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2008年1月 4日 (金)

ドニー・ダーコ

Cap040_2
2001年,サンダンスを熱狂させた,リバース(反転)映画の草分け的な作品。

主人公のドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)は,精神科のセラピーを受ける17歳の高校生。ある晩,彼は不気味な銀色のウサギに呼び出され,「世界の終わりまで,あと28日と6時間42分12秒」だと 告げられる。帰宅してみると,ドニーの部屋には,飛行機のエンジンが落下していた。危うく命が助かったドニーだが,その日以来,銀色のウサギはドニーの前に現れるようになり・・・。
Cap031_2とにかく,難解な作品で,何度観てもはっきり答えが分からない、というか,いかようにも解釈できる点もある。飛行機の落下事故で,死んでいたはずのドニー。そしてネタバレ覚悟で言えば,彼はウサギのフランクが言った「世界の終わり」が自分にとってどんなものかを28日後に見届けた後,実際に「死ぬため」に事故の時間まで戻るのだが, じゃあ,彼が生きていたあの28日間は何?ということになる。

精神疾患を持つ思春期の若者の妄想かもしれないし,神の啓示,あるいは予知夢?とも思えなくもないが,私はこれをSFととらえると,ドニーは「自分が死ななかった世界」というパラレルワールド(平行世界)に迷い込んだのではないか,と思った。
Cap029 彼の死の原因を作ったエンジンは,実は実際に落下する28日後に上空を飛んでいた飛行機のもの。ドニーの母が帰宅のため乗っていたあれ。エンジンは時空の渦に巻き込まれて,タイムスリップし,なんと28日前のドニーの部屋に落ちてきたのだ

だから,実際に落ちてきた日から,28日後までは,実は原因のエンジンは存在しないわけだから,その間は「ドニーが死ななかった世界」という,別世界が存在してもおかしくない気がする。(ややこしいですね。自分で言っててわかりません)そして、そのパラレルワールドを案内し,「ドニーが死ななかった場合に起こる悲劇」を見せれくれたのが,ウサギのフランクだったのではないか。
Cap015_2 それは,ドニーだけでなく,この28日間に知り合った恋人のグレッチェンにふりかかる悲劇であり,ウサギのフランクにもふりかかる悲劇だった。(フランクが誰かわかった時は驚いた。)それを知ったドニーは,今まさに飛行機のエンジンが時空を越えて落下しようとするときに,「帰ろう」とつぶやいて一気に時をさかのぼり,28日前の自分の部屋へと戻って行くのだ。(←でも,どうしてそんなことができたんだよ??)そう,自分にさえ出会わなければ,グレッチェンも,フランクも悲劇に会うことはなかったのだから・・・・・。
Cap045_3 無事に時間を巻き戻して,自室のベッドに戻れたときの,ドニーの心から幸せそうな笑顔が切ない。その顔には,これから訪れる死への恐怖は見られない。「世界の終わりには安心していよう」・・・未来を見届けたうえで,過去へ戻って死ぬことを選び取り,穏やかにそれを受け入れたドニー。グレッチェンの記憶の中から,彼がいなくなることも厭わずに。(時間を巻き戻す前に,車の中で,まるで別れを告げるみたいに,グレッチェンの顔をじっと見つめていたドニーの目!)

そう思うと,これは「バタフライ・エフェクト」や「ジャケット」と同じような哀しいハッピーエンドの物語で,それゆえにラストは,やるせなさとともに,一種の清清しい余韻を感じた。
Cap053_2
ジェイクは,この当時は21歳?17歳の高校生の役がよく似合っていて,
若い,若い!白いカッターシャツがハマっていた。お顔の方も,「ただいま製作途中です。あと2,3年で仕上がります」という,今よりは詰めの甘い顔をしている。難解な物語の難しい役なのに,この作品で彼が見せた,繊細で大胆な演技は強く心に残る。時に愛らしく,時には狂気をはらんだ哀しげなその瞳の表情。ガラスのように脆く,複雑な感性を持つ思春期のドニーは,ジェイクだからこそ,演じることができたのだと思う。

そして,この作品のわずか4年後にブロークバック・マウンテンなんだよね。やはり,この人の俳優としての才能は,ただものじゃないものを感じる。
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今はこんな大人です・・・・。

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コメント

今晩は!この作品はずいぶん前に見たんだけどとにかく
不思議な作品でしたね、というより最後まで意味が分か
らなかったです。
ラストでなるほどとは思うけどそこまで行き着くまで
何がしたいのが全然分からなかったですもんね
ドニーを演じたジェイク君の怪演には将来性を感じましたが
まさか本当にココまでの俳優になるとは思いませんでしたよ
ジェイク君のお姉さんのマギーさんもキュートでした。
姉弟で競演したのは初めてじゃないかな?

