善き人のためのソナタ
張りつめた糸のような,緊張感を全編に漂わせながらも,ひそやかな静けさが満ちている物語だった。物語の背景は暗く,重く,絶望的で,暴力的でさえあるのに,決してそれを声高に主張することなく,淡々と進んでゆくストーリーをたどってゆくと・・・・・。
ラストシーンで,思いがけなく,
ふいに涙が溢れた。
エンドロールの間中,絶え間なく涙がこみあげてきて,止まらなかった。物語の舞台は,ベルリンの壁の崩壊前夜の1984年の東ドイツ。今からわずか20年ほど前の出来事なのに,とてもそうは見えなかった。
知らなかった。社会主義の国家で生きる,ということが,こんなにも殺伐で暗澹とした生活を強いられるものだったとは。国家保安省シュタージは,個人の生活をガラス張りにし,反体制であると目をつけられたら最後,プライバシーは微塵も存在しなくなる。常に監視と脅迫まがいの牽制にさらされる生活。人々は常に国家の思惑を伺って,息をひそめて生きるしかない。ちょうどそのころ,バブル絶頂期で浮かれていた私たちには,想像を絶する世界だ。
主人公はそんなシュタージの高官であるヴィースラー。人生の多くを,国家に捧げて来た寡黙で孤独な男である。冒頭,彼が尋問の心得を後輩に講義するシーンからは,何ものにも揺るがされない,シュタージとしてのプロ意識と,冷徹さが感じ取れた。だのに・・・。
彼の心の中で,何かが少しずつ変わり始めたのは ,劇作家のドライマンの私生活を盗聴する任務についてからだった。芸術家たちにとって,半分死んでいるも同然の状態を強いる国家体制の中で,それでも懸命に誠実に生きようとするドライマン。彼と同棲している美しい女優のクリスタ。
ある晩,盗聴器から流れてきたのは,ドライマンの奏でる美しいピアノの調べだった。体制の圧力に屈して自殺した友イェルスカが,ドライマンに残した「善き人のためのソナタ」・・・・じっと聞き入るヴィースラーの頬に,やがて一筋の涙が伝う・・・。
そして彼はその後,冷徹なシュタージの任務を無感情に遂行することができなくなる。彼の取った言動は,結果としてドライマンの命を救うが,自らは左遷され,屈辱的な閑職へと追いやられてしまう。 劇中に流れたソナタは,ほんの短いフレーズだけで,ヴィースラーの心情の変化も,時間をかけて描かれていないため,彼の感動や涙が唐突に感じられ,その理由もわかりにくいかもしれない。しかし,監督はあえて,時間をかけた過剰な説明的な演出を避けたように思う。
観客が想像するしかないのだろう。このときの彼の心境。そして私はじっくりと考えれば考えるほど,切なさが増してきて困った。
あの曲を聴いた時に彼に訪れた感動は,
決して彼にとって,唐突なものではなかったと思うから。
ドライマン監視の任務についてから,彼が目にしたり耳にしたりした,様々なこと。それは,氷のような国家体制の中で,彼を初めとする大多数の人々が失ってしまったもの。愛し合い信頼できることの喜び,自由へのあこがれ,そして良心の大切さ。それらが,彼の心の一番奥深いところを,日ごとにそっと揺り動かし続けていたのではないか。彼自身も気がつかないほどそっと密やかに。そして,あの曲を聴いたときに,封印していた心が一気に堰を切って溢れだしたのではないか。
ヴィースラーはいったいそれまでどんな人生を辿ってきたのだろう。友も,家族もいない人生。国家体制の僕として,彼はどんな感情を封印して生きてきたのだろうか。映画では何も語られていないが,曲を聴いて涙する彼の姿に,それまでの彼の人生の語られなかった哀しみの大きさを見たような気がした。
この物語でもう一つ感動したことは,ヴィースラーがドライマンの命を救った後の彼の生き方と,後に真実を知ったドライマンがヴィースラーに伝えた感謝のかたち。
