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2008年1月13日 (日)

ベオウルフ 

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2005年にカナダで公開され,わが国では,2007年の11月にDVDがリリースされた,ジェラルド・バトラー主演の,ベオウルフ。現在公開中のロバート・ゼメキス監督の全編CG版の大作,「ベオウルフ/呪われし勇者」と比べると,こちらは全編ロケで撮影され,実際に俳優さんたちが実戦する地味なつくりになっている

物語も,原作の古典に比較的忠実だ。先にCG版の「ベオウルフ/呪われし勇者」を観て,その脚色されたストーリー(繰り返される父親の罪)は面白く感じたものの,全編CGというのが今ひとつ好みに合わなくて,こちらのアナログ版も観たくなった。
39 で,二つを比べてみて,結論から言うと,私は断然こっちが好みだった・・・(あくまでも私の好みであって,映画の完成度うんぬんを言ってるわけではありません)

アイスランドやカナダで撮影されたという,まるで世界の果てのような荒涼とした大自然は,天地創造の時代のごとき雄大さと美しさで,観るものの胸に迫ってくる。そして,その大自然を背景に繰り広げられるのは,英雄譚というよりは,むしろ人間ドラマで,実際の俳優さんたちが演じてみせる,恐れや苦悩や,迷いの表情は,CGアニメとは説得力が違う。・・・・CGはCGの素晴らしさがあるのだが,やはり実物のもつ重みには敵わないこともあると痛感。

この実写版ベオウルフ,原作に付け加えた脚色は,グレンデルを単なるモンスターではなく,悲劇の巨人として描いていることだ。彼は幼い頃に,父親をデネの王フロースガールによって目の前で惨殺され,その復讐のために,成人してから,王の城を夜襲して殺戮を繰り返すのである。

洞窟に殺された父の首を祀り,父の思い出を慕う,孤独なグレンデル。王の城を襲うのは,あくまでも復讐のためで,余計な殺戮はしないグレンデル。そして荒地の果てに住む,魔女セルマ(サラ・ポーリー)とグレンデルの交流。

イェーアト族の英雄ベオウルフは,王の遠縁ということで,グレンデル退治のために,海を越えて駆けつけるが,はじめは聞かされていなかった,王とグレンデルの因縁が次第にわかってくるにつれて,複雑な思いにとらわれはじめる・・・。
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ジェラルドが演じるベオウルフが,とても素敵
。まるでキリストのようなロン毛が,よく似合っていて,スリーハンドレッドのレオニダス王のときよか,若く見えます。あ,実際に撮影時は若かったのか。

剣を振るって立ち回るシーンは,予想してたほど多くはなかったけど,物語の後半から,次第にグレンデルに同情の思いを抱き始めるベオウルフの心の変化や,人徳や風格のようなものが,彼の演技からは自然と感じ取れて,とても魅力のある人間らしい英雄として描かれていた。(「呪われし~」のレイ・ウィンストンのベオウルフも,別の意味で,非常に人間くさい英雄だったけどね)

物語が進むにつれて憔悴してゆくフロースガール王も,自分の過去の思慮の足りない行い(グレンデルの父殺し)が,後々まで災いを引きずったことに対して後悔し,そのことでベオウルフに恥じてもいるように思えた。
23_2   鑑賞後は,ちょっぴり切ない気分になった。やはり,グレンデルの悲劇が身につまされたのだろう。父の命を奪ったベオウルフをじっと見つめる,グレンデルの息子。復讐の宿命はまた繰り返されるのか?いやいや,グレンデルのために塚を築いたベオウルフの心づくしを,息子はちゃんと理解したに違いない。

哀愁の漂う,古代の英雄物語。主役は実はグレンデルかもしれない。(映画の題も,本当は「ベオウルフとグレンデル」だしね)・・・・・だけど,全体的に,とても好きな雰囲気の作品だった。
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やはり何といっても,イケメンは,生身がいい。CGアニメじゃ,体温や体臭が伝わってこないもん(←何のこっちゃ)

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映画 は行」カテゴリの記事

コメント

ななさん。TBとコメントありがとう。ワタシもTBさせていただきまする。
ワタシは「呪われし勇者~」未見だけど、いかによく出来ててもなんか全編CGってやっぱり入りこめないものがありますわね。これはほんと素朴感溢れてるけど、キャラ設定とか好感持てます。Gサマ、ほんとキレイだしねぇ。本物の男前ゆえ、短髪でも長髪でもなんでも似合っちゃうのね。普段はスラング連発で口が悪いらしいけど、彼は画面に出てくると不思議な品と風格があって、やっぱり王だの英雄だのをよく演じるっていうのは理由が無い事ではないんでしょうね。

