ゾディアック再見(ジェイク編)
ジェイク・ジレンホールが好き。
フィンチャー監督のダークな世界観が好き。
連続殺人犯の物語が好き。・・・
こんな私にとって,ゾディアックは,まことに三拍子揃ったツボにはまる作品で,もちろんこれは万難を排して劇場で観たが,DVDになったら,ぜひ再見してもう一度じっくり観たいと思っていた。劇場で観た後の感想は,本ブログで簡単に触れているので(記事はこちら)今回はジェイクに焦点を絞って感想を書いてみた。
いやー しかし,DVDで観ても,3時間は長いよ~。残念ながら,時間と体調に余裕のあるときしか 鑑賞できない作品かも。しかし,今回は,劇場ではあまり気がつかなかったジェイクの細かい演技まで,ゆっくりと堪能できた気がする。なんせ,劇場では,人間関係を整理したりするのに結構忙しくて,ジェイクの顔をゆっくり味わう暇がなかったから。
この物語の主人公は,謎解きでも,犯人のゾディアックもない。むしろ,犯人を追う男たちに取り憑いて,彼らの人生を狂わせていく狂気が主役であると思う。その中でも一番長く執拗に,ゾディアックを追跡することをやめなかったのが,ジェイクが演じた漫画家のロバート・グレイスミスだった。・・・つまり彼は,ゾディアックおたくなのであるが,ゾディアックに取り憑かれる前から,生まれつき,おたく人間だった。このおたく人間のキャラを,ジェイクが 実に上手に演じていることに 今回気づいた。 登場するシーンからして すでに「ちょっと変わってる?」オーラが,そこはかとなく漂う,ジェイクことグレイスミス離婚歴のあるシングルファーザーの彼は,幼い息子を男手一つで育てている優しい父親の顔も見せてはくれるが,やや暗めのその視線は,いつも思い詰めたように一点を見つめることが多く,何かの考えに取り憑かれたら,いきなり目的に向かって走り出したり,相棒の敏腕記者のダウニー・Jrに「至近距離まで近づくんじゃない!」と怒られたりする 変わり者。
・・・きっと,好きなことに対して全身全霊でのめり込み,周囲が全く見えなくなるタイプなのだろう。「こんなことがお前の何の得になる?」と聞くポールに「得って?」と不思議そうに聞き返すグレイスミスの価値観は,常人とはかけ離れていて,それだからこそ彼一人だけが,社会から葬り去られることも,諦めて挫折することもなく,長い年月を(そしておそらく今も)ゾディアックを追い続けることができたのだろう。(彼も,妻に三行半を突きつけられるという挫折も一応はあるが) かわゆいジェイクが,あのうるうる目で演じているからまだ許せるが,グレイスミスのような雰囲気や性格の男性って,恋人や夫としては,きっと願い下げだろうなあ。初デートの時に,他のことで気もそぞろのオトコなんて,私なら絶対つきあわんぞ。(きっぱり)
ダウニー・Jrこと,エイブリー記者との凹凸コンビもよかったね。正反対のタイプなんだけど,事件を追う執念と熱意は,互いに通い合うものがあったんだね。グレイスミスの仇名のことで,とぼけた会話をするくだりや,グレイスミスお勧めのブルーのお酒に,エイブリーもハマるバーのシーンは,押さえたユーモアが感じられて,とても微笑ましい。(ジェイクはやはり男性と並んでいてほしい・・・)
なんか全編ジェイクが出ずっぱりで,ジェイクの思い詰めた瞳が,これでもかと言うくらい堪能できたのは,もちろん嬉しかったけど,たとえジェイクが出てなくても,私の中では評価の高い,重厚で見応えのある好みの作品だった。
人間の心の闇は,感染し,増幅するものなのかも知れない。ジェイクの瞳が,年月がたつに従って,だんだんと狂気を帯びてゆくのが怖い。
結局彼はこの事件に人生を捧げてしまったね。それを満足と感じていたかどうかは,彼にしかわからないことだろうけれど。好きな道を究めたと言えなくもない。けれど,人間の心に潜む闇を,長い間追い求めたことによる弊害は必ずあったはず。・・・彼にしかできなかったことだし,彼だからこそできたことなんだけど。
