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2008年1月の記事

2008年1月30日 (水)

愛する人を亡くす/ブロークバックマウンテン番外編3

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愛する人がある日突然,,この世を去ってしまったら,どんな気持ちがするのだろう
ヒース・レジャーにとっては,一介のファンにすぎないわたし。それでも,彼のこれからの活躍をどんなに楽しみにしていたか。これまでの作品の中では,彼に会えても,これから未来に向かって羽ばたく彼を,応援することは もう叶わない。
Header あまりにも早すぎた彼の死に 残されたものは,ただ呆然とするしかない。ヒースの家族や,友人,知人たちのショックと悲しみは,どれほどのものだろう。・・・・・特にジェイクは,どんなにか辛いだろうな。

愛する人が,ある日突然いなくなる。
明日も,そしてあさっても,ずっと一緒だと思っていた絆が,いきなり 予告もなしに断ち切られる。どんなに望んでも,もう二度と会えないのだという哀しすぎる現実に 言葉を失う。

最後に会ったときに交わした会話や,表情などをくりかえし反芻しながら,「ああしてやれば,よかった。」「こうしてやれば・・・・」と,忸怩たる思いに包まれる。
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BBMの物語の中で,ジャックの死を知ったイニスの気持ちもきっと,こんなものだったのかな。
この時のイニスの気持ちを,これまでさんざん想像したり,記事に書いてきたりした。そして,ある程度わかった気になっていた。しかし,実際にヒースに死なれてみて初めて,今まで私が思い描いていた悲しみは,絵空事にすぎなかったと悟る。

訃報を聞いてから,ジャックの実家を訪ねる決心がつくまで,イニスはどれくらいの時間を要したのだろう。眠られぬ夜に,どれほど涙を流したのだろう,ジャックのために。後悔の思いも湧いただろう。特に,最後の会話があんな哀しいものだっただけに。

取り返しのつかない思い。

それは今回のヒースの死に対して,私たちも抱かずにはいられなかった思い。ちょっとした心遣いがあれば・・・・そしてちょっと運があれば彼は死なずにすんだのではないか。もはや思っても仕方のないことだけど。Cap155 それでも時が巡るにつれて,
歳月は悲しみを静かに癒し,思い出はやがて,いつまでも朽ちることのない美しい宝物となる。クローゼットの中のシャツに触れながら,誓いのことばを静かに囁くイニスのように。

今は悲しみに暮れる私たちにも,そんな日が必ず訪れるに違いない。その時が来るまで,ある時は涙し,ある時は静かに思いを巡らせながら,彼のことを悼み続けていこう。

2008年1月28日 (月)

追悼ヒース・レジャー/悪霊喰

Cap030悪霊喰」という いかにもホラー的な邦題に騙されてはいけない。確かに悪霊祓いのシーンも少しは出てくるけど、これは純粋に宗教のお話で,テーマはキリスト教の告解犯した罪を聖職者へ告白し,神からの赦しと和解を得る信仰儀礼)についてだと思う。

2004年製作のこの映画は,ロック・ユー!ブライアン・ヘルゲランド監督作品。出演者も,ヒースの他にシャニン・ソサモンなど,ロック・ユー!の時の共演者も顔を揃えている。

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ヒースは若い司祭アレックスの役。彼は,悪魔祓いなどの秘術を身につけた,カロリング派という,ヴァンチカンからは,やや異端視されがちなグループに属しているらしい。ある日,恩師のドミニクがローマで変死したとの知らせを受けたアレックスは,その調査のためにローマに飛び,ドミニクの死が「罪喰い」の存在に関係があることを突き止めるが・・・。


そう,この物語,「罪喰い」とそのまま題を付けた方が,テーマがよく理解できるのだけど,いかんせん,それではインパクトに欠けるためか,「悪霊喰」などどいうちょっと別のものを想像させるような題をつけてしまったみたいだ。

Cap016_2
少しキリスト教の話になって恐縮だが,↑で挙げた「告解」というのは,カトリックでは聖職者(神父や司祭)のみが行える,7つの秘蹟のうちのひとつである。つまり罪を告白し,赦しを得るには,聖職者に懺悔して,神に取り次いでもらう必要があるわけで,カトリックでは,告解のことを「ゆるしの秘蹟」とも呼んでいる。

一方,プロテスタントでは,ルターの宗教革命以来,万人司祭説によって,秘蹟の数は減らされ,「告解」は秘蹟から除かれた。プロテスタントでは,罪を告白し,神の許しを得る場合,本人が神に直に祈ってもよい。(これを,単に『告白』と呼んでいる)

私はプロテスタントなので,カトリックの「告解」,つまり罪の赦しのために,聖職者の取り成しという,ワンステップが加わるやり方については,「直接はダメなのね、面倒くさそう」という意識があるけど,カトリックはカトリックで,プロテスタントのやり方を「大事な点を省略しちゃって!」と見てるかも。考えてみれば、相手は同じ神様なんだけどね。(・ ・;)

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で,この物語は,カトリックのお話なので,たとえば破門されて告解を受けられなかったり,司祭に告解を拒絶された(自殺とか)者の臨終の時,ふつうなら地獄行きの魂を救い,天国への裏口入学へのお手伝いをしてくれるのが「罪喰い」の存在であるらしい

「罪喰い」は彼らの罪を,体の上に置いたパンに移して,それを食べることによって,彼らの罪を肩代わりしてくれる。( ̄□ ̄;)!!。それによって告解を受けられない人も,罪から開放されて天国へ行くことができる(んだって。←信じてない)

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「罪喰い」は,神の力を借りずに,罪をチャラにする力を持つ者であるから,もちろん闇の世界(もしくはサタンの世界)からパワーを得ているわけで、ヴァンパイアのように不老不死。カトリック教会からはとんでもなくタブーな存在と見られている。そりゃそうだろう,神にしかできない贖罪のわざを,神になり代って行うなんて,ものすごい冒涜なのだから。

これがプロテスタントだと,自分ひとりで悔い改めができるから,司祭も,もちろん「罪喰い」も必要なくて,何の心配もないんだけど・・・。でも,臨終のときには罪赦されて天国へ行かねば!という強い思いはプロテスタントでもよくわかる。

ヒースの演じた司祭アレックスについてちょっとひとこと・・・
あのね,こ~んな,かっこいい,セクシーな司祭なんか,どこを探したっておりませんよ!いや,まったく。
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裾の長めの僧服をまとった彼の立ち姿は,まるで司祭というよりファッションモデルのようだ。私服でくつろいで首にかけた十字架を弄んでいる様子(十字架で遊ぶなよ)からは,聖職者にはとても見えない,魅力的な雰囲気がただよう。

あああ~~,映画って,映画って,
やっぱり嘘つきだぁー。
いないってば,こんな司祭も,こんな牧師も。

やがてアレックスの目の前に姿を現した「罪喰い」イーデン。彼はミケランジェロの時代に,サン・ピエトロ寺院の設計に当たった兄の事故死の際に,教会が破門を理由に「ゆるしの秘蹟」を拒絶したことをきっかけに,「罪喰い」になったという。彼は何世紀もの間,「罪喰い」をやってきて,引き受けた他人の罪の重さに疲れ果てていた。イーデンはアレックスの中に「自分と共通するものを感じる」といい,「後継者になってくれ」と言い出す。最初は断ったアレックスだが・・・。

このあたりから,物語はがぜん面白くなってくる。

Cap001_2 劇中でイーデンがアレックスにしてみせる,罪喰いの儀式も,なかなか興味深い。神と同等の力を見せ付けられ,驚愕するアレックス。しかし,恋人マーラと生きていこうと決心したアレックスは申し出を断る。だが,彼を「罪喰い」の後継者にしようという計画は,はるか昔から,巧妙に仕組まれていたのだった・・・。

結局彼らの思う壺になって,「罪喰い」を引き継ぐ羽目になったアレックスの憔悴した表情が、不眠症で悩んでいたというヒース自身と重なって切ない。

しかし,やつれつつも,暗い決意をうちに秘めて,ラストに独白するヒースは,(この台詞がまたかっこいいです。闇の中の正義の味方!みたいな台詞)やはり,ほれぼれするほど美しかった。彼は明るく,可愛い役もこなせるけど,こういう陰のある痛々しい役も,非常にサマになる。

そこそこよくできた作品だと思うけど,やはりキリスト教の知識や世界観,特に罪や死後の世界,魂の救済,ということについて,ある程度わかってると,より楽しめる作品かもしれませんね。でも・・・・
ヒースは美しいです
(しつこいけど,これ重要)

2008年1月27日 (日)

「干支でシネマ」バトン

いつも仲良くしていただいてる「小部屋日記」のアイマックさんから,「干支でシネマ」バトンをいただきました!アイマックさん,いつもありがとう。今回は少し難しそう・・・・・。でも,縁起物なんで,がんばってみます!
・・・・と,頑張って記事を仕上げてアップする矢先に届いた ヒース・レジャーの訃報。あまりのショックに,アップを今日まで遅らせました。

【子】ねずみ
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ねずみが出てくる映画って,結構あるけど,グリーンマイルの中で登場した,「サーカスねずみ」が一番印象に残ってます。映画自体もお気に入り。泣いた。

【丑】うし
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牛そのものは思いつかなかったので,女闘牛士が出てくるということで,トーク・トゥ・ハーを・・・・。

【寅】とら
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トラったら,コレでしょう!実は未見なんですが・・・・これしか思い浮かばなかった。「泣かせる動物もの」は哀しくなるのであまり見ないのですが,(飼ってる虎猫を思い出して辛くなる)また観てみようかな?

