2019年9月15日 (日)

誰もがそれを知っている

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結婚してアルゼンチンで暮らしていたヒロインのラウラ(ペネロペ・クルス)は、妹アナの結婚式に参加するために10代の娘イレーネと幼い息子ディエゴを連れ、故郷のスペインの小さな村に帰ってくる。 老父や姉夫婦、幼なじみで元恋人のパコ(ハビエル・バルデム)夫婦や友人たちも交えて、盛大な結婚披露パーティが夜を徹して繰り広げられたが、そのパーティの最中にイレーネが誘拐される事件が起きる。犯人から莫大な身代金を要求するメールは、なぜか母親のラウラだけでなく、パコの妻ベアのもとにも送られてくる・・・・・。監督は、イラン映画の巨匠アスガル・ファルハーディー。ごく普通の日常生活の中で起こる「ある事件」をきっかけに明るみに出される登場人物たちの秘めた感情を濃密に描いた作品が多いが、この作品もそんな感じの傑作だった。

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誘拐事件という事件を中心に物語は進んでいくが、犯人探しがテーマはない。犯人は終盤になって解決の前に観客に明らかにされるし、警察は最後まで実際に介入することなく、イレーネも無事に戻ってくる。なぜなら犯人は身内であり、到底払えないほどの莫大な身代金は、パコが自身の葡萄農園を売って工面したからだ。なぜ、イレーネにとって「母の幼馴染」でしかないパコがそこまで犠牲を払ったのか?このあたりで観客も想像がつくけれど、イレーネは実はパコの娘だったのだ。そしてそれこそが「誰もがそれを知って」いたいわば公然の秘密だったのだが、皮肉なことに当人のパコとその妻だけは、誘拐事件をきっかけにラウラから打ち明けられるまでその事実を知らなかった。なんとラウラの夫までもが知っていたというのに。

パコに対する村人たちやラウラの親族たちの秘めた気持ち。パコがラウラ一家の使用人の息子であり、彼の葡萄園ももともとはラウラの家の所有だったという事実。それに対するラウラの父の恨みがましい思い。実の父親のパコが農園さえ売れば莫大な身代金を工面できるという理由で誘拐されたイレーネ。そしてイレーネの出生の秘密を知る人間は誰かというと、それこそ「誰もがそれを知っている」のだ。
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誘拐事件をきっかけに明るみに出される公然の秘密や、登場人物それぞれの猜疑心や嫉妬心など負の思惑。それらが二転三転してどんどん煮詰まっていく様は何とも言いようがなく不穏な緊張感に満ちて、最後まで目が離せない。一番の貧乏くじを引いたのは誰だったのか?事件は解決してもイレーネの心にいったん生じた疑惑や、ラウラが夫に対して抱いた不信感や怒りは、きっとこれからもひと悶着を生みそうだ。農園も妻も失ったけれど、もしかしたらラウラの心を取り戻したかもしれないパコはこれからどう生きるのだろう。そしてあの姉夫婦一家。何事もないときはそれぞれにこやかに穏やかに心を隠して生きていても、兄弟でも身内でも、いや、近親者ゆえに実は心に黒い感情を秘めているものなのかもしれない。できればずっとお互いに見たくないし見せたくない感情を。

極上の心理サスペンス。ただし余韻の深い「イヤミス」である。

2019年9月 1日 (日)

角膜潰瘍のはなし

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2週間ほど前に、角膜潰瘍というものになってしまいました。

これね・・・、角膜(黒目のこと)の一番上の組織である上皮に傷が入って菌が侵入し、その中の角膜実質に潰瘍を起こすものなんだけど、放置して受診が遅れたり、感染した菌がたちの悪いものだったりしたら、角膜穿孔といって角膜に穴があいちゃったり(>_<)して最悪失明する恐れもある病気なんですよ。角膜上皮は再生能力が高く、微細な傷ならほっといても自分で修復再生してくれる優れもので、普段は菌の侵入感染をがっちりガードしてくれているのですが、コンタクトレンズの不適切な使い方や、異物が入ったりして上皮に深い傷がつくと菌が角膜実質まで侵入して感染し潰瘍(ただれ)を起こすそうです。

上皮と違って実質に出来た潰瘍はなかなか治らず、治っても瘢痕となって残って角膜が白濁したりする後遺症もあるそうです。怖いですね。で、私の場合は原因はきっとコンタクトレンズです。2weekのソフトをかれこれ15年以上使っているのですが、一日の装着時間が15時間くらいの日もあったし、寝るときはもちろん外していたけど、軽いお昼寝のときは外さなかったんですよ。2週間の期限も、厳密には守ってなかったかも。いや、勿体ないとかそんなのではなく、単にずぼらです。だいたい2週間くらい・・・という感じの交換でしたね。深く反省です。