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» ゾディアック(12) 映像特典編 [ゆきちママの素直なキモチ]
さてさて、まだ本編を見る暇はなかったので、とりあえず映像特典の感想を。
27分、最近の映像特典てけっこう豪華だったりするから、それに比べると物足りないかなーと思ったんですが。
実際見てみると、なかなか見ごたえ... [続きを読む]
こんばんわ
まず、ななさんの冒頭のジェイクが好き、フィンチャーが好き、連続殺人犯の物語が好き!というのは僕と同じでびっくり!でした、特に3番目はなかなか言えないですよね、でも僕も好きなんです、ま、今回はジェイク特集!みたいなんで、写真がジェイクだらけで、しかも全部いい写真で素晴らしいですね、先日久しぶりに「ジャーヘッド」をwowowでとぎれとぎれで見てましたが、あちらもやはりいい作品だし「ゾディアック」もいい監督に恵まれていい作品でした、ジェイク地味な作品が続きますが(でも良作)ぜひコメディか娯楽作品にも出て欲しいなと思います、もっと名前を売って欲しい!(特に日本では)
地味な良作ばかりというのは、きっとオスカーで
も密かに狙ってるのかな?まあオスカー獲ることが有名になる一番早い手ですが・・・
とにかく早く「レンディション」が見たい!そして「ブラザー」も・・・何か「ゾディアック」のコメントじゃなくすみません、ちなみに僕はDVD買ってません、ジェイクファンを名乗れないですね、恥ずかしい!ボーナスで買おうかな?(遅!)と思ってます。
投稿: イニスJr | 2007年11月 3日 (土) 21時34分
DVDで再鑑賞ですな?
本編を劇場で観た時は、何が彼をそうさせる?と面妖な気もしたのだけど、彼は生まれつきそういう人、偏執狂的なオタッキー気質の人でパズル好きなんですのよねん。FLIXの記事で、何度も違うシチュエーションで紙を拾い上げるシーンがあって苦労した、と語ってましたわ。ジェイキーもグレイスミスがなぜそこまでするのか分らないので監督に聞いたら、「それが彼だからさ」という答えだったと。理由なんかないのね。そういう人なのよねん。ほんと、こんな人はた迷惑だけど、かわゆいジェイキーがやっているから観ていて、「一生懸命でカワイイ」などとたまに思ってしまうわけですわね。ふほほ。
投稿: kiki | 2007年11月 3日 (土) 21時51分
イニスJrさん おお~同類でございますか。
まあ私も3番目の連続殺人犯(の映画)が好きというのは,知り合いには進んで言おうとは思いませんねー。ブログだから言えることかも。
・・・ついでに言うと復讐ものも好きです。性格歪んでますかね?幼いときのトラウマ?(ないない,そんなもの。)
連続殺人犯でも,実際の迷宮入りの事件を映画化したもの(「ゾディアック」「ブラックダリア」「殺人の追憶」「フロム・ヘル」など)は特に好きですね。一流の監督が力量のある俳優を使って製作したものに限りますが。
ジェイクは,監督選びがうまいですね。本当に実力のある,そして個性のある監督を選んで,それも毎回違う監督の作品に出てます。俳優として,常に成長,飛躍したいという志の高さを感じますね。いつかオスカーを獲ってくれることでしょう。
この作品のDVDね,私は待ちきれなくて買っちゃったけど,特典がショボイの。ずっと後に絶対もっと豪華な特典付きのが出るはずだから,(ファンに2度買いさせようという商法)待った方がいいかもという意見をサイトで読んだことがあります。だから今はレンタルでもいいかもですよ。
投稿: なな | 2007年11月 3日 (土) 22時25分
ななさん、こんばんは!
