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2008年2月 5日 (火)

追悼ヒース・レジャー/ケリー・ザ・ギャング

Cap005
2003年製作のこの映画は,オーストラリアに実在した伝説的なブッシュ・レンジャー(山賊)ネッド・ケリーとその一味の物語。

19世紀半ばのオーストラリア。アイルランド系移民は,土地所有法と警察によって迫害されていた。ネッド(ヒース・レジャー)の父はアイルランドからの流刑者で,彼の死後,
その家族もまた無法者として,警察からは常にマークされ,嫌がらせを受けていた。

ある日,冤罪がもとで母のエレンが投獄されたことがきっかけになり,ネッドとダンのケリー兄弟と,仲間たちは,ブッシュ・レンジャーとなる。彼らは銀行強盗や殺人に手を染めながらも,警察の容赦ない追跡をかわし,奪った金を貧しい者に分け与えるなどして,権力への反骨精神を示し続ける・・・・・。
Cap002
オーストラリアの歴史には全く詳しくないけど,このネッド・ケリー,オーストラリアでは大変有名な伝説的ヒーローらしい。

山賊というよりは,義賊のようなとらえられ方で,彼の生きざまは多くの小説や演劇,絵画などに取り上げられ,as game as Ned Kelly’「ネッド・ケリーのように勇敢に」という表現が一般化しているという。過去に映画化されたときは,ネッドがスクリーンに登場すると,観客が拍手喝采したそうな。「犯罪を助長する」という恐れから,上映禁止になったときもあったらしい。


Cap006
さて,役によっては,繊細だったり,キュートだったり,はたまたエレガントだったりと,七変化の魅力を見せてくれるヒース
だけど,この作品でネッドを演じたヒースは,苦みばしっていて,ワイルド。

馬に乗るのは,お手のものの彼だが,今回はオーストラリアの荒涼とした大地やブッシュの中を自在に駆け抜け,射撃のポーズも惚れ惚れするほど決まっている。
運動神経,ほんとに抜群だな,この人

Cap013
リンカーンのようなあごひげをたくわえ,眼光鋭い瞳,血や土で汚れた顔。しかし,みすぼらしい上着を着ていても,スタイルがよくて身のこなしが綺麗なので,まるでディナー・ジャケットを無造作にまとっているような,洗練された雰囲気が垣間見えるときも。


共演陣も豪華で,ネッドの親友ジョー・バーンにオーランド・ブルーム。(おヒゲをたくわえても,やっぱり可愛く,なかなかの色男ぶりで好演しているので,オーリーファンにもおすすめ)ネッドと情を
交わすイギリス女性(人妻だけど)に美しいナオミ・ワッツ。(この共演でヒースと恋仲に) そしてネッドを追いつめる警視役に名優ジェフリー・ラッシュ

Cap004
これだけ揃っていて,なんで日本では劇場公開されなかったのかな。ネッド・ケリー自体,日本ではほとんど知られてない存在だから,仕方ないのかしら。

抗争を描いた物語だから,どうしても暗く地味な印象になるし,ネッド・ケリーや,時代背景について予備知識がないと,わかりにくい部分もあるけど,ヒースをはじめとする出演陣の真摯な演技で,虐げられたゆえにギャングにならざるを得なかったアウトローなヒーローと,彼の仲間たちの哀しい生き様はひしひしと伝わってくる。

Cap016
支配者の横暴な行為に決して屈しなかった,ケリー家の人々の誇り高き強靱さ。「いつかは命を落とす」という不安と闘いながらも,
ギャングとなって前に進むしかなかった,ケリー兄弟の心の葛藤。そして,投獄されても決してネッドを売らず,彼の処刑に当たっては,膨大な量の助命嘆願書を提出したという,貧しい民衆たちの思い。

社会の底辺に弱者として位置付けられた人々の,権力への憤りや飽くなき抵抗
を目にすると、たとえ無法者のギャングと言えども,彼らを応援せずにはいられなかった。しかし史実を曲げられない悲しさで,ラストの悲劇はやはり避けられず,警官隊の乗った列車の転覆と警視の誘拐計画に失敗したケリー・ザ・ギャングは全滅,傷ついたネッドは逮捕される。

Cap019_2
彼が倒れるまで片時も離さずに身につけていたのは,幼少の日に,溺れる子供を助けたことを賞されてもらった,栄誉ある帯だった・・・。

彼は望んで無法者として生きたのではなかった。
劇中で弟に語ったように「虐げられつづければ,誰でも道を誤る」という彼の言葉は,非常に重く心に残る。その帯を「・・・くれないか?」と頼む警視のことばからは,ネッドを尊重する思いが感じ取れた。

やはりヒースは、強いだけでなく,悲しみや葛藤を内に秘めたヒーローを演じるのがうまい。日本ではあまり有名でないこの映画だけど,オーストラリアにはこんな悲劇の英雄がいて,今も国民の心に誇らしく生き続けているのだなあ,と感無量になる。

Cap011
そしてネッドを演じたヒース・レジャーもまた・・・・・・。
祖国オーストラリアにとっては,若くして逝った才能ある俳優として,どうかいつまでも,国民の心に残ってほしいと願う。

