3時10分、決断のとき

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アメリカ本国では,2007年に公開された傑作西部劇。第80回のアカデミー賞2部門(作曲賞、音響賞)にもノミネートされている。主演は,まだ太る前のラッセル・クロウと,めずらしく地味なキャラのクリスチャン・ベイル。これは観なくっちゃ!

ときは南北戦争後のアメリカアリゾナ州。借金苦の農場主ダン(ベイル)が,強盗団の親分ベン・ウェイド(クロウ)を護送する道中,さまざまな出来事を通して,二人の間に不思議な絆が生まれるという物語。全く正反対の,むしろ敵対するタイプの二人が意に反してバディを組む物語,という点では,マイケル・マン監督のコラテラルを思い出したりして。
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邦題は「3時10分、決断のとき」だが,原題は「ユマ行き3時10分発」。つまり,3時10分とは,ウェイドをユマの刑務所に護送する汽車の発車時刻のこと。南北戦争で片足を負傷しているダンは,農場の経営に行き詰まり,地主からも嫌がらせを受けて,妻や息子からの信頼も薄れつつあった。ウェイドの護送を引き受けたのは,賞金目当てと,少しでも息子に誇れる仕事がしたかったためだった。

ダン一行は,逮捕されたウェイドを,3日後のユマ行きの列車に乗せるために駅を目指して出発するが,途中,護送の一行の一人をウェイドが殺したり,アパッチ族に襲撃されたり,ウェイドが脱走を図ったりと,さまざまな事件が起こる。
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この作品のベイルは,バットマンで見せた強さや華やかさは見られず,どちらかというと,うらさびれたキャラである。(しかし,どんなに落ちぶれた風体をしていてもやはりカッコいいのではあるが) 彼の特徴は何と言っても善良で,家族を思うよき父親,という点だ。そして家族を守れない現状を恥じ,家長としてのプライドを賭けて,ウェイドの護送を無事に勤めあげたいと願っている。それが息子に対して,唯一面目を施すことだとも思っている。
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そして,クロウの演じた強盗団のボス,ベン・ウェイド。
その罪状は,強盗,殺人など数限りなく,間違いなく筋金入りの悪党である。クロウの悪役って,珍しい(ずるがしこい上司の役はあったが)んじゃないか?

しかし何と言うカッコよさ!グラディエーター以来のカッコよさかもしれない。彼のハスキーな超低音ボイスは,悪役を演じるときにもピッタリとハマる。悪党のボスとしての凄みや風格は半端じゃない。しかし,同時に彼の風貌(=タレ目)からは,悪役と言えども,どこか憎みきれない愛嬌や哀愁も 感じるのだけれど。
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記事の冒頭に書いた二人の絆は,どちらかというと,ウェイドの心の変化が生んだものだったと思う。

ウェイドがダンの善き家庭人としての生き方を揶揄するそぶりを見せ,ダンの妻に秋波を送ったり,ダンの息子の気をひいたりしたのは,実は彼に嫉妬していたのではないか?と思う。ダンの不器用さ,善良さ,そして善人ゆえの何ものにも冒されない誇りを,自分が手に入れられなかったものとして,羨ましく思う気持ちがあったのではないだろうか?
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そしてそんなダンへの,そしてダンたち親子への思い入れが,彼にラストの感動的な行動を取らせたのだろう。男泣きする感動のラスト・・・・という宣伝だが,女である私は涙腺こそ緩まなかったものの,ラッセルの行動のカッコよさに痺れ,そして同時に切なさに胸がいっぱいになった。彼の速撃ちのシーンの鮮やかさは必見である。
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ストーリーは結構シンプルで,話のオチも予想がつくため,この作品の魅力を左右するのは,やはり役者の演技や醸し出すオーラによるところが大きいと思うが,そんな点でも,カッコいい(太ってない)ラッセルや,哀愁の漂うベイルを観れる,というだけでもお勧めの一本である。

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「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」

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戦争映画というと,どうしても製作国側からの視点だけで描きがちだが,イーストウッド監督は,「硫黄島の激戦」を,アメリカと日本の両方の視点から描き,これまでにない素晴らしい二部作を世に送り出してくれたと思う。

実は「硫黄島〜」の方はとっくに観ていたが,「父親〜」の方は最近になってやっと観たのだ。そして,これは二つでひとつの作品・・・つまり両方を観て初めて,あの戦史に残る硫黄島の戦いについて本当に理解することができるのだ,と思った。イーストウッド監督の描きたかった反戦の思いも,両作品を観ることで,よりはっきりと伝わってきたように思う。
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日本人でありながら,これまで,教科書で習ったことも教えたこともなかった硫黄島の戦い。ほんと,知らなかったことが恥ずかしい。