ジェイクってオタクっぽいキャラが似合うよね~(決して悪い意味ではないです・汗)
あの瞳にそんな雰囲気があるのかな。
彼の思い詰めたような瞳は可愛いなぁ~と思います。
タイトルは忘れちゃったけど、以前ジェニファー・アニストンと出てた映画のジェイクもとっても良かったです。ななさんは観られましたか?
年上の女性に恋焦がれるちょっと変わった青年を好演していました。
ジェイクが演じたグレイスミスは、実際本を出しましたよね。彼のように形になるものを残せたオタクはいい方ですよ。ダウニー.jrなんてほら・・・ただのアル中で終りですから!!(汗)
映画を観て、これは本当は初動捜査を誤っただけで単純な事件だったんじゃーないかな・・・なんて思いました。劇場型殺人犯って、ホントは考えが甘いところがあると思うし・・・
今でも犯人は元気で暮らしているかもしれませんね。
投稿: 由香 | 2007年11月 3日 (土) 22時30分
kikiさーん,こんばんは。
ほほう,あんなにうまく演じたジェイク自身も,グレイスミスのあまりのオタッキーぶりが理解できなかったのですか?それは面白いエピソードですわね。
「それが彼だからさ」って,監督もわかったようなわからないような答えを・・・・。ジェイキーはきっとオタク気質ではなさそうだけど,あの大きな目が一途さを表現するのに効果的なのか,オタクっぽい役って,これまでも結構あるんですよね。
「ドニー・ダーコ」も,オタッキーではないけど,なんかそんな雰囲気もあるし,KiKiさんのあまりお好きでない「グッド・ガール」のジェイクもアブナイ感じでした。ジェイクのあのうるうる目が,オタクを演じる時はだんだん底光りしてくるんですよ。
そうそう,私,「初デートで他のことに気もそぞろなグレイスミスみたいなオトコとは絶対つきあわん」と書きましたが,相手がジェイクなら,オタクだろうが,殺人犯だろうがつきあうかもしれませんです。
投稿: なな | 2007年11月 3日 (土) 22時36分
由香さん いらっしゃいませー。TBもありがとうございます。
由香さんのおっしゃるジェイクの映画って,↑のコメントに書いた「グッド・ガール」でしょ?観ましたとも!ブラックユーモアの効いた,とても奇妙な味わいの物語で,なぜか2度見なおしたくなる変な魅力がありましたっけ。
ジェイクは,半分ラリっているような目をして,けっこうどうしようもない,オタクと引きこもりとストーカーが混じったような役でした。彼が演じたからこそ,哀れを誘いましたが,役者によってはただのキモイ青年になっていたでしょうね。
グレイスミスは,確かに成功したオタクといえるかもしれません。家庭人としては失敗の人生でしたけど。
ゾディアックも,警察やマスコミを振り回しましたが,実際は数人しか殺してないような感じだったし,それまであまり例がなかった「劇場型」殺人というものに,世間は踊らされてしまったのかもしれませんね。
投稿: なな | 2007年11月 3日 (土) 22時53分
こんにちは、不躾にもTBだけ先に送りつけてすいません。上のこの幼稚園のお迎えの時間になってしまって...(生活くさい話ですね)。
拙ブログの方にTB&コメントありがとうございました。
お返事が遅れた上に、中途半端になっちゃって、申し訳ないです。
ななさんにとってこの映画は、三拍子揃った好みの作品だそうで、ジェイクのグレイスミスは、BBMのジャックの次に好きなキャラだとか。
そうですね、キャラクターとして考えると、私もジャックの次かなぁ。可愛いですからね、このグレイスミス(*´艸`) エイブリーと仲の良過ぎる様子は、とてもツボ!でした。
映画としては、怖い系がダメな私は、ジェイクが演じてなければ絶対スルーの映画で、1回目は目のふさぎどころが分からないので、本当に泣きそうになりました。
湖の殺人のところとか、本当に怖かったし、夜のドライブの殺人未遂も、帰りの自分の車にも起こったらどうしよう(T^T)って感じでしたから。
それでいて、この映画はなぜかとても魅力があって、監督以下みんなのものすごい熱意によって作られているせいか、とても見ごたえがありますね。
1シーン何十テイクも撮ったんですよね。
ななさんの言うように、観れば観るほど味わいが深まる映画ですね。
投稿: ゆきちママ | 2007年11月 5日 (月) 16時45分
ゆきちさん,TB,コメントありがとうございます。
お子さんが小さいと,まだまだ時間を取られて大変ですね。毎日が戦争だと思います。
・・・そう,この作品のジェイク,まだ可愛いんですよ。もうそろそろ年齢的にも可愛くなくなる頃なので(おまけに次回作は熊ヒゲ?)可愛いジェイクは貴重です。この頃のまま冷凍保存しておきたいくらい。(←なんか猟奇的?)