コンタクトをしたまま寝る(短時間でも)って厳禁なんですね。そういえば昼寝から起きたら目に入れたコンタクトの乾燥感が半端なかったです。それを外すときにやはり気づかないまま角膜に傷をつけていたのかもしれません。
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角膜潰瘍になると、黒目に白い点ができます。この白い点が潰瘍なのですが、自覚症状としては突然の目の激痛や眩しさ、白目の充血、酷い涙目、異物感などが起こるそうです。わたしの場合は充血と涙目だけでしたが、ちょうど勤めが休みの平日だったので念のため眼科を受診すると「目に菌が住み着いてるよ」と言われ、「えらいこっちゃ。」と。初めの1週間は1時間おきに2種類の抗菌点眼薬を差し、睡眠中は眼軟膏を塗ってとにかく菌をやっつけ炎症を鎮めることに専念しました。眼軟膏なんて初めて知りましたが、下瞼の裏に注入して効果を持続させるものなんですね。

潰瘍を起こした菌が緑膿菌やアカントアメーバだったらとんでもないことになっていましたが、幸いそんなやっかいな菌ではなかったようで、1週間後の受診では炎症もだいぶ治まっているので点眼薬の種類も回数も減らすことができました。現在は1種類だけ1日3度の点眼をしています。コンタクトレンズの再開はまだです。再開しても装着時間は短めにして、入浴中やお昼寝中もしっかり外して管理もちゃんとしたいですね。それにしても怖かった・・・。後遺症の視力低下もなく幸いでしたが、潰瘍のできた場所があと2ミリずれていたら、視力低下になっていたかも、と言われました。

2019年8月 7日 (水)

魂のゆくえ

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とてもスピリチュアルで地味な作品だが、クリスチャンの立場で観ると深く考えさせられることばかりだった。

主人公のトラー(イーサン・ホーク)は、ニューヨークにある小さな教会「ファースト・リフォームド」の牧師。彼は息子をイラク戦争に送り出して喪い、それがもとで妻にも去られるという過去の傷がある。ある日彼は、信徒のメアリー(アマンダ・セイフライド)から、夫マイケルについて相談を受ける。環境活動家のマイケルは環境が破壊された地球の未来を悲観し、メアリーに妊娠している我が子を産むべきではないと主張していた。トラーは出産を受け入れるようにマイケルを説得するが、マイケルの考えに次第に賛同の思いを抱くようになる。

そうこうしているうちにマイケルは自殺し、トラーはメアリーの依頼でマイケルが納屋に隠していた自爆ベストを預かることになる。マイケルの葬儀で環境問題に関するメッセージを発した件で教会から咎めと忠告を受けたトラーは、教会が環境汚染の元凶である大企業から多大な支援を受けていたことを知る。苦悩と葛藤の末に、トラーは教会の記念式典の朝、ガウンの下に密かにマイケルの自爆ベストを着こむのだが・・・・

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トラーは、信条に反することに対して苦悩し、その矛盾に絶望し、自分も教会も破壊することで抗議のメッセージを届けたかったのだろうか。日記はつけているけれど、式典の席で自爆しようとした彼の決意を詳細に語る台詞はないので、彼の表情や行動から推し量るしかない。メアリーに惹かれていることも、一人の時は酒浸りになっている理由も、彼の口からは何も語られないけれど、神を信じてはいても、彼の内心が平安や幸せに満たされてはおらず、怒りや疑問が次第に広がってきていることは切々と伝わってくる。

天地創造のあの7日間、神が作った世界は美しく完全ですべて「よかった」はずなのに、被造物である人間が、神の創造物をここまで破壊してよいものだろうか。それは罪であるし冒涜だとトラーは主張する。それに反して、終末へと世界は確実に向かうことは神の御計画でもあり、人間がそれに加担するのも神の御心であると教会は言う。果たしてどちらが正しいのか。私は鑑賞中にずっとこのことを考えていた。環境問題だけではない。戦争や犯罪や病気や災害をも、なぜ神は野放しにされているのか。このような疑問から神に躓き、信仰を失うクリスチャンのなんと多いことか。

終わりの日には確かに世界は破滅へと向かう。神は人の心を支配されることはあえてなさらず、罪や悲しみは満ちるのを放任しておられるように感じる。それを許せないと感じるか、みこころだからと受け入れるか。環境破壊問題が切実になってきた今日だからこそ強烈なメッセージを語りかけてくる作品だった。

トラーが自爆を中止したのは、来ないばずだったメアリーが式典に来たから。そしてそれにトラーが気づいたから。そこに神の憐れみとみこころを私は感じた。この二人は今後どうなるのだろう・・・。

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