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2007年8月15日 (水)

ゾディアック

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1968年からほぼ10年にわたって,アメリカ全土を震撼させた,劇場型連続殺人犯ゾディアック。これは,未だに解決していないこの事件の映画化である。

監督はデビッド・フィンチャー。
連続殺人をテーマにしたときくと,あの「セブン」のような作品を期待してしまうが,これはまったくテイストが違った。セブンはフィクションであるから,犯人もその目的も明かされるが,これは現実の未解決事件。ラストまで犯人はわからないまま物語は幕を閉じる。だから,どうしても消化不良の感がぬぐえない。韓国映画の傑作「殺人の追憶」を思い出した。

しかし,この映画は,その「消化不良の居心地の悪さと,不気味さ」を,あえて観客に感じさせるように作られた映画かもしれない。観客を2時間半も謎解きに引っ張り回したあげくに,一番怪しいと思われる人物もDNA鑑定の結果,証拠不十分だと判断されて,ジ・エンドである。
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そこには,何のカタルシスも爽快感もない
このような殺人を犯すことに快楽を覚えるような人間の素顔を,誰も暴くことができなかったという事実だけが,観賞後にじわじわと静かな恐怖となって心に沁みてきた。

BBMを観てからファンになったジェイク・ジレンホールが主役をすると聞いたとき,早合点な私は,てっきり犯人役をするのだと思っていた時がある。(まさかね~)

ドニー・ダーコグッドガールで,たしかに,ちょっとサイコっぽくも見える役を,見事に演じたこともあるジェイクだが,さすがに連続殺人犯はヤだなと心配していたが,蓋を開けてみると,犯人をまるで憑かれたように追い続ける究極のオタク男の役だった。(ほっ( ̄◆ ̄;) 彼は思い詰めたような,一途な役がやはりよく似合う。

彼が演じたロバート・グレイスミスは,事件にのめり込むあまり,妻に愛想をつかされてしまうが,シングルファーザーの時の息子に対する優しさや,かつての戦友とも言える記者(ロバート・ダウニー・Jr)に対する心遣いなどを観る限りでは,思いやりのある温かい人柄だったとも思う。しかし,ゾディアックの件となると人が違ったようになり,周りが見えなくなるほど のめり込んでしまう様子は,家族としては実に迷惑だろうなあと思った。
Cap006
この作品は,サスペンスというより,ヒューマンドラマに近い。謎解きがテーマの作品ではないと思う。姿の見えない殺人犯と,彼に取り憑かれて共に人生を狂わせていった男たちを通して,人間の心の闇や,連鎖していく負のパワーをを描いているのではないだろうか。とても重厚で,ダークな作品である。

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コメント

ななさま、こんにちは。拙記事にコメント&TBありがとうございました。
「よく行くブログ」にも登録いただきありがとうございます、光栄です~。
さてさて『ゾディアック』ですが、私も『殺人の追憶』を思い出しました。
未解決事件ですから、カタルシスや爽快感があってはいけないですよね、そこを敢えて映像化したフィンチャーに拍手を送りたいと思いました。
ジェイクの新作も待ち遠しいですね~!
ではでは、今後ともよろしくお願いいたします!!

 真紅さま,早速のコメント,ありがとうございます。感激です。私にとって,真紅さまは,カリスマみたいに尊敬させてもらっている方です。多方面にわたる素晴らしい記事をいつも堪能させてもらっておりました。特にBBMに関する記事の美しさといったら!
BBMはもうブームが過ぎちゃった感がするのですが,信者は相変わらず健在ですよね?私は一生そうだと思ってます。いい映画はこれからもどんどん出てくるのでそちらも楽しみですが。
では,これからもよろしくお願いします。

ななさん、映画題名検索を作られたんですね~
で・・・こちらを見つけてお邪魔しました♪

これは宣伝の感じから『暗号』がカギになるドラマだと思ったのですが、思いっきり人間ドラマでしたね~
重厚な雰囲気は良かったのですが、ちょっと中途半端な感じはありました。

でもジェイクは演技力がありますね~
先日wowowで『ジャーヘッド』という戦争映画も観ましたが、そちらのジェイクもとても良かったです!!

由香さん こちらにも訪問ありがとうございます。
フィンチャー監督のダークな世界は好みなので
この作品はセブン同様,大好きです。
まもなくDVDが出るので,(予約済み)
秋の夜長に(雨の晩とかね)部屋を暗くしてじっくり再見するつもり。
記事ももっと丁寧なのをもう一度アップしたいです。
暗号の解き方とか,もっとあってもよかったかなーとは,思いましたね。
ジェイクは,美男とは違うけど,繊細な演技は天下一品ですね。

今晩は!TB&コメありがとう、早速エコーさせて頂きますね
ゾディアック事件は結構知識があるんです。
知ってることもあれば知らないこともあるんだけど時間がとにかく
長いですよね、しかも起伏無く単調に進むだけなのでよけいに長く感じました
正直B級映画だったけどこの作品の前に映画化されたもう一本
の「ゾディアック」のほうが面白かったです。

せつらさん、こんばんわ
そっか、サスペンスに詳しいせつらさんは、実際のゾディアック事件にもお詳しいのですねー(^O^)
それでは余計、この作品のダラダラした展開には「しつこい!」と思ってしまったかな?
私もDVDを買ったのですが、途中まで観て放置してます。(おいおい)いや、この作品、好きなんですけどね。(;^_^A

やっと見た~!という感じです(^^;;)
DVDリリースと同時に・・と思っていたのに
なかなか見れなくて(^^;;)

なんだかすっごく集中して見てたらしく、見終わったら疲れてる自分に気が付きました(^^;;) が!思いがけず、ラストもなんだかスッキリした私です^^
もっと消化不良的になるのかな、と見てる
最中は思ったんですが、犯人が捕まらないって事はいい事じゃないんだけど、この3人の男たちにとって、人生狂わされた事件だったけど、ある意味これが生きた証のひとつだったんだ、というものがしっかり今でも残ってるんだろうなと感じられて。

ほんとおっしゃる通り、謎解きの映画とは
違いますよね。男たちの物語でした。
こういう男たちの物語的な映画って好きなんですよ~♪

TB&コメント、どうもありがとうございました♪

メルさん
そうよねー,これ,長い上に,お話についていこうと集中するから
めちゃくちゃ疲れるのよね~
それで,最後に犯人がわからずじまいだから
がっくりくる観客もいたとおもいますよー。

>この3人の男たちにとって、人生狂わされた事件だったけど、ある意味これが生きた証のひとつだったんだと・・・・

そうですよね。監督も謎解きより,そっちが描きたかったんでしょう。
この事件が当時の人々に与えた負の影響は
計り知れないものがあったでしょうねー。
犯人は,結局誰だったのかしら・・・?


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