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2007年9月18日 (火)

オールドボーイ

Oldboy_p4
どんでん返しの衝撃度とストーリーの斬新さは超弩級。役者の演技は超一流。しかし。人にお勧めするのをためらう映画ナンバーワンだ。なぜなら,後味の悪さが半端じゃないから。

観賞後は人によっては,再起不能なほど落ち込んだり,吐き気をもよおしたりするかもしれない。うっかり勧めたら恨まれそうだ。・・・では,人に決して勧めたくない映画かというと,そうとも言い切れない。これを高く評価される方(タランティーノとか)もかなりいらっしゃると推察される。

個人の価値観や映画に何を求めるかで
,映画通の間でも激しく好みが分かれる作品ではないかと思う。つまり・・・・・「大好き」か「大嫌い」かにまっぷたつに分かれる。 

大好きと感じる方には勧めてあげたい。しかし,これを好むかどうかは,ひとえに どんでん返しのオチをどう感じるかにかかってくるので,あらかじめ「こんなオチ,どう?平気?」なんて聞いて勧めるわけにはいかない。だから私にとっては「人に勧めるのをためらう映画」なのだ。

ちなみに私は,これをたいそうな傑作だと思っている。それでも「大好き」というと,「あのオチが好きなのか」と思われそうなので(それはちょっと抵抗が)「好き」と公言はできない。「映画としての完成度が非常に高い」事に対する高評価。それに,私はどんな内容であれ 「激しく感情を揺り動かされた」映画には,無条件で脱帽することにしているので,その意味からいうと,この映画は私の映画鑑賞歴の中では,確かに群を抜いていた。

060803_oldboy_main
物語は,オ・デスという一人の平凡なサラリーマンが,ある雨の晩,帰宅途中に突如として何者かに拉致され,問答無用で一室に監禁されるところから始まる。監禁期間は何と,それから15年間。

主人公の,「なぜ」「誰によって」監禁されたのか?という狂おしい疑問は,そっくりそのまま観客の我々の疑問となり,冒頭からストーリーに釘付けになる。

監禁された時と同じく,ある日唐突に何の説明もなく解放された主人公は,自分の15年間と愛する家族を奪った監禁犯への復讐を決意し,まるで生まれ変わったように,精悍に執念深く犯人捜しを開始するのだが・・・。

Cap062
執念の捜査の結果,彼がたどり着いた相手は,何と高校時代の同窓生イ・ウジン。デスがすっかり忘れていたある出来事が,ウジンの姉を死に追いやっていたのだ。そしてデスは,目が眩むほどの驚愕とともにあの監禁が,ウジンが仕組んだ「自分への復讐計画の一部」であったことを知ることになる。

・・・その復讐の手段と内容が,
ものすごく衝撃的で,
おぞましい。

文字通り,あいた口がふさがらず,真相を知らされたオ・デス同様,魂まで戦慄するようなショックを受けた。衝撃のあまり,批判とか,生理的な嫌悪感とか,そんなことをあれこれ立ち止まって考える余裕が見事にふっとんでしまって,アタマの中が真っ白になったまま,それでも最後まで画面に釘付け。

・・・
そしてエンドロールと共に,やりきれないほどの切なさと,類を見ないほどの後味の悪さが訪れ,物語は,腰を抜かした私を置き去りにして,静かに幕を閉じた。

Cap055
監督は韓国の鬼才パク・チャヌク。
「復讐者に憐れみを」「親切なクムジャさん」と本作の三本は、彼の「復讐三部作」と言われ,本作はその中でも最高傑作との評を得ている。三作品とも,根底には,
人間の業とも言える切ないテーマがあるように思える。
人が人に復讐することは赦されるのか?
復讐者は復讐によって救われるのか?

計画通り,オ・デスを奈落の底に突き落とすことに成功したウジンが,「・・・これから俺は何を生き甲斐にすればいい?」と虚ろな表情でつぶやく台詞が心に残る。自分と同じ,いやそれ以上の生き地獄を,デスに見せた後もなお,彼の哀しみは少しも癒されたようには見えない。

Cap056
しかし韓国の俳優さんたちって,どうしてこうも,喜怒哀楽を演じるのが半端でなくうまいのだろう。我々と同じアジア民族なのに,大陸の騎馬民族を祖先にもつ彼らの感情には,すごく濃いものを感じる。どんなに破天荒で,ありえないくらいつっこみどころ満載のストーリーも,彼らの渾身の演技の持つ説得力で,なぜか納得してしまう。韓国映画の特徴は,良くも悪くも,その濃い味付けだと思っているが,彼らの演技力の凄さは,その味を非常にコクのある,重厚で豊かなものにしていると思う。 

オ・デスを演じたチェ・ミンシク
ウジンを演じたユ・ジテ
ミドを演じたカン・ヘジョン
三人とも,まことに鬼気迫る名演だった。  

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映画 あ行」カテゴリの記事

コメント

ななさん~こんにちは!
私もこの映画、大好きです☆ (と、胸を張って大声で言いにくい映画ではありますが・・・(^_^;))
パク・チャヌク監督の映画は、どうも自分好みの様ですが、グロい描写があるので、覚悟が要ります。

