ブラック・ブック
ヨーロッパ映画と戦争物,加えてサスペンスが大好きなので,DVDになってからだが,とても期待して観た一作。ナチス・ドイツを扱っているので,重い社会派の作品を予想したがこれは思ったよりも軽くあっさり味で,テンポの速いエンタメ色の強い,上質のサスペンスに仕上がっていた。
食後にずっしりと胃にたまる,味付けの濃いお料理を期待して注文したら,色どり鮮やかで 軽やかな味付けのデザートがめまぐるしく出てきて,それはそれで別の意味でそこそこ満足できた・・・・みたいな感じ。
物語の舞台は,ナチス・ドイツ占領下のオランダ。主要登場人物は,ユダヤ人であるヒロインのエリスとナチス諜報部のムンツェと,レジスタンスのリーダーのハンス。ヨーロッパの俳優さんは,お顔をあまり存じ上げないのでハリウッドのよく知ってる俳優さんの誰々に似てる・・・という覚え方をしてしまう
で,エリスを演じたカリス・ファン・ハウテン。私には,モニカ・ベルッチから豊満さを取って,ちょい地味にしたように見えた。
ムンツェを演じたのは、あの「善き人のためのソナタ」(記事はこちら)でドライマンを演じて日本でも知名度が上がった,セバスチャン・コッホ。この人はバンデラスとセガールを足して2で割って,そこからワイルドさを差し引いたような感じ。「善き人〜」 でもそうだったが,根っからの善人面なので,ナチスの上層部の役なのに,一番まっとうな人間にみえてしまった。
レジスタンスのリーダーを演じたのはトム・ホフマン。この人は,ラッセル・クロウに面差しが似て,苦み走ったいい男。そしてめちゃくちゃ強い。なぜどんな時もあんなに鮮やかに相手を倒せるのか?と,つっこみながら観たが,ラスト近くになって,ほおお〜と驚かされた。
ストーリーは、家族をナチに皆殺しにされたユダヤ女性のラヘルが、レジスタンス運動に加わり、エリスと名を変えて,ナチの将校ムンツェに接近し、諜報部に潜入するというもの。これ以上の説明はネタばらしになるので言えない。第一、急展開のストーリーを、自分の中でも,細かいところまで整理できてないのだ。
とにかく話の展開の速いこと,はやいこと。
愛の芽生えも,裏切りの発覚も,主人公たちが捕まるのも,助け出されるのも,回り灯籠のように くるくるとめまぐるしく二転三転しながら進んでいくので,退屈する暇もないが,感情移入する余裕もない。主役以外の脇役の俳優さんたちは,名前を知らないこともあって,見分けがつかない(泣)
シンドラーのリストや戦場のピアニストのように、ホロコーストの非道さを,世に知らしめようというような,重いテーマで作られたものではない。
ユダヤ女性のエリスも、宿敵であるナチの将校を本気で愛してしまうし、レジスタンスの側の人間も実は…なんてことになるし、裏切りに次ぐ裏切り、偽りに次ぐ偽りを見せられて、「おお、お前もか!」「本当の黒幕はいったい…?」などと心の中で叫ぶことしきり。
そして終盤、少々飽きてきたころにまた新たな急展開があったりして、最後まで目が離せなかった。それにしてもヒロインのエリスは,素人なのに訓練を受けた女スパイなみに,肝っ玉が座っていて、同性から見ても,胸がすくような格好よさだった。
うーん、深みがあるとは言えないけど、そこそこ楽しめる、見て損はない作品でした、私にとっては。
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映画館にて「ブラックブック」
ポール・ヴァーホーヴェン監督が故国オランダで撮ったサスペンスドラマ。
1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、オランダへ逃げようとするが、何者かの裏切りによって両親や弟をナチスに殺されてしまう。復讐のために名前をエリスと変えた彼女は、レジスタンスのスパイとしてドイツ将校ムンツェに美ぼうと美声を武器に近づく。
『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』のような作品かと想像していたら全く違うテイストの... [続きを読む]
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ZWARTBOEK
1944年9月。ナチス・ドイツ占領下のオランダで、隠遁生活を送るユダヤ人女性
ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)。家族を殺され一人生き延びたラヘルは、髪の色
と名前を変え、エリス・デ・フリー... [続きを読む]
ななさん。こんばんは。
これ、劇場で観ようかどうしようか、ちょこっと迷ったんだけど「ま、いっか」になってしまいましたり。そしてDVDになってもまだ観てないんだけど、もう少し待とうかしらん。でも、そうか。重くないのですね。エンターティメントね。感情移入する暇もなく次から次に出てくるのかぁ。やはり、ふと気が向いた時が観るべき時なのかもですわね。これは。
投稿: kiki | 2007年10月 4日 (木) 21時48分
トラ・コメどうもです。
戦争モノというより、裏切り者は誰???的なサスペンスって感じでしたね。
それにしても、戦下を行きぬく為にカラダを張る女性は、根性が座ってましたね。
投稿: ひらりん | 2007年10月 4日 (木) 23時13分
kikiさんはまだご覧になっていないのですね。
そーですねー。エンタメ作品としてはよかったですから,そういう方向を期待して観る分にはいいと思いますよ。
