遠い空の向こうに
NASAのロケット・エンジニアホーマー・ヒッカムの自伝を基にしたヒューマンドラマ。観賞した人はほぼ例外なく,爽やかな感動を味わえる好感度100の作品。若くてみずみずしいジェイク・ギレンホールの魅力も満載だ。
ウエスト・ヴァージニアの小さな炭鉱の町コールウッドに住む高校生ホーマーは1957年10月にソ連が打ち上げに成功した人類初の人工衛星スプートニクに触発されて自作のロケットを打ち上げたいという夢を抱き,級友3人とともに本格的なロケットづくりにとりかかる・・・・・。
特にひねりがあるわけでもなく,サクセスストーリーの王道をゆく物語なのだが,この作品には誰の心の琴線にも触れる,ストレートな感動がいくつも詰まっていた。
それは・・・・ 青春ものとしての感動
思春期の少年たちのピュアな心や,堅い絆が素晴らしい。コールウッドでは,フットボールが上手くて,大学の奨学金を獲得するような体育会系はもてはやされても,ホーマーのような科学オタクは,やや軽く見られていたらしい。
周囲の揶揄にもめげずに,時々は喧嘩もしながら,「なんとかこの炭鉱の暮らしから抜け出したい」という思いを胸に,夢に向かってまっすぐに向き合う彼らの生き生きと輝く瞳や笑顔がまぶしい。 教師ものとしての感動
不可能に思えたホーマーたちの夢を,あたたかく応援し続けたライリー先生の存在は大きい。彼女の精神的な支えやアドバイスがなかったら,彼らロケット・ボーイズは,果たしてあそこまで頑張れたかどうか。
教え子の才能を見抜き,進むべき道を提示できる教師は素晴らしい。コーラスのマチュー先生を思い出した。「彼らの可能性を信じなければ,教えることなどできない」と言うライリー先生の台詞が心に残った。いい教師との出会いって,ほんとうに人生を変える。(逆も またしかりだが) 父子ものとしての感動
息子に自分の跡を継いで 炭鉱夫になってほしかった父親と,炭鉱夫にだけはなりたくない息子との対立。内心は愛し合っているのにすれ違う父と息子。「リトル・ダンサー」も,こんな物語だった。あの物語も,バレエをやりたいという息子の夢を,なかなか受け入れられない頑固親父が登場した。そして舞台もまたさびれた炭鉱の町だった。
ホーマーは,フットボールのうまい兄に比べて,自分は父に軽視されていると思い,ロケットへの夢を少しも理解してくれない父へ不満を抱いている。それに対して,父の方は,自分の誇りである炭鉱の仕事を嫌う息子に,怒りや寂しさを感じている。
ジェイクの,反抗心とやるせなさをたたえた瞳も素晴らしいが,クリス・クーパーの表情の演技が圧巻。不器用で一徹な頑固親父の,葛藤するさまがとてもよく伝わってきた。
この親子,価値観は正反対だけど,父も息子も頑固で志が高く,実は似たもの同士。それに気づいたときに,ようやく互いの心が素直に結びつく場面は,何度観ても感動する。
実話としての感動
考えてみれば凄いことだ。田舎町の高校生4人が,ロケット工学のイロハから独学して,様々な失敗や困難をひとつひとつクリアして,あれだけの偉業を成し遂げるとは。彼らはまさに「道なきところに道を造った」のである。
「炭坑の敷地内でやるな」と言われれば,13キロ離れた場所にまで通うド根性。資金調達のためには廃線の線路をはがして売り,最大の試練だった「山火事冤罪」にも,一度はメゲたものの,無実を立証するまであきらめない。
彼らのアイデアの柔軟さと,不撓不屈の精神には脱帽。(しかしまじめで頭がいいね,50年前の高校生って)
頑張れば,みんなが夢を実現できる・・・・とまでは言わないけど,多くの青少年にこれを観てもらって,一度しかない青春時代の純粋なパワーを,夢の実現に向けて使ってほしいし,われわれ大人は,ライリー先生みたいに,彼らをサポートする心を持ちたいものだ,と素直に思えた。
そうだ,少年よ!
大志を抱きたまえ!
