ。
アン・リー監督って、やっぱり空気を操るのが大変
上手な監督さんなんですよね。
だからマーベルコミックの映画化『ハルク』が
興行的に失敗したのは、確実にアン・リーの作風に
マッチしていなかったからだったと思っています(苦笑)。
アン・リー監督がヒーローアクションだなんて・・・
全然カラーじゃないもの(苦)。
・・・と話は逸れましたが。
実に秀逸な作品でございました。
ななさんが記事の中で、私の言いたいことを全て
表現してくださっているので多くは語りませんが、
確実に2008年の映画の中でも大変印象を残す1作だ
と思っています。
投稿: 睦月 | 2008年3月30日 (日) 01時14分
ななさん拙ブログにTBとメッセージありがとうございます。アン・リーは大好きです。彼の「ウェディング・バンケット」も好きな作品で、もう一度ゲイをテーマに純愛作品を!(男と女よりもゲイをテーマにしたほうがよりその純粋さが際立つと言う、そういう意味でゲイで、ゲイにに拘るわけではないのですがね)と思っていたときに「ブロークバック・マウンテン」でした。今までは情感を静かに丁寧に描いていたけれど、本作そして「ラスト・コーション」で、アン・リー作品に情念やほとばしるパッションというものが加わり、更に更に次回作楽しみになっています。こんごともよろしくお願いいたしますね。
投稿: シュエット | 2008年3月30日 (日) 08時35分
余談です。
ジェイク君とギャスパー君の写真堪能です(笑)
ジェイクは「トニー・ダーコ」で、ギャスパーは「かげろう」でオッと注目しました。ジェイクも成長したなってつくづく思う。ギャスパーは「ハンニバル・ライジング」ではギャスパーに酔いしれましたね。
投稿: シュエット | 2008年3月30日 (日) 08時40分
しゅぺる&こぼるさん こんにちは
うちのコメント欄は,作品によっては,BBM好き,リー監督好きなかたが集まって盛り上がるので,ついついお互いにアツク語り合ってしまいます・・・
原作は短編集のようですね。本屋で捜せなかったので,ネットで購入しようかな・・・。
BBMも短編でしたが,脚本家やリー監督が,すごく素晴らしく膨らませていましたね。今作もそんな感じでしょうか。
「逃げて」が「快、走」というのは面白いですね。その言葉を瞬時に悟って脱兎のごとく逃走したイーは「さすが!」と思いました。
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 18時34分
latifaさん こんにちは
TB,今回はダメだったようです・・・ごめんなさい。
何か,1回おきに成功してますね~~
latifaさんはそんなにハマれなかったのですね~~
イーの気持ちも,チアチーの気持ちも,ちょっと理解しにくい面もありますからね。
わたしもまだまだじっくり見直してみないと腑に落ちない場面がたくさん残ってます。
何度も観てみたい作品ですね~。
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 18時39分
睦月さん こんばんは
TBもありがとうございました!
期待した甲斐のあった素晴らしい作品でした
「ハルク」・・・・
あれはリー監督作品としては,異質でしたね。
あきらかに,苦手分野でした。
それでも,エリック・バナには少し萌えたし
私はあれにも「切ない」感じを受けて,結構好きな作品ですが
アメコミのヒーローアクションに,「切ない」味付けは浮いてましたね~
画面の分割や,CGハルクの動きは「・・・・・」でした。
ああ,懐かしい!あれが大コケして落ち込んだリー監督が
BBMで復活したんでしたね!
やっぱり,繊細な作品の方が本領発揮できますね,リー監督。
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 18時48分
シュエットさん いらっしゃいませ
アン・リー監督,いいですよね~。
「ウエディング・バンケット」私も大好きな作品です(感想記事も書いてます。)
>今までは情感を静かに丁寧に描いていたけれど、本作そして「ラスト・コーション」で、アン・リー作品に情念やほとばしるパッションというものが加わり・・・
そうですね,彼は一見穏やかな感じですが,内に奥の深い情熱を秘めた方だなあ,とBBMでも思いましたが,この「ラスト・コーション」ではさらにそれを見せてもらえたという感じですね。
今後もどんな作品を撮ってくれるか楽しみです!