【卯】うさぎ
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うさぎの映画,といえば,やっぱりこれ!ミス・ポター。ピーターラビット可愛いすぎ。これは,みなさん,かぶるんじゃないかな?
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もひとつウサギといえば思い出すのがドニー・ダーコの銀色ウサギ・・・・・このウサギは 少しも可愛くないですけど。

【辰】たつ
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ドラゴンの出てくる映画,多いです。私のお気に入りは,サラマンダー。クリスチャン・ベイルがお気に入りという理由もあるのですが・・・・。

【巳】へび
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えーと,えーと,インディ・ジョーンズ!確かゲテモノ料理の中に,生きてる蛇がうじゃうじゃ出てこなかったっけ?うげー

【午】うま
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レッドフォード監督の,モンタナの風に抱かれて。傷ついた心を持ち,人間不信になった馬を癒す職業の男の物語・・。

【未】ひつじ
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そりゃ,何と言っても,羊といえばブロークバック・マウンテン!もこもこ,もこもこ,もこもこと・・・どこまでも続く羊の海。あんなにたくさんの羊を見たの初めてかも。そして,ご冥福をお祈りします・・・・,ヒース。

【申】さる
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さるは・・・これ。一応巨大な猿だし。キングコング

【酉】とり
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鶏は思いつかなかったので,鷹で。キング・アーサーの円卓の騎士トリスタンが,飼ってた鷹が印象に残ってて・・・・。賢そうな鷹だったな〜。騎士の中でも,地味だけどトリスタンが一番好き。

【戌】いぬ
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忠犬といえば,アイ・アム・レジェンドのサム。

【亥】いのしし
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ハンニバルに出てくる,人食い豚の集団。あれは豚というよりは・・・イノシシに見えたのだけど。おお怖い。アポカリプトにも,殺されるイノシシが出てきました。イノシシといえば,グロい作品ばかり浮かびますな。

次に回すブロガーな人たちは,後で個人的にお願いにあがります。スルーでも構いませんので,よろしくね!また,お気に召した方は,どなたでも持って行ってくださいませ!

テンプレはこちら。
【子】ねずみ
【丑】うし
【寅】とら
【卯】うさぎ
【辰】たつ
【巳】へび
【午】うま
【未】ひつじ
【申】さる
【酉】とり
【戌】いぬ
【亥】いのしし
次に回すブロガーな人たち

2008年1月25日 (金)

ヒースを悼んで/ブロークバックマウンテン番外編2

Cap066
番外編に,こんな哀しい記事を書く日が来るなんて だれが予想できただろう。突然 この世を去った ヒース・レジャー
2008年1月22日 逝去。 享年28歳。
あの日から夜を迎えるたびに,孤独に息を引き取っていった彼に,くりかえし,くりかえし 思いをめぐらせずには いられない。

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ブロークバックマウンテン

この稀有な輝きを放つ物語は,アニー・プルーの原作そのものが,既に素晴らしく完成度の高いものだったと思う。そして,映画化された作品は,原作のよさを全く損なうことなく,そしてそれをとても巧みに膨らませた,見事な出来になっていた。

その中でも,ヒースが演じたイニス・デルマーは、まるで原作の中から、そのまま立ち上がって来たかのよう。スクリーンの中のヒースは,他の誰でもなく,まさに原作に描かれていたイニス本人になりきっていたと思う。
Cap067
イニスはとても複雑なキャラクターだ。

内面に大きな自己矛盾を抱えているのに、そのことに気付かずに、長い間,もがき苦しむ彼。父から刷り込まれたフォビアとしての自分と、ジャック・ツイストを愛する自分。両極端に対峙する,二つの自己の狭間で,いったい自分に何が起こっているかもわからずに,苦悩したり,葛藤したりする。

演じたヒースは,イニスの屈折し,抑制された思いを,あるときは突然の感情の爆発で表現し,またある時は,眉の上げ方や,ちょっとしたまなざしの変化などの,非常に繊細な演技で見せてくれた。
Cap006 物語はイニスの目線で語られることが多かったから,私たちは彼の一挙一動に,イニスと同じように 驚いたり,切なくなったり,うろたえたり,涙を流したりした。

細胞の一つ一つまでがイニスになりきっている
ヒースの迫真の演技に,感情移入せずにはいられなかった。私はイニスより,実はジャックの方に心が惹きつけられたものだけど,もしかしたらそれは,イニスに感情移入するあまり,ジャックを愛したイニスの気持ちになって,スクリーンを追っていた,というのも理由のひとつかもしれない。

彼の演技があったから,この映画はこんなにも,人を感動させたのだろうな,と思う。(もちろんジェイクの演技も)
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本当によい映画は,人の心に深く響き,考え方や人生観まで変えてしまう力を持つ。そしてその力は,国境も時代も超えて万人の心に作用するものだ。そのような作品で,最高の演技を見せてくれる俳優さんって,なんてアメイジングな人たちなんだろう。ヒース・レジャーは,間違いなく,そんなアメイジングなアクターの一人だった。

「ブロークバック・マウンテン」や「チョコレート」や「キャンディ」や「ザ・ダーク・ナイト」・・・。彼は一筋縄ではいかないたくさんのヒーローたちを演じて,その都度 全身全霊で役になり切り,・・・・そして,あまりにも唐突に逝ってしまった。
Cap159
演じることに人生を捧げた彼の魂は今やっと休息を得て,安らいでいるのだろうか。これからもずっと,スクリーンの上で輝くヒースを見たかったけど,それはもう叶わないこと。せめて安らかに眠ってほしいと祈る。

ブロークバックマウンテンは,これまでだって,鑑賞するたびに,切なさに涙が溢れる物語だった。だけど,ヒースのいない今となっては,観る度にその早すぎた死を思い,あらたな涙を誘う物語になるだろう,私にとっては。

それでもヒース・・・・やっぱり言いたい。
こんな素晴らしいイニスを演じてくれて,
本当にありがとう。

私たちは,あなたのことを いつまでも忘れない,
忘れることなんか,できない。

Cap677

2008年1月23日 (水)

ヒース・レジャー逝去

Cap388
まだニュースを確認もしてないのですが,
皆さんのコメントで知りました。

嘘でしょう?・・・嘘だとだれか言って下さい!
哀しすぎます。辛すぎます。
そんなこと,絶対に受け入れられません!