ヴィースラーは,共産主義が崩壊した後,ドライマンに命の恩人として名乗りをあげ,見返りを期待するようなことはしなかった。彼のそれまでの性格や行動パターンからしても,そんなことはできない人柄だったとは思うけど,彼の場合は,「彼を救ったのはこの私」という自意識すらなかったのではないか。いやむしろ,ドライマンのおかげで,密かに人間性を取り戻せたことを思うと,「恩を売る」なんて到底なれなかったのかもしれない。
ドライマンもまた。
せっかく命の恩人が誰かを突き止めたのに,落ちぶれたヴィースラーの姿を物陰から見守るだけで,声をかけることはできない。ヴィースラーの姿から発せられる「何か」が彼をためらわせたのかもしれない。その代わりに,ドライマンは,「善き人のためのソナタ」という本を,ヴィースラーのために書く。見開きには彼にしか分からない感謝の言葉を記し,いつの日かヴィースラーその人が手に取ってくれることを祈りながら。
見返りを求めない善き行いと,
祈りにも似た感謝のかたち
どんなときも感情を表に出さないヴィースラーが,ドライマンの感謝を受け取ったとき,「これは私の本だ」と一瞬輝くような笑みを見せる。イントロのように静かに,あの「ソナタ」が蘇り,ここでも監督は多くを語りすぎずに,さっとカメラは動きを止めた。その余韻の持たせ方がすばらしかったと思う。
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DAS LEBEN DER ANDEREN
THE LIVES OF OTHERS
2006年/ドイツ/138分
第二次大戦後の米ソ冷戦時代に東西ドイツを分断した「ベルリンの壁」は1989年11月に崩壊した。人々が東西を分断したその壁に上り、壁を撃ち砕く歴史的瞬間のライブ映像をテレビで見ていて、人々の手でいとも容易く崩れ去ったそのあっけなさに唖然とし、ベルリンの壁にまつわる様々な悲劇や死を、メディアを通して少しは知っていただけに、こんなにもあっけなく崩れ去った壁に、こんな壁一枚によって……... [続きを読む]
ななさま、こんにちは!拙記事にコメント&TBをありがとうございました。
確かに、ヴィースラーがたった一曲のピアノソナタで心を動かされるあのシーンは、簡潔すぎるほどの描かれ方でしたね。
それほど彼の心は枯れ果てていた、ということなのだと思います。
この映画は『グッバイ、レーニン!』の軽妙さへの反発心から製作されたと聞いたのですが、なるほど、旧東ドイツで生きるということは人間性を殺しながら生きるということだったのかもしれません。
それは精神的な死ですよね。
音楽をはじめ、この世に芸術がなぜ必要なのか、ということも考えさせられる作品でした。
ではでは、またお伺いします。
投稿: 真紅 | 2007年8月17日 (金) 17時33分
真紅さま,早速のコメントありがとうございます。
ヤフーなどでこの映画のレビューを読むと,絶賛されている方が多い反面,なんで主人公があんなに簡単に曲を聴いたくらいで心を動かされたのかわからない,という意見もありました。
でも,確かに,主人公にとっては,真紅さまのおっしゃる通り,あの曲は枯れ果てた心にしみ通る水のようなものだったのかも。飢え乾いていたんですね。よい音楽を聞き飽きている自由な世界では考えられないことかと。
東ドイツの真実を知っただけでも,衝撃的な作品でしたけど,芸術がいかにこの世に潤いを与えているか,痛感させてくれる作品でした。
投稿: なな | 2007年8月17日 (金) 19時42分
こんばんは。初めまして!