 明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
挨拶が遅くなってしまいましたが、今年も映画記事を楽しみにしております、
 さてジェイクの「ドニー・ダーコ」ほんとによくわからない映画でした、それも1回しか見てないので、もう2回くらい見ないとダメかも・・・、ジェイクとマギー姉弟の共演や「卒業」のキャサリン・ロスが女医役で出演してたのがびっくりでした~、全体を通して不思議オーラが出まくってたりして好きな映画でしたが、ジェイクは出演時は19~20歳くらいじゃないでしょうか?まだ初々しく得意のオタク?少年を怪演してましたね、個人的には「グッド・ガール」のジェイクの方が好きですが(外見です)ななさんの仰るようにBBM以降役柄が変わり大人っぽくなりましたね、やはり自信からきてるんでしょうか?
 

ななさん、こんばんは。スゴイすごい。そうか、パラレルワールドね~。なるほど。
凄く理路整然と解説してくれてありがとうごんす。なんかワタシまでスッキリしましたよ。
ワタシは、エンジンの落下の時差については全く見落としてましたね~。それで28日間というアナザーワールドが出現するわけですのねん。SF的な側面にあまり興味がなかったもので、適当に流しちゃってたなぁ、と反省。そうそう。自分にさえ出会わなければ、起きない悲劇があったなら、やはり愛する彼女のために過去に戻ろうとするでしょうねぇ。そして、とても屈託のない安らかな表情で眠りにつく、と。
確かにこの頃のジェイキーは「途上」のルックスだけど、演技力は既に完成されている感じ。現在の写真と言いつつ、ジャストナウの写真じゃないところにななさんの願望と愛を感じまするよん。(笑)
そして、ほんとに「ジャケット」と同じような観賞後の気分ですね。主人公は悟りの境地。
ななさんのお陰で、なんだか少し掴めた感じがしまするよ。サンクスです。

せつらさん,こんばんは。
これは,私も初めて観たとき,ラストになってはっきり確信を持てたのはあの銀色ウサギの正体だけで,とちゅうはよくわからなくて,あの死神オババの役割って?とか悶々としましたけど。
でも,不思議と切なさと達成感(きっとそれはドニーの達成感だったのでしょうね)を感じたのを覚えています。
人によって解釈が違ってもいい作品ですね。
ギレンホール姉弟の共演は微笑ましいですね。またいつかやっていただきたいです。
マギーもジェイクと同じで,決して美形ではないのだけど,演技がうまいですね。最近出演作,増えてますねぇ。

イニスJrさん
あけましておめでとうございます。
お正月,羽を伸ばすことができました?
私の方こそ,今年もよろしくお願い致します。
そう,この作品のジェイク,初々しいという言葉がぴったり来ますね。
20歳?少年から青年への過渡期の顔をしてます。「グッド・ガール」もまた奇妙な味わいの作品でしたね。特典映像で,アニストンとのベッドシーンではしゃいでいるジェイクが可愛かったです。あの作品のアブナイ雰囲気のジェイクがお好き?いや,外見限定ね,納得。
彼は確かにBBM以来,ぐっと大人っぽくなりました。私としてはもっと可愛らしいままでいてほしい気もするんですが・・・。
これからちょくちょくジェイク作品の感想を書いていきたいけど,彼の出た作品って,結構書きにくいんですよ。でもそんなときはジェイク語りだけやってごまかしますねー。


kikiさん,褒めていただいて恐縮ですわ。
この解釈も穴だらけかも知れませんが
あのエンジンが時空を越えてタイムトリップしたのは確かかなーと思います。
だから,落下した日の28日後(実際のエンジンが空に現れる瞬間)までが,ドニーにとってタイムリミットとなるわけなんですね。
彼が満足して死を迎えた理由はわかったような気がするけど,パラレルワールドで彼がしたいろんなことの意味は全部が全部は私にはわかりません。消化不良の感じは何度見ても残りますわね~。
ただ,ジェイキーは切ない演技をするために生まれてきたような坊やだなあ,とあらためて思いました。大人に,いや,オッサンにならないでほしいですわ。そう,あまりジャストナウの写真はねぇ・・・。
「ジャケット」,これも好きです。あ,ダニエルが「こんな役でいいの?」というような役で出てましたね。確か。


ななさん、こんばんは~♪
いつもTBではご迷惑かけていてごめんなさい。
コメントしていただけるのに、TBが届かないって、本当に申し訳ないです。

これって、いくつもの可能性があって、
どこかに微妙に矛盾があったりして、
何度観直しても混乱を整理しきれないものがありますよね。
観客にたくさんの可能性のある題材を提示するだけして、
最後はケムに巻いて終わり、というのが監督の意図じゃないだろうかと
勘ぐってしまうほどです。
ジェイクの、この時期の少年らしい繊細で多感な質感と共に、
ずっと忘れない作品の1つになると思います。