この島が日米双方にとって戦局を左右する重要な島であったこと,アメリカ側は当初この戦いを,わずか5日間で終わらせるつもりだったのに,日本軍は大本営からの援軍皆無の孤立した状態で,なんと30日間以上も持ちこたえたこと,そしてまた,太平洋戦争後期の上陸戦での米軍の損害が日本軍を上回った稀有な戦いであったこと・・・・これは絶対に記憶に止め,後世に語り継がれなくてはいけない戦いだと思う。
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日本軍を指揮した上官たち。
全長28キロにも及ぶ坑道からの攻防戦を指揮し,無駄な玉砕を禁じて兵士たちを最後まで戦いぬかせた栗林中将(渡辺謙)や,捕虜となった敵兵を看護させたバロン西こと,西竹一中佐(伊原剛志)。そして,一兵卒の立場から観た硫黄島の戦い,という意味で重要な役回りを演じる主人公の西郷青年(二宮和也)と,もと憲兵の清水(加瀬亮)
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二宮和也は,まるで現代の若者があの時代にタイムトリップしたかのように,喋り方も表情も現代っ子のままで(軍服姿は誰よりもあの時代の兵士っぽく似合っていたが)初めは「あんな雰囲気の兵隊があの時代にいるわけないじゃん」と違和感があったのだけど,坑道堀りに明け暮れる毎日に愚痴をこぼし,「生きて帰りたい」と願う西郷の姿は,ある意味,日本の兵士たちの戦争に対する本音の代弁者として監督がわざと演出したものなのかもしれない。それでも二宮和也の演技・・・特に彼が声もなく涙を流すシーンは心を打たれた。(二宮くんは演技,ほんとに上手い)
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そして,憲兵を首になって硫黄島に配属された青年,清水を演じた加瀬亮。人より少し優しく繊細な心を持っていたがために,憲兵が勤まらず,この硫黄島の戦いでも悲運な運命を辿ることになる彼はほんとに可哀そうな役だ。傷ついた米兵の母親からの手紙を読んで,アメリカ人も自分たちと同じ心を持っていると気づき,投降を決心した彼が辿った運命はあまりにも哀しく,救いがなかった。

私はこの作品で加瀬さんを知り,続いて「それでもボクはやってない」への鑑賞意欲をそそられた。それにしても,大日本帝国時代の憲兵の横暴とその被害者について外国人のイーストウッドが描くとは驚きである!
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日本軍もアメリカ軍も,想像を絶する苦戦を強いられた硫黄島の戦い。「父親たちの~」と合わせて観てみると,日本軍とアメリカ軍の精神面での違いが浮き彫りにされていて興味深い。

戦場に赴く前のアメリカ軍の青年兵士たちの様子。無邪気にカードに興じたり,仲間と冗談を言い合ったり,恋人を偲ぶ音楽に耳を傾けたり・・・彼らも,そしてもちろん彼らの上官たちも,「生きて祖国に帰る」ことを望み,そしてその望みが当然のものと考えられている世界。
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一方,日本軍の方は,初めから生きて本土に帰れるとは思っていない。栗林の「生きて祖国の土を踏むことはないと覚悟せよ」という言葉の重み。日本軍に漂うく悲壮感と緊迫感は,米軍のそれとはまるっきり質が違う。

あの,手榴弾による自決シーンの壮絶さ。兵士たちの顔に浮かぶのは恐怖と哀しみ以外の何物でもなかったが,それでも彼らは上官の命令に従い,日ごろ教えられた通りの手順で次々と自決してゆく。個人の命よりも何よりも,お国のため,という思想が優先されたこの時代の先人たちの強さと潔さを,哀しんでよいのか,誇ってよいのかわからない・・・こんな思想が間違っていることだけは確かで,何処へ向けたらよいのかわからない怒りを強烈に感じた。

援軍も弾薬も送らず,「潔く散れ」と指示してきた大本営。「悠久の大義に行くべし」とは綺麗な言葉だが,結局は彼らに「死ね」と命じたのと同じである。
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しかし,日本軍の抵抗に1カ月あまりも苦しめられたアメリカ軍の兵士たちもまた,この戦いでそれぞれ心に深い傷を負ったのだ,ということが,「父親たち~」を観るとわかる。

どこから弾が飛んでくるかわからない恐怖の中を上陸し,次々と倒れるアメリカの兵士たち。物語は,その中で必死に衛生兵として自分の務めを果たすドグ(ライアン・フィリップ)を中心に描かれている。つかまって日本軍の坑道内で惨殺された親友。あろうことか,味方の誤射によって命を落とす上官。
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やがて,6人の兵士が擂鉢山に星条旗を立てる瞬間の写真が祖国の新聞に掲載され,映っていた兵士たちは英雄として祭り上げられる。長引く戦争に嫌気がさし、国庫も空で,これ以上戦争を続けるのが困難になっていた当時のアメリカにとって,彼らの擂鉢山の写真は,国民の士気を鼓舞する格好の材料となった。

