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2007年9月24日 (月)

ミス・ポター

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ピーターラビット。
それはおそらく世界一有名で愛されているウサギだろう。とくにマニアでなくとも,家中を探してみれば,たとえば進物の食器とかタオルとか,どこかには彼の愛らしい姿を見つけることができると思う。

これはそんな誰もが知っているピーターラビットの生みの親,ビアトリクス・ポターのお話。生みの親は,「英国の女性」ということしか知らなかったし,レニー・ゼルウィガー主演聞いて興味津々で鑑賞。今から100年も前の英国では女性は結婚以外の道は用意されてはなかったんだなあ,とつくづく実感。

そんな時代に,しかも上流階級に属しながら,親の勧める縁談をことごとく断り「私はこれがやりたいの!」と,自分で道を切り開いていったビアトリクスは,確かに当時としてはとても進歩的な女性だったと思う。彼女の母は典型的なこの時代の女性で,娘の気持ちを理解してくれなかったけど,父親は彼女の夢を尊重し,彼女の生き方を誇りに思ってくれた。この父の精神的なサポートがなかったら,もしかしたらピーターラビットは世に出てなかったかもしれないな。

当時の英国の上流階級のしきたりも,なかなか興味深かった。30歳過ぎても独身のビアトリクスには,外出先もどこにでも「お目付役」のような老女(かつての乳母?)が影のようにお供をする。「世話をする」というよりは,「一人にさせてくれない」と言う感じ。・・・なるほどこれじゃ,女性の自立なんて,無理な相談だね。しかしながらこのお付きのお婆さんを演じる女優さんが,またなんとも哀愁のある,それでいて温かいいい味を出していた。
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レニー・ゼルウィガーは,彼女の持ち味である可愛らしさや気丈さを存分に生かした余裕の演技で,はまり役だ。彼女は「ブリジット・ジョーンズ」のヒロインに抜擢されてからというもの太ったり痩せたりを繰り返すことを運命づけられているが,今作の彼女は,ちょっとぽっちゃりしていたかな。

彼女の婚約者ノーマンを演じたユアン・マクレガー。ぴったり撫でつけた髪型とお髭で登場し,「誰よ,コレ?」と最初は思ったが,彼が演じるノーマンは 不器用で誠実で善良で,ビアトリクスとの恋も「がんばれ!」とつい応援したくなった。(結局,応援の甲斐はなかったが。)彼が彼女にプロポーズする時に,オルゴールに合わせて歌うシーン。「ムーラン・ルージュ」で聴かせてくれたあの甘い歌声にうっとりした。

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そしてこの物語のもう一人の主役とも言える,ピーターラビットをはじめとする可愛いキャラクターたち。ベアトリクスの想像の中で彼らが生き生きと躍動するさまは何とも愛らしく,ついつい劇場で「かっわいい~」と叫びたくなって困った。

全体的に見て,ややパンチに欠ける印象は受けるが,何とも,優しくかわいらしい 素敵な映画でしたね。でも女性の自立うんぬんというよりは,私は際だった才能は,どんなことをしても道を切り開いてゆくものだなぁという,ちょっと変わった感想をも抱きました。

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映画 ま行」カテゴリの記事

コメント

私も主演がレニー・ゼルウィガーと聞いて観に行きました。
彼女って「ピーターラビット」みたいな風貌ですものね(笑)。
今はぽっちゃりしてて、可愛いですよねー。
でも、ちょっとお年を召されたかな・・・と。
ビアトリクスは才能と余裕(良家の子女)があったから
道を切り開くことができたのでしょうね。


マーちゃんへ
レニーも,それからエミリー・ワトソンもちょい太っていましたね。
たしかに,あまりお化粧が濃くないレニーの顔は,スクリーンで
大写しになると,「あら,老けたかしら?」とは思いました。(悲)
女優さんでも寄る年波には勝てないのでしょうね。
でも,彼女は演技で,恋する女性の純真さや可愛らしさをよく表現していたように思います。
>ビアトリクスは才能と余裕(良家の子女)があったから
道を切り開くことができたのでしょうね。
まあ,出逢ったヒトもよかったし,運もあったのでしょうけれど。
才能をフルに生かして人生を送れるとは,当時の女性としてはとても幸せだったと思います。・・・辛い恋もしましたけどね。