(・・・とオバサンは叫ぶ。心の中で)
この作品のジェイクは,
食べちゃいたいくらいキュート。
食べたら,やわらかで甘くて,美味しそうな感じがする。(←ハンニバルかい!)ひたむきなまなざしで語るところは,この頃から同じ。炭鉱で働いていた頃は,青いダンガリーシャツにジーンズ姿で,なにやらジャック・ツイストの少年版のようだ。
ああ~~かわいい~
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» 「遠い空の向こうに」 [心の栄養♪映画と英語のジョーク]
のちにNASAのロケット・エンジニアになったホーマー・ヒッカムの
自伝を基に、ロケットへの夢に賭けた若者たちの挑戦を描いたドラマ。
1957年10月、ソ連が人類初の人工衛星スプートニクの
打ち上げに成功し ウエスト・ヴァージニア州の炭坑の町
コールウッドで、その美しい軌跡を見ていた青年ホーマーは、
自らの手でロケットを打ち上げたいと思い、級友3人とともに本格的な
ロケットづくりにとりかかった・・・・。
炭鉱労働者の町、学校、警察を含めおよそ全ての人間がこの町に
未来がないことを悟りながらもこの町... [続きを読む]
» 少年の夢は宇宙へ〜『遠い空の向こうに』 [真紅のthinkingdays]
1957年10月4日。人類史上初めて、ソ連が人工衛星スプートニク号の打ち上げに
成功した。ウェストバージニア州の小さな炭鉱町コールウッドに... [続きを読む]
» ネタバレ「遠い空の向こうに」「ルディ/涙のウイニング・ラン」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
最近アメリカンフットボールとか、ラグビーなどの実話映画をたて続けに見ているな(^^ゞ
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こんばんは。
あの少年の役がジェイクにピッタリでしたよね。
少年たちの夢を追う姿にワクワクして、心が熱くなりました。
彼らを応援してくれた人たちも、きっと同じような気持ちだったのでしょうね。
派手なところはないけれど、本当に素敵な作品でした。
投稿: ひめ | 2008年3月 5日 (水) 00時28分
これだ~~~~~~~~い好き(^▽^)V
これまで見た映画の中でベスト10に絶対入れたい
映画です♪
だいたい実話を基に・・っていうのが好きだというのも
あるんですが、これはななさんも書いてらっしゃるように
父・息子の物語としても優れてたし、クリス・クーパーが良かった~♪ もちろんジェイク君も最高でした~(^▽^)V
ほんとにこの映画はななさんの4つのポイント全てで満足できる映画だったです。
記事を読ませてもらって、あぁそうか、こんなに
感動どころ・・というか、ツボにハマる部分が
あったんだなぁ、と改めていろいろ思い返しております♪
ライリー先生はあのあとほんとに若くして亡くなられてるんですよね~・・・とても残念。
今現在はどうなってるのかわかりませんが
少し前に、なかなか手に入らなかったこのDVDを
Amazonのマーケットプレイスで、結構なお金をはたいて(^^;;) 買っちゃいました~♪
その後、すでに3回は見てるかな(笑)
何度見てもいい~~~~(^▽^)V
TB&コメント、どうもありがとうございました♪^^
投稿: メル | 2008年3月 5日 (水) 09時04分
こんにちわ
この映画は2度ほど(DVDとテレビ放送)見ましたが、ジェイクの可愛さとC・クーパーの名演技が素晴らしかった名作でしたね、R・ダーンも素晴らしく印象的でした。この手の映画は率先してみたい映画ではありませんが、見てしまうとやはり感動させられます(笑)ななさんもご指摘のようにこの映画は色々な要素が含まれた映画でした(特にホーマーの夢を後押ししてくれたライリー先生がいなくては、ラストのホーマーはいなかった気がします)もちろん父子の話も感動的ではありますね、
舞台が素朴な田舎(炭鉱町)だったり、時代も1950年代だったり、ホーマーだけでなく、周りの人たちの援助で成功したというのも感動的、何か何もかも非の打ち所がないですね、それとジェイクのキュートな笑顔つきで・・・、(4人の少年たちの写真が可愛くていいですね~、ちょっと「スタンド・バイ・ミー」みたい)僕も少年時代が懐かしくなりました。
投稿: イニスJr | 2008年3月 5日 (水) 11時45分
ななさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございました。
この映画、隠れた名作ですよね~。DVDが入手し難いのですが、いつか必ず手に入れたい作品です。
↑メルさまが「人生ベスト10」とおっしゃっていますが、ちょっとマイベストも考えてしまいました(笑)。
う~ん、難しいですね。ジェイク出演作ならBBMが絶対一位に君臨しています。
それから、バトンのアップが遅れていてごめんなさい。
もう少ししたら必ず記事にしますので、もう少しお持ち下さいね。
忘れた頃でもお許しを・・・。
ではでは、また来ます!
投稿: 真紅 | 2008年3月 5日 (水) 16時34分
ひめさん こんばんは
ほんとに,ひたむきなところとか,ジェイクにぴったりでした,ホーマー君。
観客もいつしか,彼らを心から応援していましたよね。
あのあたたかさと,爽やかさは特筆ものです
確かに地味ではありますが,誰の心にも感動を与える作品でした。
投稿: なな | 2008年3月 5日 (水) 20時36分
メルさん,こんばんは!