>ジェイク君とギャスパー君の写真堪能です(笑)
気に入っていただけて嬉しいです
この二人はお顔も雰囲気もぜんぜん違いますが
若いのに役者としてのプロ意識がとても高く,いつも最高の演技を見せてくれるので大好きですね~。
ジェイクの最高作品はもちろんBBMですが,ギャスパーは私も「ハンニバル・ライジング」が一番好きです。
こちらこそ,よろしくお願いいたします
投稿: なな | 2008年3月30日 (日) 20時08分
こんばんは・・・
コメントに来るのが遅れてしまって、ごめんなさい。
最近おバカ映画ばかり観てたせいで~頭がおバカになってた私です。
この作品は、あの性描写がなかったら~どのような作品になっていたかなぁ・と考えると、全く“普通”なんですよね。単に女スパイが自分の身体を武器に、敵をたらしこむ・・・それってよくあるストーリーですものね。
けれどアン・リー監督は、そのシーンにこだわった。
それって・・・
考えてみてたんですが・・・
彼女は彼をおとす為に、練習はしてましたが~そんなに経験もなく(相手がアレでは・・・苦笑)
その行為によって~イーは彼女が人妻なんかではないって気づいてたんじゃないかって・・・
それにあのカップにべっとり付いた口紅。当時の上流階級の女性達は、カップに付いた口紅はそっと拭き取っていたそうなんです。それをアン・リー監督は、何度も口紅べっとりカップを映してた。
付け焼刃のチアチーがそんなこと知るわけがなくても、イーは絶対見てたし、あんなに注意深い人が見落とすハズもなく・・・
そう考えると、正体を知りながら愛してしまった苦悩が、あの激しい営みにも表れているのかも?
イーは知っていながら、愛さずにいられなかった?
それを表現する為にの、あのシーンの数々なのかしら・・・
と考えてました。
投稿: マリー | 2008年3月31日 (月) 20時14分
マリーさん こんばんは
これって,いろいろ考えると深みにはまる作品ですよね。
アン・リー監督の思う壺ですけど・・・後を引く,引く!
明日から新しい職場なんで,今日は骨休めにお休みとって「魔法にかけられて」を観にいってきて,その帰りの本屋で,「ラスト、コーション」の原作をゲットして,帰り道,運転中に信号で停止するたびに読みながら帰ったら(危ない!)帰り着くまでに読み終えてしまいました。・・・それくらい,原作は短編なんです。
あの,宝石店でチアチーがイーを逃がすシーンに焦点をあてて書かれているんですね,原作は。
だから,彼女のそれまでの過去や,激しい性描写は映画化の際に脚色されたものです。
ただ,ふたりの関係が「原始的な猟師と獲物」のような「究極の占有関係」だった,とイーが振り返る場面がありました。
あの暴力的な性描写は,そんなことも表していたのかなぁ・・・。
死と隣り合わせの二人が,現実逃避が目的で激しく求め合った,という面もあるでしょうし,マリーさんがおっしゃるように,お互いを警戒したり疑ったりする気持ちの裏返しで激しく求め合ったのかも・・・
いずれにしても,リー監督は,役者の気持ちを絶対にナレーションや台詞で語らせませんから,二人の間の危うい力関係や,複雑な激情を表現するためには,あのアクロバットのような激しいシーンが必要だったのでしょうか。
原作と映画のイメージは微妙に異なる点も多いので,そこらの比較もそのうち感想記事にできたらなあ,と思ってます。
投稿: なな | 2008年3月31日 (月) 21時59分
ななさん、こんばんは~
なるほど~・・・
>ふたりの関係が「原始的な猟師と獲物」のような「究極の占有関係」だった。
なんだか凄く納得しました。。。
原作が読みたくなってしまいました。
ななさんの感想比較・・・楽しみに待ってます。
後で、『魔法にかけられて』コメントにきま~す。よろしく♪
投稿: マリー | 2008年4月 2日 (水) 19時57分
マリーさん 再コメントありがとうございます
原作は,拍子抜けするくらい,短いです。
ユイミンなんかちらっと出てくる程度で,あんな切ない役まわりじゃないし
ラストのイーも,哀しんでるというよりは「やれやれ命拾いした」と安堵しているだけのようにも思える描写で・・・・
リー監督のロマンチックで切ない味付けが加わってますね,映画は。
原作だけ読んでも,映画で感じたまでの余韻はなかったです。
そこが,原作でも泣けたBBMとの違いでしょうか。
「魔法~」私もおじゃましますね!
