アポカリプト
いや~凄かった。
2時間,食い入るように観てしまった。
途中,時々手で顔を隠して,指の隙間からこわごわ覗き見するシーンもあったし,「なにもそこまで・・・」という場面もあったけど,中盤に入ると,密林で繰り広げられる地獄の障害物レースに釘付け。
物語の舞台は,マヤ文明崩壊前夜の中央アメリカ,ユカタン半島(←ってどこよ?)。森の狩猟民族のジャガー・パウ(ルディー・ヤングブラッド)は,一族と共に 愛する妻子と平和に暮らしていたが,そこへ襲撃してきたマヤ帝国の兵士たちによって,村は焼き討ちに会い,ジャガーたち住人は捕虜として都へと連れ去られる。儀式の生け贄として殺されかけたジャガーだが,脱出に成功し,深手を負いながらも,妻子の待つ故郷の村へと向かう・・・・。 冒頭から,マヤ時代の狩猟民族の 狩りや生活の様子や,彼らの外見,服装,話される言葉(マヤ語!)の持つ摩訶不思議な世界に引きこまれてしまった。男女とも半裸に近い衣装(男はふんどしみたいな)で,やたら顔のあちこちに穴をあけて(痛そう)装身具をつけ,体には入れ墨。どの人の顔も,精悍さと素朴さに満ち,肉体には躍動感あふれる美しさがある。
彼らがまだ平和に暮らしているときも,狩りで仕留めた獲物をかっさばいて,素手で臓器を取り出すなど,目を覆いたくなる場面があるが,村が襲撃されてからは,これでもか,これでもかというくらいに残酷描写の嵐,怒濤のノンストップ状態である。
スクリーンから直に血や汗が飛び散りそうな迫力満点の肉弾戦。生け贄シーンでえぐり出される心臓や,石段のはるか下まで投げ落とされる首。相手をなぶり殺して楽しむかのような,人間狩りのゲーム。本物のジャガーが人の顔を食らう・・・などというシーンまである。
残酷描写は割と平気な私だが,「この監督の残酷描写は怖い・・・」と思った。映像自体に,並々ならぬパワーがあるから,余計にそう感じる。マヤ文明の崩壊を描いているというから,社会的なメッセージの入った,ドキュメンタリータッチの作品かなあと思っていたら,とんでもない!ギブソンは,苛烈なサバイバルアクションと,残酷描写が描きたかったのかと思われるような内容だった。(パッションも残酷だったけど,まだ宗教的なメッセージがあった。) 残酷描写も,ここまで道を究めてよいものか・・・とも思うけれど,メル・ギブソン監督の半端じゃない気合いと情熱には,有無を言わさず観る者を圧倒する力がある。
「撮りたい題材を,撮りたい方法で徹底的に撮るんだ!それが何か?」と,堂々と胸を張るギブソン監督の顔が目に見えるようだ。(いやー,別に異議はございません。多少個人的な趣味に走ろうとも,ほとんど監督の自腹で作ったんだし,) 主演のルディー・ヤングブラッドの 躍動感あふれる走りと,美しい瞳を駆使した 表情豊かな演技は素晴らしい。慣れ親しんだ森に逃げ込んでからは,狩りの技術を総動員して敵をやっつけるところは,ランボーみたいでシビれます。・・・・しかし,残酷描写が苦手なかたは絶対に観てはいけませんよ。
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映画館にて「アポカリプト」
マヤ文明後期の中央アメリカのジャングルを舞台にしたアクション・アドベンチャー。
おはなし:誇り高き狩猟民族の血を受け継ぐジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)は妻子や仲間と共に平和に暮らしていた。ところが、ある日、マヤ帝国の傭兵に襲撃され仲間とともに連れ去られてしまう。
全く個人的なことで申し訳ないのだけど、中学〜高校までは考古学者になりたいと思っていたし、特にマヤ文明とエジプト文明には感心が深かったので、この映画には期待が高まっていた。
その期待を裏切ることな... [続きを読む]
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ななさん上手い!(^▽^)V そう、あれはまさしく
「地獄の障害物レース」でした~!
さすがななさん、ピッタリの言葉に感激しました^^♪
おっしゃる通り、衣装も化粧も装身具も、魅力的で素敵でしたよね。
そう、それに肉体美も^^ 躍動感がありましたね~!