私は復讐三部作は、オールドボーイ>クムジャさん>復讐者に・・
の順番になってます。先日、「美しい朝、残酷な夜」というオムニバスに入っているCUTというパク・チャヌク監督の映画を、おくらばせながら見て、やっぱり、この監督の映画は面白くてセンスが良く、ぶっとんでいて、好きだな、と確信しました^^

何故なのか、この記事をTB送ることが出来なかったみたいで・・・(たま~にそういう事があります) 私のGOOでやってる別ブログからTB飛ばさせて頂きました☆(元々はそこが本元でしたが映画の記事が増えたので、途中で今のFC2の映画倉庫にお引っ越ししたのです。) そちらにまたTBがえしされなくて良いで~す(^ー^)

三部作は「復讐者・・」を見てないんです(^^;;)
で、この映画ですが、大好きです~(^^ゞ

ほんと、おっしゃる通り韓国映画っていろんな意味で
濃い味付けだと思いますが(ななさん、すごい素晴らしい表現!
これだわ!私も思ってたことは!って思いました(^^ゞ
でも、自分では言葉が探せなかった(^^;;) )
それをちゃんと俳優さんたちが上手くこなしてますよね~。
あちらの方は感情表現が日本人と違って、普段からちゃんと
できると言うか・・・。
こちらから見ると大げさと思うことをちゃんと普段から
(普通の人たちも)自然となさってますよね。
見た目似てるけど、やっぱり民族は違うんだな、と思ったりします。

この映画でも、復讐がメインですが、それだけじゃ
終わらなかったと言うか、ほんとすざましいものでしたが
なんだかとても好きな映画なんです~♪^^

TBさせていただきましたm(_ _)m

メルさん TBとコメントありがとうございます。

韓国の方の感情表現って,ほんとに激しいですね。島国農耕民族の日本人には,刺激がきつすぎるかもしれません。ドラマとかも,男優さんたちが涙を振り絞っておいおい泣くので(イケメンは泣いてもかっこいいですが)最初は違和感ありまくりでしたが,その濃い世界に現実逃避するのも時にはよいものです。
それに,やはり韓国は演劇大学があるだけに,若い俳優さんたちの演技力の質の高さは,すばらしいと思います。

メルさんもこの映画がお好きなようで,嬉しいです。
後で,TBもさせていただき,おじゃまさせて頂きますね。

latifaさん TBとコメントありがとうございます。

この監督さんは、タダモノじゃないと思います。「復讐」をテーマに、三部作を作ろうとしちゃう姿勢が、そもそもかなりぶっ飛んでいますよ。でも、おっしゃる通り、センスがよくて、ストーリー展開もすごく巧いので、どんなグロいテーマでも、面白く観れちゃうんですね。

私は作品の完成度は、オールドボーイ>クムジャさん>復讐者…だと思っていますが、好きな順は、クムジャさん>オールドボーイ>復讐者…です。「復讐者に憐れみを」は、なぜか集中力が続かず、流し見してしまいました。この復讐三部作は、どれも残酷で悪趣味なくらいグロいのですが、切ない面もふんだんに盛り込まれているので、お気に入りです。

ダハハッ。これは刺激的な映画みたいですね。
ハンマーを振りかざしている方(誰ですか?)の表情が凄い!!
ダメだぁ~。夢に出てきそう(笑)。今から寝ようと思ったのにぃ。
タランティーノの評価が高いのですね。どういう映画か想像できますよ。

マーちゃんへ
おっしゃるとおり,刺激的な映画なので,この方面(どの方面?)に免疫がおありの方にしかお勧めできないのですよ。マーちゃんはどうかなあ?
やめた方がいいかも知れません。
タランティーノの世界は,キル・ビルしか知らないのですが,彼の世界はまだ,ブラックユーモアみたいなエンタメ色が強いように思います。これは,韓国発だけに,もっとダークで,もっと重い感じ。後でどっぷり黄昏れます。
どうしても観たいなら,一人で観るべし。
間違っても,恋人や家族と観てはいけません。以上。

ななさま、こんにちは!
『オールドボーイ』、私も傑作だと思います!凄い作品ですよね、圧倒されました。
パク・チャヌクって映画オタクな感じがします。
三部作、私の評価は『オールド~』>『復讐者に~』>『クムジャさん』です。
クムジャさんのみ劇場鑑賞したのですが、イ・ヨンエさんがミスキャストだと思ったことと、ちょっと技巧に走り過ぎてると感じたので。。
で、そのクムジャさんの感想記事をTBさせていただきました。
ブログ始めるときに記事が一つじゃ恥ずかしいと思ってちゃちゃっと書いた記事なので恥ずかしいのですが、三部作に言及していますので。。
ではでは、また来ますね。