投稿: なな | 2008年4月 2日 (水) 20時53分
トラ・コメどうもでした。
映画になりやすい当時の上海・・・
とっても雰囲気が出ていて、味わい深い悲恋ものになってました。
投稿: ひらりん | 2008年4月 4日 (金) 00時00分
ひらりんさん こんばんは
そうですね,当時の上海は,不穏な政治背景や
混沌とした雰囲気や,女性の美しい衣装とか・・・
映画の題材にうってつけですね。
動乱の時代ならではの悲恋がよく描けていたと思います。
投稿: なな | 2008年4月 4日 (金) 22時38分
ななさん、TBとコメントありがとうございます。
とても素敵なレビューで読み入りました。
観る人によって様々な愛を感じることの出来る深い作品だと思います。
監督と俳優の力量がどれだけ作品を押し上げるかよくわかった作品ですよね。
投稿: hyoutan2005 | 2008年4月 8日 (火) 22時13分
hyoutan2005さん こんばんは
私のレビューよりも,hyoutanさんのレビューのほうが詩的で
情熱的で素敵でしたよ~
>監督と俳優の力量がどれだけ作品を押し上げるかよくわかった作品ですよね。
まったくです!原作はもっともっとあっさりして,それほど深い余韻はなかったです。
リー監督と,トニーをはじめとするすばらしい役者の演技で
映画化は大成功だったと思います。
投稿: なな | 2008年4月 9日 (水) 00時00分
そうですか~、原作の方が叙情的・情熱的ではなかったんですね~。
やっぱりそれはこの映画の演出の素晴らしいところだったんですよね~。ほんとに雰囲気がありましたもん。目と目で交わすあの視線の物語るところとか、あ~・・すごいわ~って思いましたもん。すごいと評判だったあの絡みのシーンも必然だったと思ったし。
とにかく主演の2人の演技はすごかったですよね。トニーは
勿論のこと、この女優さんの童顔だけどすごい情熱的な演技には
脱帽でした。記事にも書きましたが、立ち姿と歩く姿があまりにも美しくて、あ~自分も姿勢を良くしてあんな風に歩かなくっちゃなぁ~・・と思ったり(^^ゞ ま、すでにスタイルの部分で
足元にも及ばないわけで(^^;;) 姿勢だけ良くしても無理かとは思いましたが(^^;;)
男女の愛、禁断の愛とはまさにこういう感じだろうなぁ、と
しじみじしました。ラストは切なかった~・・。
投稿: メル | 2008年9月20日 (土) 07時26分
こんにちは!
DVDリリースされたので、さっそく観ました。
長い性描写だったよねー。二人とも監督の期待に応えました。
それにしてはあまりエロくないし、同じアジア人だからか逆にリアルだったよ^^;
目くばせ、しぐさの演技が多く、いろんな角度から映画を楽しめたわ。
タン・ウェイのチャイナドレスがきれいだった。
日本料理店、宝石店のシーンは印象的でした。
>彼女もまた,理性よりも愛の本能に突き動かされたのではないか。
人間のわきれないもの、愛・・・
この監督さんはうまいよね。
トニー・レオンは、別の一面をみることができて、すばらしい俳優さんですね。
投稿: アイマック | 2008年9月21日 (日) 12時20分
メルさん こんばんは
そうなんですよ~,映画は原作を深く掘り下げて,書き込んである・・・という感じです。
特にイーとチアチーの心理面は,原作を変えてるようなところさえ感じました。
アン・リーマジックが至るところで活きていましたね。
トニーの役者としての力量が凄いのは百も承知でしたが
あんな過激なベッドシーン・・・話題性という点では
「ブエノスアイレス」でのレスリー・チャンとのカラミ以来かなぁ~
役者魂に脱帽ですね。
タンウェイさんも,新人とは思えない貫禄で
清楚な色気が匂いたつようでした。
禁断の悲恋を描かせると,リー監督って天才ですわ。
投稿: なな | 2008年9月21日 (日) 23時30分
アイマックさん こんばんは
TB,コメントありがとうございました。
リリースされましたね。
ドライアイの私が劇場で観たときでさえ泣けたので
DVDでじっくり再見すれば,号泣は必至かと。
リー監督の作品は観直すほどに,新しく切ない発見があるので。
性描写・・・「しつこい(;;;´Д`)ゝ」と感じるくらい長かった~~
でも無駄ではなかったですね。それにわたしも
ナマナマしくは思ったけど,そんなにいやらしさは感じなかった。
悲壮感の方がひしひしと伝わってきたからでしょうか。
トニー・レオンは素晴らしいですね,ほんと。
前々からファンなんですけど,ますます敬愛するようになりました。
投稿: なな | 2008年9月21日 (日) 23時47分
ななさん、はじめまして。
この作品を観て以来、ずっと心の中がもやもやとし、
胸が痞えたような気がしていたものが、
ななさんのレビューを読んで、非常にすっきりとし、
腑に落ちた心持ちがしました。
ありがとうございます!