6人のうち3人はすでに戦死し,戦いのトラウマも癒えないうちに国民の前でポーズを取り,戦時国債キャンペーンのツアーに駆りだされるドグたちの内心の苦悩。たまたまその場にいて旗を立てたにすぎない自分たちだけが,英雄扱いされることに対する自責の念。戦争をビジネスととらえている事業家たち。国家のために,ドグたちは,従軍した者にしかわからないトラウマを押し隠して,笑顔でツアーをやりぬく。
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戦争とは,どの国でも,そしていつの時代でも,国家が兵士たちに多大な犠牲を強いるものなのだ,ということを改めて感じた2作品。どちらも戦争で傷つく名もない兵士たちのそれぞれの哀しみが描かれていて,イーストウッドの反戦への思いが伝わってきた。死んでゆく兵士たちには,どんな大義名分もヒロイズムもなく,ただただ理不尽な痛みと哀しみがあるだけなのだ。その痛みは,戦勝国の兵士とて変わらない。

同じ監督が敵対する二つの国の視点から作品を撮る・・・・という離れ業。アメリカ人でありながら,製作に当たって,完全に中立の視点を貫き通したイーストウッドは凄いと思った。

私がより感動したのはやはり,「硫黄島からの手紙」の方だが,実際は映画で描かれているよりも,もっともっと凄惨な状態で戦い,散っていった英霊たちに心からの追悼と感謝の祈りを捧げたい。

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マッハ!!!!!!!!

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チョコレート・ファイターでピンゲーオ監督のムエタイアクションものにハマって,こちらを遅ればせながら鑑賞。トニー・ジャーの古式ムエタイに魅せられた!いやー,人間の身体って鍛えればあそこまで出来るようになるのか!この作品も,ノースタント,ノーCG,ノーワイヤー,ノー早回しの正真正銘の身体を張ったアクションだ。深夜,DVDを再生しているPCの画面に向かってこぶしを握りしめ,何度も「うっそー!!!!」と叫んでしまったわたし。(かたわらの猫catがびっくりしていた)

ストーリーは,これもあってないようなもの。もしかしたらチョコレート・ファイターより,もっとシンプルでバカバカしいかもしれないストーリーなのだが,かえってアクションだけに意識を集中して観ることができた。
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タイの寒村で村人たちの守り神として大切にされてきた仏像オンバクの頭が盗まれ,信仰篤い若者ティン(トニー・ジャー)が,村のためにバンコクまで仏像を取り戻しに行くお話。冒頭,白塗りの若者たちが,なんだかわけのわからない木登り合戦をやっているシーンでもう目がテンに。大木のテッペンに結び付けている黄色い布を,一番先に取ったものがチャンピオンらしいのだが,観てるそばから脱落者がボコボコ地面に落っこちてくる。これもスタントなしだとしたら相当痛そうだ。

で,見事優勝したのは,もちろん主人公のティン。ここでまずさりげなく,彼の身体能力の高さが紹介されるのだけど,彼のほんとうの凄さが発揮されるのは,仏像奪還のためにバンコクへ赴いてからだ。
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いやー,でもアクションする彼の顔が,時々ハルクに似てると思ったのはわたしだけ?

この作品って,結局見せたかったのは「トニー・ジャーのアクション」だけだったような気がするが,そのアクションがバラエティに富んでるし,後になるほどパワーアップもするので,まったく飽きない。その手足の動きは目にもとまらぬ早技なので,一瞬たりとも画面から目が離せない。
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チョコレート・ファイターのジージャーちゃんの足技に比べると10倍もの迫力と殺傷力がありそうで,彼のひじやひざが,相手の顔面や頭部にめりこんだ時の「ボコッ!」「グサッ!」という音も重く,半端じゃないのだ。(相手役,命がけだね)

数あるアクションの中でも好きなのは,バンコクの街中を,チンピラに因縁をつけられたティンとその相棒のジョージが逃げるシーンのアクション。
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なにもわざわざ,こんな中をくぐらんでも・・・・

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乗用車を馬跳び状態・・・・凄い跳躍力!

その他にも,何人もの肩や頭を踏んで飛び越えるとか,狭いガラス板の間を宙返りして通り抜けたりとか,もうやりたい放題なのだが,これらも実際にやってるんだから凄すぎる。体操選手のような連続宙返りのアクションもあり,まるでオリンピックの床体操を観てるようだった。タイの三輪タクシー,トゥクトゥクのカーチェイスも物珍しかった。(三輪って小回りも効くけど横転しやすいのよね~)

そして,何と言っても凄いのは・・・・
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炎の中からの飛び蹴り!
もうこのシーンに至っては,開いた口がふさがりませんでしたよ。だって,ほんとに燃えてるもん・・・トニーさんの足!いくら仕事とは言え,彼の役者魂というか,度胸にはもう言葉もないし,監督の無謀ぶりにも・・・言葉もない。しかし,そこがこの作品とトニーのアクションの魅力なんだけどね。スタントマン出身の彼だからこそできた離れ業なのかもしれない。エンドロールのNG集で,このシーンで足の火がなかなか消えなくてスタッフが大慌てで彼を追いかける場面もあった。(怖)

最後には無事に仏像も戻って,平和な村で象に乗って凱旋って・・・どこまでもタイだねぇ。ありがたや。

続編の「トム・ヤム・クン!」はなんでも象奪還物語だそうな。これはDVDがレンタル屋になかったので他を探してみようっと。

 

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