TB&コメントをありがとうございました。
ヤレドの音楽は本当にいつも心の琴線に触れる情感溢れる曲調で大好きです。
この作品自体の空気感がとても重く暗いものでもあり、また説明的ではない描写の為に、なかなか理解されない部分も多々あるのかなとも思います。
盗聴でソナタを聴くシーンもまさにその一つでもあり、物語を見つめる視線がいかにヴィスラーの心に寄り添っているかで感じ方も千差万別ですね。
自由な自己表現ができ、芸術に好きなだけふれる事が出来る私達は幸せです。
とても映画に愛があって素敵な文章ですね。
これからもどうぞよろしくお願いします♪
投稿: シャーロット | 2007年8月17日 (金) 21時23分
シャーロットさん,すてきなコメントをありがとうございました。シャーロットさんは,音楽にもとても造詣が深いのですね。「善き人のためのソナタ」全曲通して是非聴いてみたいです。サントラも購入しようかしら。エンドロールに流れる曲も好きでした。
この作品のように、饒舌ではないけれど,深いメッセージを与えてくれる作品が特に好きです。
こちらこそどうぞよろしく。リンクさせていただきました。
投稿: なな | 2007年8月17日 (金) 21時49分
こんばんわ。
TB&コメントありがとうございました。
お邪魔するのが遅くなってすみません・・・・。
≫社会主義の国家で生きる,ということが,こんなにも殺伐で暗澹とした生活を強いられるものだったとは。
だからこそ、たった一曲のソナタで人の心が動かされるんだろうなあ・・・と思いました。
取り締まりと監視の地獄の中で、冷えた人間の心を溶かし、価値観までをも変化させてしまう芸術の音色と人間が織り成す愛の景色・・・・。
とても静かで控えめな映画ではありましたが、受け手に残す印象と感動はとても強く大きい1作だったと思います。・・・素晴らしく良質な映画でしたよね。
投稿: 睦月 | 2007年8月20日 (月) 01時59分
睦月さん こんにちわ
ドイツ映画は,一見地味ですが,押さえた映像の中にも,しみじみと訴えてくる良質な作品が多いですよね。特に戦争が人に与えた傷跡を描いたものの中には,傑作が多いように思います。それだけに,この国が戦争から受けた痛みが大きかった,ということでしょうか。
音楽が人間に与える癒しや高揚感はすばらしいものだと,改めて感じさせてもらえた作品でした。人間の心の美しさもまた。殺伐とした世界の中でこそ、一粒の宝石のように,その輝きが際だつのですね。
投稿: なな | 2007年8月20日 (月) 10時58分
こんにちは。いつもTBとコメントありがとうございます。
観ている途中は緊張感に包まれながら、
観終わった後は余韻に浸りながら、
ヴィーズラーの心境をあれこれと思い巡らしました。
観終わって暫く時間が経っても、ちっとも余韻が心を離れないのです。
公開時はどうしても遠い映画館まで出かけるのが辛かったのですが、
もし、近くで上映されていたら、
その原因が知りたくて、何度も通ったかもしれません。
本当にいい作品が観れて、嬉しかったです。
投稿: 悠雅 | 2007年9月 6日 (木) 12時08分
悠雅さん TBとコメントありがとうございます。
>観終わって暫く時間が経っても、ちっとも余韻が心を離れないのです。
私もそうでした。劇場で見たかったけど,田舎なのできっと上映されてなかったと思います。ラストの幕引きの見せ方も,多くを語りすぎず,それゆえに素晴らしいものとなっていました。
この作品は,余分な台詞やシーンがないので,登場人物,特にヴィーズラーの心境はどうだったんだろうかと,切なく考えてしまいますね。
彼のまなざしや仕草の演技が,繊細かつ雄弁だったから,なおさらのこと。
淡々と進むストーリーを追っていったら,思いもかけない大きな感動の穴にすとんと落ちてしまっていた。そんな感じです。
なぜこんなに心が震えたのか,あれこれといつまでも考えたくなる・・・,この点でも,ブロークバックマウンテンとよく似ていました。
投稿: なな | 2007年9月 6日 (木) 20時59分
ななさん、こんばんは。
ラストが良かったですよね。ヴィースラーの行動が報われた瞬間であったし、作品を見ていた観客も、救われた想いになったような・・・そんなラストでした。
ヴィースラーを演じたウルリッヒ・ミューエは今年の7月、ガンのために亡くなってしまいましたが(まだ54歳だったのに・・・)、東ドイツ出身の彼は、実際には役柄とは全く逆で自分の妻に密告され、十数年間、シュタージの監視下にいたそうですね・・・。彼はどんな想いで、この役を演じていたのでしょうか。
投稿: mayumi | 2007年9月15日 (土) 02時28分
mayumiさん,コメントとTBをありがとうございます。
ミューエさんは,そんな過酷な過去をお持ちだったのですか。
それは知りませんでした。
さぞ,この作品の演技では思い入れが強かったことでしょうね。
実生活では,監視されるドライマンの立場だったのですね。
あの方の演技からは,静かな苦悩や,哀しみが,まるで手に取るように
伝わってきましたが,実際に東ドイツの悲劇を体験した者にしか出せない迫真のものがあったように思えてきました。
早すぎる死は,つくづく惜しまれますが,彼は,世界中に,とても貴重なものを残していってくれたように思います。
投稿: なな | 2007年9月15日 (土) 22時11分
ななさん、こんばんは☆私の大好きなこの作品に、TBをくださり、ありがとうございました!とっても嬉しかったです。
ななさんの、この、丁寧に書かれた記事を読んでいたら、この映画をまじまじと思い出してしまって、また感動してしまいましたよ!
