« 「干支でシネマ」バトン | トップページ | 愛する人を亡くす/ブロークバックマウンテン番外編3 »

2008年1月28日 (月)

追悼ヒース・レジャー/悪霊喰

Cap030悪霊喰」という いかにもホラー的な邦題に騙されてはいけない。確かに悪霊祓いのシーンも少しは出てくるけど、これは純粋に宗教のお話で,テーマはキリスト教の告解犯した罪を聖職者へ告白し,神からの赦しと和解を得る信仰儀礼)についてだと思う。

2004年製作のこの映画は,ロック・ユー!ブライアン・ヘルゲランド監督作品。出演者も,ヒースの他にシャニン・ソサモンなど,ロック・ユー!の時の共演者も顔を揃えている。

Cap005_2
ヒースは若い司祭アレックスの役。彼は,悪魔祓いなどの秘術を身につけた,カロリング派という,ヴァンチカンからは,やや異端視されがちなグループに属しているらしい。ある日,恩師のドミニクがローマで変死したとの知らせを受けたアレックスは,その調査のためにローマに飛び,ドミニクの死が「罪喰い」の存在に関係があることを突き止めるが・・・。


そう,この物語,「罪喰い」とそのまま題を付けた方が,テーマがよく理解できるのだけど,いかんせん,それではインパクトに欠けるためか,「悪霊喰」などどいうちょっと別のものを想像させるような題をつけてしまったみたいだ。

Cap016_2
少しキリスト教の話になって恐縮だが,↑で挙げた「告解」というのは,カトリックでは聖職者(神父や司祭)のみが行える,7つの秘蹟のうちのひとつである。つまり罪を告白し,赦しを得るには,聖職者に懺悔して,神に取り次いでもらう必要があるわけで,カトリックでは,告解のことを「ゆるしの秘蹟」とも呼んでいる。

一方,プロテスタントでは,ルターの宗教革命以来,万人司祭説によって,秘蹟の数は減らされ,「告解」は秘蹟から除かれた。プロテスタントでは,罪を告白し,神の許しを得る場合,本人が神に直に祈ってもよい。(これを,単に『告白』と呼んでいる)

私はプロテスタントなので,カトリックの「告解」,つまり罪の赦しのために,聖職者の取り成しという,ワンステップが加わるやり方については,「直接はダメなのね、面倒くさそう」という意識があるけど,カトリックはカトリックで,プロテスタントのやり方を「大事な点を省略しちゃって!」と見てるかも。考えてみれば、相手は同じ神様なんだけどね。(・ ・;)

Cap026
で,この物語は,カトリックのお話なので,たとえば破門されて告解を受けられなかったり,司祭に告解を拒絶された(自殺とか)者の臨終の時,ふつうなら地獄行きの魂を救い,天国への裏口入学へのお手伝いをしてくれるのが「罪喰い」の存在であるらしい

「罪喰い」は彼らの罪を,体の上に置いたパンに移して,それを食べることによって,彼らの罪を肩代わりしてくれる。( ̄□ ̄;)!!。それによって告解を受けられない人も,罪から開放されて天国へ行くことができる(んだって。←信じてない)

Cap021
「罪喰い」は,神の力を借りずに,罪をチャラにする力を持つ者であるから,もちろん闇の世界(もしくはサタンの世界)からパワーを得ているわけで、ヴァンパイアのように不老不死。カトリック教会からはとんでもなくタブーな存在と見られている。そりゃそうだろう,神にしかできない贖罪のわざを,神になり代って行うなんて,ものすごい冒涜なのだから。

これがプロテスタントだと,自分ひとりで悔い改めができるから,司祭も,もちろん「罪喰い」も必要なくて,何の心配もないんだけど・・・。でも,臨終のときには罪赦されて天国へ行かねば!という強い思いはプロテスタントでもよくわかる。

ヒースの演じた司祭アレックスについてちょっとひとこと・・・
あのね,こ~んな,かっこいい,セクシーな司祭なんか,どこを探したっておりませんよ!いや,まったく。
Cap024
裾の長めの僧服をまとった彼の立ち姿は,まるで司祭というよりファッションモデルのようだ。私服でくつろいで首にかけた十字架を弄んでいる様子(十字架で遊ぶなよ)からは,聖職者にはとても見えない,魅力的な雰囲気がただよう。