  

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コメント

 ななさん、こんばんわ
 この映画はわりと好きでしたね、段々のめり込んでました、最後の方ではネッドを応援してましたよ(笑)
 この映画でのヒースはとても大人っぽく、頼りがいのある男に見えてオーリーが可愛く見えましたが、実年令はオーリーの方が上なんですよね、存在感や演技面でもヒースが上回ってたと思います、完璧にヒース貫禄の映画でした。
馬には上手く乗りこなし、運動神経も抜群でしたよね。
 オージーの間ではこのネッドもヒースも偉大な人間ですね、去年「キャンディ」公開時にオーストラリア大使館の前を通ったら、掲示板にしっかり「キャンディ」のチラシが貼ってありました(オージーでのヒース人気を再認識)
 ななさん、次はどのヒースの記事ですか?どの作品を見ても素晴らしい役者だな~って、だからオージーだけでなく、いつまでも世界中の人に忘れられないスターでいて欲しいと願ってます。
 

イニスJrさん
これは、結構良作だったと思います。時代背景わからなくても、ストーリーにひきつけられましたね。後半は哀しかったですね。全滅するシーンとかはうるうるしました。
このときのヒースは23歳くらいなのに、ずっと老成してみえます。目が鋭いですねー、他の出演作と違って。ちゃんと役作りしてたんだなあと、あらためて感心。オーリーの方が年上とは!( ̄□ ̄;)!!絶対ヒースが上に見えますね。ま、オーリーは童顔やけど。

次回のヒース作品、うーーん、何がいいですか?(・・?)
私のお気に入りはもう書いてしまったので、イニスJrさんのお好きなのにします。あと大作と言えばパトリオットとブラザーズ・グリムとサハラに舞う羽根ですかね?グリムとサハラはストーリーが「何じゃコレ」と思って、今まで得意じゃなかったのですが、ヒースだけの演技に絞って観れば、新しい発見があるかもですね!何でもリクエストしてくださいな。
22日にリリースされるキャンディも感想を書く予定です。この作品のヒースはかわいらしいそうですね。テーマは重いけど。

あ~、懐かしいなぁ~・・と、この映画好きだったなぁ・・・と真っ先に思ったんですが、いろいろ思い出そうとしても思い出せないところがたくさんあって、今焦ってます(^^;;)
そうか、この映画でナオミ・ワッツと・・だったんですね~。
ほぼ親族だけというような葬儀にも彼女は出ていたそうですし・・。
またしばらくしたら見直したいです。

メルさん
おお,さすがヒースがお好きで,いろんな映画を幅広く鑑賞されているメルさん!
この作品も「懐かしい~~」なんですね!
私は,今回追悼の意味で初めて見たのですよ。
以前,冒頭だけちょこっと観たけど
すぐにやめてしまった覚えが・・・
なかなかいい物語で,感動もしましたね。
でも,何と言っても,このヒースは頼れる男!って感じで素敵でした。
ナオミ・ワッツ,元カノだけど
元カノにいつまでも好意をもってもらってたヒースって
やっぱり素敵なひとだったんですね,私的にも。

 こんにちわ
 ヒースの死因も判明し、後は彼に安らかに天国で眠ってくれることを願うばかりです、ただヒースは色々な人に愛されてたんだな~と思い、ちょっと嬉しい!特にジェイクはホントにヒースが好きだったんだな~と微笑ましい限りです
 さてヒースのDVD語りですが、「キャンディ」がもうすぐ発売とか、この映画でのヒースはちょっとしょーうもないのですが、それでも愛する人の為に立ち直ろうとするところ、特にラストは必見です(少しBBMにかぶるかな~)僕ももう1度見てみたい、
 そして「サハラ」ですが、BBM前に鑑賞してBBM後に再見しましたが、これもまた苦悩するヒース、自分のしたことに後悔して悩む青年を熱演していたヒース、結構好きです(少々中だるみ気味でしたが)
 「ブラザーズグリム」も何だコリャーと思った変な映画でしたが、もう1度再見して納得してみたい、T・ギリアムの次回作の撮影の為に体調を整えようとして、複数の処方薬を飲んでしまったヒース(ほんとうに不運で不幸な事故)なのでそんな意味でも見てみたい、M・デイモンとM・ベルッチも良かったし。
 てなわけでどれもいいですが、特におすすめはななさんが未見な「キャンディ」ですかね、ぜひ感想聞かせてください。

イニスJrさん
ヒースの死因が事故と判明して,
ドラッグや自殺説の疑いが消えて,ほっとしましたね。
あとは早くジェイクが立ち直ってくれれば・・・。
「ブラザーズ」の撮影に影響が出ないか心配ですね。
でも,ジェイクにとってヒースは本当に大切な存在だったんだなぁ,と思うと,
ジェイクとヒースがやはりジャックとイニスに重なったりして,切ないです。
さて,ヒース作品,やはり「キャンディ」がわたしも一番楽しみです。
早く22日がこないかなー。でも,それまで長いから,
「ブラザーズ・グリム」でもアップしようかと思ってます。マットもまた大好きなので。
(この作品のマット,いつもと見かけも全く違ってまた新鮮ですね。)
ハチャメチャなストーリーはともかく,
マットとヒースの「兄弟どつき漫才」を堪能してみたいですね。
二人とも,普段と違うコミカルな演技で魅せてくれそうです。
それにしても,やっぱり器用な役者だ・・・・ヒース。


