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2007年9月17日 (月)

ブロークバックマウンテン(8)

イニスが涙を流すとき
Cap541
20年間守ってきた二人の関係が,図らずも幕を閉じることになった,あの最後の逢瀬と,翌朝のいさかい。押さえに押さえてきた気持ちを,初めてイニスに向かって,激しい口調でたたきつけたジャックに,「もう耐えられない・・・」と,哀れにも慟哭したイニス。

まるでよくある男女の痴話げんかのように売り言葉に買い言葉の雰囲気もあるが,このとき思い出したのは,あかあかと燃えるたき火の傍で,かつてジャックとイニスが交わした会話だ。

Cap546
「どうしようもないんだったら,我慢するしかないんだ。」
「・・・いつまで我慢すればいい?」
・・・耐えられる限り。終わりはないんだ。」 


一緒に暮らすことをいつだって,夢見てきたジャックと,そんなつもりは毛頭無かったけど,ジャックを失うことはできなくて,関係を必死で続けてきたイニス。そのイニスの口から,ついに「もう耐えられない」という言葉が,涙とともにこぼれ落ちてしまった哀しい瞬間。

でもこの時のイニスは,たぶん取り乱していただけで,本気で「ジャックと別れたい」なんて訴えたつもりはなかったと思う。

ただ彼は,ショックだったんだろう。

今までひたすら優しかったジャックが,無理を言ったことがなかったジャックが,まるで挑戦するかのように メキシコ行きを認め,堰を切ったように投げつけて来た言葉の数々が痛いくらい核心をついていたから。そして,いつもイニスの顔を正面からまっすぐ見つめて話すジャックが,このときだけは,イニスに背を向けてつぶやいた言葉。
「いっそ,別れられたら・・・」

原語を直訳すると,「お前と別れる方法を,俺は知りたい」となる。つまり
別れたいけど別れられないという想いがそこには込められているのに,イニスは,ジャックの口からquit(諦める,捨てる)という言葉が出たというだけで,逆上してしまったのではないか。メキシコ行きを肯定されたばかりだったし,

(お前は俺を捨てるのか?他に男がいるのか?)
イニスの心の声は,そう叫んでいたのではないか。

Cap569
しかし,実際に彼の口をついて出たのは,「じゃあ,別れたらいいだろ!・・・俺はお前のせいでこんな男になっちまったんだ」という,捨て台詞のような言葉。しかしそれも聞きようによっては,「お前なしには生きられない,お前しかいない,他には何もない」(行き場も,何もかも見失った)という悲痛な叫びにも取れる。

イニスは自分でも気づかずに,この時ジャックに
I love you so much と告白していたのか。

もちろん彼自身にも自覚ができていない告白は,ジャックに伝わるはずもなく,この時のイニスの涙は,かえってジャックに哀しい決意をさせてしまったかもしれない。

Cap593
不器用で,男らしくあれと教え込まれてきたイニスが耐えきれずに泣くとき,それはいつも ジャックへの愛が自分の意思とは無関係にほとばしる時ではなかったか。一度目は,ジャックとの初めて別れた後,物陰で号泣したとき。二度目はこの最後の逢瀬で。そして三度目は二枚重ねのシャツを前に,ジャックへの永遠の愛を誓う時。

イニスの涙はいつだって,ジャックへの愛のために
流されたというのに

ジャックが生きている間に,そのことを伝えてやれなかった。ジャックの耳に残る最後のイニスの言葉が「もう耐えられない・・・」だったなんてあまりにも・・・。後で気づいたイニス自身もきっと,胸がつぶれる想いをしただろう。

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コメント

「もう耐えられない」という言葉は、考えようによれば
最上級の愛の告白かもしれませんよ。負になるような愛も愛?
イニスのジャックへの想いが、凝縮されているような気もします。
人を愛する事は、必ずしも幸福なことではないのかもしれませんね。
ちなみに、幸福とは全てが満たされている状態だそうです。


マーちゃんへ
イニスは売り言葉に買い言葉で,口走ったきらいもありますが,
彼の人生も,ジャックとのことが間接的に原因となって,離婚や転職の繰り返しで,どんどん坂道を転がっていっていましたからねえ・・・。「(こんな生活に)もう耐えられないんだ」という意味もあったのかも知れません。でもイニスこそ,ジャックと別れられるはずがないんですよね。彼は,ジャックから「耐えられない」と言われたら,もっともっと泣いてすがるんじゃないかと思ってしまいます。イニスとジャックのことは,架空の人物なのに,まるで親戚のあんちゃんのように,その思惑をあーだこーだと考え出したら,止まりません。(誰か止めて)

>人を愛する事は、必ずしも幸福なことではないのかもしれませんね。
愛がもたらす最大級の苦しみを,彼らは味わったと思いますが,喜びも同じくらい味わったと信じてます。このような究極の愛は,まるで諸刃の剣のようなものではないでしょうか。

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