ななさま、こんにちは。TBは承認制にされたのですね、届いておりますでしょうか?
さて。この映画本当に素敵でした。何もかもが本当に。
私、ユアンのこと初めて素敵だと思ったんですよ。『ムーラン・ルージュ!』も観てるのに。。
私の目は節穴だったのでしょうか(笑)
ビアトリクス・ポターのことは私も今回初めて知りましたが、稀有な才能の持ち主であり、美しい心の人だったのですね。
ではでは、また来ます。

真紅さま コメントをありがとうございます。
最近TBのスパムが多いので,しばらく承認後に反映させることに
しました。
真紅さまのTBは,現地点では届いてないようです(汗)
もしお手数でなければ,再度送ってくださるとありがたいです。
この映画のユアンは,その誠実で純情な生き方が,とてもすてきでした。
プロポーズの場面と,承諾されて嬉しそうな様子の彼が,とてもいじらしく,いとおしささえ感じました。
ミス・ポターは本当に,心もすばらしい女性だったのですね。
彼女の生み出す世界の愛らしさは,彼女そのものだったと思います。

ななさん、こんにちは!
TB&コメントありがとうございました。
こちらのTBが不調ですので、また後日参上します(ぺコリ)

少々パンチに欠けましたが、上品で優しい映画でしたよね~
こういう雰囲気の映画も結構好きです。
欲を言えば、ビアトリクスが自然保護へと向かっていった過程を、もっと丁寧に描いて欲しかった気がします。

先日ラジオでこの映画の歌を聴いたのですが、ビアトリクスとノーマンのダンスシーンが目に浮かんでジーンとしました。(涙が出たの・照)
自分が思っている以上に、心に残った映画だったのかもしれません。

由香さん いらっしゃいませ。
TBは承認制に変えたので,(スパムがひどいんです)
きっと反映されなかったのかと。今は反映されています。
送っていただいてありがとうございました。
英国映画,特にこの時代のものは駄作でもなんでも,雰囲気だけでもオッケーと見ちゃうのですが,
たしかにクライマックスは物足りなかったけれど,
しみじみしたよい佳品でした。
>欲を言えば、ビアトリクスが自然保護へと向かっていった過程を、もっと丁寧に描いて欲しかった気がします。
そうそう,私もそう思いました。大切なことなのに,説明不足でいきなりって感じで。
ユアンとの悲恋に焦点を当てたかったのでしょうか。
それにしても,中途半端な出し方でしたね。
二人のダンスシーンはよかったですね。あんなストイックな時代だからこそ,
押さえきれない気持ちがまなざしから感じられて,とても繊細で美しいシーンでした。
ユアンのあの甘い声で歌われたら,誰でも「イエス」と言いたくなりますよー。

こんばんわ。

どんなことをしても、道を切り開いてゆく才能があれば、
どんな人にもその分可能性が拓かれ、あらゆることに挑戦する
チャンスと希望が見えてくるものだと感じます。

自分の持ち合わせた才能を一途に信じ、それを開花させようと
努力する人、そしてそれをサポートする人の存在があれば、
きっとポターのようなたくましく、まっすぐな生き方が出来る
のかもなあと思いました。

この作品の情景美は、まるでポターその人を表しているかのような
美しさと力強さでしたね。
観ているだけで癒され、あらゆるパワーをもらえるような1作
だったと思います。

睦月さん ご訪問ありがとうございます。
そうですね。才能を信じるということ,諦めないだけの力をもつこと
これもまた一つの才能ですね。
あの時代に(いや,いつだってそうなのですが)世間の目やしきたりに
負けなかった・・・ということは,考えてみれば凄いことです。あんな,どこへ行くにも,お目付役がつきそってくるような時代に,良家の子女が
自分の才能を生かした仕事で自活するなんて,さらりと描かれていましたが,スーパーウーマンですよね。
彼女の内に秘めた強さと,彼女の描く世界の優しさが,いつまでも心に残りました。
職場で使っているマイ・カップがたまたまピーター・ラビットの絵柄なのですが,(化粧品の粗品でもらった)最近はこれを使うたびに嬉しくなります。

ななさん、こんばんわ!
昨日はTBがうまく行かず申し訳ありませんでした。今、たんまりやってみました。今度は大丈夫かしら?

