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2007年10月 2日 (火)

ロング・エンゲージメント(ギャスパーのみに注目編)

Cap067 にわかギャスパー・ウリエルファンの私としては,この作品,今回はギャスパーのみに注目して感想を書くことに決めたので,偏っているとは思うけれど,お許しを。

このロング・エンゲージメントは、セバスチャン・ジャプリゾ原作の,どちらかというとサスペンス色の強い戦争小説の映画化。舞台は第一次世界大戦中のフランス。足の不自由なヒロイン,マチルドが,戦犯として処刑されたという許婚の生存を信じ、愛と執念で事実を調査し,彼の消息を探し続けるという物語である。

ヒロインの少女マチルドオドレイ・トトゥ。そして彼女の婚約者の青年マネクを演じたのが,我らが(我らって誰だ?)ギャスパー・ウリエル
Cap077_2
マネクは、マチルドとは幼なじみで,足の不自由な彼女をおぶって灯台のてっぺんに登ったりと,まことに素朴でピュアな青年だ。なんか,マネクはほとんど台詞はなくて,いかにも「アメリ」の監督の作らしい,やたらナレーションが多く,おとぎ話のような 不思議な世界観のなかで,ギャスパーはひたすら優しく 誠実に微笑んでいた。

私は,この映画の前に 「かげろう」 記事はこちら を観ていたが,「かげろう」の,感化院から脱走してきた危険な香りのする青年イヴァンと,このいかにも純朴なマネクを同一人物が演じているとは,最後まで気づかなかった。
Cap070_3
見終わって,DVDも返却してだいぶたってから「あれ?あのマネクって,もしかしてイヴァン?」と気がついて,わざわざレンタルショップで,「かげろう」とこの作品のキャスト名を確かめた。へ〜,やっぱり同じヒトが演じてたんだー。
雰囲気ぜんぜん違うじゃん。

目の表情がね,全然別人なの。
イヴァンの時の,突き刺すような鋭さが全く無くて,マネクの時には,何とも柔らかい,優しい無垢なまなざしなの。ほほう,この青年,若いのにしっかりした演技力があるなあ・・・と感心し,私のお気に入り名簿に登録させていただいたのが数年前。
そして今年,ハンニバル・ライジング記事はこちらの彼の演技を観て,またまた〜」と唸ることしきり。一作ごとに別人になれるなんて,このヒト,ただものじゃないわ。
Cap082
この作品のマネクは,結構可哀想な役で,過酷な塹壕戦をメインとした
第一次大戦で,目の前の戦友が爆撃で吹き飛ばされるのを体験したショックで,一時的に精神に異常をきたし,兵役免除の目的で,自分で自分の指を撃つ。そしてそれがばれて,同じような試みをした兵士と共に,戦犯として処刑されることになる。

その処刑の方法が残酷で卑怯だ。

つまり,軍は彼らを中間地帯と呼ばれる 敵の攻撃にさらされる場所にわざと置き去りにするのである。 敵に射撃されるか,飢え死するか凍えて死ぬか。どちらにしても彼らは,死の恐怖にさらされる時間が長引けば長引くほど,想像を絶する苦痛を味わうだろう。その恐怖はマネクから記憶を奪い,マチルドが長い長い旅路の果てにやっと彼を捜し当てた時は,彼は記憶を失っていた。

台詞の少ない彼が最も多くしゃべったのが ラストのマチルドとの再会シーン。何もかも忘れたマネクにとって,マチルドは初対面のはずなのに,不思議な懐かしさと心地よさを感じたのか,マチルダのふいの出現を訝しがることもなく,マネクは彼女におだやかに微笑みかける。

静寂と陽光に満たされた美しい庭でマチルドとマネクは,ここからまた新たなスタートが始まるのだという,あたたかな予感をも感じさせてくれる素敵なラストだった。そして私もまた,マチルドと同じように,マネクをずっと見つめ続けていたかった・・・。
Cap086
それにしても オドレイの演じたマチルドの愛に対する一途さや頑固さは,相手がこのマネクだったからこそと十分感じさせてくれるほど,ギャスパーの演技は 印象的で,存在感があった。

かげろうのイヴァンの痛々しいほどのワイルドな魅力。この作品のマネクのガラスのような繊細さ。そして,ハンニバル・ライジングでのあの激しくも美しい狂気。その美しい顔の下にいくつもの顔を持っているかのようなギャスパー。

・・・次回作では,果たしてどんな顔を見せてくれるのだろう。
待ち遠しい。

Cap075
なんかギャスパー君の紹介記事みたくなっちゃったけど,この「ロング・エンゲージメント」いろんな意味でも傑作なので,未見の方はぜひ観て頂きたいです。(取ってつけたようだなー)

