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    ブロークバックマウンテンの名シーンの数々です。

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2007年9月 9日 (日)

ブロークバックマウンテン(7)

ジャックの両親
Cap618

ジャックの訃報を聞いて,イニスが訪れたジャックの生家は,だだっぴろい平原のなかに ぽつりと立ちすくむ さびれた農場。まるでイニスの訪れを予期していたかのようにひっそりと玄関先に立つジャックの母。

招じられた食堂でイニスと対峙したのは,生前ジャックとは折り合いが悪かったといういかにも一徹そうなジャックの父。

Cap357
お茶とケーキをすすめる母親は,夫の側ではなく,イニスのかたわらに,まるで寄り添うように立つ。イニスの辛い気持ちを察して,無言で励ますかのように。

彼女にはわかっていたのだろう。イニスが誰であるか。息子にとって,イニスがどんな存在だったのか。イニスの顔に刻まれた痛ましい喪失の哀しみを一目見たときから,母親の直感でそれを見抜いたのだ。

Cap005
裕福ではないけれど,清潔できちんとしたこの家で育った一人っ子のジャック。ジャックが生前両親に何度も言っていた言葉は,「いつかイニスを連れてきて,一緒に牧場をやるんだ」。平穏な結婚生活を捨ててまで,イニスという男との暮らしを夢見る息子を,両親はどんな思いで見ていたのだろう。

そしてまさに そのイニス・デルマーという男が,ジャックの死後,実体をもって出現した時,父親はイニスに辛辣な言葉を投げつける。「息子はいつも、あんたと牧場をやると言っていた。ところが,最近になって,別の男の話に変わった」・・・と。

Cap630
別の男の存在を知ったイニスは深く傷つく。
父はあえてそのことを,イニスに知らせたかったのか。ジャックの夢を実現しなかったイニスを,遠回しに責めるかのように。生前はジャックを認めず,おそらく同性愛をも嫌悪していた父の,息子への精一杯の愛が,イニスに対してそう言わせたのだろうか。

うちひしがれたイニスの肩に,絶妙のタイミングで置かれた,母親の節くれ立った あたたかい手。「もしよかったら,あの子の部屋を見てやって。あの子もきっと喜ぶわ。」もしかしたら母は,例のシャツの存在を既に知っていて,イニスにそれを見つけてほしいと,祈るような思いで見送ったのかも知れない。

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イニスは 母親の期待を裏切らなかった。二階から降りてきた彼の目は 泣きはらして真っ赤だったが,その手には大切そうに あの二枚のシャツが握られていた。

そのシャツに無言で視線を当てる父。顔からは先刻までのとげとげしさが消え,今は哀しみだけが宿っているように見えた。父もまた,イニスを責めたことで,彼なりに気が済んだのだろうか。

黙ってシャツを差し出すイニスに目だけでうなずいてみせて 紙袋を手にする母。逝ってしまった息子をいとおしみ,別れを告げるかのように彼女は一瞬手を止めて,シャツをそっと握りしめてから袋に入れる。イニスの心は,きっとこのとき,張り裂ける寸前だったろう。

喪った愛の重さに気づいたばかりのイニスに,息子を喪った母親がすがるように声をかける。ねえ、あなた。また 私たちに会いにきてね。敬虔なクリスチャンの彼女は,ジャックが同性愛がもとで命を落としたことに,言いしれぬ痛みを覚えていたはずだ。

しかし,訪ねてきたイニスの表情や態度を見た母親は,彼らの愛が真摯なものであったことを感じ取り,そのことから深い慰めを得たに違いない。


Cap221_2
「息子が心から愛していたこの人もまた 息子を愛してくれていて
「生きているとき、あの子は確かに幸せな時もあったのだ」 そう思えることは,傷ついた彼女の心の痛みを少なからず癒したにちがいない。

遺灰はブロークバックマウンテンにまいてほしいと願ったジャック。そこは彼にとって イニスとの思い出の聖地であり,彼らが何の恐れもなく一緒にいられた唯一の場所。死後の自分の魂が,そこへ還ることを,ジャックは願っていたのだろう。父親の拒絶によって,その望みは叶わなかったけれど,かわりにイニスはジャックの魂を 山ではなく 自分のもとへと連れ帰る。思い出のシャツという形に変えて。 

 

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コメント

ラスト近くのシーン、しっとりしてて、情感豊かに描かれていましたね。
家の中には余分な家具がなく、白を貴重にした慎ましい内装だったので
登場人物、そして遺品のシャツをくっきりと浮かびあがらせていました。
遺骨を家族の墓に埋葬するということは、父親はジャックの罪を
許したということなのかしら?

ラストが、ブルーバック・マウンテンに遺灰をまくシーンだと、ちょっと興ざめするかも。
それだと、少し開放的すぎるような気がします。
遺品を身近に置いて、毎日ジャックを偲ぶイニス。ふたりの愛は終結したのではなく
次の段階へと上っていったのかもしれませんね。


ジャックの父がイニスに遺灰を渡さなかったのは,彼らを許したり,理解したからかどうか,そこらへんは微妙だと思っています。原作の父親は,もっと冷たい印象に描かれているし。
映画では,「父もジャックを愛していた」とも取れるような演出に見えました。ジャックのことを,今でも怒り,恥じているようにもみえても,彼の死に大きな打撃を受けている感じがしましたから。
遺灰を家の墓に葬ると言ったのも,「お前には息子は渡さん」という意志表示にもとれましたし。いずれにしても,人の心はとても複雑なものですから,そしてこの映画は,観る人によっていろんな解釈ができるような演出と演技がされていますから,はっきりした答えは提示していないのかもしれません。
それだからこそ,この映画は,後々まで考えさせられるのだと思います。私は1年以上考え続けていますが,未だに答えが出ないことも多々ありますよ。