あああ~~,映画って,映画って,
やっぱり嘘つきだぁー。
いないってば,こんな司祭も,こんな牧師も。

やがてアレックスの目の前に姿を現した「罪喰い」イーデン。彼はミケランジェロの時代に,サン・ピエトロ寺院の設計に当たった兄の事故死の際に,教会が破門を理由に「ゆるしの秘蹟」を拒絶したことをきっかけに,「罪喰い」になったという。彼は何世紀もの間,「罪喰い」をやってきて,引き受けた他人の罪の重さに疲れ果てていた。イーデンはアレックスの中に「自分と共通するものを感じる」といい,「後継者になってくれ」と言い出す。最初は断ったアレックスだが・・・。

このあたりから,物語はがぜん面白くなってくる。

Cap001_2 劇中でイーデンがアレックスにしてみせる,罪喰いの儀式も,なかなか興味深い。神と同等の力を見せ付けられ,驚愕するアレックス。しかし,恋人マーラと生きていこうと決心したアレックスは申し出を断る。だが,彼を「罪喰い」の後継者にしようという計画は,はるか昔から,巧妙に仕組まれていたのだった・・・。

結局彼らの思う壺になって,「罪喰い」を引き継ぐ羽目になったアレックスの憔悴した表情が、不眠症で悩んでいたというヒース自身と重なって切ない。

しかし,やつれつつも,暗い決意をうちに秘めて,ラストに独白するヒースは,(この台詞がまたかっこいいです。闇の中の正義の味方!みたいな台詞)やはり,ほれぼれするほど美しかった。彼は明るく,可愛い役もこなせるけど,こういう陰のある痛々しい役も,非常にサマになる。

そこそこよくできた作品だと思うけど,やはりキリスト教の知識や世界観,特に罪や死後の世界,魂の救済,ということについて,ある程度わかってると,より楽しめる作品かもしれませんね。でも・・・・
ヒースは美しいです
(しつこいけど,これ重要)

« 「干支でシネマ」バトン | トップページ | 愛する人を亡くす/ブロークバックマウンテン番外編3 »

映画 あ行」カテゴリの記事

コメント

こんばんは!ななさん。相変わらず精力的な執筆活動で、ズボラな私などには眩しく感じられます。
ここのところちょっと凹み気味でしたが、だいぶ復活してきました。

本当に『悪霊喰』のヒースは美しくて、孤独で、特別な魂の持ち主だということが画面に表れていますね。イーデンに見込まれるのも納得!という説得力があります。
私はカトリックの仕組みとか、よく分からないけど、それはそれとして楽しめました。
ヒースの主演作品で、私のベスト3の1つです。

監督と役者にも相性ってあるのかな、と思うのは、『ロックユー!』にしてもこの『悪霊喰』にしても、それぞれにヒースの良さがすごく出てるから。
ヘルゲランド氏ともっと撮って欲しかったなぁ。

なんて勝手に語ってしまいましたが(汗)、またお邪魔したいです。ではでは(^o^)/

TBどうもありがとうございました♪

う~~ん、さすがななさん!
読みの深さが違う!!!
そうか、そうだったのか、と思ったことも
たくさんあったし、読んでまたさらにヒースの
良さも感じた私です。

後継者になってくれってあたりから、ほんと
面白くなって来ましたよね。
楽しめるサスペンスの部分もたくさんあったし
どうなるんだろう?というハラハラもあったし
この邦題さえもうちょっとなんとかしてくれてたら、もっと見る人もおおかっただろうに・・と残念です。

 ななさん、こんにちわ
 ヒースについての様々な情報が出てきて、(ハリウッドセレブさんからの情報で取得)本当に残念でならないです、不運が重なった気がします、ただSAG賞の受賞式で主演男優賞のD・D・ルイスが受賞スピーチで「この賞をヒース・レジャーに捧げる」といわれたことは大変嬉しく泣けてきました、だからジョーカーは絶対見たいし、大ヒットしてほしいですね。
 長くなりましたが(すみません)「悪霊喰」ほんとにB級ホラーみたいなタイトル止めて欲しかった!もっと神聖なストーリーでしたよね、ななさんはキリスト教のことはさすがに詳しいですね、よくわかりました、全体を通して何となくダークな感じも良かったですね(「ロックユー」と真逆)ヒースの凛々しく美しい姿は素晴らしい!やはりヒースって若手の中ではダントツな存在感ですよね、僕はヒースの作品「恋のからさわぎ」だけ未見ですが、ほんとにどれも素晴らしい存在感と役作りでした、ヒースのお父様はカーレーサーだったらしく、その辺の血を受け継いで、彼は、スポーツマンらしく、そして何となくロッカーらしく、ノンケ100%な感じですね(ジェイクと違う)(「ケリー・ザ・ギャング」の男っぽさも好きですね~オーリーなんか子供に見えるし、ジェイクにも出来なさそうな演技でした)
 だいぶ脱線して申し訳ないですが、この「シン・イーター」結構好きです。もう1度じっくり見てヒースの美しさを堪能しようかな?
 またヒース語りしましょう!

