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2007年8月29日 (水)

パフュームある人殺しの物語

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パトリック・ジュースキントの原作は,荒唐無稽,奇想天外,そして前代未聞の物語。しかし他に類をみない魔力でベストセラーになった。スピルバークやスコセッシなどの大物監督が,その映画化権を奪い合い,最終的には「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督が映画化を実現。

18世紀の初頭,パリの悪臭漂う魚市場で,産み落とされた主人公のグルヌイユ。母親は出産後すぐに彼を殺そうとしたところを,彼の産声に告発されて死刑。託児所で育てられた彼は,そんなわけで,生まれつき愛とは無縁の人生を送るよう運命づけられていた。しかし,彼には類い希な才能が備わっていた。それは・・・何キロも先の臭いをも嗅ぎ分けられる 超人的な嗅覚。やがて調香師バルディーニのもとで修行する身となるが,ある夜,パリの街角で出会った,赤毛の少女の香りに取り憑かれてからは・・・・。

001
劇場で観て,エンドロール中も場内が水を打ったように静まりかえり,誰も身動きしなかったのが印象に残っている。とにかく鑑賞中は「凄い・・・」と心の中でため息のつきっぱなし。あの破天荒な物語を,こうも見事に,耽美的に映像化してくれて,監督ありがとうという気持ちだった。

「におい」が主役ともいえるこの物語。
映像でにおいを表現するのは至難の技だと思われるのに・・・。嘗めるように対象を凝視するカメラアングル。臭いの快,不快を五感に訴える圧倒的な音楽の数々。それらは,さまざまな香りをみごとに表現していた。

主人公のグルヌイユを演じたベン・ウイショー。その哀切で思い詰めた瞳は,まるで捨て犬のそれのよう。彼は全身全霊で,「どんな心も」演じることのできる稀有な俳優ではないだろうか。

目的のためなら,何のためらいもなく殺人を繰り返すグルヌイユ。彼の罪深さは,決して許されるものではないが,同時に感じたのは,「自らの狂気と才能に操られて生きるしかなかった怪物」の悲劇

ラスト,完成した究極の香水は,どんな邪悪な罪も忘れさせるほどの力をもつと知って戦慄したし,神も仏もない世界だなあ,と嫌気がさしたが,グルヌイユがそれに味を占めて,世界制覇なんかを実行しなかったのでまだ救われた。(もしそうしていたら最悪の物語だ)

002
彼は香水の力を目の当たりにしたときに初めて,自分の中にある「愛されたい」という人間らしい心に目覚めたのか。それは,体臭のない彼にとって,香水の力なしでは,到底 叶えることのできない切ない願い。グルヌイユの脳裏に,初めて自分の胸をときめかせた,あの名も知らぬ赤毛の少女の幻影が浮かび,彼の頬を涙がつたう。

グルヌイユが本当に欲していたのは,彼女の「香り」ではなく
彼女の「愛」だったのか。


彼の衝撃的な最後は,
香水といっしょに自滅する道を
選んだように思えてならない。

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コメント

もし機会があったら原作もお読み下さいませ。
私は原作のダークさが好きかも。
映画はもっと見やすいほうかと思いました。
特にラストシーンは「ファンタジックさ」さえ感じられますし。

シャーロットさん こんばんわ
「原作」実は読んでます。えへへ・・・。
そして,おっしゃるとおり,原作のグルヌイユと,映画のグルヌイユは,かなり印象が違うように脚色されていると思います。
原作のグルヌイユは「悪」そのものに描かれていたと思います。映画のグルヌイユのような哀切な感じは皆無でしたね。

ラストの衝撃も,原作は容赦なかったです。リアルで。
・・・うーん私は映画の方がすきかな?でも,この原作の面白さというか,作者の筆力には神がかり的なものを感じてしまいました。香水の作り方とか,すごくわくわくして読みましたし,においの描写のしかたも,その臨場感に圧倒されましたね。

こんばんは。
いつもTBとコメントをいただきながら、コメントも残さず、申し訳ありません。

これは、最初はアラン・リックマンが観たくて観たのですが、
冒頭からすっかりお話に引き込まれて観ていました。
考えたら、彼は紛れもない犯罪者なのだけれど、
どうしても悪人扱いできないほど、
グルヌイユがひたむきで、まるで見守るような気持ちで観てしまいました。
愛されることへの渇望に気付かないで生きて、
あのように消えて行ったグルヌイユ。
その人生を思うと、悲しみばかりが胸にこみ上げました。