私と同じように感じられているなあ、って。・・・
それだけでなく、文全体からも、ななさんもこの映画をとても気に入られたのが、すごく伝わってきました!
リンクありがとうございます。とっても嬉しいです☆
あと、余計な一言を言ってしまって、大変申し訳ないのですが、レザボアCATsの後の、「-livedoor blog」を消していただけませんでしょうか?
注文つけてしまってすみません!!本当、livedoorの陰謀で、全てのlivedoor blogにそう、くっついちゃうんですよね~。カッコ悪い・・・。
投稿: とらねこ | 2007年9月29日 (土) 02時54分
とらねこさん,おはようございます。
TBとコメントをありがとうございました。
戦争や国家の悲劇を扱ったもの,音楽がテーマの一つになっているものは
特に好きなので,この作品や,「暗い日曜日」などはツボにはまるジャンルなのです。特にこの作品は秀逸でした。
あまりに入れ込んで先日,この作品のグランド・エディションも買ってしまったほどです。
で、解説書を見ていたら,主演のウルリッヒ・ミューエさんって
10年前にミヒャエル・ハネケ監督の「ファニー・ゲーム」に出ているんですね。
これは,悪魔的なくらい後味の悪い救いのない物語なのに,なぜか連続して3回くらい見なおしたくらい,心に焼き付いていたので,
よく覚えているのですが,ミューエさんは,そういえば皆殺しにされる家族のお父さん役でした。
このヴィースラーとは全然別人で,よき家庭人の印象でしたが,
殺されるまえに妻に愛を告げたりするシーンがやはり心に残っていて,
10年前に観たきりの映画でも,その顔や演技をまざまざと思い出せるのは,
やはり彼の演技力がただものではないからでしょうね。
・・・ご冥福をお祈りします。
リンクの件,承知しました。そうですかぁ。ライブドアって無粋ですね。
投稿: なな | 2007年9月29日 (土) 08時54分
>戦争や国家の悲劇を扱ったもの,音楽がテーマの一つになっているもの
おっしゃる通り、この『善き人~』も、『暗い日曜日』も、ななさんのおっしゃる通りのドイツ映画だったのですね。
もしかすると、当時若干33歳のこの監督さん、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクも、『暗い日曜日』が大好きなんじゃないか?
と今、考えている私です。
『暗い日曜日』では、聞いた人が自殺してしまう、という音楽が物語りの中核にありましたが、こちらの『善き人~』の方では、聞いた人の心を洗わせるような音楽でしたね。・・・
そこから平和への願いへと導いてゆく、そう考えると、音楽の効果としては真逆かもしれませんが、やはり「音楽の別の効用」として言い表すことが出来るかなあ、なんて、
ななさんと話していく中で、考えてしまいました。
長コメすみません。
ななさんのおかげで、この映画に関しても、『暗い日曜日』についても、深く考えることができました。本当に嬉しかったです。
livedoor表示の件、お手間を取らせてしまい、すみませんでした!
投稿: とらねこ | 2007年9月30日 (日) 19時03分
PS.『ファニーゲーム』も、見てみたくなりました!
ありがとうございます!