>メル・ギブソン監督の 半端じゃない気合いと情熱には,
有無を言わさず 観る者を圧倒する力がある。
ですね。
ほんと彼にはなんだか底知れない、ちょっと恐いくらいの
パワーがありますよね。
これからも自分の考えを、意志を、趣味を(?^^)
どんどん撮っていくんでしょうね。ある意味楽しみだわ(笑)
TBどうもありがとうございました~♪
投稿: メル | 2007年11月25日 (日) 07時55分
こんにちは。
メル!って作品、私はダメでしたー(^^;
よくぞDVDで最後までご覧になりましたね。
主人公のジャガーには何ににも屈しない王者の風格のような、知恵と勇気と生命力を感じました。
素晴らしい作品なのかも知れませんが・・・ハハハ(^^)
投稿: たいむ | 2007年11月25日 (日) 15時38分
こんばんは・・・・・
この映画はイマイチ苦手ですぅぅぅぅぅ~
理由は、ななさんご指摘の一語に尽きます。
『この監督の残酷描写は怖い・・・』ですぅぅぅぅぅ~
なにも、わざわざ、とことん、微に入り細に入り、グロさを、強調せんでも~~~って感じです。
それに私は『マヤ文明滅亡に関する愛とロマンと冒険』を勝手に観に行ったつもりだったので、途中で「なんじゃこりゃー?!」って思っちゃいました。
後半の森でのサバイバル劇はスリルがありましたが、その頃の私は最早残酷描写にあてられて虫の息でした(泣)
せっかくマヤを題材にしたんだから、もっと現代への警笛みたいなメッセージも織り込めただろうに・・・監督は、こういう映画が撮りたかったんですねぇ~
投稿: 由香 | 2007年11月25日 (日) 17時38分
こんばんは☆
コメントありがとう♪
これ、観入ってしまいました。
メル監督の作品は毎回注目、今回のも観ごたえありましたねー★
主演の人も良かった♪
投稿: mig | 2007年11月25日 (日) 18時52分
こんばんは~~
TB&コメントもありがとうございました~
これは凄い映画でしたね~
予備知識なく試写会で観たので~びっくり仰天、どうしょうかと思ったわ。(試写会だから~来ましたよみたいな方、途中退場~もいました)
こんなに残酷描写満載の作品、近年観たことあったかな?
大画面ではかなり辛かったです。
それでも最後まで観られたのは~やはり主人公の彼の力も、大きかったなぁ。
目力が凄い!って思ったし、肉体がまた美しい。
無駄のない締まった身体・・・
言葉で語らなくても伝わってくる色々な想い・・・
命がけの鬼ごっこ・・・観てるだけで疲労困憊。。。
いろんな意味で衝撃的でした。
投稿: マリー | 2007年11月25日 (日) 19時30分
メルさん こんばんは
ギブソン監督よ,どこへゆく?って初めて思いました。
ブレイブハートやパッションはまだついてゆけたのですが。
でも,無名の役者を使って,あれだけの作品を獲れる手腕は
確かにすごいし,監督としての才能もあると思いますね。
この作品,アメリカで興行成績,よかったみたいですし。
感動,というのとはちょっと違うと思うけど
個性的でパワーのある作品は好きですから
今後も彼の作品は楽しみではありまーす。
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 20時06分
たいむさん こんばんわ
たいむさんは,メルギブ作品,苦手ですか~。
確かについていけないとこもありますよね。彼の美学(?)には。
私も,これは,主人公が最後に勝ったからいいけど
もし,殺されたり妻子になんかあったら
怒ってDVDを破壊していたかも(笑)
主人公は,とてもオーラを放っていましたね。
新人とは思えない演技で天晴れ!でした。
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 20時12分
由香さん おお~,連続殺人とかは平気でも
これは駄目ですか?わかるような気がします。
ギブさんは,残酷シーンで,「痛み」そのものを観客が感じ取れるように描くのですね~。
相手を痛めつけて喜んでる人間の醜さもクローズアップしてるし。
どMですね。
>マヤ文明滅亡に関する愛とロマンと冒険・・・
私もそっちを期待していたんですが。
冒険だけはかろうじてありましたね。
ははは・・・ギブさん,マヤ文明はどうでもよかったんですよーきっと。
パッションも,もしかしたらイエス・キリストのことはどうでもよかったのかな~?
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 20時19分
migさん こんばんは
migさんは,ギブソン監督さん,お気にいりなんですね。
私も彼の手腕には毎回感嘆させられます。
完璧主義者でもありますね。全編マヤ語とか・・・。
演じた役者陣にも脱帽です。
ジャングルの追跡劇と死闘は,息をするのも忘れて見入ってしまいましたよ。
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 20時24分
マリーさん,こんばんは
そうですか,試写会で退場されたかたもいましたか。
>こんなに残酷描写満載の作品、近年観たことあったかな?