ゆきちさん
少し復活されたようで,一安心です(^ ^)
きっと自分で思ってるより実はずっとショックが強かったのでは?と思います。

私は記事を書きまくってヒースの不在を
自分に慣れさせている,という感じかな?
またおしゃべりしに来てくださいね。
私も,後でゆきちさんのところに伺いますね。

この作品のヒース,そうそう,孤独そうなんですよね。
「罪喰い」の後継ぎとして見込まれるのも納得です。
そして,神や天国や罪について詳しく,かつ神に対して批判の思いも持っている・・・
アレックスはそういう人間で,身よりもないし
イーデンからみたら,これ以上の候補者はいなかったでしょうね。

>ヒースの主演作品で、私のベスト3の1つです。
あと二つはなあに?ひとつはもちろんBBMでしょうけど,ロック・ユー!かな?

この監督との相性は抜群ですね。
ヒロインの彼女も,ロック・ユー!ではイマイチにみえたのに,
この作品では,髪型のせいか魅力的に見えました。
このときの仲間たちも、みんなヒースの死を悼んでいるでしょうね。

メルさんへ
いや~別に深くない・・・(汗)
ヒースが美しいって叫んでるだけですよ,私。

でも,これはヒースが主演でなくても,面白いストーリーではありました。
いかにもモンスターでも出てきそうな邦題に反して
まじめな宗教ホラーだったわけですが,オーメンなどと同じ範疇に入るのでしょうが,
「悪魔」を扱ったものが大半の中でも
「罪喰い」というテーマはとても異色で独創的でしたね。
でも,この「罪喰い」の存在というテーマは
この映画で初めてこしらえられたわけではなく,
カトリックの世界では,もしかしたら伝承としてでも,
昔から言い伝えられているのかなぁ?
プロテスタントの私は初めて耳にしましたが
とても気になるところです。
もちろん,「罪喰い」の存在を信じるわけではありませんが
そういう怪奇ものの言い伝えって,大好きなんですよ・・・。

ほんとに,邦題でソンしましたね。
キリスト教圏では,きっともっと評価されたかも。

イニスJrさん
ハリウッド・セレブ・ニュース見ました。
不運が重なった,というか,もっとちゃんとした人がついていたら・・・と怒りも感じてしまいました。もしかしたら,助かったかもしれない命だったのですね・・・。それにもし,薬のせいではなくて,自然死だったとしたら,仕事でよっぽど消耗していたんでしょうか?この年代の突然死って,結構ありますものね。主に過労死ですけど。まだまだ真実はわかりませんが,とりあえず自殺説は希薄になりましたね。

この「悪霊喰」のヒースは,ロック・ユー!のウィルに負けないくらい美しかったです。雰囲気は全く違うけど,知的で,寂寥感を滲ませたヒースが堪能できました。司祭の役はあまり似合いませんが,最後の「私は罪喰いだ」というシーンは,おそろしいほどハマっていました。

私も「恋のからさわぎ」は未見です。歌って踊るヒースが観れるそうですが・・・。「ケリー・ザ・ギャング」は途中まで見ました。またレンタルしようと思います。ナオミ・ワッツやオーリーも出てますね,これ。オーリーもジェイクも弟キャラだから,こんな凛々しいワイルドな役はヒースに敵いませんね。
ヒースのお父さん,カーレーサーなんですか?私はてっきり牧場主かと思っていました。以前ヒースが「家が牧場だった」と言ってたような・・?記憶違いかな?ヒースの運動神経(と髪の薄さ)はパパ譲りなんですね。まあ,男らしいヒース。どっから見てもノンケですね。(ジェイクとちがって?)
この悪霊喰,ぜひ再見してみてください。脚本,案外とてもよくできていますよ。

こんにちは!TB&コメントありがとうございました♪

ななさんの説明でキリスト教のことが少しわかってきました。
「罪を赦す」一つにしても、宗派によってそんなに違いがあるんですね。
私がなるとしたら、プロテスタントかな・・・面倒くさくなさそうだし・・・
(ってこんな事言ったら怒られるぅ~~)
これはクリスチャンではない私でも楽しめた作品でした。
ホラー物と思って見たので、少し肩透かしだった部分はあったけど。