その国では当たり前のように知られている人物(時代背景も含めて)でも、他国の人々には「誰やそれ?」ってケースは多いでしょう。同じようなアウトローの「ジェシージェイムス」はブラピだから劇場公開したんでしょうね。
日本に当てはめると誰かなあ?鼠小僧は微妙だし、清水の次郎長でもなさそうだし、やっぱ「赤穂浪士」ですかねえ。
さて、ヒースのは未見なんですけど(すみません)昔々あったんですよ~、この人を主役にした映画。
ななさんは洋楽とか詳しいですか?何故かイギリスの映画で、ネッドを演じたのが、ローリングストーンズのミックジャガー!なんでミックがそんな映画に出たのか、日本でも劇場公開されたのかもわかりませんが(知ってる人いたら教えてほしい!)数年前夜中にこっそりオンエアされたときに眠い目こすりながら見た覚えが...
感想-ミックはヒゲモジャは似合わない...たぶん彼も自分のキャリアから抹殺してるんじゃ...DVDは出ないだろうな、きっと。
あとこの映画の邦題は爆笑モンですよ「太陽の果てに青春を」
誰がつけたんだか...なんの映画かわからんやん!

garagieさん こんばんは
その国だけの国民的な英雄は多いでしょうね。
日本じゃ,たしかにあまり思いつかないですね。
悲劇性やカリスマ性を持った国民的英雄は。
何度もお芝居にまでなってるから,やはり「赤穂浪士」かな?

洋楽は全く詳しくないですね~~。もっぱらクラシック。
ミック・ジャガーって名前はさすがに聞いたことありますけど。
その御仁がネッド・ケリーを演じたのですか?うーん,話聞いただけで,似合わなそう・・・。
ヒースのネッドはなかなかよかったですよ。
お髭もまあまあ似合ってました。
「太陽の果てに青春を」って・・・(爆)B級の匂いがぷんぷんする題ですねぇ。


こんばんは。
TB&コメントありがとうございました。
ななさんはヒースとジェイクのファンなんですね!
(昨日、「遠い空の向こうに」を見ました)

ヒースの訃報を聞いたときは、ものすごい衝撃でしばらく何もできなくなってしまいました。
今は落ち着いてきて、ヒースが亡くなったなんて忘れてしまうときもあるんですが、ふとした時に
「もういないんだ・・・」
と、すごく悲しくなります。
本当にこれからが楽しみな俳優さんでしたよね。
芸達者だし、運動神経も抜群だったし(サハラに舞う羽根では馬に飛び乗っていましたよね)、なんといってもあの笑顔が最高で・・・。

「キャンディ」のヒースはほんと体当たりという感じで、演技は最高でしたよ。
私もまたDVDで見る予定です。

って、長々と書いてしまってすみませんでした。
他の記事もゆっくりと読ませてもらいますね♪

ひめさん こんばんは
ようこそいらっしゃいました

「遠い空の向こうに」見られたんですか!
ジェイクが可愛かったでしょ~
私もそのうち,「遠い空~」の感想記事も書く予定ですので
またTBに伺いますね。

日々の多忙さに多少まぎれることはあっても
やはりヒースがいないことへの喪失感は,なかなかなくなりませんね。
どの映画でも(もちろん,これでも)馬に乗ったヒースの雄姿は最高でしたね!
俳優になるために生まれてきたような,そんな才能に恵まれたひとだったのに
悔やんでも悔やみきれないですね・・・。

「キャンディ」明日あたり,DVDが届くかも
とても楽しみです。
またお邪魔いたしますね!ではでは。

ななさ~ん、観ましたよ~
スッゴク良かったです
琴線に触れまくって感動して・・・ネッド・ケリーの本を読もうかと思ったくらいです(よく考えたら未読の本が山積みなので後回しにしたけど・汗)
ちょっと暗くて悲しい映画ではあるのですが、時代に翻弄された若者たちの切なさがヒシヒシと伝わってきたわ~
お髭のヒースも素敵でしたね。オーリーもちょっと初々しくてよろしかったわ~
これは隠れた名作だ・・・なんて思いました。
日本で未公開、あまり知られていない作品だなんて勿体ないですよね~

由香さん TBありがとうございました!
この作品,気に入っていただいて嬉しいです
こんな人がいたんだな~って,ネッド・ケリーのこと
もっと知りたくなりますね。
オーストラリアのアイルランド移民って,悲惨な扱いを受けていたんですね。
こんなことまで歴史で習わないから,とても興味深かったです。

出ていた役者さん,オーリーも含めて,若者役の俳優さん,みんないい味出してましたね。
確かに隠れた名作かも知れません。
ヒースの死によって,少しはこの作品も追悼の意味で
世に知られるかも・・・
少し哀しいけど,ヒースの演技,たくさんの人に観てもらいたいですね。

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