近年の作品ではパッションですね。(あ,これもギブさんだ)
あちらはショック死する人が出てます。こちらはさすがに出なかったのかな。
でも,こちらの方が,パッションより,残酷シーンがバラエティに富んでました。
え,まだやるの?そんなこと~って感じで
歯医者の診察台に縛り付けられて,麻酔なしで延々と治療されてる恐怖感がありましたね。
最後まで観れたのは,たしかにルディ君の力は大きいです。
力強く,カッコよかった。彼はいい俳優さんになりますね。
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 20時31分
こんばんわ。
私ね、思うんですよ。
メル・ギブソンって頭おかしいんじゃないか?って(爆笑)。
あの人、絶対に変態ですもん(苦笑)。
メルの映画って、私は基本的には好きなんですけれど、
彼の描写の仕方ってあまりにも生々しく極端で
いささかヒクときもありますよねえ(苦笑)。
この主人公の役者さん、目力が素晴らしかったですね。
マヤ時代の人っぽくて、とてもリアリティがありました。
別の作品で、次はどんな役を演じるのか楽しみだなあと
思います♪
投稿: 睦月 | 2007年11月25日 (日) 23時43分
睦月さん こんばんわ
おおー言い切りましたね!変態発言。
・・・私もそう思います。かなりアブナイですね,彼は。
あんまりこんなんばっかり撮るから,
スポンサーは眉をしかめるでしょうけど
でもいいもんね,自腹があるから。
こんなギブさんの作品,私も好きではありますが
だんだんついていけなくなるかなあ・・・,これ以上は。
主演の俳優さんを世に出した功績をたたえましょう!
投稿: なな | 2007年11月25日 (日) 23時51分
こんにちは♪TB&コメントありがとうございました!
そっか、これほとんど自腹で撮ったのね・・・納得。
ほとんど資金を映画会社に出してもらってたら、ここまでの映画は撮れなかったでしょうしねぇ。
スプラッター系の映画を撮らせたら、怖いものが出来そうなんだけどな(笑)
もうちょっと歴史っぽいものを想像していたので、ちょっと肩透かし食らっちゃいました。
主役のルディー君、良かったですね~!最初がこんな姿だったから、次に何かの映画に出ててもわからないかも・・・です。
ちょっとファッショナブルな格好してたら、確実に見逃すわ、私・・・!
でも次も楽しみな役者さんですよね!
投稿: こでまり | 2007年11月26日 (月) 09時24分
こでまりさん おはようございます。
そうそう,自腹に怖いものなし。
パッションも自腹らしいし,やりたい放題なんですが
ヒットするから,凄いです。ギブさん。
彼がスプラッター映画を撮ったら,
きっと粘着質のグロいものができそうですね。
ルディー君,ふつうのカッコしてたら,どんな感じなのかなぁ?
最新のファッションを纏わせてみたいです。
投稿: なな | 2007年11月26日 (月) 09時59分
イタタなスプラッター映画でしたが、流石に役者を立てるのは上手いですね。
ジャガー・パウの目力に圧倒されて、ぐんぐんと画面にひきつけられました。
まあ、評価に困る変な映画ですが、わりと好きです。
投稿: ノラネコ | 2007年11月27日 (火) 01時45分
こんにちは~♪
すごい作品でしたね☆あまりの残酷さに思っていたほどショックうけなかったなー><
でも劇場鑑賞はとっても疲れましたー。
自分も彼と一緒に走った気分になってしまったな。。笑
とっても見ごたえある作品でした♪
メルの次回作が楽しみです。
投稿: きらら | 2007年11月27日 (火) 06時09分
ノラネコさん おはようございます。
そうなんですよね,評価に困る作品です。
よくできた映画だから好きとは限らないし
興行成績がよいから傑作とも言えないし。
万人受けしないことだけは,確かでしょう。
ルディ君の目力には,野性的なパワーがありましたね。
私もそんなに嫌いな作品じゃないです。
投稿: なな | 2007年11月27日 (火) 07時16分
きららさん
あまりの残酷さに,かえって慣れちゃったかな?最後の方は。
あれを大画面で観たら,確かにぐったりしたでしょうね~。
(観なくてよかった・・・)
体のあちこちに要らない力を入れながら観たので
後で肩が凝りました。
歯も食いしばったから,歯も浮いたような・・・。
観客にもイタイ思いを味あわせてくれましたね。
ギブさんは,この路線をこれからもつっぱしるんでしょうかねぇ・・・。
投稿: なな | 2007年11月27日 (火) 07時19分
こんにちは♪
とてつもなくご訪問が遅れてスミマセン。
うーん、メルギブ圧倒的に不利な体勢ですね~(笑)
役者としての彼はかなり好きで、必然的に監督作品も欠かさず見ているのですが、やはり残酷描写ばかりがクローズアップされていて気の毒になることもあります。
もはやメルギブ=ドSという認定ですもんね。
メルギブ作品を見る時はある程度の覚悟が必要かと。
これ以上酷くならないことを願いつつ・・・・(祈)
投稿: ミチ | 2007年12月 2日 (日) 16時32分
ミチさん,いらっしゃいませ~。
ははは・・・メルギブさん,私も役者としては好きですよ。
なんだかんだ言っても,出演作はみんな観てるし。
「パトリオット」とか「サイン」とか好きでしたね~。
監督作も,ブレイブハートと,パッションまでは好きでしたが
これになると,好きとはまた違った感想ですね。
「凄い!」というのかな?後半だけまた観たいかなぁ。
どちらにしても,メルさんは,この作品で,次回の監督作(今度は何かな~~)の客層を狭めたとは思います。残酷描写が苦手な人からは避けられるかな。私は,もちろん次回も観ますよ~。
投稿: なな | 2007年12月 2日 (日) 20時03分