真紅さま コメントと、クムジャさんのTBをありがとうございました。
イ・ヨンエさんはどうしてもチャングムのイメージがつきまといますね。それに、吉永小百合さんみたいな可憐可愛い系の顔なので、確かにあのような壮絶なドラマのヒロインとしては、ミスキャストかもしれませんね。彼女自身はイメチェンに成功したかも。
クムジャさんは、ストーリー的にもオールドボーイには及びませんが、あの耽美的な雰囲気とか音楽が好きでした。被害者全員で復讐するところなど、アガサ・クリスティの「オリエント急行」みたいな話でした。クムジャさんの記事も書きたかったけど、オールドボーイよりは書くのが難しそうで、まだ挑戦できてません。
いずれにしても、この監督さんの作品は、おっしゃる通り、ストーリーに首をかしげたり、テーマの好き嫌いを論ずるより前に、まず作品そのものの持つ圧倒的なオーラにノックアウトされますね。残酷系もOKで、とにかく映画が好き!という方にはぜひ観ていただきたいです、三部作。

トラ・コメどうもです。
この作品の後、3部作といわれる「クムジャさん」と「復讐~」も見ましたが、この作品のインパクトが一番強烈でしたね。
あんまり韓流映画は・・・と思ってましたが、
これ以降、考え方が変わって、いろいろ見るようになりました。

ひらりんさん TBとコメントありがとうございます。
三部作の中では,やはり一番完成度が高かったかと。
私が韓国映画に開眼したのは,もっと古く「シュリ」からです。(笑)
「殺人の追憶」とかもいいですね。
役者さんの演技のレベルがすごく高くて,映画の質を上げていると思います。

ななさん
「オールド・ボーイ」衝撃的でした。
韓国の映画は、日本では到底許されないシーンがいっぱいありますよね。「オアシス」とか「スカーレット・レター」とかもすごすぎるし、この「復習三部作」も目を覆いたくなるシーンがたんまり。だけど、目が離せない・・・本当に不思議です。絶対に気持ちの良いものではないのに。

「復讐者に憐れみを」は、見ている時に、痛くて痛くて仕方なかったです。血が、血が~っっっ。

ななさんの「親切なクムジャさん」のレビューぜひ読みたいです!
ちなみに私のは
http://www.wmstyle.jp/archives/2005/10/06_002500.php
です。

こむぎさん こちらにもコメントありがとうございます。
まこと,韓国映画は,温厚な日本人の感性では
考えつかないような衝撃的なことを平気で映像にしちゃいますね。
でもそこが大きな魅力であるとも思います。
スカーレットレターも凄かったですね。
あまり凄すぎて,まだ再見できてないので,記憶が薄れつつありますが。
クムジャさん,大好きな作品ですが,感想はオールドボーイより難しそうなので,
つい後まわしにしていました。
またそのうち,頑張ってみます。そのときはTBしますね。

こちらへもお邪魔しますねぇ♪
これは好き嫌いが別れますよねぇ。
あのラストはド迫力でした!

チェ・ミンシクさんは大好きな韓国俳優さんです。
ななさんは彼の『ハッピーエンド』という作品は鑑賞されましたかぁ。
これもね、好き嫌いあるでしょうが私は好きなんです。
もぉね、ミンシクオッパが出てればOKみたいな。

『親切なクムジャさん』も良かったですよねぇ。
またゆっくりお邪魔させてくださいねぇ♪
じゃ今から仕事へ行って来ます!!!

なぎささん またまたこんばんわ
おお~ ミンシクさんのファンですか~!
彼は名優ですよね。作品ごとに違う顔を見せてくれるし。
私は彼を「シュリ」で観たときに「すごい!」と感心しました。
クムジャさんに出ているミンシクさんも,このオ・デス役とは全く違う印象ですよね。彼の力強い声が好きですね。
「ハッピーエンド」観ました。あれも強烈ですよね。
ハッピーエンドじゃなくて,悲惨な結末でしたが,あんな役は彼にしかできませんよね。
親切なクムジャさんの記事にも後でお伺いしまーす。ではでは。

2周年おめでとうございます。いつも楽しみにしてますので、素敵なレビューこれからも期待してます。さて、オールドボーイですが、
好き嫌いが分かれますね。私は大好きですね。この作品の感性が合うんでしょうね。アクション映画とういう面で捉えても、かなりかなり時間をかけて上手く作っていますね。ただ親切なクムジャさんは、??でした。女性の感覚ってあまりわからないからかも?復讐者に憐れみを はもうメチャメチャ気に入りましたね。(ななさんは評価低いもんなあ)やはり男性と女性は観点が違うのかもしれませね。では、また!

みちしるべさん ありがとうございます。
いつも丁寧なコメントをいただき,励みになります!

この「オールドボーイ」ですが
私も大好きです。
意表を突くオチは,そのエグさもひっくるめてただただ感嘆しました。
そして韓国俳優の上手さ!徹底してますね。そこらへんにも脱帽。
復讐三部作でいえば,やはり「クムジャさん」は女性向き
「復讐者に憐れみを」は男性向きの作品なのでしょうか?
特に「クムジャさん」は「母性」というのもテーマに入ってますから
女性でないと共感できない部分もあるかもしれません。
その点,この「オールドボーイ」は性別を問わずに楽しめる(?)作品かもしれませんね。

もちろん,この手の作品が平気な方にしかお勧めできませんが・・・。


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