やっぱりイケメンの司祭様はいないのですか・・・
もしいたら、告白(宗教上の)に来る人が列をなすかも・・・(あー、また不謹慎な事を・・・)

ヒースの作品、いろいろ紹介して下さいね。
私の知らない作品がたくさんあると思いますから・・・。

ななさん、こんにちは!
このB級ホラーのような邦題、いただけないっす。。
ななさんの記事読んで、宗教にことについてよくわかりましたよ。
深いです。
内容はともかく、ヒースの演技はよかったです。
ずぶ濡れになるシーンもあって、水もしたたるいい男だったし・・確か。。

来月DVDリリースされる「キャンディ」がいまのところは楽しみにしてます。
冷静に観られるかどうか・・・不安。。
TBふたつもありがとうね。

こでまりさん
そうですねー,これはクリスチャンでなくても
楽しんでみることができますね。
ちょっとエンタメも入ってます。なんせ「ロック・ユー!」の監督だから。

そうそうプロテスタントの方が簡単かもしれません。
しかしキリスト教らしいムードはカトリックの方が上です。
>やっぱりイケメンの司祭様はいないのですか・・・
う~ん,お顔立ちは美しい方もいらっしゃるかもしれませんが
何せ,イケメン・オーラなるものが皆無なので・・・。
その代わりに柔和とか包容力とかがお顔に現れた方が多いのです。
しかし,そんなものには萌えませんわね。
おっと,私も不謹慎な・・・・。

ヒース作品,あまり知られてないのもありますが
それは私も観てないので(おいおい)
これから少しずつ観ていこうと思っています。


アイマックさん
ヒース追悼記事のTBをありがとうございます。
ほんと,この邦題センスないというか
内容を誤解されるので,迷惑な題でした。
宗教に明るくない方が,インパクトだけ狙ってつけたかな?

そうそう,ヒース,溺れそうになったり
拳銃もぶっ放したり,けっこうアクションもやってましたね。
司祭よりそっちの方がやっぱりサマになってたような・・・。

「キャンディ」2月22日リリースですね。
楽しみです。でも,やっぱり辛いかな?観るの。


コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 追悼ヒース・レジャー/悪霊喰:

» 「悪霊喰」 ヒース・レジャー出演作ということで・・ [心の栄養♪映画と英語のジョーク]
ヒース・レジャー、享年28歳・・・ かなり好きな俳優さんでした。こんなに若くして亡くなるなんて、 とても悲しくて、残念です・・・。まだ信じられません。 「ロック・ユー!」でファンになったんですが、この”悪霊喰”は題名がすごいし、 ジャケットもなんだかなぁ〜。。と言う感じで、なかなか手が出なかったんですが、 実は少し前(数ヶ月前?!)に見ていました。記事は書いてたんですが、 アップしてなかったんです。なんか上手く記事が書けなくて。  でも、少しでも彼の出演作を・・と思ってアップすることにしました... [続きを読む]

» 「悪霊喰」(36) [映画とワンピースのこでまり日記]
邦題に騙されてはいけませんっ! [続きを読む]

» ヒース・レジャーを偲ぶ・・・ [小部屋日記]
時間がたっても、まだ実感がわかない。 特別ファンではなかったけれど、好きな俳優だったし(いい男バトン参照) 次回作も待機していて演技派の役者として映画界を発展させてくれると思ってたのに・・・残念でならない。 確か来日もしてないはずだよね。 ヒース・レジャー関連のニュースとしては 彼が撮影中だったテリー・ギリアム監督の最新作「The Imaginarium of Doctor Parnassus」が製作中止になった模様。 同作は昨年12月にロンドンでクランクインし、3月上旬まで撮影が行われる予定にな... [続きを読む]

» 悪霊喰 [映画備忘録 by Movie-Goer.net]
この映画の原題はThe Orderだが、もともとのタイトルはThe Sin Eater=罪食い。罪食いとは、臨終間近の人間の「罪」を食らうことで、その人間を浄化し解放する儀式、またはその儀式を行う人物そのもののこと。生きている間に他人を騙そうが殺そうが、罪食いに罪を食べてもらえば、全てを許され魂は天へと昇ることができるのだ。「罪を許し解放する」という神の領分とも思われる... [続きを読む]

« 「干支でシネマ」バトン | トップページ | 愛する人を亡くす/ブロークバックマウンテン番外編3 »

フォト

BBM関連写真集

  • 自分の中の感情に・・・
    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。
無料ブログはココログ