トラコメどうもでした。
こっちが気に入りましたか!?
先にこちらを見たので印象が違うかもしれません。大自然と俳優は実写の方がリアルで良いですね。
対決シーンが地味だったので映画としての盛り上がりが少なかったのが残念です。
後半のイェーアトでの竜退治の話も作ってほしいです。

kikiさん
ゼメキス版は,CGも違和感だったけど
脚色されたテーマがこれと違うので
それはそれで面白かったけど,こちらの方が
哀愁が感じられて,好みにあったのですわ。
それに,あちらのベオのお顔がイマイチだったので・・・。
ほほぉ~Gサマは,普段はお口が悪いのですか?
それもワイルドで似合いそうですが,このお方,
やはりスクリーンでは王者の風格が出るからさすがですわ。
何ででしょう?体格もあるとは思うけど,やはりあの
ギリシャ彫像のようなお顔立ちからかしら。

くまんちゅうさん♪
はい!こっちが気にいりました。^0^
映画としての完成度はあっちが上だと思いますけどねー。
グレンデルの悲劇や,背景の荒涼とした雰囲気が
根暗な私の好みにあったのかも知れませぬ。
対決シーンはもっと派手でもよかったですね。
続編作るのなら,竜はさすがにCGを使わないと無理でしょうねー。

こんにちは!
TB&コメントありがとうございました。

ななさんは、コチラの方が気に入られたようですね~
やはり『人間』を描いた作品を好まれるのですね。私も同類で~す♪
で・・・ホント残念に思うのは、ちょっと地味で盛り上がりに欠けたところだと思います。
コンセプトは素晴らしいのですが、ベオウルフに関してもグレンデルに関しても、今一歩足りない。
両主役をもっと魅力的に描けただろうに・・・と思ってしまいます。
でも、バトラーは素敵でしたね♪
ちょっとお腹がタプタプしていたけど許しちゃう(笑)長髪が似合うわぁ~(かなりラブラブ中)

ななさん今晩は!

劇場版は最初から見る気もなかったので真っ先にこの作品
を見たよ、派手さはないけど「ベーオウルフ」に比較的
忠実でしたね、ただ演出的に怪物グレンデルを絶対悪として
描いてない点ですね、でもそれがかえって良かったと
私も思います。
この作品では人間が「悪」として描かれているのが私は好きです
ちなみにこの作品は第1部でドラゴン編は第二部となります。
次こそはベオウルフの大々的な活躍見せてほしいよね

由香さんへ♪
そうなんですよ~,「人間」を描いてくれているのでこちらの方が好みです。
グレンデルも,悲しみを見せるところとかが,人間っぽかったし。
でも,CG版のほうが,監督さんがやはり見せ方がうまいのね。
ストーリーの盛り上げ方とかは。
だから,足して2で割るとほんとによいのかも。
バトラー様,300のために鍛える前だったから
あきらかにデブってましたね。だから肉体を見せなかったのね~~(爆)
でもでも,お顔はとても美しかったわ。ほんとに長髪が似合うわねー,「ドラキュリア」でも似合ってたけど。

せつらさん,こんばんは^^
お~,劇場版ははじめから相手にしていませんね,せつらさん。

>この作品では人間が「悪」として描かれているのが私は好きです
そうですね,そこがこの作品の脚色の特徴で,いい効果を出してますよね。
常に人間が正しいとする,ありきたりの英雄譚で終わってないとこがいいですね。
第2部も作られるのなら,今度は迫力のある戦いのシーンを入れてほしいですね!

こんばんは☆
Dearフランキーで来日した時もでっぷり(爆)否ぽっちゃり(笑)していたじぇりーですが;その余韻をひきずってましたです;
この後に300の撮影に入ったのでさすがにこの頃はコーラ腹ですね;うへ。
ところで。
私もこの作品が良かったのでゼメキス版は見てませーん。というか、これこそ劇場で見たかったんですよね。素晴らしいカナダの大自然を見てるだけでも私はツボでした。
どうしても300の後に見るわけですから、英雄伝として物足りなさを感じるだろうし、娯楽作品というよりは写真のついた書物を楽しむ感覚で観ないと楽しめないかもですね…。
まあこれを観るのはどーせじぇりヲタだけだから(爆)ファン失格な見方をした私ですがこれでも一応隠れジェリー部(ジェリー好きな人の部活。笑)えへへ

シャーロットさんへ♪
うふふ,シャーロットさん,ごきげんですね~~
隠れジェリー部員だとは存じ上げませんでしたわ。
私はジェリー部員とまではいきませんが
この作品はゼメキス版の口直しに観たって感じです(ゼメキスさん,ごめんなさい)
しかし,ほんと,こっちの方を劇場で観たかったかも。
あの雄大な風景を大スクリーンで。
>まあこれを観るのはどーせじぇりヲタだけだから(爆)・・・
・・・それは,そうかも。(;^^)作品としてはやや未熟な気もいたしますね。
じぇりー様はそれでも光っていましたけどね。


こんにちは!TB&コメントありがとうございました♪

CG版共に一長一短でしたねぇ・・・。これは思いっきり地味だったし。
両方足して2で割ってほしかった!
それにしてもジェラルドはステキでしたわ・・・♪
それだけでかなり満足だったりして・・・(爆)

こでまりさん\(^O^)/
ほんとに、思いっきり地味でしたね!
戦闘シーンがあっけなすぎて、ベオウルフの腕のふるいがいがなかったね。
二つの映画のいいとこだけ取ったら、凄い作品ができそうなのにね!

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