悠雅さん 
いえいえ,きっとココログが悪いのですわ。いつかは復活するかなぁ,と毎回祈るような思いでTB飛ばすのですけどね。TBはお送りできないけど,お邪魔しておしゃべりできるだけでも嬉しいですよー。気長に復活を待ってみますね。
さて,この作品,確かに監督さんに煙に巻かれた気もして,ちと寝覚めは悪いのですけど,それでも不思議な魅力があって,その魅力で「まぁ,いいや」と曖昧なところを許せてしまいました。私は,すべての伏線がきっちり収まるところに収まらないと,気持ち悪いんですけど(A型だから)これはなぜか許せました。ひとえにジェイクの魅力かも。
難解映画といえば,「隠された記憶」の方は,後で腹が立ちました。


ななさん、こんばんは☆
これ、公開される前に、雑誌で読んだんですよ、なんか変わった映画がやるらしい、って。
しかも、製作にドリュー・バリモアが携わって、さらにお金まで出したらしい、どうしても映画化するように自分で彼女自ら動いたらしく。
そして、この主役に新人が抜擢され、それがジェイク・ギレンホールだ、っていう記事を読んだんですよ~。
自分には、ジェイク・ギレンホールっていうと、まだこの映画のイメージなんですよ(
笑)
おかげで、その後ドンドン売れてビックリしました。

ななさん、こんばんは~!わたしも、ジェイクが好きで、彼目的で本作を観ました(笑)おっしゃるとおり、ただいま製作途中!な顔してますよね!!ルックス的には「デイ・アフター・トゥモロー」の顔が個人的にベストの好みかな・・・。

これは、本当に風変わりなお話でしたよね~。わたしも、最初17歳の少年の不安定な精神から生まれた妄想だと思ったんですが、あのラストですので、わたしは、あの事故の死の瞬間に彼が観た夢だと解釈したんです。「ルル・オン・ザ・ブリッジ」を観ていた影響かも。恋人のためにタイムスリップというのは、あまりに甘すぎるので、そう解釈しちゃいました。いずれにせよ、あの最後のジェイクの笑顔が切なかったですね・・・。

とらねこさん
私は,この映画が封切られる前は
もちろんジェイクのことはまったく知らなくて
この「ドニー・ダーコ」の予告編(けっこうたくさん目にしたなぁ)をみて
ホラーかオカルトだと思って,観なかったんですね。
ジェイクの顔も好みでなかったし。(今では考えられないけど)
そして月日が流れて(笑)
ブロークバック~でジェイクのファンになってから
初めて彼がこの映画の主演をやったことを知って
遅ればせながら観てみたわけです。
で,観たらこれがホラーではなくて,どちらかというと
ヒューマンドラマふうのテイストもあって
ジェイクはさすがの演技をしてるし
今じゃ,彼の作品の中でもお気に入りのひとつです^0^

JoJoさん
JoJoさんもジェイク狙いで観ましたか!
ジェイクのファンと聞いて嬉しい!
ディ・アフター~のジェイク(の顔)がお好きですか。
そうですねー,あの頃の彼,初々しさから抜けたばかりで
青年になったばかり,という感じで美しいですもんね。
私は「ゾディアック」くらいの,もっと大人のジェイクも好きです^^
JoJoさんの解釈は夢オチですか!
そういえば,28日中の彼の行動の支離滅裂っぽい点や
物語全体の不思議な雰囲気は,夢のようでもありますね。
ルル・オン・ザ・ブリッジも,未見ですけど
観てみたいです!


ななさん、こんばんわー♪
コメントもらっていたのにお返事遅れてしまってすみませんー!

ななさんの感想を読んでいたら、頭がこんがらがってきましたー。
理解力がない自分が情けない。
多分何度も見ても釈然としないような気がします。
まぁ、いっか(笑
なんだかとっても寂しい道を選んでしまったので、しんみりしてしまう映画ではありますよね。
そうそう、「バタフライ・エフェクト」なんかも切なさがかなーりありましたよね。
あの映画好きですー。
アシュトンのイメージが変わった映画でした。

なななさん,こんばんは!
うふふ,こんがらがりましたか・・・
私も,自分で書いてても訳がわからなくなりましたもん。
これだけ難解でも,なぜか不思議な魅力がある作品って
他にそんなにないので,すごいと思います。

一番の魅力は「切なさ」でしょうね~~。
ある意味,ドニーの「自殺」作品ですもんね。
「バタフライ・エフェクト」わたしも大好き!
アシュトン・カッチャー,とってもよい演技でしたね。
彼が,ただのイケメンじゃないことを証明してみせた作品でしたね。

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