そうそう,メルさん,これ大のお気に入りに入れてましたね
「オーロラの彼方に」とかと同じくらい,ほのぼの~とした感動が味わえました。
いや,「オーロラ~」よりは熱い感動かな?
私も実話ものは好きです。教育ものも,親子ものも。
これは,それら全部が詰まってましたね。
何度観ても,必ず同じところで,同じような感動が味わえます。
悲劇や犯罪物も好きですけど,時にはこういう作品を観ると
常日頃心の奥にしまっていた「善なるもの」や「希望」とかが刺激されて
心がリフレッシュされるような気分になります。
DVD持ってらっしゃるとは羨ましい!私もいつか手に入れたいな。
ジェイクが可愛いし・・・。あんな弟,いや,息子でもいいから欲しいわ。
投稿: なな | 2008年3月 5日 (水) 20時45分
私はジェイクのファンでなかったら,DVDを手に取らなかったかもしれませんが
ジェイクを抜きにしても,とてもいい作品ですね。
>この手の映画は率先してみたい映画ではありませんが・・・・
あはは,私もどちらかというとそうです。でも,教育ものは結構観る方ですけど。
でも,おっしゃるように,観れば必ず感動はさせられますね。
確かに非の打ち所のないサクセスストーリーなんですが
実話だから,素直に感心したり感動したりできます。
私も「スタンド・バイ・ミー」を思い出しましたね。
少年たちが森の中でいるシーンとか。
少年たちって,いいですね~,少女たちだとこうはいかないわ~
男の子って,夢のスケールも大きいし,オタク的な傾向も強いしね~。
投稿: なな | 2008年3月 5日 (水) 20時53分
TB今回も無事に着きました!ありがとうございます。
そう,間違いなく隠れた名作ですね。
こんな風な,隠れた名作ってけっこうありますね,勿体無い。
私も,ベストテンに入るほどではありませんが,すごく好きですね。
DVD,私もいつかコレクションに加えたいです。
ジェイク作品で好きなのはぶっちぎりでもちろんBBMですが
その次はゾディアックですかね,私の場合は・・・・。
バトン,いつでもいいですよ~。ゆっくり,じっくりアップしてくださいませ。
投稿: なな | 2008年3月 5日 (水) 21時00分
このDVDですが、廉価版が発売になるみたいです^^
もうご存知かもしれませんが(^^;;)
4月10日発売のようです。
Amazonだと1350円で出てますよ~(^▽^)V
でも、ショックだわ~~~。
私が買った時は(それも数ヶ月前・・とほほ)
中古しかなくて、それもかなりお高飼ったのに・・・(涙)
でも、喜ばしいことですよね♪
たくさんの人が買ってたくさんの人が感動の嵐・・ってことになりますもんね~^^♪
投稿: メル | 2008年3月16日 (日) 11時15分
おおメルさん,情報ありがとうございました!

わたし,知らなかったです,嬉しい~~
評判いいから出るのかな,廉価版。
では早速注文しようっと!
一足先に購入されたメルさん,残念でしたね~
なんだか申し訳ない気もするわ
投稿: なな | 2008年3月16日 (日) 18時32分
ななさん、こんにちは!
今更ですが、私もこの映画見ました。
いやぁ~~予想以上に凄く良い映画で好きでした!
で、ジェイクさん、可愛かったのねぇ~~~!!(なんて書いたら今は可愛くないみたいだけど、そういう意味じゃないです)
なんか、ちょっとリウ・イエ君ぽい、朴訥というか純な感じというか綺麗なのにウブな少年というたたずまいが、好感度マックスーー!!って感じでした☆
内容も、ななさんがあげていらっしゃる通り、家族、先生、仲間など色々な事が描かれていて、しかも実話!
いやぁ~素晴らしい映画だな、って思いました。
PS TB今回はダメだったみたいです。残念。
投稿: latifa | 2010年2月25日 (木) 09時19分
latifa |さん,思いがけない作品にありがとう~
そう,これは非の打ちどころのない,教育系の
万人に好まれる作品ですね。
ベタでありながら,嫌味がなく感動を誘うのは
演技派の役者揃いだった,ということと
やはり実話だったからでしょうか。
夢の実現・・・っていいですもんね~
>なんて書いたら今は可愛くないみたいだけど、
いやいや,ジェイクファンの私ですが
彼は今は可愛くないですよ~
役者としても,イマイチ伸び悩んでいるのか
めっきり新作もDVDさえ日本に来なくなってしまった・・・
「ブロークバック~」で同じようにブレイクしても
やはりそこらへんはヒースほどは才能がなかったのでは?と
最近思ってます。
でもこのころの彼はいいですよ。
この作品にぴったりの一途さ,キュートさですよね。
投稿: なな | 2010年2月26日 (金) 00時05分