皆さんからあちこちの記事にコメントいただいてるので,とりあえず,この記事をアップしました。仕事が手につかない一日になりそうです。なぜ?どうして?これからだったのに・・・・。もっともっと活躍を楽しみにしてたのに・・・・・ジャックじゃなくて,イニスが突然死んじゃうなんて・・・・・考えたくありません。

いったい,何があったの?ヒース。睡眠薬の多量服用って・・・・ごめんなさい,ヒース。「安らかに」なんて,まだ言える状態じゃないです。あまりのことに茫然としてしまって。

外は朝からずっと氷雨です。
凍りつくような寒い一日。
まるで彼の突然の死を 
悼むかのような 涙雨です・・・・。

2008年1月20日 (日)

シルク

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まるで音もなく降り積もる雪のように・・・
高い空をゆったりと流れていく雲のように・・・・
いかにも静かな物語だった。

多くを語らない,寡黙な表現で紡がれているので,行間を読まなければいけないし,風景はまるで絵のように美しいので,全体の印象は,物語というよりは詩のようだ

舞台は19世紀。フランスの片田舎の,養蚕と製糸をなりわいとする町に住む青年エルヴェ(マイケル・ピット)は,病気にかかっていない健康な蚕の卵の買い付けのために,「世界の果て」と思われていた日本に旅立つ。新婚の美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を祖国に待たせて。そして幕末の日本で、彼は謎めいた武士,原十兵衛(役所広司)と、その若い妻である少女(芦名星)に出会う。まるで絹のように白く光る肌を持ったミステリアスな彼女に,エルヴェは惹きつけられ・・・・。
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監督が「日本の美の象徴」と絶賛した,新人女優,芦名星。お雛様のような整ったうりざね顔は,ほとんどノーメイクに近いのではないだろうか。派手さはないが,清冽な美しさに圧倒された。

エルヴェが彼女に惹かれたのは,おそらくその神秘性だろう。彼ら二人は,エルヴェの3度の日本訪問を経ても,結局一線を越えることはなく,それどころか言葉も交わしていないのだけど,彼女はエルヴェに対し,密やかに,また大胆に秋波を送り続ける。

・・・この二人がどうにかなっちゃって,そして国籍や時代の混乱を超えた大河ロマンが展開されるのかと思ったら,・・・・ぜんぜん違った。

キーラが演じたエレーヌ。遠く離れた異国で,最愛の夫が他の女に心を奪われていることを感じ取りながらも,送り出し,不安の中で待ち続けるしかなかった妻。・・・・どうして彼女のような大女優が,こんな地味な脇役をするのかな~と不思議に思っていたら,最後の「日本からの手紙にまつわるどんでん返し」で,そうか!と思い至った。

彼女は脇役ではなく,
実は主役だったのだ。

テーマは,エルヴェと日本女性の不倫愛ではなく,(もちろん養蚕でもなく)「夫婦愛」だったのか。
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身体はかろうじて自分を裏切ってはいないけれど,(あの遊女?との一夜は別として)夫の心は完全に見も知らぬ異国の女性にとらわれて,自分からは遠く離れていることを,エレーヌがどれほど感じ取り,哀しんでいたか。命を懸けてまで,最果ての国に出かけてゆく夫の心には,自分ではない女性が住んでいる。送り出す度に,「もしかしたらもう,帰ってこないのではないか」と,どんなにか不安だったことだろう。

なぜ,問い質さなかったのか?
なぜ,懇願しなかったのか?


エレーヌのとった忍従と愛の行動は,「こちらこそ日本女性っぽいのでは?」と思えるくらい奥ゆかしくて,切ない。彼女の真実は,最後のどんでん返しまでは一切伏せられているので,観終わった後,再度エレーヌのそれまでの台詞や表情を確認したくなった。

・・・・深い・・・とにかく深い
物語だといえるだろう。長年連れ添ったご夫婦とかが鑑賞されても,心に響くものは大きいと思う。

坂本龍一
の静謐な音楽はさすがである。中谷美紀が娼館のマダムを演じているが,凜と背筋を伸ばした洋装が美しく,流暢な英語も天晴れであった。070925_silk_sub1 と,ここまでは,よい点を挙げたけれど・・・・。この作品はおそらく評価や好みが分かれると思うし,あまり褒められない点も確かに感じたので,ここからは不満な点を挙げることにします。

① 
主演男優がイケてない
。(いや,演技力じゃなくて,お顔です。私はあんまり丸顔は苦手なんで・・・・,あくまで個人的好みですが。)
 はっきり言って,とちゅうが退屈!日本に行って,帰って,また行って,帰って,また行って・・・同じような展開を三度やられると,さすがに観てる方は飽きます。また行くのかよ~,はやく何でもいいから,ケリをつけなよ~,みたいな。劇的な展開がないのでなおさら。) 

鑑賞される方は,よく睡眠をとってから劇場に行かれることをオススメします。私は,この直前にスウィーニー・トッドを観たので,まだアドレナリンが上昇していたのか,睡魔には襲われませんでしたが,スウィーニー~に比べると,あまりにも刺激がないので気持ちの切り替えに時間を要しました。

2008年1月19日 (土)

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

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ジョニー・デップとティム・バートンの黄金コンビ
で贈る、伝説の殺人鬼の復讐物語。殺人鬼好き、リベンジもの好き、ヴィクトリア朝の英国好きの私にとってはこのうえなく期待の高まる作品で,封切り日に劇場にかけつけてわくわくして鑑賞。

19世紀末のロンドン。ターピン判事(アラン・リックマン)に妻を横恋慕され、無実の罪を着せられて人生を奪われた男,ベンジャミン・バーガー(ジョニー・デップ)。彼は15年ぶりに街に戻って,スウィーニー・トッドと名をかえ、パイ屋のミセス・ラベット(ヘレナ・B・カーター)の家の2階に理髪店を開業する。その目に狂気を宿らせ,タービンに対し復讐を誓いながら。そして髭剃りに来た人たちを、次々に喉を掻っ捌いて殺害し、ラベット夫人は人肉パイを焼き・・・。
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それなりに お似合いなんだけどね,このお二人さん。

この時代のロンドンの,階級の格差のひどさとか,ガス灯の光の届かない暗闇でなされている野放しの犯罪とか,救貧院や精神病院の惨状とかは,オリバー・ツイストやフロム・ヘルなどでも描かれていたなあ。巷は浮浪者であふれ,切り裂きジャックなどが暗躍し,猫肉パイが作られたほどだから,人を殺してパイの肉を調達する事件も実際にありそう,と思ってしまう。

役人や判事がやりたい放題のことをやり、貧乏人はジンで憂さを晴らしながらやっと生きていた時代。物語のベースには、この時代の階級格差に対する風刺も込められているようだ。
008 それにしても、やはりジョニーは凄い
哀愁と狂気の漂う殺人鬼トッドになりきった彼は,アメイジングとしか言いようがなかった。あんな目のまわり真っ黒の寝不足メイクと、メッシュ入り雷ヘアでも,彼は十分美しいし,この時代の衣裳のよく似合うこと。(フロムヘルもそうだった)かみそりを高々と掲げて復讐を誓う彼の,ほとんど芸術的ともいえるシルエットにうっとり。若い頃とスタイルが変わってないんだもん。
034 そして、ヘレナ・ボナム・カーター。
この人の演じるミセス・ラベットの強烈さも,ジョニーに負けていない。彼女の台詞や歌は,歌詞にどきっとさせられたり,その面白さに唸らされたり。ゴキブリを叩き殺しながら「うちのパイは世界一まずい」と歌うシーンや,「復讐の楽しさは計画にあるのよ」(←ホントだわ)と言う台詞。パイにする獲物を窓から品定めするシーン。

一番笑ったのは、彼女がトッドとの未来を妄想する場面で,海岸で派手な水着姿のヘレナの傍らで,ジョニーが囚人服みたいなシマシマの水着を着て,あの雷ヘアと憂欝な顔で座っていたのに爆笑しそうになった。
029 そう、この作品,ミュージカル仕立てだから,劇中で俳優さんが歌うのだ。私はミュージカルもオペラも好きだが、ミュージカル仕立ての映画はちょっと苦手で、なぜそこで歌う?唐突に」とか「いいところなのに、歌わずに普通にしゃべってよ」と思うことが多いけど,これはそんなに違和感がなかった。

ジョニーを筆頭に,みんな歌唱力は素人の域をそんなに出てない(失礼)ので,歌ってる、というよりは節をつけてしゃべってる,みたいだったからかも知れない。歌に合わせて踊りまくるシーンもなかったし。それでも,ジョニーは歌の中で感情を込めるのがうまいし,(呪いながら歌うなんて,彼にしかできまい)ヘレナの声はなかなか綺麗だった。・・・・さすがに,これから喉を掻っ切られるアラン・リックマンが,ジョニーと二重唱をおっぱじめたのには笑ったけど。(歌ってる場合か,おい!みたいな)
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さて,前評判高い,この作品の残酷描写だけど,私は平気だった。ティム・バートンの映像世界はダークな色調が美しく,それゆえに御伽ばなしの世界のようで,残酷シーンも現実味がないのだ。確かに血もスプラッターもふんだんに出てくるけど,血の色も鮮やかすぎて,赤ペンキみたいで,そんなにリアリティがない。

ジョニーが初めて殺人をするシーンは「ひぇ~」と思ったけど,その後,彼がバッサバッサと景気よく,つぎつぎに被害者の喉を掻っさばいてくれるので,すぐに見慣れた。(それでも,ターピンをメッタ刺しにするジョニーの悪魔のような形相は,かなり怖いですよ♪)
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ラストは,「おお,そう来たか」と思った。切なくて,血まみれなラストだった,とだけ言っておきます。・・・・・・とても満足した作品で,もしかしたらジョニー作品の中で,一番のお気に入りになるかも知れないけど,当分,挽き肉料理は,食べるのやめときます。

・・・・でも,あの人肉パイ,そんなに美味しかったのかぁ・・・・どんな味なんだろ,とちらりと思ったりして。(冗談ですよっ!)