投稿: とらねこ | 2007年9月30日 (日) 19時05分
とらねこさん またまたコメントをありがとうございます。
私も,この作品と,「暗い日曜日」を比較してみて,とらねこさんと同じようなことを思いました。
>音楽の効果としては真逆かもしれませんが、やはり「音楽の別の効用」として言い表すことが出来るかなあ。
二つの作品の時代と国は異なりますが,人々の多くが「自殺したくなるような」追いつめられた精神状態でいたことは同じだったと思います。
片方の曲は,自殺を誘導する負のエネルギーを持ち,
片方の曲は,反対に人間性を回復させる正のエネルギーを持っていた,と思うと,
音楽がなしえることの大きさに,畏敬の念さえ感じてしまいますね。
「ファニーゲーム」は,衝撃的な作品です。
悪が勝利する作品のうちでもここまで邪悪で後味の悪いものを私は知りません。・・・ハネケ監督ですからね。
うーん,傑作には違いないのですが,好き嫌いは激しく分かれますよ。
でも,ミューエさんの演技は,一見の価値ありですから,もし機会があれば,
観賞後に落ち込んでも被害が少なそうな,体調のよい時にご覧ください(笑)
投稿: なな | 2007年9月30日 (日) 20時51分
ななさん、こんにちは!
TBとコメントありがとうございました^^
>あの曲を聴いた時に彼に訪れた感動は,
決して彼にとって,唐突なものではなかったと思うから。
ここですよねー。ななさんには伝わって来たのですね・・。
私は、残念ながら、そこが、ズーンと伝わって来なかったんです・・・
だから、本当はこの映画のラストは5つ☆で、今年見た映画の中でも
1,2番に感動したのですが、4つ☆止まりになってしまったんです。
投稿: latifa | 2007年10月13日 (土) 10時40分
latifaさん,TBとコメントありがとうございました。
いや実は,ヴィーズラーの心境変化,想像したら切なくてたまらなくなった,というだけで,詳しく伝わってはこなかったのですが,
想像をかき立てる,という点では,あの哀しげな目で語るミューエさんの演技は秀逸!でした。
彼の演技のファンになったのに,もう故人になられて・・・(涙)
ところで,latifaさん宅の「ブラックブック」のコメント欄で,お互いの年齢の話が出ましたが,一つ違いと知って嬉しいです!お話がますます合いそうですね。
投稿: なな | 2007年10月13日 (土) 10時59分
こんにちはー。
TB&コメントありがとうございました。
この作品、、、静かな感動でしたね。
あとからじんわりと来た感じ。そしてあのラストはすばらしかったです。。。
私は鑑賞中体調が悪かったのもあって、すこしあいまいなところがあるので
ななさんのレビュー読んでいたらまた観たくなってきちゃいました。
これからもよろしくお願いします♪
投稿: きらら | 2007年10月14日 (日) 16時55分
きららさん お越しくださりありがとうございます。
こちらこそこれからもよろしくです。
きららさんは体調の悪さを押して,これを劇場で鑑賞されたとのことでしたね。
それでも,感動されたのですから,きららさんの感性や,この作品の訴えるものは素晴らしかったということですね。
体調が万全な時にゆっくりと,DVDで再度ご覧になれば,またまた新たに心の琴線に触れるシーンも増えると思います。
・・・でも,やはりこの作品の白眉は,あのラストシーンでしょうね。
投稿: なな | 2007年10月14日 (日) 20時28分
こんばんは♪
TB&コメント、ありがとうございました!
私も、この映画はプルプル震えちゃう程、号泣しました。
ななさんのレビューを読ませて頂いたら、
またまた鮮明に映画の記憶が蘇り、
ウルウルきてしまいました。
「これは私の本だ。」と
最後に言ったヴィースラーの誇り高き微笑みが
今でも心に焼き付いています。
人間のあるべき姿を描いた素晴らしい作品でした。
投稿: テクテク | 2007年10月18日 (木) 22時04分
テクテクさん お越しいただいてありがとうございます。
おお,テクテクさんも号泣でしたか?