ゆきちさんは怖い系駄目ですか~?それは残念!私も「セブン」を初めて観たときは(それも劇場で)「二度と観るもんか」と思うくらいビビったのですが,いろいろ映画を観るうちに,残酷シーンも慣れました。今じゃ「ハンニバル」の脳みそをカットするシーンもへっちゃらです。
連続殺人犯の映画って,完成度が高い作品が多いので好きです。このゾディアックは,怖いシーンは少ない方ですが,心理的に怖がらせるのが巧いですね,さすがフィンチャーさん。
湖のシーンは,一番インパクトがありました。被害者の恐怖がこちらにも感染してくるような展開でしたね。あげくの果てにナイフでグサグサですもんね。
そうそう,赤ちゃん連れの女性のシーンもぞっとしました。運転中は知らない人には十分注意しようと思いましたね。
日本ではあまりウケがよくなかったかも知れませんが,傑作だと思いますよ。一度観ただけではよさがわからないかも知れませんね。BBMほどではないけど,私もこれはきっと何度も見なおすと思います。
投稿: なな | 2007年11月 5日 (月) 19時18分
そうそう、徐々に彼の瞳に狂気が宿って
きましたよね~。ジェイク、上手いなぁと思いました。
本人はオタクじゃないんでしょが、似合いますし、上手い!
こうやってななさんの詳しい記事を読ませていただいてると、あ~、そうそう、そうだったなぁ、といろいろ思い出すことがあり、2度、いや3度とこの映画を楽しんでる気がします♪^^
投稿: メル | 2008年2月11日 (月) 08時23分
こんにちは♪
TB&コメントありがとうございました。
でも、申し訳ありません!
間違ってTBを消してしまいました。
ごめんなさい!!!
出来ましたら、もう一度TBお願いします。
こんなすっとぼけですが、
リンクの件、こちらからもぜひお願いいたします。
ななさんのジェイク大好き!!というのが伝わって来ますね。
この映画は、事件も異様だけど、追う側の異様さを捉えているのが
興味深かったです。
投稿: ひらで~ | 2008年2月11日 (月) 16時10分
メルさん♪
こちらにもコメントありがとうございます。
ジェイクはほんとに,オタクの役,うまいです。
>本人はオタクじゃないんでしょが・・・
たぶんね。でも役作りとか完璧主義らしいし
のめりこむタイプかも・・・。あの目が据わる表情が,オタクっぽいですね。
この映画,何度でも観たいけど,いつも途中でギブアップすることが多いです。
なんせ,長いから・・・(;^^)
投稿: なな | 2008年2月11日 (月) 20時21分
ひらで~さん
TB再送しましたが,届いていますか?
時々不調になるのですよ~。
リンク,快諾してくださって,ありがとうです。
今後もよろしくお願いします。m(_ _)m
>この映画は、事件も異様だけど、追う側の異様さを捉えているのが興味深かったです。
全くですね~。追う側がだんだん取りつかれて尋常じゃなくなってゆくのが
とても丁寧に描かれていて,異色のサスペンスとなっていました。
投稿: なな | 2008年2月11日 (月) 20時34分