2008年1月17日 (木)

プロヴァンスの贈りもの

Provance_main 大好きなワインと,ラッセル・クロウが味わいたくてDVDで鑑賞。「南仏プロヴァンスの12か月」で有名なピーター・メイル原作で,監督はリドリー・スコット

少年時代,プロヴァンスのヘンリーおじさんのブドウ園で夏の休暇を過ごしたマックス(ラッセル)は,成人した今は,ロンドンの豪腕トレーダー。叔父のワイン談義に目を輝かせていた少年は,いつのまにか、超多忙な金融マンになっていた。

そんなある日、叔父の訃報が届き,ブドウ園とシャトーを相続することになったマックスは,調査のためにプロヴァンスを再訪する。そこで彼はレストランを経営するファニー(マリオン・コティヤール)と出会う。

陽光溢れる美しい南仏の風景のもと,繰り広げられる大人のラブストーリー。本物の愛を知らなかった男と,愛に対してトラウマを抱えていた女の間に芽生えたロマンスの行方は・・・・・

Cap079 素敵なお話だったけど,これってもしかしてコメディ?というテイストも感じた。ラッセルの時にトボケた演技が特に。仕事中毒のビジネスマンの彼が,ゆったりと時間が流れるプロヴァンスで最初戸惑ってアタフタする様子とか,使用人のディフロとのやりとりとか,ファニーとのロマンティックとは,ほど遠い出会いとか・・・・。

グラディエイターや、シンデレラマンで、私の中では、闘う渋い男のイメージの定着しているラッセル。おお~ロマンティック・コメディもできるんだぁー,と妙に感心した。
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この作品のラッセルは,普段の精悍なムードはどこへやらやや恰幅がよくて,やんちゃな子どもみたいなかわいい表情を見せたりして,いかにもキュートなおっさんだった。転んだり,はね飛んだり,わめいたり,ずっこけアクションも満載で,冒頭からけっこう楽しく笑わせてもらった。このラッセル,ほんとに可愛い!

そしてもう一つの主役は,なんと言ってもプロヴァンスの美しい風景。黄金色に輝く陽光と,したたるような緑の中で,ゆったりと流れる時間と,おいしいワインや食物は,誰の心にも魔法をかけずにはいられない

1週間でいいから,あんな場所でのんびりと命の洗濯ができたら,多忙な日々でささくれ立った心も,芯からリセットされるだろうな。(かなわぬ夢だ)
思いがけず与えられた休暇。よみがえる少年時代のピュアな思い出。そして運命のひと,ファニーの存在と,おじの宝のブドウ園。マックスは,本当に豊かな人生とは何か,言うことを悟る。

まるで,定年退職後に田舎に引っ越して農業を始めた都会のサラリーマンのような話だけど,(ちょっと違うか?)人間は自然の中で,そのサイクルに合わせて生活するのが,やっぱり一番心地よいのかもしれないな。最初の頃のマックスのせかせかした,いつも何かに追われているような話し方や表情が,ラストの庭園でのランチのシーンでは,まるで別人のように,ゆったりまったりとくつろいで,満ち足りていたのが印象的だった。
Cap073_2 そりゃ,こんな風に人生,再出発したいよね,誰だって。でもみんながみんな,南仏にブドウ園を持ってるわけじゃないけどさ(←ひがみ根性?) 監督のリドリー・スコットは持ってるらしいけど。

それにしても,ラッセルが出てる,と言う点以外は,まったくリドリー・スコットらしくない作品だったなぁ。・・・・こんなんも撮れるのか,彼は。

2008年1月15日 (火)

ラブソングができるまで

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何を隠そう,私はかつて ヒュー・グラントの熱烈なファンだったことがある。(過去形)「モーリス」の輝くばかりの美青年だった頃から始まって,「ノッテイング・ヒルの恋人」のあたりまでの期間。(つまり彼の若い頃)エリート英国紳士らしい,上品な雰囲気や、優しげなタレ目に萌えていた。

そんな彼がいつのまにか,ロマンティック・コメディ専門になっちゃってからは,時たまヒット作が出る都度,その存在を思い出す程度になっていたけれど。(ごめん,ヒュー様)コメディアンとしてのヒューも,素敵だとは思っていたけどね。で,ほんとに久々にヒューの作品をじっくり観たのだけど,この「ラブソングができるまで」はなかなか楽しい,素敵な作品だった。

ヒューが演じるのは,80年代に大ヒットしたグループPOPのメンバーだったアレックス。グループが解散して久しい今現在,彼は遊園地や同窓会のイベントに呼ばれるぐらいの、鳴かず飛ばずの状態だったが、ある日カリスマ歌手のコーラから新曲製作の依頼があり・・・・。その曲の作詞を担当することになったのが、アレックスの家に植木の世話に通ってきたソフィー(ドリュー・バリモア)。作詞は初めての彼女と,落ち目の歌手アレックスが,二人三脚で「愛に戻る道」の曲作りに取りかかる。

もちろん,歌って踊るヒューが,この作品の一番の見所
ピアノ演奏も披露しているが,歌もダンスもピアノも,ヒューは初挑戦で,この映画のために特訓したらしい。しかし,初心者とは思えないくらい,歌の方は見事である。
Cap044 大体,この方は,もともとの声が綺麗なのだ。響きが甘くて優しくて,バラードなんかに向いている声。「モーリス」の中で,彼がケンブリッジ大学の池をボートに乗って,学友と一緒に賛美歌を口ずさむシーンがあるけど,その時一瞬だけ聞けた歌声が,綺麗なテノールだったので,きっと歌はうまいのだろうと思ってたけど,予想をはるかに上回る上手さだった。ダンスの方は,さすがのヒュー様も若くないので,「股関節は大丈夫?」といらぬ心配もしてしまったが。

そして,ドリュー・バリモア。彼女,ちょっと見ない間(私がね)に痩せて綺麗になって,とてもチャーミングだった。ファッションもとても素敵。

ロマコメの帝王ヒューと,天性のコメディアンヌのドリュー
の掛けあいは、間の取り方や表情が絶妙で、息もぴったり。二人ともきっとすごく楽しんで演じたんだろうな,と感じた。

脇を固めるキャラもなかなか魅力的で,コーラ役のヘイリー・ベネットがとてもセクシーで可愛い。歌もダンスも素晴らしいし。彼女の舞台の怪しげな東洋ムードも胡散臭さがかえって面白かった。さすがに,あの巨大な大仏には笑ったけど。それとドリューの豪快な姉さん(クリステン・ジョンストン)も,何げに魅力的なキャラだ。痩身サロンか何かを経営してるのに、全然痩せてなかったし。 (説得力なし)
Haleybennett
お話じたいはそんなに目新しくはないのだけど,二人の間に恋が芽生え,意見の対立から気まずくなる後半,ストーリーはきっちりと程よく盛り上がって,ラストは ほのぼのハッピーエンド。全体として,とても爽やかな後味の佳作に仕上がっていた。
愛に戻る道」の曲も,シンプルだけどとてもいい曲だったな~~。

だけど,この映画の邦題,「ラブソングができるまで」って・・・・。ひねりも何もない,まんまの題ですねー。もっとシャレた題は思いつかなかったのかな?
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2008年1月13日 (日)

ベオウルフ 

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2005年にカナダで公開され,わが国では,2007年の11月にDVDがリリースされた,ジェラルド・バトラー主演の,ベオウルフ。現在公開中のロバート・ゼメキス監督の全編CG版の大作,「ベオウルフ/呪われし勇者」と比べると,こちらは全編ロケで撮影され,実際に俳優さんたちが実戦する地味なつくりになっている

物語も,原作の古典に比較的忠実だ。先にCG版の「ベオウルフ/呪われし勇者」を観て,その脚色されたストーリー(繰り返される父親の罪)は面白く感じたものの,全編CGというのが今ひとつ好みに合わなくて,こちらのアナログ版も観たくなった。
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アイスランドやカナダで撮影されたという,まるで世界の果てのような荒涼とした大自然は,天地創造の時代のごとき雄大さと美しさで,観るものの胸に迫ってくる。そして,その大自然を背景に繰り広げられるのは,英雄譚というよりは,むしろ人間ドラマで,実際の俳優さんたちが演じてみせる,恐れや苦悩や,迷いの表情は,CGアニメとは説得力が違う。・・・・CGはCGの素晴らしさがあるのだが,やはり実物のもつ重みには敵わないこともあると痛感。