ピーターラビットって大好きです。
この映画、短かったけど、しみぢみしました。レニーって素晴らしいです!

うさぎさんたちが動くのもとってもかわいかったです♪

こむぎさん こんばんわ
はいはい,TBたんまり届きましたよ。
ありがとうございます。
こむぎさんの記事,面白いですね!
わたしもたったいま,こむぎさんちに
バベルのコメントを残してきました。
この作品は劇場で観れてよかったです。
レニーはほんとうに,いい雰囲気の女優さんですね。
ピーター・ラビットの可愛らしさを,改めて
認識できた愛すべき作品でしたよ。

なんとも素敵な女性でしたね~♪
ほんわか優しく、でも芯がしっかりしていて。
レネーがとても良かったです。

実際は才色兼備だったとか・・、最終的に
結婚した相手もミス・ポターの方が年上だったとか、あのような出会いじゃなかったとか、
ノーマンの死因も本当はそうじゃなかったとか
いうのを見終わってから読んで、あら・・そうだったんだ、とちょっとショックだったりもして。この映画のままであってほしいな、と
思っちゃいました。

いろいろな意味であっさり目の映画と
なってましたが、このほんわかムードが
この映画の良さだったかな、と思いました。
湖水地方の美しい風景も見れたし、彼女が
今でも美しいこの景観を守ったんだ、と思ったら、余計に嬉しくなりました♪^^

メルさん
TBありがとうございます。
DVDで出ましたね!
あっさり味で,ほんわかムード・・・癒し系の映画でした。

考えてみれば,今でも,そしてこれからも
おそらくずっとヒットし続けるであろう,究極のブランド,ピーターラビット。
それを生み出したのだから,すごい女性ですね。
ほぉ,実話は映画と少し異なるのですか・・・。
でも,おっしゃるように,映画の脚色の方がよかったですね。
レニーは役にほんとうにぴったりでした。

ななさんこんにちは、90分前後という映画鑑賞する上で一番
バランスの良い時間設定で見事にまとめたの素晴らしいですね
しかも人物描写だけではなく彼女のイラストをアニメーション
させることでうまく味付けしてるし非常に伝記作品の中では
考えられてる作品だと思いました。

せつらさん こんばんは

ほんとに,けっこう動きの少ないストーリーなんですが
その分,短くコンパクトにまとめられてたし
ところどころ挿入される可愛いアニメが
ちょうどいいカンフル剤のような役目を果たしていましたね。
地味といえば地味な作品ですが
完成度は高いと思います!

 こんばんわ
 この映画を見てから2週間くらい経ちましたが、感想は可愛らしくて、好きな映画でした、主役のレネーも良かったし、ユアンも好青年で二人の純愛がとても応援したくなる展開でした、でも突然の別れ・・・(僕もヒースの急死の悲しみを味わって間もなかったのでビアトリクスの気持ちはとても理解できました)最後に二人が会った駅での別れが切ないですね、ユアンの甘い歌声も心地良かった~、「ムーランルージュ」以来でしたか~、レネーも時代を意識してかちょっとぽっちゃり系でいい演技してましたね、
 この時代のゆったりした風景や人物像などがとても癒されたいい映画でした、普段ピーターラビット等と無縁な生活してますが、あの動く絵は可愛かったし、レネーも可愛かったです。 

イニスJrさん こんばんは
こないだ,これご覧になったのでしたわね。
私としては,も少し刺激の強い作品が好みですが
この映画の魅力は何と言っても「あのピーター・ラビットの産みの親はこんな人!」という点でしょうね。
レネーはぴったりでした。それに彼女は上手いから,安心して見れますね。
ユアンが急死したときは驚きました。離れている間に死なれちゃったら,どんなに辛いものでしょうかね。
そう,今思えば,ヒースの突然の死に被って辛くなりますね。
私も普段ピーター・ラビットとは無縁の暮らしです。
ひとつだけマグカップ持ってますけど。でも改めて見ると,確かに今でも世界中で愛されてるのが納得できる魅力がありますね。

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