「重い」内容を期待される場合は「??」となりますね。
私はヒロインのエリスが,ムンツェの死を知って
「哀しみはいつまで続くの」と泣くシーンで,
「・・・そんなに愛してるようには見えんかったぞ」と
つい突っ込んでしまいました。
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 00時30分
ひらりんさん,こちらこそTBとコメントどうもです。
そうそう,「裏切り者は誰?」って,それも数が多すぎて
アタマの中がごちゃごちゃになってしまいました。
でも,そのテーマだからこそ,最後まで勢いで見れましたね。
>戦下を行きぬく為にカラダを張る女性は、根性が座ってましたね。
そうです,そうです。でも,いくら復讐心に燃えたからって,
誰でもできることじゃありません。やはり,ヒロインのような容姿でないと・・・。
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 00時35分
ななさん、こんにちは^^
私もこの映画、つい最近見たばかりなのです。
感想は、ここんところ時間が無くて、まだ途中までしか書けてないのですが、近く書いたら、TBさせて下さいね☆
>主役以外の脇役の俳優さんたちは,名前を知らないこともあって 見分けがつかない(泣)
そうそう、そうなんですよー!ちょっと大変でした。
この映画の感想は、一言で言うと、裏切り者だらけで驚いた映画だったかなー
投稿: latifa | 2007年10月 5日 (金) 08時34分
こんにちは。いつもTBとコメントありがとうございます。
わたしも最初、重い内容の社会派作品だと思っていた反面、
それを期待していたわけではないので、
あまりの展開の速さに、これは目的が違うな、と、とっとと仕切り直し。
重たいメッセージを含む娯楽作品として、そういう意味では充分楽しんで来ました。
わたしは、ヒロインと共にムンツェを愛した女になって(笑)
(セバスチャン・コッホに惚れちゃっただけ?)
途中からは悲しくて切なくてたまりませんでしたよ。
たくさんのことが盛り込まれた、よくできたエンターティメント作品だったと思います。
投稿: 悠雅 | 2007年10月 5日 (金) 09時06分
latifaさん こんにちわ♪
そうですか、最近御覧になったのですか。私と同じですねー。
ほんとに裏切り者が多かったですね。
あんな時代だと生き残るためには仕方ないのかな?
でも、時代の混乱を利用して金儲けするのは許せませんね。
戦時下は人を信用するもんじゃありません。
もしかして、これがテーマか?(冗談)
latifaさんの記事、楽しみにしてますね!
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 10時26分
悠雅さん こんにちわ
そうですか、悠雅さんはヒロインに感情移入できましたか。
私はストーリー展開の理解にエネルギーを取られすぎたので、ちょい無理でした。
まだまだ修業が足りませんね(笑)
セバスチャン・コッホ、魅力的でしたね。
私もファンになりそうです
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 10時33分
ななさん、こんにちは~
TB&コメント、ありがとうございました!
実は私、これは鑑賞予定に入って無かったんですけどね(笑)
友達が戦争モノじゃないよ~サスペンスだよ~チョコレートが…
と、お薦めしてくれたので、意欲満々で観にいきました。
面白かったですわあ!!
ラストまで“あっ”でした…
こんなに伏線がイッパイで、綺麗に解決するのって大好きです♪
セバスチャン・コッホとカリス・ファン・ハウテンは恋人同士なんですよね…確か。
投稿: オリーブリー | 2007年10月 5日 (金) 13時18分
オリーブリーさん いらっしゃいませ。
チョコレートもらえるなら私も行きたかったりして(笑)
結局きれいに勧善懲悪になって終結しましたね。
ヒロインの悲しい記憶は残っても、カタルシスは感じました。
お話はうまく運びすぎのようにも感じましたが,
実話ベースなんですよね。驚きです。
ほぉー、あのお二人は私生活でも恋人になったのですか?お似合いですね。
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 14時17分
こんばんは♪
TBありがとうございました。
こういう時代背景の映画は好みです。
ナチスが絡んでくると特に(笑)
映画のテイストとしてはもうちょっと重厚なものが好みですが、なんといってもバーホーベン監督ですからね~。
どうしてもエンタメ性の強いものになってしまうのは仕方なかったかもしれません。
いつも高潔でいたいと思っていても、そうは言ってはいられなくなるのが戦時下なのかもしれません。
自分がどのような態度に出るかも定かではないというか・・・。
投稿: ミチ | 2007年10月 5日 (金) 21時16分
ミチさん こちらこそTBとコメントをありがとうございます。
バーホーヴェン監督・・・。そうでした。彼にしては緻密な作品なのかもですね。
戦時下に,自分がどのようなt立場を保つことができるかは,
その人の人間性がためされるので,できれば避けたいシチュエーションですね。
命が脅かされたり,法外なもうけ話が転がり込んで来たりしたら,
人間って,どう変わるかわかりませんものね。おお怖ろしや。