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映画 ら行」カテゴリの記事

コメント

おぉ!ななさん、そんなに以前からギャスパー・ウリエルくんに
注目なさってたんですね~!
私なんて、ハンニバル・・でやっとですよ(^^;;)
そういえばこの映画にも出てた、恋人役だったなぁ・・ってくらいで(^^;;)
素敵だったとは思ったんですが、全然one of themでした(^^;;)

「かげろう」は見そびれてるので、是非見てみなくっちゃ・・と
記事を読ませていただいて思いました♪

>雰囲気ぜんぜん違うじゃん。

本当ですね~。彼はいろんな顔を見せてくれてるってことですよね。
ますますこれからの彼が楽しみになりました♪

TBどうもありがとうございました♪
こちらからもさせていただきましがm(_ _)m

メルさん TBありがとうございます。
そうなんですよ。美形のカメレオン俳優はすかさずチェックすることにしているので、ギャスパー君も当然!ですわ。
「かげろう」ぜひ御覧ください。マネクでもハンニバルでもない、また別のギャスパーに逢えますよ。
ワイルドでタフな彼に。
まだまだ若いギャスパー君。
これからいろんな役に挑戦していってほしいけど、やはり影のあるキャラクターが似合いますね。

こんばんは!
ななさんのギャスパー君への想いがヒシヒシと、ヒシヒシと伝わってきます~
私も彼は大好きです!
彼の作品は『かげろう』『ロング~』『ハンニバル~』『パリ~』と観ていますが、どれも雰囲気が全然違うんですよね!
でも・・・どの彼も必ずセクシーじゃーないですか!!良いわ~ギャスパー(目がハートです・笑)
表情によって繊細にも残酷にもなれる・・・ってスゴイですよね。
これからも色んな映画で大活躍して欲しいわ~
とりあえず、彼の吸血鬼なんて似合いそうじゃありません?
それからゲイ役なんかも・・・(妄想中)

映画ですが、随分前に観ましたが、出番が少なかったのにギャスパー君が印象的でした(そればっかり・笑)
最後は記憶を失っていた彼だけど、きっと二人で幸せに過ごしたのでしょうね。ああ~!ギャスパー君の純愛って素敵♪(しつこい・汗)

由香さん お越しくださりありがとうございます。
そーなんですよ。まるで息子のように,弟のように,大のお気に入りです。ジェイク・ギレンホールも大大好きなんですが,(ぜんぜんタイプ違うけど)母性本能をくすぐる点で共通点があります。

>どの彼も必ずセクシーじゃーないですか!!
そうそう,あれは,天性のものですね。なんか,彼にはしなやかな色気があるのですよ。

>とりあえず、彼の吸血鬼なんて似合いそうじゃありません?
それからゲイ役なんかも・・・(妄想中)
彼の吸血鬼はぜひ観てみたいですね。さぞや美しく怖ろしいヤング・ドラキュラができあがりそう。
ゲイもねー,いいですね~。私の好きな2大ジャンルが,殺人鬼もの(映画としてはずれがないから)と,まじめな同性愛もの(切なさに惹かれる)なんですよ。彼はどちらの役柄も素敵にこなしてくれそうです。
パリ・ジュテームも,リリースされたら観てみますね。

こんばんは~。かげろうの記事にコメントしたクリスです。
ななさんがロングをレビューしてくださってうれしい!
由香さん(はじめまして!)もおっしゃってるように、短いシーンであざやかに印象を残してくれて、すごいですよね。

シェルショックに陥るまえの、戦場でひたすらおびえるマネク。
戦友の爆死で壊れてしまった、儚げなマネク。
回想シーンの、やさしくて、純朴で、幸せに満ちたマネク。
「禁じられた遊び」を彷彿させる愛のシーンにうっとり!
そして、あの美しいラスト……。

時間の経過と人の心の変化をみごとに表現していました。
「かげろう」もすばらしかったけれども、「ロング」でのセザール賞新人賞を受賞には納得です。

今月は日本語版「THE LAST DAY」「パリ、ジュテーム」のほか、仏版「Jacquou Le Croquant」と、3本もDVDがリリースされます。
「ジャクー」は歴史もので、貴族に復讐する農民の孤児という役どころですが、女性ふたりのあいだで揺れるらしいので、すっごく楽しみにしています。

クリス・Dさん おはようございます。
この「ロング~」は,記事を書こうと思って,DVDをレンタルしに行ったら,なんと,もうお店に置いてなかったのですよ。(記事用の画像が欲しかったのに~)
それで,仕方なく画像はネットで手に入るもので間に合わせて(マネクの画像ってあんまりいいのがないのよね)
ストーリーは原作小説の「長い日曜日」を読んで思い出し,映像は記憶を頼りに書いた記事なので,細かいとこ間違ってるかもしれません。
今日あたりDVDが届くので,確認して,添削を加えたり,画像を貼り替えたりしたいと思います。(執念)
でも,当時はギャスパー君に注目せずに観たにもかかわらず,彼の要所要所の表情は,鮮やかに記憶に蘇ってくるのですよ。オドレイよりもむしろ覚えているくらい。
それだけ,印象にのこる演技をしてくれていたんですね。
私はにわかファンなので,ギャスパー君のプロフィール的なことは,まだほとんど知らないので,
クリスさん,これからもいろいろ教えてくださいね。
あ、「THE LAST DAY」は,DVDを予約しましたよん。
他の作品も楽しみですね~。10月は「ギャスパー祭り」と行きましょうか?