コメントを寄せられた皆様の素晴らしい分析にも、大変感銘を受けております。
この作品は本当に、見れば見るほど色々な発見があり、
どんどん心を捉えられていきます…
主演の二人は、監督の要求に非常に素晴らしい力量で応えたと思います。
特にトニー・レオンの演技は比類なきものでした。
あんなに「イーの哀愁」を表現できる俳優は他にいないのではないでしょうか…。
特に宝石店でのあの演技は、彼以外の俳優ではありえない、
彼でなければ成り立たないシーンだったと思わせるほどのものでした。
そして、そのトニーに応えたタン・ウェイの表情もまた素晴らしかった…
今後も是非活躍してほしい女優さんだと思いました。
投稿: やっすー | 2009年5月31日 (日) 21時20分
やっすーさん はじめまして
この作品に心打たれた方とお話できてうれしいです。
原作が短編であること,複雑な時代背景であること
そして監督がアン・リーであること・・・などなどから
この作品は幾通りにも解釈できる,とても奥深い
(言い換えれば一度観ただけではわかりにくい)ものとなっていますね。
特に気持ちをセリフやナレーションで説明せずに
役者の演技だけで表現させる監督の演出法に
二人の主演俳優はこのうえなく見事に応えたと思います。
>特にトニー・レオンの演技は比類なきものでした。
リー監督はハリウッドで撮るときも
トビー・マグワイアやジェイク・ギレンホール,ヒース・レジャーなど
折り紙つきの演技力の俳優さんを使いますが
中華の俳優さんの場合もしかり!ですよね。
トニー・レオン・・・若いころから素敵でしたが
年を重ねてますます円熟した素晴らしい演技を見せるようになりました。
いろいろな作品で彼が表現する「哀愁」や「男の色気」「繊細さ」「優しさ」・・・
これは彼にしか出せない魅力ですよね。
またよろしければいつでも遊びにおいでくださいね。
投稿: なな | 2009年5月31日 (日) 22時59分
ななさん、こんばんは!
こんなに早くお返事いただけるなんて嬉しいです♪
ありがとうございます。
またしても長く語ることをお許しください…(>_<)
>特に気持ちをセリフやナレーションで説明せずに
>役者の演技だけで表現させる監督の演出法に
成程…説明ゼリフがなく、観る人によっていかようにも解釈できるからこそ、いつまでも後を引くのかもしれませんね。
あの濃密な性描写も、言葉ではなく体を重ねることで心が徐々にとらわれていく過程を表現するためなのかもと思いました。
チアチーの心が次第にイーに傾いていく様には悲哀を感じずにはいられませんでした。
百戦錬磨のプロの女スパイならともかく、ただ映画が大好きで、演劇に自分の居場所を見いだしただけの、純朴な一介の女子大生に過ぎないチアチーが、肉体関係から生まれた、今まで経験したことのない情愛に対して、一体どうすることができただろう。。と。
そもそもチアチーは、イー個人に対する恨みも憎しみも、暗殺へ向かう大義も持ち合わせていなかったのだから…。
いっそ、イーが「マイ夫人」を散々弄んで捨てるような鬼畜なら、チアチーだって憎しみも募って、暗殺にも勢いがついたでしょうけれど、彼はそうじゃなかった。
「誰の言葉も信じないがお前だけは信じよう」なんて言われたり、妻にすら買ってやらなかった6カラットのダイヤで愛情を形にして見せた挙げ句、「それを着けた君を見ていたいんだ」なんて、愛おしそうな瞳で見つめられたら…
チアチーが映画館でユイミンに「決行はいつなの?早くしないと私…!あの人には他に女がいるのかも…」などと口走るシーンを観て、自分の感情がマイ夫人としての演技なのかチアチー自身のリアルなものなのか、だんだんワケがわからなくなってきて混乱していたのかもしれないと思いました…。
そんな中での、宝石店でのイーのあの一言と優しいまなざし。最後の最後に「逃げて」と言うほかなくなってしまったチアチーの心を思うと、本当にやるせなくなります…。