この実写版ベオウルフ,原作に付け加えた脚色は,グレンデルを単なるモンスターではなく,悲劇の巨人として描いていることだ。彼は幼い頃に,父親をデネの王フロースガールによって目の前で惨殺され,その復讐のために,成人してから,王の城を夜襲して殺戮を繰り返すのである。

洞窟に殺された父の首を祀り,父の思い出を慕う,孤独なグレンデル。王の城を襲うのは,あくまでも復讐のためで,余計な殺戮はしないグレンデル。そして荒地の果てに住む,魔女セルマ(サラ・ポーリー)とグレンデルの交流。

イェーアト族の英雄ベオウルフは,王の遠縁ということで,グレンデル退治のために,海を越えて駆けつけるが,はじめは聞かされていなかった,王とグレンデルの因縁が次第にわかってくるにつれて,複雑な思いにとらわれはじめる・・・。
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ジェラルドが演じるベオウルフが,とても素敵
。まるでキリストのようなロン毛が,よく似合っていて,スリーハンドレッドのレオニダス王のときよか,若く見えます。あ,実際に撮影時は若かったのか。

剣を振るって立ち回るシーンは,予想してたほど多くはなかったけど,物語の後半から,次第にグレンデルに同情の思いを抱き始めるベオウルフの心の変化や,人徳や風格のようなものが,彼の演技からは自然と感じ取れて,とても魅力のある人間らしい英雄として描かれていた。(「呪われし~」のレイ・ウィンストンのベオウルフも,別の意味で,非常に人間くさい英雄だったけどね)

物語が進むにつれて憔悴してゆくフロースガール王も,自分の過去の思慮の足りない行い(グレンデルの父殺し)が,後々まで災いを引きずったことに対して後悔し,そのことでベオウルフに恥じてもいるように思えた。
23_2   鑑賞後は,ちょっぴり切ない気分になった。やはり,グレンデルの悲劇が身につまされたのだろう。父の命を奪ったベオウルフをじっと見つめる,グレンデルの息子。復讐の宿命はまた繰り返されるのか?いやいや,グレンデルのために塚を築いたベオウルフの心づくしを,息子はちゃんと理解したに違いない。

哀愁の漂う,古代の英雄物語。主役は実はグレンデルかもしれない。(映画の題も,本当は「ベオウルフとグレンデル」だしね)・・・・・だけど,全体的に,とても好きな雰囲気の作品だった。
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やはり何といっても,イケメンは,生身がいい。CGアニメじゃ,体温や体臭が伝わってこないもん(←何のこっちゃ)

2008年1月12日 (土)

イメージバトン

本や映画の話題が豊富で,みんなが集まる人気ブログ「YUKAの気ままな有閑日記」の由香さんから『イメージバトン』を受け取りました。
由香さん、ご指名ありがとう!以下の項目について,ピピーンときたイメージで答えるようです。
私も映画キャラで,答えてみようと思います。

  1.恋人                 6.師匠
  2.お母さん              7.非常食
  3.お姉さん(またはお兄さん)     8.デザート
  4.妹(または弟)           9.桃
  5.ペット                               10.萌 
  

1. 恋人 
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今まで観たラブストーリーの中で印象的な恋人たち・・・

究極の腐れ縁カップルブエノスアイレス
時空を超えた遠距離カップルイルマーレ
応援したくなるカップルノッティングヒルの恋人
生態を超えた純愛カップルキング・コング
  コングとアン(←カップルと言えるのか?おい)

 

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2 お母さん
最近の母もので,印象的だったのは,なんと言っても「ボルベール」だけど,少し前なら理想の女(ひと)のアイリーン。奔放なように見えて,娘のために身を引く母親の毅然とした姿が印象的。ヘレン・ハントの演技も◎。

3 お姉さん(またはお兄さん)
4 妹(または弟)

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ひとつにくくって,「きょうだいモノ」ということで。
泣かせる姉妹ものアンナとロッテ(戦争で引き裂かれた双子のお話)
泣かせる兄弟ものブラザーフッド
ほのぼの姉妹ものイン・ハー・シューズ
ほのぼの兄弟ものフランシスコの二人の息子


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ペットというのとは違うけど,動物と人間の絆を描いたもので,大好きなのは,シービスケットかな?馬っていいよね!(もちろん,トビーもよかったけど)

 

6 師匠
師との出会いが人生を変える・・・特に好きな1本は
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グッド・ウィル・ハンティング
心に傷を負った天才青年が,心理学者の教師と出会って,癒され,再生してゆく物語。マットもいいし,ロビンもいい。

7 非常食
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古い映画だけど,生きてこそ
アンデスの山中に墜落した飛行機の生存者が,生き残るために下した 苦渋の決断・・・。カニバリズムを問題にしたのではなくこれは,心に残る真摯なヒューマンドラマ。そして,実話の重み。エンドロールの「アヴェ・マリア」が心に沁みる。

8 デザート

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デザートといえばお菓子。お菓子が主役の映画で一番好きなのはショコラ。観た後は必ず,甘いものが食べたくなる,ダイエットの敵とも言える因果な物語。

 

9 桃
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・・・・桃お~???

桃の映画は 浮かばない。かわりに浮かんだ桃井かおり
武士の一分」でおもろい叔母さんを演じてたのが,最新の記憶。

 

 

10 萌
萌えるのはもちろん・・・・この方たちに対して。うふ,うふ,うふふ。いーなぁ,最後に この項目。
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えー,お次にバトンを受け取っていただきたい方は♪

    ◎「真紅のthinkingdays 」の真紅さま
    ◎「 小部屋日記」のアイマックさん
    ◎「+++ Candy Cinema +++ 」のAnyさん

Cjg14 のんびり,ぼちぼちでかまいませんので,
どうぞ受け取ってくださいまし。
もちろんスルーもあり,ということで・・・・・。


   

 

 

 

 

 

 

2008年1月11日 (金)

グッド・ガール

Cap022 ジェニファー・アニストン主演のオフ・ビート・コメディー。田舎のディスカウント・ストアに勤める主婦ジャスティン(アニストン)が,年下のオタク青年ホールデン(ジェイク・ギレンホール)との情事にはまり,次第に抜き差しならない状態に追い込まれてゆく物語。2002年作。

これって,いい俳優さんを使っているのに,全体的にB級の香りがそこはかとなく漂うのだが,その奇妙な味わいゆえに,鑑賞後にもう一度繰り返して観たくなった不思議な作品だ。

主演のジャスティンの髪型や服装,ディスカウント・ストアの内装や客の雰囲気などは、田舎町という設定に合わせて、何ともダサい。美人女優のアニストンが、髪を殺風景にひっつめ、それこそディスカウント・ストアで売っているようなオバサンルック(チェックやボーダー模様の服とか)に身を固めているのも驚きだが,好青年のジェイクが,始終どんよりしたまなざしと,腹に力のこもらない声の,見るからにアブナく暗い,オタク青年を演じているのもまた驚きだった。

Cap008
大学をドロップアウトし,小説家を夢見る文学青年で,とにかく考え方が暗い暗い。「誰も自分のことをわかってくれない」とぼやき,書く小説の主人公は自分を投影していて,必ず最後は死んでしまうという救いようのない筋書き。

そんなホールデンに,ジャスティンがなぜ惹かれたかというと,彼女自身も,自分のことをわかってくれない夫(十分やさしくていい夫なのだがね)や,何の変哲もない平凡な田舎に埋もれたような日々に,強い欲求不満を抱いていたからだろう。

・・・・あんまりジェイクにこんな役をやってほしくはなかったけど,とにかくこの作品の彼は,ほんとに根暗で世間からは落ちこぼれた,どうしようもない青年が乗り移ったかのように,うまかった。これが決して彼の地ではないことを知っているから,なおさらその演技力の高さに驚く。
Cap019_2 情事が始まったばかりの頃は有頂天でも,やはりそこは,普通とは違う根暗のオタク青年との関係は,いったんこじれ始めると,予想もつかなかった愚かな泥沼にはまり込む。

夫の親友のババに不倫がばれて,彼から身体の関係を強要されるジャスティン。激昂するホールデン。「両親の金を奪って逃げよう」とかなんとか,めちゃくちゃなことを言いながら暴走する彼を,ジャスティンはもてあますようになり・・・・。

Cap029
物語後半のホールデンは,ほんとに困った存在になる。
「一緒に逃げよう」とだだをこね,泣くわ騒ぐわ,うっとおしいことこの上ない。こんな恋人がもしいたら,いくらお顔がジェイクでも,私も とっとと逃げ出したい。いつか刺されそうな恐れさえ感じるもの。というか,私はこういうタイプに惹かれない・・・とは思う(でもお顔がジェイクなら・・・わからないかな?)