私もこういう時代背景の映画はとっても好みです。
この手の映画はどんなものでもとりあえず鑑賞することにしていますが
あまり外れがないのが嬉しいですね。
投稿: なな | 2007年10月 5日 (金) 21時43分
こんにちは。
エンタメ度合いが高かった分、たくさんの人に鑑賞していただけたような気がします。個人的にももう少し抑制のきいたものの方が好みなんですけど。ラストの余韻、最初はとても好感触だったのですが、まだまだ問題は引きずってるのかなと不穏な感じも後からしてきて、当時と今の映画に対する心境は少し変化してます。エンタメ性があってもハッピーエンドらしかならぬラストには、物語としは十分重たい部類なのかな、なんて。
オランダものも今後たくさん見てみようと思えたのでした。
投稿: シャーロット | 2007年10月 7日 (日) 10時52分
シャーロットさん いらっしゃいませ。
>エンタメ度合いが高かった分、たくさんの人に鑑賞していただけたような気がします。
そうですね!このテイストだと,かえって大勢の方が抵抗なく,
この時代背景を知ることができたかも知れませんね。
「シンドラー」などが苦手,という方も,これなら肩の力を抜いて楽しめたと思います。
>エンタメ性があってもハッピーエンドらしかならぬラストには、物語としは十分重たい部類なのかな、なんて。
ユダヤ民族の受難の旅は,世の終わりまで形を変えて続いていくのかもしれませんね。そこを匂わせるなんて,なかなか凝った演出だったと思います。
ナチス・ドイツの時代背景を扱ったオランダ映画,私はドイツとオランダに生き別れになって敵対してしまう双子の運命を描いた「アンナとロッテ」が大好きですが,シャーロットさんもご存じかもしれませんね。
投稿: なな | 2007年10月 7日 (日) 17時14分
ななさん、こんにちは~★
記事書いたので、TBしに来ました^^
セバスチャン・コッホとカリス・ファン・ハウテンが実生活でも
恋人同士だった(もう過去形なのかな?今はどうか知らないけれど・・)
というのは、こちらで↑知りまして、驚きでした!
投稿: latifa | 2007年10月10日 (水) 14時07分
おおー、latifaさん 記事をアップされたんですね。
TBありがとうございます。
今日から金曜まで出張で家を離れているので、帰ったらゆっくりお伺いさせていただきますね。
そうそう、あの二人、実生活でも恋人になったそうです。
今も続いているかは知りませんが。
カリスさんは魅力的ですもんね。あの胸には女性でも見とれてしまいそう。
投稿: なな | 2007年10月10日 (水) 15時24分
ななさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございました。
確かに深みはない映画ですが、深刻な題材をエンタメ作品に昇華し、ありきたりなハッピーエンドにしないところは評価されていい映画だと思いました。
あのレジスタンスの人、ラッセル・クロウに似てましたね~。
セバスチャン・コッホは本当に「善人顔」ですね。
なかなか面白く、見所ある映画だと思いました。
ではでは~。
投稿: 真紅 | 2007年11月 2日 (金) 12時39分
真紅さま,いらっしゃいませ,ご覧になったのですね。
確かに,この手の深刻な題材がエンタメ色濃く製作されている作品は,貴重ですね。
私は登場人物にあまり深く共感できなかったのですが
(とにかく共感する前にストーリー展開の方に意識がいってしまって)
それでも伝えたいことはしっかりと語られていたなあと,今にして思います。
レジスタンスの彼,ドイツ版ラッセル・クロウでしたでしょ?なかなかイイ男だわ。(惚)
セバスチャン・コッホは実際の人柄も善人だろうなあ,と思わせてくれるお方ですねぇ。
投稿: なな | 2007年11月 2日 (金) 20時02分
ななさん、こんばんは!
TB&コメントありがとうございました。
いや~~~実はPCが突然(でもないか・汗)壊れまして・・・焦りました。
慌てて新しいPCを買ったのですが、vistaっていうのはなかなか使いにくい代物で・・・四苦八苦しております。アナログ人間なので、慣れるまで時間がかかりそうです。
ところで映画ですが、私ももっと重いシリアス系の映画を予想していたので少々肩透かしもありましたが、全く別の意味で面白かったです。
最後まで展開が気になる上質のサスペンスでしたね~
仰るように展開が早くて、感情移入はし難かったかも・・・
こういう戦争を扱った映画にしてはセットになるはずの涙君の登場もなかったし。
一番ビックリしたのは、エリスが将校にあっという間に惚れちゃったことです。いつの間に。。。って感じで(笑)
投稿: 由香 | 2007年11月18日 (日) 21時43分
由香さん こんばんわー
パソコン,大変でしたね~。私も,今はブログが生き甲斐みたいな毎日になっているので,パソコンが壊れたらどうしようかと思いますわよー。
そうそう,vistaは使いにくいですね。今までのとがらっと使い方が違ったりして。
この映画ですが,シリアスな戦争物が苦手な方でも,気軽に当時の惨状がわかる,という意味ではとてもよいですね。
エリスがあっという間に惚れた・・・確かに。もっと葛藤があった方がリアリティあったかも。
でも,セバスチャン・コッホが相手なら,私でもあっと言う間に惚れるかも。うふ。
投稿: なな | 2007年11月18日 (日) 22時25分