デッドマン
13年も前のジョニー・デップの映画。ふと,レンタルショップで見かけて借りてみた。「これのジョニーはものすごく美しい」という話を聞いたことがあって・・・・・。きっと退屈するかも・・・と思っていたのだけど,意外にもすぐにその摩訶不思議な世界に引き込まれてしまった。
確かに 途方もなく美しかった。
ジム・ジャームッシュ監督の描くモノクロの映像の幻想的な美。(グレイがすごく美しい。森の木立や水辺の映像は、さながら水墨画のようだ) リアルタイムで演奏したという,ニール・ヤングがかき鳴らすギターの旋律。そして,哀愁と倦怠感の漂う,ジョニーの顔!
それらは,この世のものとも思えない美しさだった。ストーリーは,なんとも不思議で,理不尽で,残酷でさえある。
主人公のウィリアム・ブレイク(ジョニー・デップ)は,会計士の職を求めて西部の街にやってきた白人青年だが,手違いから職を得られず,おまけにひょんなことから殺人を犯してしまい,その首に賞金を懸けられて,殺し屋に追われる身となる。
心臓近くに銃弾を撃ち込まれたまま,逃亡の旅を続ける彼を助けたのは,はぐれもののインディアン,ノーボディ。彼と過ごすうちに,ウィリアムの中では少しずつ何かが変わり始め,おとなしく気弱だった青年は,追っ手を平然と的確に撃ち殺すことができるようになるが・・・・・。
これは,不運きわまる運命にみまわれ,どんどん追い詰められながら,じわじわと確実に死に向かってゆく一人の男の物語だ。救いの無い物語なのに,作品全体に,なぜか不思議な静謐さと,心が洗われるような癒しのムードが漂う。
不条理な運命や,迫り来る死を,あるがままに受け入れるという,まるで仏教の悟りの境地のような,穏やかなものを感じるのだ。きっとそれは,ウィリアムの人生の最期を看取る役をつとめたインディアンのノーボディの持つ,何ものにも揺るがされず,大地と一体となってすべてを受け入れるような大らかさの影響かもしれない。
登場する殺し屋は,途中で仲間を殺して食ってしまうような,極悪非道な男で,まじ怖いのだが,彼らの登場するシーンや台詞のやりとりは,なぜかコミカルタッチで,笑える場面となっている。
やがて,瀕死の状態で,小船に乗せられ,大海原へと送り出されるウィリアム。生きたまま,葬られるような体験だけど,生きていても,殺し屋に残酷に殺される運命しかない彼を,ノーボディはこの上なく丁重に,安らかな死出の旅へと送り出してくれたのだと思うと,まるで彼はウィリアムの守護聖人のように思えて,やはり鑑賞後はしみじみとした心地よい余韻に包まれた。
運命に逆らわないこと,避けられない死をうけいれること・・・なんだか,日本的な無常観も感じる作品だった。
おどおどとした普通の青年が,運命に翻弄されて吹っ切れ,次第にアウトローな強さを身につけてゆき,そしてインディアンの死生観に癒されて,静かに死を受け入れるまでの過程を,ジョニーは完璧に演じていた。しかし,モノクロになると,彼は瞳の美しさがなんて際立つんだろう・・・・,
徐々に身体が弱ってゆく彼の表情の変化の演技は,見事としか言いようがない。その哀しげな,虚ろなまなざしの美しさ。そしてまた,お河童ヘアや,稲妻メイクがこんなに美しく映えるのは,世界広しと言えども,この方しかいないだろう。(チャリチョコでもお河童だった)
追記;この映画,ガブリエル・バーンやアルフレッド・モリーナのような御仁も,チョイ役で出ていて,楽しめる。(ガブリエルなんか,あまりにチョイ役なので,よく似た別人かと思った)・・・どちらもジョニーに撃ち殺される役だけど。
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おはようございます・・・・・
あの・・・自称ジョニーファンなのですが・・・なんとこれは未見です(焦)
観よう観ようと思いながら何年も経っていますが、基本的に可哀想系の映画に尻ごみするので、好きな俳優の映画でも観ていないのが多いのよね~(開き直り)
でも、ななさんの記事を拝読したら、これは観なきゃーいかんな、と、ノミの心臓にムチを入れました!!
そのうち観るかも!(そのうちかよ・汗)
投稿: 由香 | 2008年2月 9日 (土) 08時42分
由香さん
おや,これは未見ですか!ジョニーファンの由香さんなら
とっくに鑑賞済みの作品かと思ってました。
確かに好き嫌いはありますが,異色の傑作だと思います。
大丈夫ですよー,そんなに残酷シーンありません。
ジョニーは銃弾を受けて旅をするのは痛々しいけど
殺し屋からは最後まで逃げ切るし,最後は悟りの境地なので
そんなに可哀想な感じはしません。不思議で幻想的な感じですね。
ジョニー,若いし,ほんとにパーフェクトに美しいですよ。オススメです。
投稿: なな | 2008年2月 9日 (土) 20時31分
こちらにも失礼します。
ジム・ジャームッシュですね!
私、彼のファンで、5枚組みDVDを買ったら、
そのうちの1枚が「デッドマン」でした。
ジョニーがやたら美しくて幻想的な作品ですよね~。
改めて画像を見ると、ため息が出てきます。
監督のジムも、雰囲気がある男前ですよ~。
投稿: マーちゃん | 2008年2月10日 (日) 20時08分
おお,マーちゃんはこの監督さんのファンでしたか。
さすが通好みでいらっしゃる!