しかし,しかしである!この物語のタイトルが「グッド・ガール」であるのは皮肉?といいたくなるほど,ジャスティンがその後に取った行動は,身勝手極まるのである。
ホールデンが自分の安泰な生活を脅かす存在になると,なんとか彼と手を切ろうと,あれこれ画策するし,(毒殺まで考えた!)彼との子供は人のよい夫の子としてごまかそうとするし,ホールデンがお店のお金を奪ったことがわかると,彼女はあろうことか・・・・。

さすがにこの結末は,ホールデンが哀れで,ジャスティンに憎悪を覚えてしまった。あんた自分さえよければいいのかよ・・・・。
Cap031 彼女に欺かれて道化役を演じたのは,ホールデンだけではない。夫のフィル(ジョン・C・ライリー,美人妻にコケにされるお人よしの夫の役はピカ一)や,浮気相手と間違えられて,フィルにぼこぼこに殴られるジャスティンの同僚も被害者だ。これは新聞の三文記事にあるような愚かな事件を,毒気たっぷりに描いたブラック・コメディーなのだろう。

知名度の低い,実力のない役者が演じると,もっともっと魅力のない作品になったかもしれないが,アニストンとジェイクの二人のオーラや演技が,この作品の救いになっているような気がする。事実「あ~~~あ」というような結末にもかかわらず,後味は決して悪くなかった。(よくもないけど)
Cap024 ◎余談その1・・・・ストアの支配人役に,「ゾディアック」で容疑者のリーを演じたジョン・キャロル・リンチが出てました。この作品では,ジェイクを呼びつけて叱ったりしてました。
◎余談その2・・・・特典映像の,NG集のベッドシーン大笑い場面が可愛いです。撮影現場は和気あいあいだったのね♪ジェイクがやけにはしゃいでいて,ちょっと妬けます。 

2008年1月10日 (木)

リトル・チルドレン

Cap123 DVDで鑑賞。不思議な映画だった・・・・。等身大の登場人物たちの,誰もがみんな少しずつ愚かで,好きになれないキャラなのに,何故かそれぞれに感情移入もできてしまう・・・・彼らの過ちや愚かさを高見の見物としてとらえることはできず,「自分も,もしかしたら・・・」と思えてしまう,だけどやっぱり,あんな生き方はしちゃいけないと最後には思える,反面教師のような物語だった。

これって,テーマは人間の愚かさ?

主人公のサラ(ケイト・ウィンスレット)は郊外に住む平凡な主婦。彼女は娘を遊ばせに立ち寄る公園で出会った主夫ブラッドと,不倫の関係になる。日々の生活に,倦怠と漠然とした不満を抱いていた彼女。彼女は,母親であるのに,娘より自分の感情を微妙に優先させる傾向のある,精神的に少し幼い人間として描かれている。
Cap119 不倫相手のブラッドは,司法試験の勉強をするために,家にいて子守なんかさせられてる主夫。妻(ジェニファー・コネリー)は申し分なく美しく,おまけにキャリアウーマン。悪気はまったくないのだが,「今年こそ合格してね!」と事あるごとに夫を励まし,それが夫のプレッシャーになっていることに気がついていない。ブラッドがサラにひかれたのは何故なのか?なかなか受からない司法試験と妻の期待から生じるストレスのなせる技かもしれない。
Cap127 まあ、ブラッドというキャラは,お人好しだけど思慮が足りないというか,サラとの駈け落ちに行く途中でスケボー少年の誘いにあっさり乗って,あんなことになっちゃうような、言わば考え無し人間に見える。

いずれにしても、人間の犯す過ちへの誘惑とは,ほんの些細なことがきっかけになって、その人の心の隙間,というか弱いところに忍び込むものかもしれない。

そして,この作品のサイドストーリーのように織り込まれているのが,小児性愛者で,服役経験のあるロニーを巡る物語だ。舞台は子どもの多い閑静な住宅街。出所してきた彼を,周辺の住人たちは,忌み嫌い,警戒するが,子を持つ親の反応としては当たり前かもしれない。彼がプールに姿を現したとたん,まるでジョーズでも出現したように,子どもたちを避難させる親たちの反応は,さすがに気の毒な気もしたが,私もそこにいたら,きっと皆と同じ反応を示していただろうなぁ。

そんなロニーを執拗に攻撃する元警官ラリーも,自分の過去の失敗(子供を誤射した)の埋め合わせに、ロニー排斥に力を入れてるみたいに見えて、彼の行動もまた痛い。

まるでモンスターのように見られていたロニーだけど、サラの駈け落ちに歯止めをかけるきっかけを作ったのは,何とロニーだった。彼が,母を亡くして嘆き悲しむ姿をみて、サラは自分にとって本当に大切なものが何であるかに気づくことができたのだろうか。ロニーの心の中の母への思慕が,サラに家族の絆の大切さを思い起こさせたのかもしれない。
Cap124 この物語の登場人物を見ていると,完全な悪人も善人もいなくって,人ってみんな、勝手だったり,弱かったり,愚かだったり,もし全能者の目から見たら,みんなそんなに大差ない小さな子供のようなものではないかと思えてくる。

アメリカン・ビューティを思い出させる,人間観察ドラマ。辛辣で、滑稽で、可笑しさと哀しさの入り混じった物語。ラストには救いもあるので,ほのかな爽やかさや,あたたかさも感じることができた。

2008年1月 7日 (月)

ロード・オブ・ドッグタウン

Wall03_1024x768 1975年,アメリカ西海岸,ヴェニスビーチ周辺,通称ドッグタウンで,スケートボードに明け暮れる3人の少年たち,トニー,ステイシー,ジェイ。彼らはその後,70年代のエクストリーム・スポーツの先駆者となる。これは、そんな彼らの青春を綴った自伝的な物語だ。

Wall04_1024x768_4この時代って,そういえば長髪の時代だった。(私は覚えてませんけど,さすがに この時代の事までは。) ジェイたちスケボー狂いの少年たちは,毎日勉強もせずに,サーフィンやスケートボードに夢中。車の迷惑も考えず,風を切って道路を疾走しては,スピードとスリルを満喫し,塀や車を乗り越えて,仲間と荒業を競い合う。

主人公の3人の少年たちは,それぞれが個性的かつ魅力的だ。奔放でワルだけど,母子家庭ゆえに母親思いのジェイ。(レオ似)スケートの腕は一番だけど,やや傲慢で出世欲も強いトニー。そしてまじめで努力家の,優等生タイプのステイシー
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スケボーのシーンとぴったりマッチしている,アップテンポの音楽は,スピード感と爽快な気分を盛り上げる。よその家の空のプールに忍び込み、垂直跳びを練習するジェイたち。家人に見つかると,我先にと逃げ出す彼らを,「もー,しょうがないわねー,アンタたち!」と思いつつ,華麗なターンやジャンプに見入ってしまう。青春の真っ只中の彼ら。誰の人生にも一度は必ず訪れる、傷つきやすく、同時に恐れを知らない日々に、持てるエネルギーのすべてをスケボーに注ぎ込む彼らが眩しい。Wall06_1024x768_2

そして、彼らがたむろしていたサーフ・ショップのオーナーで,少年たちを集めてスケボー・チーム「Z-BOYS」を結成したのが,スキップ(ヒース・レジャー)。
このスキップとやら,凄腕のサーファーとして,少年たちの憧れの存在だったらしいのだが,何せ,服装も立ち居振る舞いも,なにやらアヤシく,イカレ親父っぽいのである。「なんつー取り合わせ!」と目をむくような派手な色彩の悪趣味な服を着て,(なぜか似合うけど)血中をアルコールが抜けたことがないような感じで,しゃべり方もヘランヘランして,「これは誰?」とわが目を疑った。

Cap055_3 ・・・・またこれまでとは全然,別人のヒースを見つけた感じ。この方,作品ごとに見かけもまったく別人になれるのね。彼の怪演は,異彩を放っていて,その飄々とした、ややクレイジーにも見える生き方は、ある意味,主演の3人より目立っていたように思う。
   
