ボルベール〈帰郷〉
遅ればせながら,やっとDVDで観れました!・・・だって地元の劇場で上映されなかったんだもん・・・ぐすん。「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く,ペドロ・アルモドバル監督の女性讃歌3部作の最終章にして,最高傑作!・・・・だそうだ。(「オール〜」は観たけど,「トーク〜」は未見)「女性讃歌」!なーんていい響き!これはすべての女性必見かも。
なんたって,主演のペネロペ・クルスが美しいし,カッコいい!それまでセクシーなミューズ役の印象があったけど,この物語のペネロペからは,セクシーさだけではなく,内面に熱い血をたぎらせた肝っ玉母ちゃんのような逞しさを感じた。時折見せる,彼女の射るようなまなざしと,くっきりと引かれたアイライン。
彼女が演じたのは,激しい気性と,豊かな感情と,強い意志を持った,スペインの大地のような女性ライムンダ。この映画のペネロペは,ハリウッドで見せる輝きとはまた違う,強烈な魅力を放っていた。 ある日,ライムンダの娘のパウラは,養父に襲われて,彼を思わず刺し殺してしまう。動揺しつつも,周囲の人には「夫は出て行った」と偽り,死体を隠匿,始末するライムンダ。それは,娘をかばう母親の本能のせいだけではなく,彼女自身の辛い体験をも思い出して取った行動。
そんな彼女の前に,数年前の火事で,父親とともに焼け死んだはずの母が姿を現す。それまで母は,故郷の叔母の家にこっそり滞在して叔母を看取った後,姉のソーレのもとにいたのだった。死んだと偽って身を隠した母の秘密とは?そして火事の事件の真相は?長い間心を通わすことのなかった母と娘が,再会の涙を流すとき,衝撃的な事実もまた明かされる・・・・。
この映画のキャッチコピーは
女たち,流した血から,花咲かすだ。 まるで極妻のようなオソロシゲナ台詞だが,花を咲かせることができる血は,やはり流される必要があったのだと,納得できる物語だ。ライムンダ,パウラ,ソーレ,そしてイレネ。苛酷な運命にひるむことなく立ち向かい,後ろを振り返らない彼女たちの生き様はすがすがしく,応援したくなる。と言うか,この物語に出てくる男性が存在感がなくて,同情できないせいもあるけど。
ライムンダの背負う秘密や試練(特に娘のパウラの出生に関すること)って,考えてみれば凄く重い。母イレネが,隣人のアグスティナの母にした事も、また。それでも彼女たちは,互いに支えあい,償えることは償いながら,現状を受け入れて,強く生きていくのだろう。
女の持つ生命力,包容力,そして耐え抜く力と,再生し,順応しようとする本能。それはまるで大地のような,太陽のような,力強さとあたたかさ。女性って凄い・・・・やはり「生む性」の持つ底力かなぁ。女性であることが誇らしくなるような,こんな作品を撮ったのが男性の監督であるということが,なんだか嬉しい。
それにしても,スペイン風の挨拶で交わされるキスって,なんであんなに大きな音をたてるの? チュッ!チュッ!チュッ!って。
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