 ななさん、こんばんわ
 先日、久しぶりに原作を読み返しました、原作でジャックは「いつかあいつを連れて来て、二人でこの惨めな牧場を舐めて、きっとまともにしてみせる」と父に言ってたそうだし、ジャック母は「あの子は毎年、ここに戻って色々手伝いをしてくれた」と言っています、なんて優しいジャック!ジャックの言葉はイニスと一緒に親父たちの面倒を見るよ!ってことですよね。だからジャックを愛していた両親はジャックの部屋を昔のままにしていたんだと思います。
 ジャック父は「あいつはきっと自分を特別な人間だから、先祖代々の墓には入れないとでも思ってたんだろう」と言います。映画を一緒に見た友人に何でジャック父はブロークバックマウンテンに遺灰を撒かなかったの?と聞かれ、僕はジャック父と同じことを答えました、僕も同じゲイとして同じ事を考えると思います、本当は、ジャックも先祖代々のお墓に入りたかったんじゃないかな?って、だからジャックが遠慮して、山に撒いてと言ったのを、父はジャックは俺の息子だから、俺の墓に入れると言ったような気もします、父の優しさに感じたのですが、頑固に見えるけど、根はいい人なんじゃないかと、あの時代の人はフォビアが当たり前で、幼少時代のあのジャックの記憶もある種の父の優しさではないかと感じるのは僕だけでしょうか?《自慰行為に耽らず(ゲイにならないように)》でもジャックには怖かったんですよね、父親が!
 それと映画の初見時、あのシーンはとても寂しい雰囲気で、家の中には必要最低限のものしかないようで、当時の西部の貧しさが浮き彫りになってるのが、印象的でした、イニスは帰りの車でこんな寂しいところにジャックを眠らせたくないみたいなことが原作にありましたが・・・

イニスJrさん こんばんわ
コメントをありがとうございます。こういう風に,いろんな意見がお聞きしたかったので,とても嬉しいです。自分だけの解釈では,女性ではあるし,ゲイの方の感じ方がわからない部分もきっと多々あると思うし。どうどう巡りになってしまって。身近にここまでこの映画を愛している友はいませんし。
そうなんですか。ジャックは,本心では家の墓に入りたいと思っていたのかも知れませんね。愛情深くて,家族想いのジャックだから。ブロークバックマウンテンで眠りたいと思っていた気持ちもあったとは思いますが,親の墓に入りたくない子供なんていませんよね。
ジャックの母の気持ちは想像しやすかったのですが(私が女性だからでしょう)ジャックの父の気持ちが,実は一番謎だったんです。原作の父の台詞は,言葉だけの羅列を読むと,とても冷たい印象ですが,映画で表情まで見せてもらうと,やはり,父の心の奥には,一人息子への愛も感じ取れて,ほっとしましたね。もちろんあの時代の西部の男だから,ジャックがゲイであることを当然批判的には見ていて,受け入れてはいなかったと思うけれど,イニスの父に比べたら,優しいですよ。
・・・ジャックの家の周囲は,そして家の中も,寂しかったですね。イニスがジャックの部屋の窓から外を見て,「ジャックはここから見えるこの道しか知らなかったんだな」とつぶやく場面が印象に残っています。明るく奔放なところもあったけど,ずっとジャックは生涯を通じて寂しかったのかもしれませんね。

TB送りましたが、届いているでしょうか。

拙記事にTB&コメントありがとうございます。
ななさんも同じような記事書いていたんですね(今頃知るな)。やっぱり似たもの同士?
でも、ジャックママ目線、すごいですね。私はどうしてもジャックパパに気持ちが入っちゃって、ジャックママ素通りでした(;^_^A
女性心理は苦手かも。自分も息子を持つ母なのにねぇ?

私も断然、「ジャックパパは、イニスとの関係を認めないから遺灰をブロークバック・マウンテンに撒かせなかった、のではない」と思います。
原作と映画で、ここは逆になってると思います。アン・リー監督と脚本家さんの腕ですね。
原作を読んだとき、驚きました。セリフはほとんど変えてないのに、意味が逆だって。
原作では、誰も彼もが(ママ以外は)ジャックを愛さなかったし、ジャックには居所がなかったですよね。イニスの側にしか。すごく痛々しいです。

ジャックパパは、ななさんがコメント返しで書いているように、イニスパパほど同性愛嫌悪は強くなかったと思います。
ジャックが亡くなってからようやく受け入れられた、ということはあるかも、と思いますが。
ジャックをやっぱり愛してたんだと思います。

うわーん,ゆきちさん,TB届いてません~。実はここ数日,TBの受信の方がうまくいかないのです。真紅さまからのTBも届かなかった・・・(たしかゆきちさんと,同じトコのブログですね,)せっかく送ってくださったのに申し訳ありません。そのうち復活すると思いますが・・・。こないだはライブドアさんにTBが送信できなかったことがありました。そちらは今は復活してますが。
パソコンは何とか自力で蘇生させました。購入時の状態に戻して,あとすべて設定のやり直しで2時間くらいかかりました。
何とか明日から自宅で記事が書けそう・・・。
ゆきちさんの記事とかぶってますが,私はママの方にばかり目がいって,パパの方は素通りです。男兄弟も息子もいないから,あんまり男性心理がわからないのですよ。いや,オトコ嫌いなのかも。
台詞が同じでも,解釈や演出の違いで,こうも変わるのですね。確かに,原作ではラリーンもジャックを愛してなかったような感じをうけました。監督の優しい目線がうれしいです。

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