悠雅さん こんばんわ TBもありがとうございます。
アラン・リックマン,娘をひたむきに守ろうとする演技が素敵でした。
スネイプ先生と同じとは思えない(笑)

悠雅さんも,グルヌイユに感情移入されましたか?
>愛されることへの渇望に気付かないで生きて、
あのように消えて行ったグルヌイユ。
・・・そうですね。自分が本当に求めていたものにやっと気づいたのに,それが自分には決して手に入らないと悟ったら,絶望の極みだと思います。
皆さん書かれていますが,原作のグルヌイユは,「邪悪さ」の固まりで,ベン・ウィショーが見せたような,渇望や逡巡や憧憬といった感情とは一切無縁で,狡猾さも感じられる「モンスター」のような人物となっています。もし,この通り映画化されていたら,ここまで心を打たれなかったと思います。この作品は,ほんとにインパクトの強い,強烈な物語ですが,根底にはずっと,ベンの演じたグルヌイユの哀しみがあったように思えました。

ななさん。ワタシも原作を数年前に読んで(カバーデザインに惹かれて買いましたのよ)それが映画になったのかぁ、と劇場で予告編を観てて唖然としたんですが、あの原作をどうやって映画にするんだろう、と興味はあったものの、ちょっとああいう世界を観たい気分じゃなくてまだ観てませんのだ。あちこちでレビューを拝見すると皆さん評価高いので、秋に入ってしんと空気が冷えてきたら「パヒューム」いってみようかな、と思ってます。

KiKiさん,もうすぐDVDが出るのでぜひ。
英国俳優ではアラン・リックマンがいい演技をしてますのよ。
原作のエグさは,映画では緩和されて「切ない」系のムードすら漂う作品となっていますわ。
ベン・ウィショーのあの目の演技を観るだけでも
一見の価値はあるかと。(彼を好むかどうかは別として)
あの問題となった群衆の「衝撃」シーンの感想など
またレビューして下さいませ。
中世の館などの映像も多いので,ステキング王国のために活用していただきたいですわ。

原作、読んでないんですが、読んでみたいなぁ、と思いました。

映像と音楽と、その他さまざまな要因を交えながら
こんなにも香りがしてくる映画は初めて。

生れ落ちたときから、あんなにも周りの愛情の
ないところで育ってしまって、それも彼をあのようにしてしまった
ひとつの要因ですよね~。
そこへあの類まれなる才能が合わさって・・・。

ななさんが書いてらっしゃるように、彼が求めていたのは
彼女の香りではなくて、実は愛だったのかな、と思いました。

TBさせていただきましたm(_ _)m

メルさん コメントとTBをありがとうございます。
私も,最近原作を読み返してみて,あらためて映画との違いに思いを馳せました。原作のグルヌイユは良心のかけらもなく,極めて醜悪な人物で,ラストの彼の絶望も,「香水の力で万人に愛されても,自分は群衆を愛せず,憎しみしか感じられなかったから」と言う理由になっています。映画では,赤毛の少女に愛を求めているグルヌイユの幻影が入っていて,ぜんぜん違った解釈になっていました。
映画と原作を比べてみるのも一興です。原作は原作で,香水製造の過程や蘊蓄がすごく面白く,それこそあらゆる臭いが行間から立ちのぼってくるような魔力がありましたよ。
それにしても,この作品を観たり読んだりした後は,必ず自分の体臭がどんなのか気になって,自分の体をクンクンしてしまいます。

ななさん TBとメッセージありがとうございます。
TBおくったまんまメッセージが遅くなりごめんなさいね。
>グルヌイユが本当に欲していたのは,彼女の「香り」ではなく
彼女の「愛」だったのか。
私もそう思います。最後、処刑場の人々の姿をみて、彼は赤毛の少女を思い出して涙するんですよね。
切ないなぁ。
私はこの物語は悲しい悲しい愛の物語なんですよ。
それなのに、配給会社が、この映画、変なとこで大騒ぎして、そんな部分だけが誇張されて、先入観持たせるのんて許せないなって思いません? ったくもう!ですよね。

シュエットさん こんばんは

グルヌイユの人生・・・彼が生まれつき天から授かっていなかったものは
体臭と,愛を受ける能力だったと思うと
あのようにしか生きられなかった彼の宿命のようなものが
ほんとうに哀しく心に沁みてきますね。
確かに哀しい愛の物語ですし
監督さんや,俳優さんもちゃんとそこのところをわかって表現していたように感じました。
インパクトの激しいシーンだけを取り上げて宣伝するやり方は
もういいかげん,どうにかしてほしいですよね!

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