私は号泣ではなく,それまで静かに見ていたのに,
あの最後のヴィーズラーの微笑んで画面が止まるシーンで
不意打ちのようにいきなり涙が溢れ出した,という感じ。
そしてその涙が,静かにですけどいつまでも止まらないのよね。
この感動のさせ方は,「見事だ!」と唸ってしまいました。
この映画は,グランド・エディション買いましたよ。
投稿: なな | 2007年10月18日 (木) 23時56分
ななさん。おこんばんは。
あのソナタを聴く前の段階で、ヴィースラーが、徐々にドライマンとクリスタに対するシンパシーを高めているのは、さりげなく描写されてますよね。唐突には感じなかった気がします。ちょっと「戦場のピアニスト」にもトーンが似ているところもあるけれど、もっとしみじみした余韻が残って良かったですね。彼がドライマンの著書を買う場面、現在の彼にとっては痛い出費かもしれない本の値段。レジの小僧にも「あんたが買うの?」という顔をされたりしますが、それだけに穏やかである種の誇りに満ちてヴィースラーが言う「私のための本だ」というセリフが一層効いているという気がします。
投稿: kiki | 2007年10月21日 (日) 21時23分
kikiさん いらっしゃい~
TBもありがとうございます。
「戦場のピアニスト」も,あのドイツ将校(トーマス・クレッチマン好き好き!)が,
シュピルマンを助けたのは,彼のピアノの調べに心打たれたからですね。
でも「戦場~」は,助けた将校はそれが報われずに終わるのに,
こちらはちゃんとドライマンの感謝が美しい形でヴィースラーに届くので
心洗われるような余韻が残りますね。
「私のための本」痛い出費にもかかわらず,誇らしげにそれを買うヴィースラーが
ドライマンの感謝を,胸をはって受け取ったことが,とても嬉しかったです。
投稿: なな | 2007年10月21日 (日) 23時02分
こんばんは!
先日wowowで鑑賞出来ました~
ラストシーンには感動しましたね。
私も涙が溢れちゃいました。
『善き人のためのソナタ』を聴いた時のヴィースラーの心情は心に沁み入ってきましたね。私も『封印していた心が一気に堰を切って溢れだしたのではないか』と思いました。
で・・・それから、ヴィースラーの愛についても思いを馳せちゃったわん。
彼はドライマンに同化していた感じも受けたの。
あの二人の愛も守りたかったんじゃーないかしら?
結局叶わなかったけど・・・
ちょっと重い作品でしたが、色々と考えさせられるいい映画でしたね。
投稿: 由香 | 2007年12月 7日 (金) 22時23分
由香さん こんばんは TBありがとうございます。
もうwowowで放送されたのですね。
・・・これは,まことに美しい傑作でした。
初見時の,非常に静かな,心にしみいるような感動を
今でも忘れることができません。
ヴィーズラーの愛・・・,私も感じました(記事には書くのを忘れたけど)
彼もまた,クリスタを愛していたのではないかと。
ドライマンと張り合う気持ちとかはなかったと思うけど
クリスタとドライマンのカップルは,愛を知らない彼にとって
憧れの対象だったのでしょうね。
見なおすたびに,このヴィーズラーさんのことを,愛しく切なく思います。
投稿: なな | 2007年12月 7日 (金) 23時00分
ななさん、こんばんわ。本作は、ブログ開設前に劇場でみました。昨日WOWOWで放映されていて、3回目の鑑賞。観るほどにこの作品の静謐で抑えたタッチに監督の真摯が伝わり、胸に沁みました。3度目鑑賞の後なので、ちょっと思いが入りすぎたかも知れませんが…TBもってきました。
それからリンクさせてもらっていいかしら?
投稿: シュエット | 2008年4月19日 (土) 00時39分
シュエットさん こんばんは
TB,コメント嬉しいで~す
私も,これはブログ開設前にDVDで観て,開設そうそうアップした作品です。
繰り返して観るほどに,深みと味わいが増して感じられる
素晴らしい作品だと思います。
これからも,見直すたびに新しい感動が味わえそうな・・・・
リンク,ありがとうございます!これからもしょっちゅうお邪魔いたしますね!
投稿: なな | 2008年4月19日 (土) 21時28分