スケボーチームを結成して,少年たちを大会に出場させ,世に出るきっかけを作ったのは,このスキップなのだが,トニーを先頭に、少年たちは名声や富につられて,他のボードメーカーたちに引き抜かれて,スキップのもとから次々に去っていく。それを素直に喜べずに,癇癪を起こして暴れたりする,スキップのへタレぶりが,可笑しくも可愛かったりする。(へタレ男演じるの上手い)
Cap093 それでも物語のラスト近く、橋の焼け跡で,「出ていってすまなかった」と謝るジェイに,「いいってことよ」と、不器用に微笑んでみせるスキップ。トレードマークのサングラスを外した瞳に,うっすらと淋しさと優しさをにじませて。やはり演技がうまいなぁ,ヒース。しかし,彼ってこんなに歯並び悪かったっけ?いつもより口元がブサイクなんですけど。それに若干,腹も出ているような。気のせいかしら?
Cap064俺たちは、これから20年間、夏休みが続くんだぜ」と言ったジェイの言葉。しかし、スキップの元を巣立ってから、彼ら三人の進む道と目指す方向は、バラバラになる。

押しも押されぬ名声を得,得意の絶頂で目を殴られて怪我を負うトニー。思うように売り出してくれないボードメーカーに苛立ち,空しさを噛み締めるジェイ。そして誠実に道を固めてゆく,理性派のステイシー。

栄光や挫折を経て,
互いに生まれる反目やライバル意識


無心に技を競い合ったドッグタウンでの日々が、遥かかなたに思えた頃,かつての仲間シドが脳腫瘍に倒れ,彼を見舞うジェイ。そこに,大会出場をキャンセルしたステイシーが現れ,トニーもまた。
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シドの家のプールで,昔のように三人で滑走するラストシーン。まるで原点に帰ったかのように,生き生きと輝く彼らの顔と,美しいフォームに目頭が熱くなった。

スケボーが好きな人,うら若いイケメンが大勢見たい人,そしてヒース・ファンには,ぜひ お薦めの作品です。

2008年1月 5日 (土)

パンズ・ラビリンス

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2008年初の私の劇場鑑賞映画。隣県のミニシアターで公開されているとの情報を得て,行ってまいりました,山越えて1時間かけて。(←執念)世間で絶賛されている作品,という知識だけを頼りに,いつのものように,何の予備知識も仕入れずに,いきなり観てきました。

物語は,1944年のスペイン。フランコ将軍の圧政に抵抗するゲリラたちとフランコ軍は,山野で血なまぐさい抗争を繰り返していた。主人公の少女オフェリアは,母カルメンがフランコ軍のビダル大尉と再婚し,彼の子供を生むために山奥の軍の駐屯地を訪ねる。そこでの生活は,暗く,絶望的なものだった。オフェリアを疎ましく思う,残虐な継父ビダル大尉。彼に気を遣う母の身体は思わしくない。おびえる使用人たちと,立ち込める不穏な空気。周囲で繰り広げられる殺戮や戦闘。

そんな時,おとぎ話の好きなオフェリアの前に,牧羊神パンが現れ,「あなたは,魔法の国のプリンセスです。王国に戻るためには,3つの試練を乗り越えねばなりません」と告げる・・・・
Wallpaper01_1280_3 で,感想は・・・・。
私はこの作品,ものすごーく怖かった
メル・ギブソン監督の残酷描写も,バイオハザード系のゾンビたちも,はたまたオカルトやホラーの類も,「怖い」と思ったことのない私が,この作品ではけっこう目や耳をふさいでいた。・・・・いったい何が怖かったって?
あのファシストおやぢの所業が死ぬほど怖かったのである。
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私は,どんな残酷で派手な殺し方でも,相手がすぐに死ぬ場合は,結構平気で見れる。しかし半殺しや生殺しは・・・・苦手だ。改宗や自白を強要するための拷問シーンなどは,もっとも苦手。

ところが,このファシストおやぢビダル大尉は,邪悪の権化のような人間で,まるで虫けらのように人間を殺すし,拷問はするし,相手に抵抗されて切り裂かれた口の傷を,何と自分で針と糸でチクチク縫っちゃうし・・・,

このおやぢが登場すると,「こやつ,次はどんな非道なことをやらかすんだ?」と恐怖で心臓がバクバクした。物語全体を覆っている,言いようのない恐怖と絶望的な雰囲気は,大部分はこやつが醸し出していたと思う。そんな彼の支配下に囚われた,哀れな少女オフェリアが,どんな思いをしたか,想像すると胸がつぶれそうだ。
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この物語のいわゆる迷宮とは,苛酷な現実から逃避するために,少女が迷い込んだ架空の世界のようだ。少女は,辛く恐ろしい現実の世界から逃げ出して,永遠の命の待つ魔法の王国を目指すのである。物語は少女の目を通した空想の世界と,現実世界とが平行して描かれているが,その構成が素晴らしく,両者がうまく噛み合って物語が進んでいく様子は見事のひとことに尽きる。

少女が乗り越えなければならない3つの試練。一つ一つ詳しくは内容を書かないけれど,(←面倒なので。相すみません。ご自分の目で確かめてね。)そのファンタジーのシーンも,メルヘンチックとは言いがたい,むしろグロテスクな怪物や異形のものが登場し,どこまでもダークな雰囲気である。

巨大ガマガエルや,手のひらに目玉をはめ込んで追っかけてくる怪物(つかまったら食われてしまう,ひぇ~~)とか,どれもすごく個性的で,そしてめちゃくちゃ気味が悪い。(だいたい,牧羊神パン自体が不気味な外見だし)

現実の世界は希望の光がさすどころか,事態はますます絶望に向かう。オフェリアの母は難産で死ぬし,オフェリアの唯一の見方の小間使いメルセデスは,ゲリラのスパイだったことが大尉にばれて捕まるし・・・

果たしてオフェリアには現実世界でも,魔法の世界でも救いはあるのだろうか・・・?と,画面を祈るような思いで凝視せずにはおれない。
070125_pans_sub5_2 結果として,少女の魂は安らぐことができたので,そしてあの怪物ビダルも裁きを受けたので,救いがないこともないが,なんとも哀しみの残るラストだった。メルセデスの口ずさむ,哀しげな旋律のララバイが,いつまでも心に残る。

内戦時代の惨状
を描いた反戦映画の要素もあるのだろうか?思春期の少女の多感さや,絶望の中でも光を求める思い,母と子の絆,苦悩に満ちた人間の世界など,
さまざまなものが重厚に織り込まれた,傑作ダークファンタジー
その完成度の高さは疑うべくもない。
しかし,後味はとても苦かった。

猫の寝正月

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あけまして
   おめでとうございます。

今年もマイペースで
飼い主のことは気にせず
好きなように 頑張ります!

初夢は マグロの背中で
気持ちよく眠っている夢でした^0^

お正月そうそう初雪で,お布団から出られニャい~~~。
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やっとお昼から陽がさしたから,今度は窓際へ移動。
日向ぼっこしながら,またウトウト・・・・。
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寝正月を満喫した ななちゃんでした。
正月でなくても寝てるケド

・・・・
今年も元気でいてくれれば,
何も言うこと無いわ
(飼い主)

   

2008年1月 4日 (金)

ドニー・ダーコ

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2001年,サンダンスを熱狂させた,リバース(反転)映画の草分け的な作品。

主人公のドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)は,精神科のセラピーを受ける17歳の高校生。ある晩,彼は不気味な銀色のウサギに呼び出され,「世界の終わりまで,あと28日と6時間42分12秒」だと 告げられる。帰宅してみると,ドニーの部屋には,飛行機のエンジンが落下していた。危うく命が助かったドニーだが,その日以来,銀色のウサギはドニーの前に現れるようになり・・・。
Cap031_2とにかく,難解な作品で,何度観てもはっきり答えが分からない、というか,いかようにも解釈できる点もある。飛行機の落下事故で,死んでいたはずのドニー。そしてネタバレ覚悟で言えば,彼はウサギのフランクが言った「世界の終わり」が自分にとってどんなものかを28日後に見届けた後,実際に「死ぬため」に事故の時間まで戻るのだが, じゃあ,彼が生きていたあの28日間は何?ということになる。

精神疾患を持つ思春期の若者の妄想かもしれないし,神の啓示,あるいは予知夢?とも思えなくもないが,私はこれをSFととらえると,ドニーは「自分が死ななかった世界」というパラレルワールド(平行世界)に迷い込んだのではないか,と思った。
Cap029 彼の死の原因を作ったエンジンは,実は実際に落下する28日後に上空を飛んでいた飛行機のもの。ドニーの母が帰宅のため乗っていたあれ。エンジンは時空の渦に巻き込まれて,タイムスリップし,なんと28日前のドニーの部屋に落ちてきたのだ