チアチーが自害を思いとどまった理由がなぜなのか、ずっと考えていたのですが、もしかしたら、三年前に演劇仲間たちが犯してしまった殺人現場からただ一人逃げ出してしまった自分を思い出し、ここで自害したらまた自分だけ一人で逃げることになる、ならばみんなと最後を共にしよう、そう考えたんじゃないだろうか…と思いました。
長々とすみません…
投稿: やっすー | 2009年6月 2日 (火) 22時43分
やっすーさん,再コメントありがとうございます。
やっすーさんのコメントを拝読して,劇場でこの作品を観終わった時に
ただ言葉もなく涙を流していた自分を思い出しました。
>チアチーの心が次第にイーに傾いていく様には
>悲哀を感じずにはいられませんでした。
彼女には,荷の重すぎる任務だったのかもしれません。
そんなに過激な思想を,もともと持ち合わせていたとも思えないチアチーは
流れに逆らえないままに,あのような任務を背負わされてしまい
(その動機にはユイミンへの愛が大きな比率を占めていたでしょう)
結果として,自己の抱えていた孤独感や緊迫感と共鳴するものを抱えていた相手は
これまでともに過ごしてきた仲間たちではなく
なんと敵であるイーだった・・・のかもしれませんね。
「同類」という意識から,彼女はイーを本能的に愛してしまったのかも。
それでも古くからの「仲間を裏切った」という罪の意識は強かったので
ひとり自害することをあえて選択せず,仲間とともに処刑されることで
仲間にも礼をつくしたのかもしれません。
仲間を裏切ったことに対して自責の念もあったかもしれませんね。
そういうことをいろいろと考えると
なぜにこの二人(チアチーとイー)は
異なった時代に,異なった設定で出会うことが赦されなかったのか・・・
ものすごく切ない想いに囚われます。
アン・リー監督の作品って,こういう無常観に満たされたものが多いのですよ。
われわれが同じアジア人種だから,よけいに共感するのかもしれませんが。
「どんなに愛しても無駄という宿命」・・・こういう無常観の美学は、
アジア独特のものですよね。
投稿: なな | 2009年6月 2日 (火) 23時50分
ななさん、こんばんは!
遅ればせながら、ようやく観ることができました^^
何となく、ほんとに何となく今まで敬遠していた映画だったんです^^;ショップで何度DVDを手に取り迷ったことか。。。
でもここにお邪魔させて頂くようになり、皆さんの感想を拝見させて頂いてようやく安心して観ることができました。(家人が寝てからですが^^;)
そこだけ取りざたされた性愛の場面は、全くエロティックな感じがせず、ななさんの仰るように”死”と隣り合わせの真剣勝負で、何だか切なく苦しかったです。
トニー・レオンには参りました。。やっぱり凄い役者ですね~。
彼はこの映画で、精魂尽き果ててしまい「レッドクリフ」の孔明を辞退したそうですが、その位入り込んでいたんですねェ。
監督の演出とそれに答える役者。とても深い映画でした。
でも金城クンには絶対やって欲しくない役です!っていうか、全く想像できませんが^^;
ゴメンナサイ、ミーハーなコメントで(笑)
投稿: ちー | 2009年10月 7日 (水) 00時10分
ちーさん こんばんは
大好きな作品にコメントありがとうございます。
今まで何となく敬遠・・・というのも
家人が寝てから鑑賞・・・というのも頷ける作品ですが
そしてまた,感動の度合いも人それぞれの
どちらかというと難解な部類の作品だと思いますが
素晴らしい監督,素晴らしい役者による
傑作のひとつだと思っています。
トニー・レオンはなんというか・・・もう神ですね。
その存在感や表現力,醸し出すセクシーさや哀愁。
金城さんとツーショットの作品も多くって
この二人のコンビがこれまた似合う。
>金城クンには絶対やって欲しくない役です!っていうか、
>全く想像できませんが^^;
うんうん,彼の演技力からすればできないことはないでしょうが
似合わないですね~,こんな役は。
投稿: なな | 2009年10月 8日 (木) 22時08分