きゃあ、ななさん、この記事を記憶で書かれたんですか。
すごすぎます……。

>当時はギャスパー君に注目せずに観たにもかかわらず,彼の要所要所の表情は,鮮やかに記憶に蘇ってくるのですよ。

すばらしい! 恋に落ちてから観たワタクシには持ち得ない視点からのご指摘です(笑)
そうですよね、あの「処刑がすめば家に帰れる……」とつぶやくシーン、愛しあった直後の出征シーン、儚げなのに、そこここで生への執着を見せるときの表情。あげていくと、きりがありません。
わたしがいちばん好きなのは、鐘楼での回想シーンで「ごらん、頑固なアホウドリだ。風に打ち勝つ気でいるんだ」」と言うところ。このときの深い落ちついた声にしびれました。

じつは、わたしは3月に劇場で「パリ、ジュテーム」を観たのが初めてでして、わたしのほうこそ、にわかファンなんです~。そのあと、リリースされている出演作DVDはぜんぶ観ました。個人的に3月からギャスパー祭りがつづいています(笑)
一日じゅうPCのまえにいる仕事をしているので、情報だけはたくさん持ってます。

ななさんの「THE LAST DAY」のご感想、楽しみにしています!

クリス・Dさん,またまたコメントをありがとうございます。
>鐘楼での回想シーンで「ごらん、頑固なアホウドリだ。風に打ち勝つ気でいるんだ」」と言うところ。このときの深い落ちついた声にしびれました。
クリスさんのコメントで思い出しました!
なんだ,彼けっこうしゃっべてたんですね。やはり,何年も前の記憶だから,あいまいです。
私は彼の台詞は,ラストの,あの庭での再会で,マチルドに言った「足が悪いの?」とかなんとかいう台詞しか覚えてないです。
彼の声って,見かけによらず,低くて深みがあるんですよね。
初めて聞いたときは,私も「え?」と思いました。もっと甘い声を予想してたから。すごく成熟した声ですね。
台詞よりも,彼の場合は,表情のほうをよく覚えています。
中間地帯で,敵機の爆撃にさらされながらも,木の枝にイニシャルを彫りつけていた時の,少し浮世離れした夢見るようなまなざしとか。
DVDはまだ届いてませんでした。記事の書き足しと画像の交換は明日の晩になりそう・・・。
一日中,PCの前でお仕事なんて,羨ましいですね~。私はいつも夜だけPCなんですよ。
ではでは,またお越しください。

こんばんは~~
この映画は試写会で観たんですが~
オドレィが、イマイチ苦手で~・・・リピートはしなかったなぁ。
ストーリーは不思議でしたが~嫌いじゃなかったのだけど。
確かレビュー書いたはず~と思って探したけどなかった(大汗)ちゃんと整理しなきゃ・・ですね(笑)

ところで、ギャスパーくんあのマネクだったのね~。
可哀想な役だったよね。。。ちょっと瞳が暗いところがいいわ(笑)
私も木にナイフで何か(イニシャル?)彫ってるとこが印象に残ってます。
ななさんは“ギャスパー祭り”開催なんですね~
楽しんでくださいね~
誰かの“お祭り”開催中ってハッピーですよね(笑)

ななさんのレビューは、一つ一つ読みごたえがあって~深いです。
私なんてあさ~~い知識のミーハー記事なので ><; とてもお勉強になります。
少しづつ遡り~制覇させてくださいね(もしや、私は“ななさん祭り”?爆)

マリーさん いらっしゃいませ。
そうなんですよ。いきなりこの年で若い子のファンになっちゃって。
仰るとおりギャスパー君,あの「メランコリックな」雰囲気,
もしくは危険な雰囲気がたまりません。
私も,この映画,オドレイが苦手なんです。
彼女はどうしても,アメリの雰囲気があるので,
その他のシリアスな作品に出ても,ミスキャストに見えます。
この「ロング」は,まだアメリの監督さんなので,
アメリっぽいマチルドでなんとか彼女らしさを出していますが
「ダヴィンチ・コード」のヒロイン役はアメリっぽさが出せない役なので
ただの貧相な女の子に見えました。
まあ,オドレイはどーでもいいんですよ。要はマネクですから。
レビューを褒めてくださって恐縮です。
私なんか,ものごとの裏ばっかり考えている変な人間なので,
深読みが得意というだけですよ~。マリーさんのレビューこそ,いろんな見解がてんこ盛りで面白く,読みやすいですよ。
私も少しずつおじゃましたいと思いますので,よろしく。

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