私は今回初めて この方のお名前を知りました。
モノクロ映像が美しい,BGMのギターがいい,
ジョニーが綺麗・・・の謳い文句にひかれて観たのですが
この監督さんは鬼才ですね。
おまけに男前ですか。他の作品もまた気になるところです。
投稿: なな | 2008年2月10日 (日) 23時56分
こんばんは^^
コメントとTBありがとうございました!
さすが、ななさん、観方が深いですσ(^◇^;)
私なんて今読み返すとなんじゃこれ?(笑)
と言う感想でお恥ずかしいですσ(^◇^;)
ジョニー仲間では美しいと大人気のデッドマン、
ななさんはそれだけにとどまらず、
映画自体も気にいってくださったようで嬉しいです♪
と言う私は、ほんと、1回目は睡魔との戦いだったので(笑)
でも、何回か観ているうちに映画としても好きになった作品です^^
救いようがない物語に静謐さと,心が洗われるような癒しのムードを感じられるとは、ななさんは本当に感性が豊かなんですね^^
ガブリエルは私も後で見直しました。
だって、すっごいちょい役なんですもん(笑)
アルフレッド~なんか、どこ?ってまた見直しました(笑)
アンジーの元だんなビリーも出ていて、結構豪華なキャストですよね。
TBいれたのですが承認制なので、今反映はされないのはわかっているのですが、
楽天の調子がいまいちのようなので、TB入らなかったらまたお邪魔しま~す♪
長々とすみません(^_^;)
投稿: ひろちゃん | 2008年2月11日 (月) 00時50分
ひろちゃん TBありがとうございます。
いや~,観方が深くないですよー(照れる)
きっと根暗なもんで,死とかが題材のものが好きなだけです。
でも,これ,けっこうメリハリがあって,面白くもありました。
ジョニーと,追っ手が交互に映し出されて
追っ手が結構,笑える・・・。もちろんすごく怖い輩なんだけど,台詞とか,笑えました。
インディアンの台詞は意味不明なところが,奥深かった・・・。
だんだん死に近づいていくジョニーを観てると
自分もなんとなく夢うつつの世界になって,睡魔に襲われるかもしれませんね・・・。
肉体は衰えていくのだけど,精神は少しずつ生から解き放たれてゆく・・・
死の覚悟ができた人間って,美しいですね。往生際の悪い死や,不意打ちの死は哀しいです。
そんな意味で,この物語,「死にゆく男」は,とても癒されるものを感じたのかなぁ・・・。
私はビリー・ボブ・ソーントンがわかりませんでした!
・・・どこに出てたの???
投稿: なな | 2008年2月11日 (月) 10時43分
こんばんわ。
≫仏教の悟りの境地
≫日本的な無常観
うん、たしかにそうですよねえ。
淡々と静かに展開する物語の中に、さまざまな
観念や美や残酷さがない交ぜになったような
そんな詩的な世界観がホントに素晴らしい1作
ですよね。
鹿を抱くシーンはあまりにも有名な名シーン
で、息を飲むほどに美しい場面だと思います。
ジョニーはモノクロに映える美を持ち合わせて
いるので・・・こんなモノクロジョニーを
また観たいなあって思う今日この頃です。
投稿: 睦月 | 2008年2月11日 (月) 19時04分
睦月さん こんばんは
ほんとに,ジョニーは今や押しも押されもせぬビッグスターで
彼の名前だけで作品が大ヒットするようになってますけど
こういったミニシアター系に出ていたジョニーが懐かしくもありますね。
モノクロが映えるジョニー・・・美しすぎです。
この監督さんの作品は他は知らないのですが
独特の感性をお持ちで,たいへん魅力を感じました。
作品全体が,とても美しい,詩のような感じでありましたね。
投稿: なな | 2008年2月11日 (月) 21時26分
ななさん!!観ました!!!
やっとやっと鑑賞しましたよ~
でね・・・私は、どう~もこういう系統の映画の空気を上手く感じ取れないようです(泣)
いつもそうだ、というわけではないのですが・・・合う、合わないがあるみたい。
本作鑑賞後、何だか変な気持ちがしちゃった・・・
で・・・ジョニーファンとは思えない感想を書いちゃった。
だからUPするのを躊躇っていたんだけど・・・
まぁ~自分が感じたことだから仕方ないか、って思っていますぅ~
でも、ジョニーの美しさには魅せられました!!
オカッパ頭も似合うよねぇ~
モノクロってのも良かったなぁ~ドキドキしながら見いちゃった♪
投稿: 由香 | 2008年2月20日 (水) 14時50分
由香さん こんばんは!
TBありがとうございました!
ご覧になったのですね~~,先に由香さんちにお邪魔してきましたが
苦手とおっしゃりつつも,
なかなかどうして,深い見方をされているじゃありませんか!
ひとつの見方にとらわれずに,好きなように感じればいい作品なのでしょうね。
でも,一応自分なりの解釈で整理しないと
私もなんだか気持ち悪い性格です。(A型)
これは,そういう意味では もやもや感が残りますね。
でもでも,仰るとおり,ジョニーの美しさで赦しちゃってくださいね。
モノクロって,セクシーですよね
投稿: なな | 2008年2月21日 (木) 00時08分