だから,実際に落ちてきた日から,28日後までは,実は原因のエンジンは存在しないわけだから,その間は「ドニーが死ななかった世界」という,別世界が存在してもおかしくない気がする。(ややこしいですね。自分で言っててわかりません)そして、そのパラレルワールドを案内し,「ドニーが死ななかった場合に起こる悲劇」を見せれくれたのが,ウサギのフランクだったのではないか。
Cap015_2 それは,ドニーだけでなく,この28日間に知り合った恋人のグレッチェンにふりかかる悲劇であり,ウサギのフランクにもふりかかる悲劇だった。(フランクが誰かわかった時は驚いた。)それを知ったドニーは,今まさに飛行機のエンジンが時空を越えて落下しようとするときに,「帰ろう」とつぶやいて一気に時をさかのぼり,28日前の自分の部屋へと戻って行くのだ。(←でも,どうしてそんなことができたんだよ??)そう,自分にさえ出会わなければ,グレッチェンも,フランクも悲劇に会うことはなかったのだから・・・・・。
Cap045_3 無事に時間を巻き戻して,自室のベッドに戻れたときの,ドニーの心から幸せそうな笑顔が切ない。その顔には,これから訪れる死への恐怖は見られない。「世界の終わりには安心していよう」・・・未来を見届けたうえで,過去へ戻って死ぬことを選び取り,穏やかにそれを受け入れたドニー。グレッチェンの記憶の中から,彼がいなくなることも厭わずに。(時間を巻き戻す前に,車の中で,まるで別れを告げるみたいに,グレッチェンの顔をじっと見つめていたドニーの目!)

そう思うと,これは「バタフライ・エフェクト」や「ジャケット」と同じような哀しいハッピーエンドの物語で,それゆえにラストは,やるせなさとともに,一種の清清しい余韻を感じた。
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ジェイクは,この当時は21歳?17歳の高校生の役がよく似合っていて,
若い,若い!白いカッターシャツがハマっていた。お顔の方も,「ただいま製作途中です。あと2,3年で仕上がります」という,今よりは詰めの甘い顔をしている。難解な物語の難しい役なのに,この作品で彼が見せた,繊細で大胆な演技は強く心に残る。時に愛らしく,時には狂気をはらんだ哀しげなその瞳の表情。ガラスのように脆く,複雑な感性を持つ思春期のドニーは,ジェイクだからこそ,演じることができたのだと思う。

そして,この作品のわずか4年後にブロークバック・マウンテンなんだよね。やはり,この人の俳優としての才能は,ただものじゃないものを感じる。
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今はこんな大人です・・・・。

2008年1月 2日 (水)

プレステージ

070327_prestige_sub3 DVDで鑑賞。プリーストの人気小説「奇術師」の映画化で,監督は「メメント」のクリストファー・ノーラン。19世紀末の英国で繰り広げられる,二人の天才マジシャンの,イリュージョン対決の物語。

互いにしのぎを削る,二人のマジシャンに扮したのは,ヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベイル。マジックの助手をつとめる美しい女性にスカーレット・ヨハンソン。マジックの仕掛けを作る男にマイケル・ケイン
・・・・これは豪華だ。
Cap001 ロバート・アンジャー(ジャックマン)と,アルフレッド・ボーデン(ベイル)は,若い頃は,同じマジシャンの下で助手をつとめ,互いを認め合う仲だったが,ある日,ボーデンが結んだ縄目が原因で,アンジャーの妻のジュリアが水槽の中で溺死するという事故が起こる。それ以来二人は袂を分かち,アンジャーはボーデンに対し,復讐心やライバル意識を募らせてゆく。一方,ボーデンの方も,つきまとうアンジャーに憎しみを抱き,二人の間の確執は,それぞれ名が売れるようになってからも,ますます強くなっていき,・・・・

それにしても,ヴィクトリア時代の英国では,マジックショーがこんなにも人気を博していたのか。今までマジックにさほど興味はなかったが,この作品では,この時代のマジックのタネや仕掛けがいくつか劇中で紹介されていて,面白かった。たとえば,サクラの存在とか,落とし穴や替え玉とか。(小鳥を叩き潰すアレはちょっとひどい!さすがに今はやってないでしょうね。)

アンジャーは,マジックのタネは,仕掛け人カッター(ケイン)の作るマシンに頼っていたが,優雅な身ごなしと,巧みな口調で観客を引きつけるショーマンの素養がある。一方,素朴で天才肌のボーデンの方は,ショーの見せ方は下手だが,アンジャーがどう考えても見破れない,とっておきのタネを持っていた。


Cap009_2
ジャックマンとベイルの,脂の乗ったイケメン対決(←おお,ウルヴァリンVSバットマンだ~)は見ごたえたっぷりだ。ジャックマンて,なんて見事な立ち方,歩き方をするのだろう。鍛えられた体は,上半身が綺麗な逆三角形で,足が長くて,舞台用の衣装のよく似合うこと。また,ベイルの暗い情熱を秘めた目力もなかなかのものだ。私はこのベイルさん,若い頃から結構好きで,(若草物語のローリー役の頃から)年を重ねるにつれて,ますますいい俳優さんになってきているなあ,と思っている。

やがて二人は,「人間瞬間移動」という究極の技を巡って,闘うことになるのだが,とにかくその執念のすさまじさ。互いのショーに出かけていって,妨害行動をしたり,タネの探りあいをしたり・・・。片方が行動を起こせば,すかさず片方も仕返しをする。まるでイタチごっこだ。マジックの道を究めることよりも「あいつに勝ちたい」という一念にとりつかれているとしか思えない。特にアンジャーの方は復讐心が混じっているからなおさら。

さて,この勝負,
どちらに軍配が上がるのか・・・・。

と,最後まで目が離せないのだが,時間軸をわざとバラバラにしてあるので,観ている方は,けっこう混乱する。監督は,この映画自体をひとつの大きなマジックとして観客に提供する心づもりで作ったらしい。つまり,騙しのうまい監督が,騙しのプロのマジシャンを主役に据え,観客を騙す気満々で作った映画だ。

Cap019_3
ラストはマジックの仕上げプレステージ(偉業)が,何と二つも観客にどーんと提示される。消えたものが再びもとどおり現れて,拍手喝采を浴びるあの最終段階。そのタネ明かしが二つ。(つまりアンジャーのタネ明かしと,ボーデンのタネ明かし。)観客はここで,二重にあっと驚く仕掛けだ。・・・・で,この明かされたトリックを,アリと見るか,しらけるかでこの物語の評価は変わると思う。

ボーデンのトリックは,「ああ,そうだったのか!」と納得できるものだった。そして,事実が明かされた後で物語を振り返ってみると,いちいち合点がいくのだ。確かに,天才マジシャンの「人生を犠牲にしても,マジシャンとしての目的を達成する」という生き方は,衝撃的ではあるけれど。

しかし,アンジャーのトリックは・・・賛否両論かも。これはもはやSFの世界,もっと言えば「デジャヴ」などで使われたドラ○もんネタみたいなもんだから。それでも面白かったから,私的にはアリ,ということで。原作者のプリーストがこれで世界幻想文学大賞を受賞したという予備知識があれば,はじめからSFの要素は,予想できたかも知れない。
Cap025 二人のマジシャンの仕掛けたトリックを知ったうえで,再度DVDを見直してみたくなる作品。実際にそうしてみたら,初見時より,ずっと面白かった。

スカーレットは,美しく,豪華な衣装もよく似合っていたけど,印象の薄い役で,勿体無かった。別に彼女でなくてもいい役だ。彼女が演じたオリビアより,事故で溺死したアンジャーの妻ジュリアとか,自殺したボーデンの妻サラの方がずっと存在感のある役柄だった。彼女の起用は・・・・客寄せのため?

2008年1月 1日 (火)

新年のご挨拶

あけまして おめでとうございます

昨年の8月にこのブログを立ち上げてから,たくさんの方と,映画について楽しく語り合うことができて,毎日がとても充実したものとなりました。皆さまから,いろいろコメントをいただいたり,皆さまのお宅にお邪魔して自分の知らなかった情報を得たり,自分とはまた違う見方に触れることができたり・・・。映画に関する視野が皆さまのおかげで広がりました。

2008年も,自分の好きな映画について,自分のペースで語っていきたいです。皆さまとのおしゃべりも,とても楽しみです。どうぞこれからもお気軽にお立ち寄りくださいませ。本年もお互いに素敵な映画との出会いがありますように・・・・・。
今年も よろしくね!
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